ドン!!
銃声。重い瞼をこじ開けそちらを見やる。
「そこまでだ」
そこには銃を掲げたロイさんが軍の方々を引き連れ立っていた。男性を睨んでいた目をふとこちらにやると微かに笑った。
「危ないところだったな、音の。鋼の」
「大佐っ!こいつは...」
動けないおれに代わってエド兄が尋ねる。ロイさんは隙なく男性を警戒しながら答えてくれる。
「その男は一連の国家錬金術師殺しの容疑者...だったが、この状況から見て確実になったな。タッカー邸の殺害事件も貴様の反抗だな?」
朦朧としてきた意識の中でタッカー邸という言葉を聞き取る。
(...そうか、こいつがニーナちゃんを...アレキサンダーを...)
ほとんど開いていない視界の隅にいる男性をギリ、と睨みつける。憎くて憎くてたまらないが、本当に認めたくないが今のおれではこいつには敵わない。その事が本当に悔しくてたまらなかった。
「錬金術師とは....」
チカチカと視界が明滅する。ぐにゃりと視界が歪み、おれはそのまま意識を手放した。
_____おかあさん!
(おれはあまり外で遊ぶような子供ではなかった)
_____あら、ハルどうしたの?
(母さんの優しい笑顔が大好きで、そばで見ていたかった)
_____おてつだいする!!
(母さんが少しでも楽になれば、なんて子供心だった)
_____あら、ありがとう!
(もう一度、その笑顔が見たかった)
_____なん、で....
(錬成は失敗した。母さんは異形となって帰ってきた)
______エド兄!!アル兄を!
(エド兄は左足を、アル兄は身体を、おれは表情を持っていかれた)
_______(声がっ....でない)
(起き上がって、ウィンリィを呼ぼうとした時に気づいたことだった)
《お前はずっとそうやって何かを失って生きていくのか?》
うるさい
《自分では何も出来ないからと口先で喚くだけか》
うるさいっ
《じゃあお前は1度でも....何かを救えたことはあるのか?》
(....うるさいっ!!!!!!)
「うわっ!!」
ガシャン!
ガバッっと起き上がる。酷く息が乱れ、汗が全身から吹き出していた。それでも表情はきっと真顔なのだろう。
どうやらおれはベッドで寝ていたようだった。落ち着いて見回して見ると清潔感のある真っ白な部屋に1台のベッド。おれの服はいつの間にか着脱が楽そうな服に変えられており、腕からは点滴が伸びている。...ここは病院のようだ。
そこまで理解したところでベッド脇で椅子ごとひっくり返っている眼鏡をかけた人の良さそうな人に声をかける。
[あのー...大丈夫ですか?]
上体を起こしたその人はかちゃ、と眼鏡をかけ直し「びっくりしたぁ...」という。
その横に本が1冊落ちていることから読書をしていたのだろうと言うことが伺える。本を読んでいたら目の前のやつがいきなり起き上がるんだ、そりゃビビる。
「だ、大丈夫だよ!きみ...ハルフェスくんの方が大丈夫かい?痛いとことか...」
そう言われてはっと褐色の男性のことを思い出す。焦って両手を合わせる。
[あいつは...褐色の人は!?どうなったんです!?]
するとその人は渋い顔をする。
「とり逃してしまった...でも君たち以外に被害も出ていない。エドワード君もアルフォンス君も無事だから安心して!」
ほ、と息を吐く。そこで初めて眼鏡の人がロイさんの部隊にいた事を思い出した。
[貴方はロイさんの...]
「あ、うん!ケイン・フュリーって言います!よろしくね」
人懐こそうに笑って手を差し伸べてくる。その手を握り返し一礼する。
[ハルフェス・エルリックです。よろしくお願いしますケインさん]
手を離してから改めて自己紹介をする。
[あのう...エド兄やアル兄ってどこに行ったかわかりますか?]
「あー...それがね...」
ケインさんは言いにくそうに頬をかいた。