俺、御奈巳晴明と東雲アズサ、そして頼もしい仲間たちとキュゥべえの野望を阻止すべく、ゲートジュエルで異世界転移している最中だ。
どうやら出口らしきゲートが見えてきた。一瞬眩い光に包まれて気がつくと
辺り一面おどろどろしい雰囲気でやや薄暗い草原に俺達は着いた。
「ここが異世界なのか?」
エドが辺りを警戒しつつ、周りを見渡す。
「何だか昔冒険した魔界世界みたいなイヤな感じがするなぁ⋅⋅⋅⋅」
「えっ、魔界世界ってそれってかなりヤバくないか?」
俺は少し焦りつつ、ドラえもんに聞き返す。
「みんな!遮蔽物がないから円陣をくんで警戒するんだ!」
アズサも初めての異世界でいきなり嫌な感じの場所に出たので気を張りつめている様子だ。
「ウフフ⋅⋅⋅⋅♥いいわぁ⋅⋅⋅このピリピリした感じ⋅⋅⋅⋅⋅血が滾ってきちゃうわぁ⋅⋅⋅⋅」
ロゥリィさんは戦の神に仕える武闘派神官なだけに目を輝かせている。
「くっ⋅⋅⋅⋅⋅」 「ぎゃう⋅⋅⋅⋅⋅」 「きっ、緊張しますね⋅⋅⋅⋅」
エリカ、ピーちゃん、まどかちゃん達は緊張した面持ちで周りを警戒している。俺も段々と焦りが高まって背中に汗が垂れるのを感じている。くそっ、ここはどんな世界で、何処なんだ此処は⋅⋅⋅⋅
「⋅⋅⋅⋅皆、一回深く呼吸をするがいい。儂は感知能力に秀でておる故、いの一番に敵を察知できる。今の所周りに敵はおらん。少し力みを捨て脱力して備えるのだ」
やっぱり扉間さんは頼りになる!大人で戦闘経験が豊富で冷静沈着で本当に凄い!!
⋅⋅⋅⋅⋅どれくらい時間がたっだろうか?恐らく本の2、3分程度のはずだろうが精神的には一時間位に感じられ、緊張しまくりだった⋅⋅⋅⋅
「みっ、皆落ち着いて!これでも飲んでリラックスしよう!」
そう言ってドラえもんは自分のポケットをまさぐり俺にある物を渡してきた。
オウ!サンキュー!ドラえもん。
ゴクッ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅!?ぶほぉー!!??
俺は盛大に吹き出した⋅⋅⋅⋅⋅
「ぐへっ、ごほっ!何なんだよっ、これは!?
「あ~⋅⋅⋅⋅⋅⋅ゴメン、ごめん!間違えてネコ型ロボット専用エナジードリンク『マタタビX』を渡しちゃったよっ、てへへ♥」
「てへへ♥⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅じゃぁねえ~!!!ロボット専用のモンを渡すなー!!
まずはお前が落ち着け!!そんで
ポケットの中整理しとけやー!!!!」
・・・・・・・・・・
「ぶほっ」 「くくっ」 「くすっ」 「ぷっ」 「ぎゃっふ!」 「ふふっ」 「うふっ」⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「あっははははは!!!!???」
思わずドラえもんに大声でツッコミを入れた瞬間、堰を切ったように全員が盛大に大笑いし出した!!
な、何か恥ずかしい⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「ふっ、くくく⋅⋅⋅⋅⋅イヤ~晴明くん、ドラくん!君たち二人は本当に⋅⋅⋅⋅⋅フフフ、ははは!!!」
アズサの奴は腹を抱えて心の底から笑っている。幾らなんでも笑いすぎだろ⋅⋅⋅⋅⋅
「何よ!さっきまで警戒を高めて緊張してたのがバカみたいじゃないの!」
相変わらずのエリカの物言いだが珍しくエリカも肩をプルプル奮わせて笑いを堪えているみたいだ。
「ぶふぉーわ!!」
⋅⋅⋅⋅⋅って、結局堪え切れず吹きやがった。
「いひひひっ、お前ら二人良いコンビじゃねえか!『マンザイ』で金がとれるぞ!」
人を指さしながらエドが涙目になりながら笑っていやがる⋅⋅⋅⋅⋅!
誰が漫才コンビだぁー!?ふざけんな!
「もう、晴明さんとドラちゃんったら⋅⋅⋅⋅⋅!」
「ぎゃうぎゃうぎゃう~♪」
「ドラちゃんって本当に可愛いわ~♥ハルアキィ~貴方もなかなか面白いわねぇ♪褒めてあげるわぁ♫」
褒められても全然嬉しくねえですよっ!
