前回の投稿から、宮城→茨城→徳島→愛媛→高知(いまここ)
と順調に各県を転々としております。
誤字や名前の件でご迷惑をおかけしておりますが、これからも読んでいただけると幸いです。
「家庭教師……ですか?」
「そう。……めんどくさい」
下着騒動のあと、私の部屋は三玖お姉ちゃんの部屋に決まりました。それ以来何故か三玖お姉ちゃんは常に機嫌が良く、毎日のように私を抱きしめてくれていたのですが、今日は調子が悪そうだったので何かあったか聞いてみるとそんな事が。
「家庭教師……ごめんなさい、お姉ちゃんちなみに最近のテスト何点くら「それより、歯、磨いたっけ?」………」
「小テストの結果でもい「お風呂行こうかな…」………………」
怪しい。怪しすぎます。
あのお父様が家庭教師を頼むくらいです、相当ひどいに違いありません。
あ、ちなみに私は体調面で学校には行けておりませんが、学力は優秀な方だと自負してます。理由はもちろん、迷惑をかけれないからと、早く自立するためです。自分の年にあった勉学は、参考書などをもとに独学で学んでいます。
今だにこっちを見ようとしない三玖お姉ちゃんに気づかれないように小さくため息をつく。
「はぁ……。家庭教師、優しい人だといいですね」
「家庭教師なんていらない」
「またそんな…」
完全に興味のない三玖お姉ちゃんは、家庭教師の話なんて嫌だとばかりに強引に終わらし、寝ようと私の手を引っ張りいっしょに布団に入る。
どんな人なんだろう。悪い人だったら私が追いかえさなくちゃ………などと考えていると、三玖お姉ちゃんがいつも通りぎゅっと抱きしめてくれる。他のみんなには抱き合って寝てることは内緒にしないといけないらしく、この暖かくて心地いい気持ちを共有できない事に寂しさを感じ、少し残念に思いながらも、今日も感じる優しさに包まれながら意識をゆっくりと手放しました。
(家庭教師なんていらない。私たちには、六花さえいれば………………)
あれから数日経ち、今日は日曜日。朝起きて顔を洗い、二乃お姉ちゃんの美味しい朝ごはんを食べ、五月お姉ちゃんと一緒にTVを見ている時ピンポーンとチャイムが鳴った。ここは私がと、立とうとすると一花お姉ちゃんに手で制される。
「あ、私が出るよ」
「ありがとう、一花お姉ちゃん」
「あはは、これくらいなんでもないよ」
ニコニコしながら一花お姉ちゃんがインターホンの方へパタパタと小走りで行く。
(何かいいことでもあったのですかね?機嫌が良さそう)
(ぁぁぁぁかわいい!落ち着きなさい、私の心臓!)
顔を真っ赤にし、こんなことを一花が考えていることなんて六花はこれっぽっちも知ることなどなかったのである。
「さてさて、誰かな…………げっ」
『げっとはなんだ。客に対して』
「ご、ごめんごめん。でも今手が離せないから……えっと………さよなら!」
『お、おい待』
すごい叫び声は途中でブツっと途切れる。
なんとか誤魔化せたと思ったが、一花はあることに気づいた。
場は不思議な沈黙に包まれていたのである。クッキーを作る二乃の手も、小説を読んでいた三玖のページをめくる手も、日なたぼっこをしていた四葉のあくびも、抱いて頭を撫でていた五月の手も止まる。
一花はインターホンを切った後、微動だにできずにいた。その理由は、ずっと自分の後頭部に突き刺さる視線のせいだ。
ずっと見てる。ずぅっと見られてる。六花に。
六花はテレビを見るのをやめて、インターホンの前に立つ一花をずっと見ていた。相手の顔を確認した瞬間に慌てて切ったその態度に一抹の不信感を持ったのだ。
(一花お姉ちゃんを疑うのは嫌ですが……なにやら怪しい……)
「一花お姉ちゃん、今の方は…?」
「え!?えっと、テレビの通信料的なやつだったから、追い返しちゃった!」
「そう…ですか」
どこか慌てながら説明する一花に疑問を持ちながらも頷く。
(男の人の声でした……しかも仲が良さそう……)
絶対何かあると確信した六花は、少しトイレに行く旨を皆に伝え、怪しまれないようにトイレの方へ歩く。トイレを超えたら玄関だ。直接会って誰か確認してやろうという魂胆である。
