部屋を占めているのは沈黙だ。
むすっとした顔のエド兄はソファに寝転んで何かを考えている様子だ。アル兄はソファの背もたれの裏側にもたれかかっている。その向かいのベッドに腰かけたおれは資料を一枚めくった。
「二人とも、ご飯食べに行っといでよ」
「いらん」
[...まだ大丈夫]
アル兄がおれたちに声をかける。エド兄は即答で、おれは一文読み終えてから答える。
再び訪れた静寂。今度それを打ち破ったのはエド兄だった。
「...しんどいな」
「...うん」
ぽつ、と呟いた言葉はおれたちの気持ちがあらわされたもののような気がする。ぱふ、とベッドに寝転ぶ。資料がふわりと宙を舞った。
[ずっと追いかけてきて、届かなかったものがようやく手に届くと思ったのに、手に届いたそれにどん底まで落とされるなんて、誰も思わないよな]
三人で元に戻れる方法を、そう言って見つけた賢者の石の情報。ずっと追いかけてきたのにレト教の村ではパチモンをつかまされるし、今度は追いついて、捕まえた真実に絶望して。
[神様は禁忌を犯した人間をとことん嫌うんだね]
ふは、と吐き出した息は嘲笑にも似たような音を立てて虚空へ消える。
「オレ達、一生このままかな」
エド兄の言葉にがばっと上体を起こす。体に乗っかっていた資料がバサバサッと床に落ちる。音に驚いたのかアル兄がこちらを見た。
[...兄さんたちは、絶対元に戻すから]
唇をかんで、それだけ言う。そのまま立ち上がって部屋を出た。ドアを閉める直前アル兄の声が聞こえたが振り返らずバタン、と閉め切った。
廊下の椅子に腰かけて大きくため息をつく。部屋から誰も出てくる気配がないことに安心して背もたれにだらりともたれかかった。
(こんなこと言って、まるで止めてほしいみたいじゃないか)
あふれてくるのは自己嫌悪の言葉。この決意は二人に知られてはいけない。知ったらきっと二人は優しいから止めてくれるだろう。それはおれの望むところでもあり、二人の望むところでもある。
(でも。それじゃだめなんだ)
賢者の石に代わる何かが見つからなかったら二人はあのままだ。せめて、アル兄だけでも戻すことができたなら、と思う。ともに食事をして、惰眠をむさぼって、感覚を共有することができたなら。
(今のアル兄にはそんな当たり前のようなことすらできないんだ)
ぐっとこぶしを握る。頭で錬成陣を考える。さすがに手合わせ錬成をするのは怖いのでしっかりと錬成陣を書かなきゃいけない。幼いころの記憶と、そこから蓄えてきた記憶を合わせ何度も。脳内で錬成陣を描く。
「___くん、ハルフェス君!!!」
至近距離で大きな声。思わず体をびくりとさせる。思考から抜け出して前を見るとロスさんがおれの顔を覗き込んでいた。
「大丈夫?ぼーっとしてたみたいだけど」
[あ、はい。大丈夫です。...二人なら、部屋にいますよ]
「...それが...」
ロスさんは気まずそうに眼をそらした。