転生したのは前世もち   作:刀花子爵

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誰があれで終わりと言ったァ!



かぐや姫其の五

……両手骨折、フエール銀行の預金口座ふたつ。

今回の私自身の損害だ。

 

まあ、これだけで1人の人生を救えたことを喜ぶべきか。

「はい、のび郎さん」

アーンと、お粥の乗ったスプーンをこっちに向けるかぐや。

その顔は幸せですと顔に書いているように見える。

パパもママもその様子を微笑ましく見ており私の焦りなどひとつも知らないんだろうなぁー、と目が遠くなる。

 

かぐやは、本来なら未来デパートに連れて帰ってリセットするところを結果的には私が買取り。また、現代に住ませるように手配してしまった。

 

いや、それには後悔はないよ。けど、ここに住むとは思ってなかったし。ホントだよ転生者ウソツカナイ。

 

両手を骨折してしまった為に少しの間生活で両手を使えないという事実をかかえてしまい、仕方ないからドラえもんになんか道具出してもらうかーと思っていたらかぐやが世話を買って出たのだ。

 

断ると泣きそうになるし、下手に断れない。

諦め、かぐやの世話になることにしたのだが。

 

「のび郎さん、アーン」

「のび郎さん、痒いところはありませんか?」

「のび郎さん、トイレですか?ついて行きます」

「のび郎さん」「のび郎さん」

 

………………………………別に悪い気はしないよ、こんなに可愛い子が自分の世話をしてくれるんだからね。

けどね、年上の矜持とか、実年齢とか。

そんなのを考えるとね、うん。

 

ロリコンになるんだよね私。

…………嫌だなぁ。

いやほらあれだよ、私自身無下には出来ないのはわかってるんだけど、やっぱり私自身は年相応の人と……誰に対して言ってんだ私は。

 

「項垂れてるねぇ」

「のび郎くん真面目だけど変に大人びてるからね。こういう時どうしたらいいかわかんないのさ」

「かぐやちゃんの前は誰だっけ?」

「神成さんのお孫さん」

「その前は?」

「つばさちゃん」

「その前は?」

「丸井マリ」

「その前は?」

「隣町の子だね」

「ドラえもんよく覚えてるねぇ」

「あはは、君が兄さんばかりモテてるって僕に言ってきたんじゃないか」

「そうだっけぇ?でもみんな兄さん好きなんでしょ?」

「まあ、包容力あって紳士で気遣いが出来て優しくて、なおかつ可愛い方よりの顔だからね。みんなギャップにやられてるんだよ」

「へー」

ぶっ殺すぞ貴様ら!

心の中で叫びながらドラえもんとのび太の言うことに対して無視を決め込む。

 

違うんだ、それぞれ困っていたから声をかけて手伝っただけで他は何もしてないんだ。

 

 

 

 

……………………はい、嘘です。高校生に声掛けられたり、追っかけに付きまとわれたり、今の世界でやって行けるのかと悩んでたり、ピアノの事で悩んでいたのでそれぞれ適切に対応しました。

きちんと相談に乗りました。

 

一緒に悩み解決したりしました。

…………それで好かれるわけないじゃんと思ってました。だって、たまたま会って少し話した程度だよ?

言わば公園で愚痴ってたらたまたま答えくれた人間だよ?

 

そんな怪しい人に絡むと思う?

思わないじゃん。

 

「そう言えば最近この辺ですごい綺麗な黒猫見るんだけど?ドラえもんの新しい彼女?」

「……いや」

「またまたぁ、みぃちゃんだけじゃなく2人目なんてドラえもんも隅に置けないなぁ」

「……くんのだよ」

「え?なんて?」

「クロちゃんだろ?!のび郎くんのだよ!」

「え?!?!」

「綺麗で可愛くて器量も良くて狩り上手で、猫なのにのび郎くんに助けられてからあの人しか考えられないって言ってるの?!?!」

「……兄さん猫まで落としたの?」

 

マジでぶっ殺すぞお前ら。

「はぁ」

もういいや、考えるのやめよ。

 

近くにあった自分のカバンの中にいつものものを入れる。

「私は外に出てくる。クロ付いて来るのはいいがそれは置いていきなさい」

「にゃん」

ドラえもん達がぎょっとして声の方をむくと雀を口にくわえたクロネコが窓からこちらを見ていた。

「くくくくく、クロさん」

 