流石の妹大好き超溺愛シスコンシスターズの五姉妹とはいえ、なんとか誤魔化せたことにホッとしていた。誤魔化し方としては微妙ではあったが、5人共なんとか誤魔化せたことにホッとしていたので、六花を怪しむ人は1人としていなかった。
つまりタイミングがよかったのである。
(目つきが怖いです……年は同じくらいでしょうか……)
覗き穴から外を覗いた時、六花の予想通り彼はまだ帰っておらず外で思案顔をして立ち尽くしていた。姉との関係性が気になった六花は、ドアにチェーンをはめ鍵を開ける。
「あの…どちら「開けろ!一花貴様許さんぞ!俺の生活のため、授業を受けてもらうぞ!」キャッ!!」
ゆっくりと開けていたはずのドアが向こうから強く引かれ、びっくりして尻餅をついてしまう。鬼気迫る顔、前でガチャガチャと扉を粗く扱う音、全てに自分の過去のトラウマが反応する。
『あんたなんか!産まれなければ…』
「一花!……じゃない?いや待て……髪が白いなんて……鬘か?」
「ハァッハァッ……嫌、いやぁ!」
息がしづらい、視線が保てない。また叩かれる。また生きてることを後悔してしまう。とにかく何かから逃げたくて、必死に後ずさりしようとするが、体が思うように動かずうまく後ずさりできない。
「お、おい!大丈夫か!?」
「い、嫌!ゆる、し、て!」
無様に泣きじゃくりながら、少ない酸素で許しをこう。もちろん意味がわからない彼は困惑するだけだが、異常性はわかる。助けようにもチェーンが掛かっているため、中に入ることはできず外で慌てふためいてた。
(許して、お母さん……)
酸素が少なく、意識を失いそうになった瞬間。ガチャっという音と共に口元を柔らかい感覚に覆われる感触を感じた。ゆっくりと酸素を送り込まれ、段々と呼吸が楽になってくる。ゆっくりと目を開けると、少し泣きそうな四葉お姉ちゃんが私を抱きかかえてくれていた。
「よかった…りっちゃん、ちゃんと意識はありますか?」
いつもの天真爛漫さはなりを潜め、真剣な目つきで見つめてくるのでコクコクと頷く。
「勝手なことしちゃダメですよっていつも言ってるのに……これはお仕置き、だね♫」
「ひっ!?」
ぎゅっと抱きしめてくれた後、耳元で囁き軽く舐められる。こんな事でもすぐに頭がぽわーんとするのだから、私という存在は物凄くチョロい存在になったのかもしれない。
などと思っていると、四葉お姉ちゃんにお姫様抱っこをされてリビングまで運ばれる。頭がぼーっとしている私はこれからお仕置きを受けると分かっていながら体が抵抗できないので、為すすべもなく体を預ける。
チラッ扉の方を見ると、扉に背を預けるようにして妖艶な笑みをこちらに向ける二乃お姉ちゃんが立っていた。
このあと、ガッツリとトラウマレベルでお仕置きされたのはまた別の話である。
「六花は眠ったのよね」
「そうですね。途中寝苦しそうにはしてますが、もしもの時のために三玖が付いてくれています」
あの後、落ち着いたとはいえ体力のない六花は、ゆっくりと意識を失うように眠りについた。そのあと、四葉が起こさないように優しく運び、三玖が付きっきりで看病しているのが今の状況だ。
「しかし、こんなことになるなんてね………。まあ、全部あいつが悪いわけだけど」
「こ、今回ばかりはお助けすることができません…!」
「いいのよ、あんなやつ。六花に害しか与えないことが今回のことでよくわかったわ。一花が上手く追い払ってくれるといいけど」
四葉は弁解してあげたいけど、タイミングが悪いとはいえ六花が苦しんだことの方が辛いので、何もできずムムムと唸っていた。二乃はそんな四葉を放って置くように机に肘をつき、ドアの方へ目をむける。
「なんにせよ、六花が傷ついたのは確かです。これで過去のトラウマが刺激されて、きたばかりの六花に戻らなければいいのですが…」
四葉と二乃は同意するように頷く。五月はそれを見たあと、先ほどの二乃の様にドアの方を見る。
六花に対する愛情の深さ故なのか、六花の絡むことになるとポンコツになる故なのか、結論はどこかずれた方向へと進もうとしていた。
短いですが、仕事の合間を縫っての投稿なので頑張ります…!