姉に愛されすぎて動けません   作:暁美ほむら

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お盆休みなのに、インフルエンザで布団で療養して
治ったら仕事に行って


休みなどないのだ


六花の完全敗北

「らいはちゃんは私の髪とか、怖くないの?」

 

「怖くないです!綺麗だと思います!」

 

「…!ありがとう!本当に可愛いわぁ」

 

ウィッグを外し地毛を見せていた六花であったが、全く怖がる様子のないらいはに嬉しくなり、可愛い可愛いと抱きしめる。そんな様子を風太郎は見ながら、やれやれと呆れつつ、先程の六花との会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悩み……ですか?」

 

「あぁ……実は六花の姉のことなんだが。一向に俺の授業を聞こうとしない」

 

「それは………申し訳ありません!」

 

うわぁ…という顔を浮かべたあと、すぐに謝罪する六花を止める風太郎。別に六花に謝って欲しくてこんな話題を振ったわけではないのだ。

流れを変えようと、こほんと風太郎は一つ咳をする。

 

「俺はお前たち六姉妹の家庭教師をするにあたって、お前の父親から一つの条件を提示された」

 

「条件……ですか?」

 

「あぁ。中間テストの結果が赤点か否かによて俺の首がかかってる」

 

「っ。そんな無茶な!?父様がそんな……いえ、父様だからこそ……なるほど」

 

風太郎の言葉に驚き立ち上がった六花であったが、父の性格を考えるとそんな条件を出しかねないと思い直し、ゆっくりと座り直す。

そこで、風太郎がなにを言わんとしているかを察した六花は軽く息をつく。

 

「なるほど……つまり姉達の為にも、自分の為にもきちんと勉強させたい、と言うことですね?」

 

「あぁ、そうだ。察しが良くて本当に助かる。………ったく、五姉妹に六花の爪の垢を煎じて飲ませたほうがいいんじゃないのか?」

 

「いえいえ、そんなことは………。それよりどうするかですね………」

 

「てっとりばやく、弱みを握れば……」

 

「風太郎さん……」

 

軽く引き気味の六花に冗談だと言いながら、真面目に考え込む。

弱みを握ろうとするのはだめだ。というより無意味であると言える。だって五姉妹共通の弱みは『頭の悪さ』なのだから。

何かで釣るか?………釣るものも、釣るためのものを用意する金もないではないか。

 

全くどうすればいいか分からず、2人で悩んでいると横かららいはが身を乗り出した。

 

「六花お姉ちゃんが説得してみてもだめなんですか?」

 

「え?うーん……試したことないから何ともいえないけど、無理なんじゃな「いや!それだ!!」えぇ!?な、何がですか!?」

 

「それだよ!あいつらに勉強させるための飴!それが六花だ!」

 

らいはの言葉に光明が差したと言わんばかりに立ち上がった風太郎は、ビシッと六花を指差して説明を始めた。

 

つまり要約すれば、六花をだしに五姉妹を呼びだし、六花という褒美で釣るということである。

 

「わ、私を飴にですか……そう上手くいくでしょうか……」

 

「少なくとも、一花はお前の事が好きなのはこの間分かったから、1人は釣れるはずだ!」

 

喜ぶ風太郎に呆れながらも、その作戦しか思い浮かばず、最終的には乗ることにした六花は、今後のことも考え連絡先の交換を風太郎と済ました。

 

ある程度の方針も定まり、和気藹々とした雰囲気が流れていたファミレスであったが、カランカランと来店の音が鳴り響く。

六花はふっと視線をファミレスの入口へと向けると、驚いた顔をしたあとすぐに顔を伏せた。

 

「外でご飯って、なんか久々だね」

「私たち好きな食べ物バラバラだけど、ファミレスなら色々あるし便利よね」

「お腹すいた……」

「なに食べようかな〜♪」

「店内では静かにしてください!みんな!」

 

六花が顔を伏せた理由は至極簡単である。突然の姉達の襲来(来店)に動揺したからである。

 

(な、なんでお姉ちゃんたちがここに!?…………あ!?そういえば連絡!)

 

自分が姉に連絡を入れていないことに気づき、過去の自分に怒鳴ってやりたい気持ちになる。連絡もなしに突然家からいなくなると、今までの私の行動から家出の可能性を1番に考えるのは必然と言える。

自分が逆のパターンであったら、必死に外を這いずり回ってでも探すはずだ。

 

(ば、ばれた?ばれたからここにいるの?…………………いや、ただの腹ごしらえ?)

