「…………やっぱり兄さんはたらし」
「はっきり分かったね」
のび太とドラえもんがこちらを見ながらやれやれと言うように顔を振る。
私は手の本に目を落として聞こえなかった振りをして何も持ってない方の手を、何故か私の膝に頭を乗せているかぐやちゃんの額に置いている。
「……………………ねぇ、ドラえもん」
「なんだいのび太くん?」
「兄さんとかぐやちゃん、接点あった?」
「知らないの?かぐやちゃんがのび郎君にどんどんアタックしてたよ」
「…………何時から?」
「2日目から」
2人は私達のことを見ながらコソコソと話しておりもはやこの光景も日常と化した。
笑顔のまんま昼寝しているかぐやちゃん。
「……嬉しそうだねかぐやちゃん」
「実際のび郎君に1番懐いてるからね」
「……僕の兄さんなのに」
「君までそっち行くとシャレにならないからね?!?!」
次のページをめくると主人公が葛藤の末世界を救うために最愛の恋人を自分の手で眠らせるシーンだった。
……やっぱり、最後は散り際かね?
そんなに早く散るようにはしないが。
無茶はしないといけない。
まずはこの子から、助けよう。
★
遂に満月の日が来てしまった。
かぐやちゃんから説明を受け私たちは月からの迎えを打つ準備をしていた。
パパ、ママ。タケシ、スネ夫、静香、のび太、ドラえもん。
みんなかぐやちゃんを行かせないために今日この日のために準備してきた。
私もその1人だろう。
切り札もある程度作ってきた。
必ず勝てる切り札ではあるが。その場合どういう犠牲が出るかはわからない。出来るなら使わないようになればいいけど。
「お兄さん」
みんなの輪から外れ、ドラえもんに貸してもらったいくつかの道具それに自分で集めてきた物をの確認をしていた自分にかぐやちゃんが声をかけてきた。
その顔は不安そうだ。
「どうした、かぐやちゃん?」
「……怪我はしないでください」
「私より、みんなを心配してあげなさい」
私の手を握り祈るように呟くかぐやちゃん。
私は安心させるように頭を撫でた。
「あれ、確実に好きだよね?」
「僕の見間違いかな?お姫様とそれを守る侍にしか見えないんだけど」
「のび郎だからなぁ」
「のび郎もてるからねぇ」
聞こえてるからな貴様ら!
シャララーン、シャララーン。
急に周りの音が消え鈴の音が流れてきた。
「兵隊!構え!」
ドラえもんが指揮を出しおもちゃの兵隊、ころばし屋が降りてきた光に対して銃を向ける。
「撃てェ!!」
空気砲、ショックガン、攻撃系に当たる道具全てが光の塊に襲いかかる。
だが、それは無意味にも光の目の前で全てが散った。
光はどんどん近づいて来る。
距離が近づくにつれ光は収まり、金色の雲に乗った牛車が現れた。周りにはおよそその時代の服を着飾った人達。
私のつけているイヤリングがカランと震える。
「ま、まだだ!第2隊、撃てぇ!」
ドラえもんの声が響くがやはりそれも無駄に終わってしまった。
一人の男が雲から降りてきた瞬間ひみつ道具たちが一斉に倒れ機能しなくなったのだ。
私が持っている1振りの電光丸も光を失っている。
「かぐやさま、お迎えに参りました」
男がかぐやちゃんに近づくが私はその前に出る。
「……っ!」
男は、私が身につけているものを見て表情を崩した。
仏の御石の鉢を削って作った石下駄。
蓬莱の玉の枝を溶かして作った宝剣。
火鼠の皮衣を紡いで作った着物。
龍の首の玉を繋げて作った首飾り。
燕の子安貝を通して作った耳飾り。
竹取物語で、かぐや姫が求婚者5人に言った宝が今全てが目の前にあるのだから。
「そのお迎えはキャンセルだよ、月の人。まあ、そもそもこちらから頼んでもいないんだ。キャンセル料も払わなくていいだろう?」
宝剣を鞘から抜き男に構える。
さあ、第2Rだ。