解読を始めてから一週間が経過した。
必死で解読をしているのだが...
「なんなんだこのくそ難解な暗号は...」
「兄さん...これマルコーさんに直接聞いた方が早いんじゃない?」
様々な知識を総動員して解読を進めているのだが、全く手掛かりが見えない。がりがりがりっと解読した文をコピー用紙に書きなぐる。全く意味を持たない羅列となった解読文にあたまをかかえる。
「いや!これは「これしきの事が解けない者に賢者の石の真実を知る資格なし」というマルコーさんからの挑戦と見た!なんとしても自力で解く!!」
エド兄の言うようにマルコーさんの挑戦状なのかはわからないが、答えを教えてもらう、というのは性に合わない。とことん調べつくして、可能性をしらみつぶしにつぶして、伝手をフルで稼働させて、それでもわからなかったら答えを聞く。まだ調べている段階だ。
パチン、と軽く頬を叩く。集中、と自分に言い聞かせ料理研究書のページをめくった。
途中でシェスカさんやヒューズさんが来たらしいが集中していたせいで全く気付かなかった。
なんでもシェスカさんの記憶力を生かしてヒューズさんのもとで働けることになったらしい。よかったねシェスカさん。
あの記憶力があればかなりの部署で役に立つと実際おれなんかは思うのだが...現実はそうでもなかったらしい。
そうして解読を始めてから丸9日が経った。
[...これは...]
おれはマルコーさんの研究書の解読に成功した。否、成功してしまったという方が正しいだろう。
恐るべき真実。これを兄さんたちに伝えるべきかと一瞬思案するほど。
(これを知ってしまったら兄さんたちは絶対に賢者の石を使おうとはしないだろう。それは元に戻る時間が遅くなることをさす。...でも、知らないで使って兄さんたちが喜ぶはずはない。これは、__伝えなくちゃいけないことだ。)
手近な紙に読み解いた真実を書き連ねていく。
こんこん、と机をたたき二人の意識をこちらに集める。
「どしたの?ハル」
「まさか...解読できたとか?」
その言葉にこくりとうなずく。兄さんたちは顔を見合わせてごくりと唾をのんだ。
すっと紙を二人の前に差し出す。
「......ふっ...ざけんな!!!」
ガタン!と大きな音を立ててエド兄が座っていた椅子が後ろに倒れる。危ういバランスを保っていた積まれた資料たちが衝撃でばさりと崩れ落ちる。
ちょうどそこへ閉館時間をしらせにきたロスさんとブロッシュさんが来てしまった。
「なっ...なにごとですか!兄弟げんかですか?まずは落ち着いて...」
焦った様子のブロッシュさんがこちらへかけてくる。
[違いますよ]
とりあえず兄弟げんかでも何でもないのでそれは否定して置く。小首をかしげたロスさんが尋ねる。
「では暗号が解けなくてイラついてでも...」
「解けたんですよ」
その問いもアル兄が否定する。暗い声で続ける。
「暗号、解いてしまったんです」
その言葉だけ聞けば喜ばしいことだ。ずっと悩んでいた暗号が解けたのだから。そう思ったのかブロッシュさんは言う。
「本当ですか!?よかったじゃないですか!!」
「いいことあるか畜生!!!」
呑気なその言葉にいら立ちを隠さずエド兄が叫ぶ。このままだと感情に任せて二人を巻き込んでしまいそうなエド兄に注意をしようと手を合わせる。
「「悪魔の研究」とはよく言ったもんだ...恨むぜマルコーさんよぉ!!」
「...いったい何が?」
「賢者の石の材料は...」
[エド兄...それ以上は!]
二人を巻き込むことになる、というおれの言葉が全て紡ぎ終わらないうちにエド兄が続きを話してしまう。
「生きた人間だ!!」