 

あの姉達のことだ。ずっと探してくれていたのだと思うと、自分の罪悪感に押しつぶされそうになる。その心を必死に抑え、姉たちがここにきた理由をウィッグを直しながら考える。

 

しかし、理由を考えれば考えるほどわからなくなっていき、だんだんと頭がパンク気味になっていく。

 

「…………い、….おい、おい!」

 

「わっ!?な、なんでしょうか?」

 

突然ウィッグをかぶり直し、うつむき難しい顔をする六花を不審に思い声をかける風太郎。五姉妹の存在を視認できないポジションに座っている風太郎には、一体何が六花に起こっているのか全くわかっていなかったのだ。

 

焦点のあっていない目で、一気にグラスのお茶を飲み干す六花。

 

「い、いえ。なんでもありませんよ!強いて言うなれば、喉が渇いたのでドリンクバーに行ってきますね」

 

「お、おう」

 

どこか焦った感じの六花は、このままここに座り続けるのはまずいと思い、顔を見られないようドリンクバーの方へ逃げることにしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……。びっくりしました……」

 

案の定なんとか五姉妹をかわし、ドリンクバーでホッと一息つく。そもそも、ここにいることが姉にバレていたのであろうか…そもそも、自分の存在は本当にバレているのであろうか?

いろいろなことを考えすぎた結果、ウンウンと唸る六花にこっそりと忍び寄る3人に気づかなかった。

 

「ドリンクバーって氷何個入れるのが正解なんでしょうか?」

 

「氷の数は個人の好みだから…どうなんだろ」

 

「はいはい!ちなみに私は3個派です!」

 

(や、やばい!?お姉ちゃんたちいつの間に?!)

 

姉達の存在に気づいた時は既に遅く、側から見れば何を飲むか悩む女の子の横に別の女の子3人が接近している構図だが、六花はこの3人をしっかりと自認していた。言わずもがな、三玖・四葉・五月である。

焦る中、頭をグルグル巡らせ、いかにバレずにやり過ごすかを考える、

 

(とりあえず、ここまで悩んでドリンクを入れないなんて余計怪しまれるから、急いで何か入れないと!)

 

ドリンクを入れてすばやく退散することに決めた六花は、適当にボタンを押した。が、すぐにしまったと思う。

まさかの押したジュースは、売り切れてしまっていたのだ。ショックを受け、次のジュースを探す六花を、すっと3人が囲むように立つ。

 

「それにしても、本当に六花はどこに行ってしまったのでしょうか……まさか、これ程私たち心配させておいて、当の本人は食事なんて」

「そんなことあるばす」

「ないでしょ」

 

3人からの絶えず繰り返される言葉責めに、怯む六花。自然とコップを握る手が震えてくる。

 

(やばい、やばいです!3人とも怒ってます!それもかなり!)

 

チラッと横目で見ただけだが、四葉の目に光がなく、またテンションも下がっていることからめちゃくちゃ怒っていると導き出した六花は、全身の穴から嫌な汗がでる感覚に襲われる。

極度の緊張でドリンクも何を押せばいいのか分からなくなってしまい、おどおどしている六花の手に、そっと手が添えられた。

 

「…大丈夫ですか?」

 

「ひゃっ!?ひゃい!……あ、あのぉ」

 

「なにか?」

 

「何でもありません!」

 

カタカタ震える私の手に手を添えてきたのは三玖お姉ちゃんだった。しかも背中側から抱きしめるようにコップを握る私の指の間に指を滑り込ませ、手の甲を撫でてくる。恥ずかしくなり、声をかけるとすごい目で睨まれる。

 

(絶対気づいてますよぉ……そもそも三玖お姉ちゃん、人見知りだから初対面の人にこんな事しないはずだし……)

 

バレてないなんて希望的観測を捨て、何とかして許してもらうことに頭をシフトする。何とかこの場を無事に乗り切ろうと考えるが、そうは問屋が卸さない。

 

「……………………無駄な抵抗はやめなさい」

 

「…………………私達、怒ってるんだからね」

 

「っ!?やっ…!」

 

両方の耳元から囁かれ、突然の不思議な感覚に体の力がつい抜けてしまいそうになる。それからはずっと耳元で囁かれ、足は子鹿のようにガクガクになってしまっていた。

 

「ゆ、許してください……お姉ちゃん…」

 

キャパを超える感覚にギブアップする六花に、悪い顔を浮かべながら顔を寄せる3人。

 

「なら、今度私達3人、それぞれと1週間寝てくれますね?」

「もちろん拒否権は」

「ないですよ!ししし!」

 

どうあがいても、これ以上悪い結末しか呼ばないと諦めた六花は、こくんと弱々しく頷くのであった。

そして、自分のコップにこそっとブツを紛れ込まれていることに気づくこともなかった。

 

 

(か、かわいい…………)

(んん〜!ぎゅーってしたいです!)

