なんで異世界勇者の俺よりも嫁と娘の方が強いの......?   作:北極狐2018

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第14話

胃の中身がひっくり返る様な不快感とともに転移の光が消えて石畳の上に叩き出される。

転移の際の不快感や転移後の体制などは基本術者の能力に依存する。

つまりメイリーはお世辞にも最強の魔術師とは言えないわけだ。

実際のところ転移魔術を使用できるだけで一流だし、天性の才能があるわけだ。

マコトは服に付いた埃を払って周りを見回すと豪華な建築物が並んでいた。

場所は裏路地、人通りの少ない一本道で曲がり道となっており大通りからではこちらの姿は見えない。

 

「で、誘拐犯兼合法ロリ、ここはどこだ?」

 

「王都」

 

ぼそっとドレスを適当に直した吸血鬼は呟いた。

 

「まじかよ...で、何が目的だ?俺の目的は確かにここだがお前の目的はなんだ?」

 

自分の目的を説明した覚えはないしこの吸血鬼が語る狙いはほかの候補者を潰す事だ。

マコトはすぐに察して溜息を吐いた。

王都に候補者とやらがいると考えるのが自然、今のクソザコナメクジな自分が出くわしたら詰みなわけだ。

 

「...歩きながら話しましょう、何か必要なものがあるなら言ってください」

 

「あぁ、まず最初にお前は服を直してくれ、パンツが丸見えだ、色気ないけど」

 

じーっとマコトの視線は真っ直ぐにメイリーのパンツへと行く。

やはりただの布切れだがそれでもやはり“女性が”着ているということで心拍が速まる。

 

裏路地にパチンッと乾いた音が響いた。

 

 

 

 

「さて、まずは拠点を手に入れましょう」

 

頬を物理的に赤く染められたマコトは適当に頷く。

ヒリヒリとする頬が地味に痛い、その上紅葉型の跡なので周りからの視線が痛い。

先ほどから通行人が自分たちの噂をしているということが簡単にわかる状態だった。

王都の町並みは昔と変わらず落ちついた様子で相変わらず慌ただしく人が行き交っていた。

馬車が中央を忙しなくかけその周囲の歩道を人が歩く、この制度は車オタの高山小路(タカヤマコウジ)が日本と同じ様な道路の仕組みを取り入れれないのかと考えた物だ。

結局見送ったのだが今はきちんと使われてるらしい。

 

「何ぼーっとしてるのよ?早く行くわよ」

 

「はいはい、俺のオススメは三番街の宿屋だな、あそこはミートパイが美味い」

 

「それどこ情報...というかいつ情報よ、百年前でしょ?」

 

「一回来てんだよ、おっちゃんに挨拶もしときたいしそこにしないか?」

 

マコトが百年経って目を覚ましたときに自分を助けてくれたのがおっちゃんだ。

嫁に逃げられ、娘を一人で育てるシングルファザー、腕っ節も良くクマを殴り殺す様な人だ、安全性もある。

若干疑う様にマコトを睨んで少し思案し、少女は頷いた。

 

「いいでしょう、それと戦闘に必要な物を買いに行きます」

 

「ん?吸血鬼ってなんかバフ道具てか魔道具の為の魔法適正あったか?」

 

「舐めないでよね、私は本気で戦えば竜種の一体や二体余裕で倒せるから」

 

「あー、竜種な、某クソ勇者サマが大袈裟な技で切り殺してた無害な生物か」

 

この世界では竜種はとても温厚で優しい生物である。

物語では姫をさらったり家畜を食い漁ったり、まぁ色々と悪行が綴られているがこの世界の竜種はただの好々爺だ。

自然を愛し、自然と共に生きる、生物が永らえる為の大自然を救う事を使命とした種族。

森を荒らすことには特に怒りを覚えない、森が壊されるのもまた自然のサイクルの一つであるからだ。

だがそれが過剰に、ほかの生物を脅かすレベルになると竜種は怒りを孕みその種族を攻撃する。

 

そのときにこう質問する。

 

『お前は生きる意味があると思うか?』

 

特に歳を追った龍が言う言葉だ。

ここで生きる意味を示そうが示すまいが言う言葉によって運命が決まる。

龍が自身への愛の無さ、周りへの不信、心根が優しいかどうかで龍はそれを生かすべきかどうかを考える。

一度自分も味わったことがあるのでマコトは感慨深そうに呟き、唇を噛んだ。

 

「あーあー、本当にシンジ睾丸潰されて馬車で引き摺られれば良いのに」

 

「いきなり何言ってるのよ、さぁ行くわよ!」

 

「わかってるよ...そうやってキーキーしてるから白髪なんだよ」

 

「言ったわよね?吸血鬼は銀髪を誇りにする種族なの、決して老化の影響じゃないの」

 

その一言にマコトは適当な返事をしようとして口を閉じる。

今こいつはなんと言ったと。

 

「お前吸血鬼はって言ったか!?」

 