「はっ晴明よっ、ぶっ!ドラと、ぐふっ!なかなか⋅⋅⋅⋅⋅⋅ぶふー!!」
扉間さんも笑うか何か伝えるか、どっちかにして下さいよっ!
「イヤ~失敗!失敗!ゴメンねえ晴明くん。こっちのスポーツドリンクと間違えて渡しちゃったよ」
「そんなイージーなミスすんな!わざとじゃないだろうな?このポンコツロボ!」
「むっ!それは聴きずてならないぞ、ちょっと間違えただけじゃないか!このヘタレ男!」
「何だとぉ~!!この青タヌキが!」
「何だとぉ~!!この影薄の無能が!」
俺とドラえもんは互いの手で押し合いしながら、いがみ合い罵りあった。
「ぬぎぎぎぃー!!×2」
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅二人共、ジャレ合うのはそこまでにしておけ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅来るぞっ!」
イヤっ、扉間さん別にジャレ合ってる訳では⋅⋅⋅⋅⋅そう言いかけた瞬間、イヤな感覚が俺の全身を駆け巡った!!
スウッ⋅⋅⋅⋅⋅
目の前の空間から見覚えのある奴等がその姿を現した。
「ギィー」 「グルル」 「ウィー」
奇っ怪なうねり声を上げて無数の怪物達が出てきやがった!!
こっ、こいつらは⋅⋅⋅⋅⋅
「晴明くん!コイツらはドラクエ1、2に出てくるモンスターだ!」
「ああ、アズサ思い出したぜ⋅⋅⋅⋅」
目の前のモンスターは昔アズサの家でやらせて貰った、俺らが生まれる前に発売され大ヒットしたドラクエ1、2のモンスター共だ!
つまりここはドラクエの世界って訳だな。
定番のスライム系から虫タイプ、魔術師タイプやらアンデッドタイプと多種多様に出てきやがった⋅⋅⋅⋅⋅
「見慣れない魔物ねぇ⋅⋅⋅⋅」
「キメラとはまた違った存在みたいだな⋅⋅⋅⋅⋅!」
「奴等の力は未知数⋅⋅⋅⋅⋅数も多い、油断するな!」
「ふっ、フン!負けるつもりは無いわ!」
「ギャウ⋅⋅⋅⋅⋅!?」 「凄い圧力だよ⋅⋅⋅⋅」
皆一様に身構え気を張りつめる。
「ドラえもん、悪いが流石に丸腰じゃヤバい!何か道具を貸してくれ」
俺がそう言いながら隣のドラえもんに振り向くと⋅⋅⋅⋅見たことのない驚愕した表情をしていた!?
どうしたんだよ?ドラえもん!
「あっ、あっ、あれは⋅⋅⋅⋅⋅ね、ね、ね⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅ネズミィ~!!!???」
トンでもない顔をして飛び跳ねた!
ドラえもんの目線の先にはネズミ系のモンスターがこちらを血走った目で威嚇していた。
「うんぎゃあーー!!!怖い怖い怖い嫌だぁ~!!ぎゃひぃー!!!」
ドラえもんはトンでもない顔をしながら飛んだり跳ねたりして、その場でぐるぐると高速で丸く走り回り⋅⋅⋅⋅そして⋅⋅⋅目を白くし泡を出して⋅⋅⋅⋅気絶した⋅⋅⋅⋅⋅⋅
えっ、えっ、え~!?
「どっ、ドラえも~ん!!?Х6」
俺とアズサ、エド、まどかちゃん、ロゥリィさん、エリカが一斉に叫んだ。
待てまてマテーちょっと待てぃ~!!
おっ、おまっ、ドラえもん!お前はネズミが苦手だったのかー?
22世紀からやって来たネコ型ロボットだろ?ネコ型なのに、ロボットなのにネズミが苦手って、どういう事だぁ~!?
慌てふためく俺を一定の距離を保ちつつ、様子を伺っていたドラクエモンスター達はドラえもんの狼狽ぶりを見てそれを切っ掛けにして一斉に襲いかかってきた!!
パン!エドが手合わせ錬成をして地面に含まれている砂鉄から槍を錬成して俺に渡してくれた!
「ハルアキ!取り敢えずこれを使え!」
「悪りぃ、助かるぜ!エド!」
エドから受け取った槍は柄の部分は普通なのだが、柄の先からはドラゴンの頭骨を思わせる意匠がついていて口の部分から槍の刀身が伸びている。角や牙が派手なデザインになっていて槍の石突部分にもなんか奇妙な角がついている。
⋅⋅⋅⋅⋅作って貰っといてナンだがあまりに刺々しいぞっ!もう少しシンプルなのが⋅⋅⋅いや、今はそんな贅沢言ってる場合じゃない!
