私が構えるのは宝石や金、銀でできた1振りの宝剣。
相手は月の人。その力は未知数だ。
だが負けるわけにはいかないだろう。
負けたら後悔してしまうかもしれないのだから。
だから、切り札のひとつを使わせてもらう。
まずは、場を整えよう。
「貴様ら!気合を入れ直せ!」
私の怒鳴り声に男たち全員がその場に立ち上がった。
「貴様らは、女子1人すら守れない程度の男か!そうならばもう用はない消え失せろ!!!」
ドラえもん、のび太、パパ、スネ夫、タケシ。全員の顔に気合が入る。
「違うのならばそれを見せろ!相手は目の前ぞ!」
歌舞伎のように、魅せるように味方を鼓舞する。
「タケシ!ドラえもん!前に!のび太、スネ夫は後方を!」
すぐに言葉通りに動く5人。
月の人たちも予想外だったのだろう、次の動きが取れないでいる。
「お前たち!早く……ぬ!」
男が懐から何かを取り出そうとしたので直ぐにそれを邪魔する。
「原始人がっ!」
「子のことを考えない結果だけの頭空っぽには言われたくないね」
柄を両手で握り男と間合いを取り合う。
さて、タイマンだね。
道具で戦えないなら宝で戦えばいい。
念の為と出木杉に頼んで竹取物語のことを一緒に調べていたのだ。
そうすると出るわ出るわ5つの宝とかぐや姫に関する情報。
中には偽物も多数あったがそこは出来杉、本物に近いものだけをピックアップしてくれた。
あとはいくつかの情報から共通点や似ている場所を自分の中でピースを当てていき、どこでもドアでその場所に向かい宝をゲット。
加工なんかも全て自分で行った。
守るために。
戦うために。
もう後悔をしないために。
私は全力で動く。
だから
「かぐやちゃん、あとは君だけだ」
君はどうしたい?
男を牽制しながらかぐやちゃんに問う。
「……わ、私は」
何かに取り憑かれたように狼狽え黙ってしまうかぐやちゃん。
それを見て男がにやりと口角を上げる。
「ふっ、ロボットが自分の意思など言えるわけがありません。プログラムされていることしか出来ないものなんですから。さあ、帰りますよかぐや姫」
男はこちらに歩みを進める。
「かぐや、君はどうしたい!ここには君を守るために立ち上がった人たちがいる、君を悲しませたくないと思った人間がいる。君は言われたとおりにしか動けないロボットなんかじゃない!」
私は否定する。
「人を心配して、分からないことを学んで、傷つかないで欲しいと願って。君はロボットなんかじゃない!だから言え!君の我儘を!!」
男の言っていたことを否定する。
「……たくない」
「……私……帰りたくない!!!」
「なっ!」
かぐやちゃんが言うのが信じられなかったのだろう男がスキを見せた。
刀身を担ぐように構え、男の懐に飛び込む。
「打刀・担構一刀心」
両手に力を込め柄頭を男の水月に叩き込んだ。
その際にガラスを割るような感触がした。
男は乗ってきた雲の手前まで吹っ飛んだ。
「ぐっぁ!」
「お姫様はお迎えが嫌なようだ、お帰り願おう。それでもまだ拒むと言うなら私は躊躇しない」
外ではのび太達が戦っていたのだろう。
服がところどころ破け土埃で汚れている。
「ぐ、ありえない!かぐやロボットが迎えを拒否し、さらにバリアーさえも素手で割るなど!」
雲に乗って居たもう一人の男が叫ぶ。
「かぐやはロボットじゃない。私の家族で、人間だ。それにお前らは道具に頼りすぎなんだよ」
だが、こちらも無傷では無い。
宝剣は歪み、自身の手のひらの皮も剥げ足元に小さな血溜まりができている。
アドレナリンが出ているから異物感と感じるがあと数十分もすれば痛みに戻るだろう。
やはりまだまだ前世には遠い。
「だが、迎えまでがあのセットの内容です!」
「説明書に書かれていない」
「未来の道具は過去においてはいけないんです」
「持ってきたのはお前らだ」
「それは間違えてしまって」
「何度目だ?何度間違えた?その際も謝罪の一言もしてないだろ」
戦闘ではかなわないと思ったのだろう、言葉で勝とうとする男。
相手からの言葉にすぐ返す私。
そこにもう月の人などという者はいない。
自分から墓穴を掘りに行く未来デパートの社員だった。
「ならば、開発費をお払いください」
その言葉、待っていた!
