___#
女の顔が付いた、馬鹿みたいに大きい鳥
西洋の人面鳥みたいな形をしている
目が綺羅綺羅した、黒い鶴のような鳥
口を開いて誰かの周りを飛び回っている
左右両方の目玉が飛び出ている、禿頭の老人
いや、これは人なのか?
まるで百鬼夜行だ
そのほか沢山の異形が頭の中でぐるぐる再生されていく
間違いねぇ
この記憶はあの人のものだ。
しかしこれはどういう次第だろう
オレは人の感情が極端に高ぶった時、その原因となった物事を大まかに見ることが出来る
オレがチィトと呼ぶ力___オカルトだ。
彼奴曰くそう云った技能を持つ者はオレの他にもいるらしいが、こりゃなんとも奇妙で怖ろしい力だ。
知らず知らずに自分の記憶を他者に見られているなんぞ、耐えられない話だろう
友人と、京極殿___は、特に安定している
誰だろうと、オレには何らかしら人の記憶が見えてしまう。これが抑えられた試しはない
だが例外は存在する
感情の振り幅が小さい人間
悪感情や好感情が無い___人に対する偏見や興味の少ない人間であれば、オレは記憶を読み取りづらくなる
だから、先程彼の記憶が流れて来たのは
あの百鬼夜行を余程嫌っているか……はたまた常人以上に好いているからなのか
面倒な事になって来たなぁ
七月⚡︎▪︎◾︎日
えぇと、どこまで書いたかな
問題が新たな問題を読んだ話だ。まだ続く
なんと、京極殿はオレのオカルトじみた力を知っていた
いや、知っていたというよりあたりをつけていたと言うべきか
彼は、オレがオカルトを使って裏でやってる商売のことを知っていたのだ
その仕事を始めた当初は小遣い稼ぎ程度にしか考えていなかったのだが、思いの外需要があり、今でも細々と続けている
その程度の認知度の低い仕事のこと、彼はよく知っていると思う
やっぱカタギの人じゃ無いだろ……
彼はあまり隠す気……というかオレに必要以上に情報を開示しているように思う
いやまぁ、あんな事になったのだしそれを考えるのは今更な気もするが
そろそろ本題だ
彼に異能を使わないのか、と聞いた後
オレのオカルトについて話し、彼について見たものを説明した
妙に嬉しそうにしていたような気がするんだけど……記憶を見られて、良いことなどあるんだろうか
で、やっぱりオレが見たものは彼の異能だったらしい
_____能力名『憑き物落とし』
上空から憑き物___オレが見た異形のことだ____を落として、相手に影響を与える能力
通常、憑き物___あの妖怪達は彼以外に認識できないらしい
オレがあれを見ることが出来たのは、彼の記憶を読み取っていたからだ
彼の話を聞いてこの力は異能では無いのか、と思ったが……わからねぇな
似たような異能を持つ者を、彼は知っているらしいが。
問題は解決された。オレが横浜に行く必要は無くなったのだ。
方法は単純明快だ
京極殿に、その異能力を使って貰った
馬鹿げた、かなりの大博打だった
彼の憑き物の効果は様々らしい。まともな憑き物が出るか彼自身にも分からない以上、オレは相応のリスクを負う事になる
だが、オレが期待したのは "毒をもって毒を制す"というあれだ
彼の憑き物と、オレに憑く基地外人形を合わせたら……一体、どんな事が起きるのか
阿保のする事だとは理解している
しかしながら、こんなに厄介で、これだけ面白い状況は人生でそうそう無い
素晴らしい機会を与えられたんだ。有効に活用しなければならない
異能を無効化してハイ終わり、なんて結末……詰まらないだろ!?
……想像以上に浮かれているらしい
視界に、黒い影が入り込んでいる
三メェトル位の大きさだ。かなりデカイいので視界が狭まるのだが、其奴の身体はぼんやり透けているため、もともと視力が良くないオレにとってあまり支障はない
これが、オレに与えられた憑き物だ
……彼は本当に凄い。こんなに素晴らしいものを、制限無く他者に与えられるなんて
しかもこれ、返さなくて良いんだと
それで本当にいいのか悩むところだ
大型ペットを無償で貰っちまったようなもんだろう、これ
オレだったら、勿体無くて出し渋ってしまうだろうに……聖人かな?
と、結論を書かなければ
彼の異能は解決策たり得たが、あの人形を御すこと___又は消滅させることは出来なかった。
だが、妖怪に妖怪ぶつけたら何が起こるか、この疑問への答えは得られた
彼の、この大きく真っ黒な憑き物と、基地外な人形は絶賛戦争中らしい
……二体で、オレの所有権をめぐってしのぎを削り合ってる
そのお陰で、オレは人形からの干渉を一時的に受けなくなった。
だから頭痛や目眩は消えたし、多分花弁がばら撒かれることもないだろう
しかし、彼が言うにはどちらかが相手を倒した場合、それ相応のものが帰ってくる、とか
彼には、オレの頭上や周りを飛び回っている二体が見えているらしい
あーあと、彼が人形の容姿を知っていたのは、始めから見えていたからだ。もっとも、彼に見えるのは人形ではなく一般的な大きさの女の子らしいが
……聞けば、大きさ以外は普通じゃなかった
それにしても、彼は随分と怪異や妖怪が好きなんだなぁ