もうどうにでもなれ

 

 

あー、ビバ休日ビバ読書。

 

裏山の少し奥に木が生い茂っているのにも関わらず日が当たるところがある。

「にゃん」

そこにハンモックを吊り。

カバンも近くの木の枝に吊るしてある。

 

両耳には好きな音楽が流れているイヤホン

手には童謡が詳しく書かれてある本。

骨折?気合と根性でどうにかなる。

お腹には丸くなって寝ている黒猫のクロ。

「ゴロゴロゴロ」

 

……進んでいく物語、それにつれて私自身の能力も色々と増えている。

かぐやちゃんを自由にできたのは大きい。

……やっぱり、あの最後は嫌だもんね。

まだまだ救わないといけない人がいる。

映画の時期だっていつ来るかわからない。

 

そのために準備はしすぎるくらいじゃなくちゃなぁ。

 

あのドライバーもいつか来る時が来てしまうんだろうなぁ。

フエール銀行のお金また増やしとかないとなぁ。

今回の事でタイムパトロールに名前は覚えられただろうしめんどいなぁ。

……もっと好きに動きたいなぁ、出来たらこうやってダラダラしたい。

自堕落に生きたい!

ほかの二次創作の最低系オリ主みたいにしたい!

 

 

「はぁ。なぁーんで私は、こんなふうな性格なんだろねクロ」

「にゃん!(優しくて私はいいと思う!)」

やっぱり動物は癒しだわぁ。

お腹の上で包まりながらゴロゴロと鳴くクロに癒されつつ本に目を戻す。

 

「何を読んでいるんですか?」

「うわっ?!」

「ホントの童謡?」

いつの間にかかぐやちゃんの顔が目の前にあった。

「か、かぐやなんでここに?」

ここは私とクロぐらいしか知らないはずなのに!

焦りを知っててか、かぐやちゃんがさらに顔を近づけてくる。

「知ってますか、のび郎さん?童謡って本来割と怖いものらしいですよ」

「にゃん!」

かぐやちゃんにびっくりしてクロは逃げた。

……あのやろ

 

最近とことんついてないみたいだ。

「童話も本来は割と怖いみたいです。シンデレラなんか特にそう」

かぐやの指が私の顔に添えられる。

「私には継母なんていません。意地悪なお姉さんたちも、それでも王子様はガラスの靴を履いていなくても私を助けてくれました」

……これ、お前かぐや姫だろって突っ込んだらダメかな?

ダメだよな。

 

「リセットされていた記憶も戻してもらいました。あなたは自由にしていいと言ってくれたけど、私はあなたがいいんです」

涙を流しながらもう片方の手で私の手を握ってきた。

 

 

 

はぁ。

「それ、源さんに習ったろ?」

「あ、バレちゃいました?」

てへと可愛らしく舌を出すかぐや。

ほんとにどうしよかな。

「ですが、気持ちは本当ですよ。むしろのび郎さんも男を見せてください」

はぁ。

深いため息が出る。

ほんと今日は厄日だよ。

「私はまだ子供だ、これぐらいで許してくれ」

「あ」

ほんの少しだけかぐやの額に唇を当てる。

外れてしまったイヤホンと本をカバンに入れる。

「ほら、もう暗くなってきた。帰るぞ」

「……」

ったく。

顔真っ赤にして。

かぐやの右手を自分の右手で強引に掴む。

「ほら、帰るぞかぐや」

「……はい!」

もー、顔真っ赤にしてとニコニコしちゃってまあ。

ほんとこっちの事もこじらせちゃってる私って。

はぁ。

 

「聞いてよみいちゃん。最近ご主人が女を大量に落としまくってるの!」

「あー、確かドラえもんさんの所の、のび郎さんだっけ?カッコイイもんねー。あれは年頃の子なら落ちるわよー」

「わかってるわよ!けど、羨ましいじゃない!みんな人間よ!私だけなのよ猫なの!私だって人間だったらのび郎さんとデートだって!きー!」

「でも、1番距離が近いのはクロちゃんなんでしょ?」

「そうよ、今日もご主人と2人きりでお昼寝してたのよ!なのになのにあの女!きー!!」

 

のび郎が聞いたら即時にストレスで血を吐くであろう会話をしていた猫たちだった。

 

 

 




いつも誤字報告感謝しております(`・ω・´)ゝ

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