逃がさないと言う風に両肩を掴みしっかりとマコトはメイリーの両目を見る。

今確かにこいつはこう言ったはずだ、吸血鬼は銀髪を誇りにする。

つまり吸血鬼は一般的に銀髪を持つはずだ、それじゃなきゃ誇りとか言うはずがない。

と言うことは吸血鬼はーー

 

「いっ言ったわよね、吸血鬼は銀髪を誇りにするって...」

 

「よーし!吸血鬼を救おうじゃないか?ん?ほら、早く歩け、吸血鬼の明るい未来のために!」

 

マコトは我に大義ありと言う風に高らかと叫ぶ。

銀髪、そうそれは現実ではありえない一種の神秘的な髪色、一般的にはブロンドの色素が薄いものを銀髪と呼ぶこともあるがそれは違う。

マコトが思う最も素晴らしい髪色の一つだ。

 

そんな事を知らないメイリーからすればグダグダと文句を並べていた人間が突如自分の種族を救う宣言をしたわけだ、無論困惑する。

 

「ちょっとどうしていきなりやる気出すの!?」

 

「君ー?銀髪羽根っ子が俺を待ってるんだ、助ける以外に選択肢ないだろ?」

 

「あなた妻帯者よね!?」

 

「うっさい、可愛いは正義だ!銀髪、それは宇宙の至宝、世界最高の遺産、救わなければいけない!」

 

「ちょっ、そんな大声出さないでよ!周りの人が、あの夫婦...って感じで見てるじゃない!勇者さんと言えどそんな扱いされるのは嫌よ!」

 

「うるせえ!救ってやるって言ってんだから程々に手助けして、それっぽい雰囲気を作って助けられろよ!?」

 

「さり気なく結構働けって言ってません!?」

 

「うるさいよ!勇者とか言ってるけどな、犠牲を出したら、勇者のくせに...勇者がいたのに...とか言うのおかしいだろ、その上自分たちはお前らが助けろとか言うしとっととくたばるか手助けしろよ屑どもって話。まぁ要するに働かざるもの食うべからず、生きるべからずって事だ。ってやばいそれじゃあ俺死ぬじゃん...」

 

「何一人で文句言って極論言って自滅してるのよ?」

 

「助かりたいって叫ぶだけのやつは嫌いだ、助かりたい、なら助かるぐらい強くなってそれの為に最善の事をしよう、それぐらい考えるやつだったらまぁ救われてしかるべき、文句を言うのだってわかる。だが何もしてない奴が神がいないんだー才能はないんだーつってんのがムカつく」

 

「それを本人たちに言えば良いでしょう?」

 

「このぼっち、オーウエイズアローンか、人間関係が小さなコミュニティにいる自称ぼっちではない奴が言えた話じゃない」

 

「そこまで言う必要ないわよね!?」

 

「あるね、完全なる八つ当たりだけどあるね、主に俺のストレス発散のために。俺は努力はしたさ、それはもうラノベ主人公並みに、そのお陰で生きていけたんだよ。ただ話し合いにおいて努力、それは通用しないんだよ、相手が同じ価値観を持って話してないし、自分が被害者と考える奴らには何を言っても無駄なんだよ。何が助けてやったのに、勇者がもっと努力しなかったからだぁ!?ざけんじゃねぇよ、文句言うなら電マのように震えてる腕を剣に伸ばすでもしてどうにかしろよ、ばっっっかじゃねぇの」

 

「これって全部鬱憤を晴らすための八つ当たりだったんですか...?」

 

おずおずと色々と察したメイリーが聞くと逆に不機嫌そうに眉間に皺を寄せるマコトは首を傾げる。

 

「?それ以外に何があるんだ?」

 

「はぁ...あなたと会話してると疲れます」

 

「お前が英雄ぶって何かをして文句を言ってくる奴ら、まぁ理解できずに現状に文句を言う奴らが居た時に心がポッキーしないために言ってやってんだよ」

 

「私はあなたと違って人望があるのでそんなことにはなりませんよ!」

 

「はいはいそうですねー、自称非ぼっちはすごいですねーはいはい」

 

これだから自称ぼっちは、とマコトは思う。

ぼっちと言うのは理解できない人種の中に叩き込まれてやっと作られるものである。

なのに理解させられると考えているとかアホくさい。

マコトは思い切り頭皮を掻いて不快感を吹き飛ばすように叫ぶ。

 

「腹一杯ミートパイ食うぞ!!」

 

「だからどうしてそうなるんですか!?」

 

「言霊って言ってな、文句とか悪口言ってると気分が落ちんだよ。なんかあいつらがヘラヘラしてる時に俺がストレス受けるのは間違ってるよってこの話おしまい、とっとと宿屋行って腹壊すレベルでミートパイ食ってやる!」

 

「あなたについていける気がしません」

 

「まっ俺がスペシャルだからついていけるわけないだろうな」

 

「わざっとらしくいってるのが腹たつ、それもこう言う反応が欲しいから言ってるんでしょ?でもミートパイ美味しそう」

 

「はっはっは」

 

フンっと割と容赦無くメイリーは笑うマコトの脛を蹴っ飛ばした。

 

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