「・・・・」
「・・・・」
き、気まずい。
声を掛けてきたのは薄いパーカーを羽織っていた、伊藤つばさ。
ドラえもんによく登場するアイドルだ。
ひょんなことがあり私は、友人としての関係を築いている。
のだが、だが。
先ほどからこの空気は何なのだろうか。
「のび郎さん、そちらの方は誰でしょうか?」
「あ、ああ。この子は野比かぐや、私の家族だ」
そう答えると何かしらつぶやいている伊藤。
何を考えているんだろうか?
「初めまして野比かぐやと言います」
かぐやも挨拶している。
2人が目を合わせて笑っているし、やはり女子同士のほうが相性がいいのだろうか?
「ところで伊藤はなんでこんなところに?」
素直に気になったので聞いてみた。」
「ポスターの撮影です。普通は、春とかにするんですけどここのビーチができることを知ったママがここが開くまで待とうって」
「なるほど」
確かにここは新しいところだから話題作りとしては最適だろう。
それに伊藤も、アイドルとしてはかなり有名だ。
ここのビーチを伊藤つばさが来たビーチと流行らせる案なのかもしれない。
「……」
そんなことを考えているとかぐやに手を引っ張られる。
「そう言えば、かぐやさんを見るのは私初めてなんですけどご親戚ですか?」
伊藤からもっともな疑問を投げられる。
「まあそんな所、父方の親戚でね」
適度な嘘を混ぜながらかぐやの後ろから来ている複数人の人間に目をやる。
……このくそ暑いのに長袖?日焼け防止だろうか?
体型から見るに体育会系。
……顔を隠すようなサングラスとマスク。
まさか、いやこんな場所で?
「かぐや、私が合図したらあそこのライフセーバーがいる場所まで伊藤を連れていけ」
かぐやの耳元で小声で言うと伊藤の顔がひきつった。
「ほんとに仲がいいんですね」
どんどん近づく男たち。
どんどん機嫌が悪くなる伊藤。
近づいてきた男が伊藤の手を無造作に掴んだ。
その瞬間である。パンという音が4回連続でビーチに響き男たちは蹲り、私は男たちの後ろに立っていた。
「今だ!」
かぐやは、伊藤の手を掴みライフセーバーのいる所に走り出す。
4人のガタイのいい男。
まともにやっては勝てない。
なので金的だけ狙わせてもらった。
金的はまともに打撃を加えるとシャレにならない、掠れるように玉を蹴るととんでもなく痛い。
ほんとに痛い。
声が出なくなるほど痛い。
蹴りあげても良かったが、伊藤の関係者だとまずいのでかする程度に留めた。
……これで伊藤の関係者だったらごめんなさい
★
結果的には伊藤の関係者ではなかった。
身代金を要求しようとする犯罪者たちだった。
2ヶ月計画をねり今回の撮影の休憩中に映画の撮影に見せかけて誘拐する手筈だったようで
近くに車もあり警察が調べたところ出るわ出るわ証拠の山。
誘拐未遂犯を捕まえに来た警察官に私は危険なことをしたとお叱りを受けたが、勇敢だとジュースを貰った。
おう、感謝状ぐらいよこせや。
ついでに伊藤には休憩中でもボディーガードが着くようになった。
自由に動けるのは家だけらしい。
正直私のせいでもあるのですまんと思う。
「で、のび太これなに?」
「恐竜の卵だよ兄さん!」
「かぐやちゃん、海はどーだった?」
「色々あって楽しめませんでした」
……結局海を楽しめなかったかぐやが不機嫌になったり弟が石の塊に頬ずりしてたり。
私の平穏は遠い