モンスター達は凄まじい勢いで迫ってきた!俺は気絶しているドラえもんの前に立ち、槍を構える。早く目を覚ませ!!
そんな俺の後ろから不意に凄まじい圧力を感じて振り返る。ソコには静かに、しかし身体中から鋭い殺気を放出しているロゥリィさんが居た⋅⋅⋅⋅⋅ゴクッ⋅⋅⋅なんて殺気なんだ⋅⋅⋅⋅⋅
「⋅⋅⋅私のかわいい愛しのドラちゃんを怯えさせて気を失わせたのはあなた達かしらぁ~?まとめて八つ裂きにしてあげるわぁ⋅⋅⋅⋅」
唇が黒紫色になり完全なるバトルモードとなったロゥリィさんは跳躍して一気にモンスター達の懐に入り⋅⋅⋅その瞬間、目の前のモンスター達は断末魔の声すら上げられずに無数の肉片になった⋅⋅⋅⋅⋅
はっきり言ってグロい光景が作り出されて俺はある事に気づく。
リンネ様が付与してくれた『精神耐性』それのおかげでこんなスプラッタな状況でも比較的平静を保って居られる。俺はグロいモノは得意という訳ではないが、目の前の
そしてモンスターとは言え命を奪う罪悪感と嫌悪感でまともな精神を保てなかっただろう⋅⋅⋅⋅⋅
今さらながらにリンネ様の配慮に感謝しつつ、ロゥリィさんの猛攻に俺は目を離せなかった。
超重量の斧槍ハルバートを軽々と振り回し歓喜の声を上げながら尚も勢いは衰えず縦横無尽にモンスターを蹂躙していく⋅⋅⋅⋅⋅!!
こっ、この人が味方で良かった⋅⋅⋅⋅まるで台風や竜巻が通ったかの如くロゥリィさんの周辺はモンスター達の哀れな屍が量産されていった。
だが、モンスター達も狂気に支配されてるのか、怯まず数にモノを言わせて俺の方に突進してきた。くっ、負けるか!
昔アズサの家で見せてもらったアクション映画の記憶を頼りに槍を構えた俺の後ろからまどかちゃんが駆け出してきた!
「まどかちゃん!?」
「晴明さん!私の後ろに!離れないで下さい!」
駆け出し、俺の前に立ったまどかちゃんは花が飾ってある木製の弓矢を構え、一斉に無数のピンク色の矢を射ち放った!!
ズシャー!!!
まるで流星のように光輝く矢は目の前の直線上のモンスター達を一瞬で殲滅した⋅⋅⋅⋅!!すっ、スゲぇ⋅⋅⋅⋅⋅⋅
呆気に囚われた俺は直ぐ様、気を取り戻して集中する。他の皆は!?
「オラァー!!」
俺の左斜め隣のエドは気合いを込めた手合わせ錬成で地面から得意の土から錬成したトゲで無数のモンスターを軽々と串刺しにしていった。やっぱエドの錬金術スゲェー!!
俺の後ろに居る扉間さんは得意の水遁忍術を展開していた。
「水遁・水断波!!」
超圧縮した水圧⋅⋅⋅所謂ウォーターカッターで魔物達は首や胴体が真っ二つになりこっちでも大量の屍が出来上がった⋅⋅⋅!扉間さんかっけぇー!!
俺の右斜め隣りのアズサはスタンド
「アビス・ノクターン(深淵なる夜想曲)」の能力をいかんなく発揮している。
「グラビティ・フィールド」
スタンドが両手を広げると大気の圧迫感が周りを襲った。翼のあるモンスター達はなすすべもなく地面に叩きつけられ身動きが取れなくなった。
ソコを間髪入れずにエリカが攻撃を仕掛けた。
「全面集中!一斉掃射!」
自らのスタンド「シュバルツバルド・パンツァー(黒き森の戦車隊)」を全面に展開させ、一斉掃射して次々と魔物達をしとめた。
見事なコンビプレイで厄介な空の魔物もあっさりと片付けたアズサはエリカに微笑みかける。エリカは少し照れ臭いのか少し目線を外すも満更でもない様子だ。
皆の活躍に思わず見とれてしまう。
「はぁ~っ、皆強過ぎるだろ⋅⋅⋅⋅⋅突っ立てるだけだな俺⋅⋅⋅⋅⋅」
俺はまたも自分の無力感に悩みつつも、この頼もしい仲間達に感心した。
約1名を退いて⋅⋅⋅⋅
未だに気を失っている俺のマイスタンドにして相棒の様子を見に行く。
「ドラえもん、お前なあ~」
っとため息をついて気が緩んだ瞬間⋅⋅⋅⋅!大量の魔物の骸に密かに潜んでいたキングコブラが俺に襲いかかってきた!