(本当に可愛いすぎです!そもそもこんな可愛い子がこんな遅い時間まで1人で歩いて…………!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(お、おトイレがしたいです…)

 

あの後なんとか急ぎ飲み物を入れ、三姉妹から離れるとに成功した六花は、ふらふらの状態で風太郎の席まで戻った。

初めはそんな様子の六花を気にかけた風太郎であったが、すぐに普通の態度に戻った六花に違和感を感じつつも普通に雑談を楽しんでいた。

 

(もう、限界ですぅ……)

 

我慢の限界がきてしまった六花は、食事中だが仕方ないと席を立つ。

 

「食事中で申し訳ないのですが、少し失礼します…」

 

「なんだ?トイレぶふぁっ!?」

 

「お兄ちゃん!デリカシー!!」

 

「あ、あはは…少し失礼しますね」

 

濁そうとした六花の意を汲まず発言しようとした風太郎は、らいはによってテーブルに沈められた。

そんなことも気にせずに、トイレに一直線で歩いていく。幸い中に入ると、3個中真ん中の一つだけ空いていた。

 

(ふぅ……しかしバレていたなんて………おまけにあんな約束までしてしまって……うぅ…)

 

個室に入り、我慢からの解放感とともに少し前までバレてないと思っていた自分が急激に恥ずかしくなり、顔を抑え疼くまる。

 

それからしばらく1人反省会をしていた六花の両隣の個室から流水音がし、同時に2人外に出た気配がした。2人は知り合いのようで、手を洗う音と共に他愛のない会話が聞こえてくる。

 

「いや〜でもほんと、六花どこ行ったんだろーね。お姉さんくたびれちゃった…」

 

「まぁ、一花にしては真剣に探してたわね。やっぱり六花だからかしら?」

 

「まあね」

 

(い、一花お姉ちゃんと二乃お姉ちゃん……。なんてタイミング…いや、あまりにも………………あっ、あの時まさか何かされた!?)

 

残りの姉妹に扉越しとはいえ、出会ってしまったことに不信感を抱く。あまりにも出来すぎたタイミングに、なぜこうなったか理由をたどっていくと初めの3人に会った時何かされたのではないかと考えついた。

しかし、そこは流石というべきか、残念ながらというべきか。六花の脳内は姉大好き細胞が大量に存在するため、強く疑うことはなかった。

 

「六花覚えてなさいよ……お姉ちゃんを心配させた代償は大きいんだから」

 

「全くだよ。ま、私たちも鬼じゃないし。一緒に1日お出かけ、なんてしてくれるんだったら許しちゃうかも」

 

「あ、それいいわね!私もそれなら許しちゃうかも!」

 

(わ、わざと聞こえるように大声で叫んでますね!?)

 

さっきの3人のように、なんとか許してもらおうと思う一心で2人にすぐにメールを送る。

 

『連絡遅れてごめんなさい!今実は信用できる方と晩御飯を頂いてます!この罰は、必ず受けますのでどうか許してください!』

 

「だって」

 

「こう言われちゃぁ、何もいえないよね。許してあげよう!」

 

「ま、そうね。信用できる方ってのがあいつってのがっげふんげふん!……許すわ」

 

「あ、あはは」

 

(二乃お姉ちゃん、ばればれですぅ)

 

六花が個室に入っていることをまるで知らないかのように話を進めていた2人であったが、二乃の自爆によってなんとも締まらない感じで終了した。

 

 

 

 

後日、風太郎曰くあの日の六花は

[最後の方は戦い疲れた老兵のような顔をしていた]

そうだ。

 

 

 

 

 




風邪も治って出張も落ち着いたので、これからもいつものペースで頑張りたいと思います。
次回からは、五姉妹のパラメーターなんて載せれたら面白いかなと思っております
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