「いくらだ?」
「破損した機材、そしてロボットの開発費含め3億です」
ニヤリと笑う男。
「ドラえもん」
「う、うん。あれだね」
ドラえもんがポケットに手を入れ3つのトランクケースを取り出す。
「この時代の紙幣1万円札、3万枚計3億。まあ未来に持って帰れば多少値は上がるだろう、確かに支払ったぞ」
私はドラえもんから3つを受け取り相手に投げ渡す。
もうこれで、終わりと思うとほっとする。
上手く話が纏まってよかった。
「な、何故です!機体単価30万のただのロボットにどうしてこれほどの額を払えるのです!」
自分で開発費と破損した機材って言ったじゃん。
「阿呆か、かぐやが自由を手にするのにたった3億だ、そんな端金くれてやるさ」
私もう寝たい、今日のために何日も徹夜したし。
この装備のために技術だって覚えたんだ、ほんと疲れた。
もうさ、話まとまったんだからいいじゃん。
あんたが言って私が払った。
ほら終わったじゃん帰れよ。
「あんなセリフ一度でいいから言ってみたいよね」
「のび太じゃ無理無理」
「だなぁ」
君らはもう緊張感ないね、まあ戦闘終わったしね。
私も寝たいよ。
「話は終わったんだ、二度と来るな」
皆が終わりの空気になり家の中に戻っていく。
「金は貴様らの言う通り支払った。約束は守れ」
男はケースを抱いてこちらをを信じられないというような目で見てくる。
「約束を違え、またかぐやを奪いに来ると言うなら」
「その時の私は、今日ほど優しくはない。それだけは覚えておくんだな」
私も家の中に入る。
あー一件落着だー。
★
「のび郎くーん」
「兄さーん」
『そっとしておいて下さい・話しかけないでください、ほっといてください』
本来ならドラえもんの寝床である押入れ、その扉にはそんな張り紙が貼られており、2人が呼んでいる人物は朝から押し入れにひきこもり一切顔を見せていない。
『なんなんですかねぇ、ホント学習ないんですかね私は?もう40手前なのに何してんすかねぇ?攻撃した時に技名とか痛いんですけど、くっそ痛いんですけどぉ!!!』
中からは兄さんの声がブツブツと聞こえてくる。
かぐやちゃんは、なにか吹っ切れたようにママのお手伝いを積極的にしており、ママも娘のようにかぐやちゃんを可愛がっている。
かぐやちゃんの養育費などは全て兄さんが用意しておりパパもママもびっくりしていた。
まさか、自分の子供が国家予算並みのお金を持っているだなんて思っていなかったんだろう。ぶっちゃけ遊んで暮らせる。
兄さんに遊べば?と言ったら、人間働ける内が華なんだと、目を虚ろにして言っていた。
正直兄さんは遊びを覚えるべきだと思う。
あの後、あれでは収まらずタイムパトロールが来て事情聴取、さらに未来デパートのお偉いさんも来た。
特例としてかぐやちゃんはこの時代で家で過ごすようだ。
お偉いさんがロボットなんぞに、と言った瞬間、兄さんの後ろにタコと鬼が混ざったような化け物が口を開いているのが見えたが、一瞬だったから見間違いだろう。
兄さんは怒らせてはいけない。
「のび郎さん、のび太くん、ドラえもんさんごはんですよ」
かぐやちゃんが部屋に入ってきた。
「は、はーい、行こうのび太くん」
「うん」
かぐやちゃんの部屋をどうするという話も出たが、それも兄さんのおかげで解決した。
お隣さんの家を買い、うちと繋げたのだ。
2人は仲がいいのでドラえもんに、未来の兄さんのことを聞くと。
「……ギネスに載ってるよ」
との事です。一体なんのことかわからなかった。
まあけど、今日も兄さんはいつもどおりだ。
『ころせぇ!もう殺せよォ!!!!』
これにて、かぐやロボットは終わりです。
疲れた、少しの期間誤字を直すのにはいるので更新はできません。
感想くれたら嬉しさで更新します