「シャーッ!!」
咄嗟に槍を構えるが間に合わないっ!!やられる!?
そう思った瞬間、俺の頭上からどっかの龍の玉の戦士みたく体にオーラを纏ったピーちゃんが突進してキングコブラの頭を木っ端微塵にした!!
「ギャウワー!!」
他にも潜んでいた比較的小さい魔物達も襲ってきたが、ピーちゃんの突進の前にあっさりと物云わぬ物体となり沈黙した。ピーちゃん、そんなぬいぐるみの様な状態なのに強い⋅⋅⋅⋅⋅!!
空中で静止したピーちゃんは俺の様子を心配してくれているみたいで「ギャウぎゃう?」っとしきりに喚いている。
「あっ、ああ、大丈夫だ。ピーちゃんお前のおかげで無傷だよ。ありがとな」
ピーちゃんの頭を撫でてお礼を言うとピーちゃんは安心して喜んでいるのか俺の周辺を飛び回った。
「ハルアキィ~貴方気をつけなくちゃダメよぉ?」
一切の息切れもせず、返り血の一滴も浴びずにまるで散歩から帰ってきたかの如く戦闘⋅⋅⋅イヤ、殲滅を終えたロゥリィさんはやや呆れた顔で俺を見つめた。本当⋅⋅⋅サーセン⋅⋅⋅
「晴明さん!大丈夫ですか!?」
「晴明!あんたねぇ⋅⋅⋅気ィ抜くんじゃないわよ。ここは戦場よ!!」
「晴明よ⋅⋅⋅⋅残心を心掛けよ⋅⋅⋅そうでなければ生き残れぬぞ」
「たくっ、ハルアキお前油断しすぎだぜ?」
皆、俺に駆け寄ってきて次々と声をかけてくれた。
⋅⋅⋅皆の心配と叱咤に正直へこむ。ドラえもんの事をとやかく言えない。
そんな俺の肩に腕を巻きつけて密着したアズサは、
「まあまあ、みんな晴明くんの心配をして言ってくれるのはわかったからその辺にして、取り敢えずドラくんを起こそうじゃないか」
あっ、アズサ⋅⋅⋅
「晴明くん、皆君を心配して言ってくれているんだ」
「ああっ、そりゃ分かっているさ⋅⋅⋅只、自分の役立たずっぷりの方にへこんじまうんだ⋅⋅⋅」
「晴明くん私は君を信じている。君はどんな困難な事も諦めず努力できる人間だ⋅⋅⋅通っていた空手道場が閉鎖されても腐らずに一人で基礎鍛練に励み、高校受験の時も私が君に合わせランクを下げようとしたら、自分が頑張って成績を上げれば良いと懸命に努力して見事同じ高校に受かったじゃないか」
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「東雲アズサは御奈巳晴明という人間を尊敬し、信頼できる親友だと心から宣言できる!」
東雲アズサ⋅⋅⋅⋅お前はお袋か姉貴かよっ!まったく⋅⋅⋅⋅この中学からの腐れ縁にしてオタ友は俺を励まし、親友だと声高らかに言い、俺という人間を信じてくれている。ならその信頼に答えなくちゃな。へこんでいる場合じゃねえ!
「アズサ⋅⋅⋅⋅こんだけのすげぇメンツで何処まで食い下がれるか正直分からない⋅⋅⋅⋅けどよお前が自慢したくなる様な親友という言葉に恥じない様に頑張るさ⋅⋅⋅⋅ありがとな」
「晴明くん⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
じぃ~⋅⋅⋅⋅⋅⋅
気がつくと皆に注目の視線が集まっているのに気がついた。
「晴明さん、アズサさん⋅⋅⋅⋅!」
「やっぱりあんた達そういう関係?」
「見てるこっちが照れ臭くなるな⋅⋅⋅⋅」
「ふふっ⋅⋅⋅⋅若さよのぉ⋅⋅⋅⋅」
「ぎゃう、がう♪」
「熱々ねぇ~♥私もドラちゃんと⋅⋅⋅⋅⋅きゃあー!!」
なんかスッゴい恥ずかしくなってきたー!!照れ臭いから止めて⋅⋅⋅⋅⋅!!
「それよりドラえもんを起こそうぜ」
少しゴマかす様に俺はドラえもんの方にかけていった⋅⋅⋅⋅⋅勘弁してくれ。