いや……その……。
タキオンへの愛が抑えきれずに、気が付いたら書いていまして……。
ちゃ、ちゃんと他のも書くから!
多分……きっと……その内……。
トレセン学園――それは、ウマ娘が日常を過ごし、仲間と切磋琢磨し、己を磨く場所。
……である筈なのだが、とあるウマ娘がこのトレセン学園にやってきた理由はズバリ。
「自らの肉体改造研究の成就」
らしい。
そんな彼女は当然のように周りとは馴染めなかったが、それを本人は気にしていない様子。
どころか、どうやら自称『天才』である彼女にとって、凡人達と馴染める方がおかしい、という結論に至ったらしく。
今日も今日とて研究室に引きこもっては、怪しい薬や胡散臭い器具をいじくり、時には僕に対して薬を飲ませたり、器具の実験台にしたりしていた。
そんな『変人』、あるいは『狂人』……いや、『変ウマ娘』や『狂ウマ娘』である彼女の名前は――。
『アグネスタキオン』。
初めて彼女の走りを、これからトレーナーとして指導するにあたり、把握するために見た瞬間、僕は鳥肌が立った。
全身の毛が逆立って、同時にワクワクした。
こんな、こんな凄い走りをする彼女を、僕が指導できるのだ、と。
「さて、モルモ……すまない。トレーナー、こちらの薬を試して見てくれないか?」
しかし、現実は夢とは、理想とは違うものだ。
確かに彼女は優秀で、自称『天才』に恥じない調教結果をたたき出す。
調教の意図を理解し、僕の求める結果になるようにトレーニングする。
何が不満か、と思われるかも知れないが、それをたった一発で成し遂げてしまうことだ。
一体どこの世界に練習を一度きりしかしないウマ娘がいるだろうか。
――目の前以外に。
もちろん最初の頃は、彼女に練習の大切さを説こうとしたが、彼女からの、タキオンからの返答は、
「はぁ、……練習で出来ない事も何も、現に百パーセントの確率で今やって見せたではないか。一発目で出来たことを本番で出来ない保証など無いし、私ならやる。私が一度目で、君の言うタイムを達成できなければ言われたとおりに練習しよう。しかし、現状全てのトレーニングで君の理想値を出したはずだ。文句はあるまい?」
グゥの音も出なかった。
それからあらゆるトレーニングを行ってみたものの、それらを涼しい顔で初見クリアをして見せて。
時間は有限だ、とすぐに研究室に籠もってしまう。
そして、現在のように怪しいドリンクなどを試してくれとせがんでくるのだ。
トレーニングを言われたとおり、一度は行ったのだから、彼女の要望を一つは聞き入れろ、と。
まぁ怪しい薬ではあるのだが、これが困った事に美味しいし、飲み続けて最近は寝覚めがいいほどだ。
ここにも、残念ながらグゥの音も出なかった。
「今度の薬はどこを改良したの?」
一応確認しながら飲み始めるが、正直何も変な成分などは入れている気配はない。
これまでの薬の主な成分は、身体をメンテナンスするような、そんな効果の組み合わせだ。
「よくぞ聞いてくれた。今回の薬はな――」
得意気に語り始めるタキオンを尻目に、ここで密かに彼女の勝負服のデザインのイメージを決定した。
研究者のような白のコート。ついでに試験管でも挿せるようなホルダーも付けてやろう。
そう企んだ僕は、心の中で、いたずらな笑みを浮かべるのだった……。
*
「時にトレーナー……えぇと――」
「また名前忘れたのか……何度目だよ」
「すまない、無駄なものは忘れる主義だ。何分覚えることが多くてね、ほんの僅かな記憶容量すらも惜しいのだよ」
「はぁ……。
「そうそう、そんな名前だった。それで?」
「それでって、何が?」
いつも通りの一度のトレーニングを終え、運動後のストレッチに付き合っていると、唐突に何かを聞かれた。
「登録だよ。終えてきたのだろう?」
「あぁ……まぁ」
ウマ娘登録。それは、レースに出走する準備の最終段階。
それまでに、ゲートや走りなど、様々な試験をパスし、人前で走ることを学園に認められたウマ娘のみがレースに出走できる。
登録は、どのレースに出るか、というもので、それを行えば後には引けない。
直前に体調を崩そうが、出走しなければペナルティを負う。
特に最初のレースや、グレードレースと呼ばれる格式高いレース前は、体調不良になるウマ娘も少なくない。
だからこそ、あまり言いたくはないのだが……。
「なんだ歯切れが悪いな……。もしや、この天才が怖じ気づいて体調を崩すと?」
「可能性は――」
「ゼロだ。断言しよう。ゼ・ロ。余計な心配は不要だ。全て私を信じるといい」
真っ直ぐに僕の瞳を見つめて。
そう言い切った彼女を信頼し、ため息一つ。
気乗りしない理由は彼女の体調面の他にまだあるが……。
「それで? 当然私は一番人気なのだろうな?」
彼女の最初のレース。
『新ウマ娘戦 芝 二千メートル 右回り』
そこに名前の載ったウマ娘の名前を目で追っていき……。
「…………馬鹿な。――――
自分よりも格上と見られているウマ娘が居る。
その事実こそを僕は最も憂慮したのだ。
『天才』が、打ち砕かれないか、井の中の蛙だったのではないか、と。
――が、
「ふむふむ。なるほどなるほど」
一瞬動じたように見えた彼女は、次の瞬間には自分より上のウマ娘の情報を確認していく。
「スケルトンキングにリコーディングか。……面白い」
標的でも定めたかのような、冷たい視線を一瞬だけ覗かせた後。
タキオンは、僕へ向かってこう言った。
「トレーナー、このレース、私が勝つぞ?」
と。
読んでくださり感謝です。
いつまで待ってもウマ娘のアプリが来ないんで、ムシャクシャして書いた。
後悔はしていない。
そんなに長く書く予定はなく、私の夢はアグネスタキオンが三歳の年末まで走れたとしたら、を書けた時点で覚める予定ですので、どうかお付き合いください……。