なんで異世界勇者の俺よりも嫁と娘の方が強いの......?   作:北極狐2018

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第20話

超集中、超高速すら視認できるほどの集中力を得られる人体的な特異技能。

人として経験し再現できるものでありステータスには表示されない物の一つだ。

使用するのに魔力は必要ないし大して疲れない、その上なかなか使い勝手がいい。

マコトは無数に飛び交い光を纏う弓の数々を超集中で視認、身体強化すら使わず避けていた。

なぜか理不尽にも始められた死闘によって戦わざるを得なくなった結果見て避けるをただひたすら続けているだけの事。

ここまできて被弾はゼロ、掠ることすら一度も無い。

 

「それにしても勇者って弱くなったんだなぁ...」

 

ヒョイっと右腹部を狙って放たれたライトニングアーツを回避、その飛んだ先を狙って放たれた屈折矢があり得ない軌道を描き九十度針路を変更し頭部を穿つように飛んだのをヒョイっと屈んで回避。

昔森で襲ってきたエルフの弓部隊に比べて練度も低いを通り越して微妙だとマコトは思う。

 

「どうして当たらないのですか!?」

 

ムニエルが民間人であるマコトへと勝負を挑んだのは可能性を潰すためだ。

大賢者に命じられたシンジョウマコトの捜索、超直感という固有技能を所持する弓の勇者に命じられた天命。

なんせ同姓同名が多く名前から探していたらきりが無い。

だが大賢者はそれすら疑い死闘を命じたのだ。

 

大賢者であるシンジは結構過去のことを根に持っていたりする。

過去に実質誰一人倒す事ができなかった魔王を倒した最弱の勇者、元からいつのまにか追い抜かされていることには気づいていた、ただそれを認めたくなかった。

 

そして弓の勇者であるムニエルは防御結界の中でこちらのよす

 

そんな私情も混ざってのこの死闘は側から見れば異常な光景であり迷惑なものでもあった。

まず流れ弓が王城の壁を穿ち破壊するのと庭師が毎朝丹精込めて作り上げる芝生が事もあろう土ごと吹き飛ばす暴挙、それに数カ国から取り寄せられた美しい花々の庭園は流れ弓によってめちゃくちゃな災害跡と化していた。

 

「ムニエル、これ絶対無駄な争いだし止めようぜ?」

 

「認められません...私のプライドが、我が家の威光を汚すような真似は出来ない」

 

死闘で敵を倒せなかった挙句敵の温情で命を救われ降参を迫られたとなれば家に泥を塗ることとなる。

 

と、いうことも理解していたのだがマコトには致命的な欠点がある。

まず一つ目に身代わり石を無為に使いたく無いというのが一つ、魔力不足の状態で侵食されかねないというのが一つ。そして相手を仕留め切る事ができないというのも一つ。

どれだけの強さかわからない敵に対して行動不能になるのは愚の愚、そんな定石の元に一見煽ってるかのような光景となってしまっていた。

 

「早よ降参しろ!」

 

「しません!」

 

「ぶっ飛ばすぞてめぇ、俺のマジカルクリティカルミラクルパンチ(三十路)で吹き飛ばすぞ!!」

 

「それならそれで本望です!!」

 

「めんどくせぇとっとと降参しろよ!」

 

「それはそちらがするべきです!」

 

「じゃあ降参、俺の負けだ!」

 

審判である女騎士にマコトが言うが反応は芳しく無い。

 

「勝負を汚すような勝者が敗北を認めるという行為を私としては認められない」

 

「ふざけんな!?どうしろって言うんだよ!」

 

「僕を仕留めるか...貴方が敗北するか、そのどちらかです」

 

意を決したような顔でムニエルは叫ぶ、その姿は堂々としていて戦士としては百点なのかもしれないが心の底からマコトはこう叫びたい欲求にかられる。

 

めんどくっさ!?と。

 

そう考えながらも直線上に放たれる弓を回避しようと横に飛ぶが足が何かにぶつかり転げる。

直ぐに地を蹴り飛び上がると転げた位置に数十本の矢が突き刺さった。

ふと付近を見回すと辺り一面に放たれた矢が刺さり足の踏み場もないような状態となっていた。

弓の素材は銀魔鋼鉄、地に深く刺さった長矢が通常の筋力で折れるようなものではなかった。

 

刹那、通路の屋根上から矢を放っていたムニエルから莫大な魔力が放出される。

先程から魔法を纏わせた弓技を使い続けたムニエルの残存魔力全てを叩き込むような必殺技とも取れる技。

 

「これで終わりです...!!『ライトニングアーツ』」

 

超集中を使って尚高速で迫る速弓。

空を切り裂き数十メートルの距離を一瞬で消しとばし眼前へと矢が迫る。

 

残りの身代わり石の数は十二、今使ってしまえば切り札が減ってしまう。

だが切り札を切らなければ今死んでしまう。

死闘では相手を殺すこともルール上では神聖なる決闘として許可される。

思考内で全力で溜息を吐きマコトは魔力操作の第一段階を解放した。

本来放出するしかないはずの魔力を身体に停滞させる魔力操作、東方の秘術(らしい)『開花』が発動しマコトの身体能力が数十倍へと跳ね上がる。

 

一閃、魔力を纏った光線と変わらぬほどの矢がマコトの手中で止められる。

今残りある魔力で戦える時間は数十秒、それを過ぎれば身代わり石が三分ごとに減っていく。

 

本来ならば確定的ではない不確定要素を元に戦闘行為を行うのは愚行である。

だが先ほどからの攻撃でムニエルのレベルを予測、絶対不可避の弱点を狙ってマコトは駆け出す。

地を蹴りマコトの体が宙に弧を描き屋根上に構える弓の勇者の頭上へと飛んだ。

もう既に視認すらできない速度で移動するマコトに対し十割の直感で頭上へと矢を放ち自身の命の危険を感じ半強制的に、矢を放つ反動を利用し横に飛ぶ。

 

完璧な動作、もはや一種の絶技に至るほどの精密射撃がマコトの頭部を消しとばし宙にマコトの胴が飛んだ。

 

次の瞬間股間を押し潰されるかのような痛みが走りムニエルは完全に気を失った。

男の急所は勇者だろうと変わらないのであった。

その犯人であるマコトは小さく呟く。

 

「そりゃあ変態軌道したら直感もそっちを追うよな」

 

そう言ってムニエルの背後から股間に蹴りを入れたマコトは隠蔽を解除し溜息を吐いた。

 

職業:忍者の技能を職業:生徒の技能である模範でコピー、忍者の技能である影分身を使用し分身体に上空に飛翔させ自身も人蹴りで前方へと飛翔、ムニエルの直感と目が頭上へと飛んだ影を追う中マコトは通路の屋根を下から蹴り飛ばし破壊、遮蔽音によって音は消え、隠蔽を使用したマコトは前のめりに飛んだムニエルの男の急所を身体強化してギリギリ壊れない程度で蹴り上げたたのだ。

 

そしてちょうど限界である三十秒が過ぎてマコトは胡座をかいた。

魔力の過剰使用で頭がガンガンと痛み身体中が倦怠感に襲われるがなんとか身代わり石は一つも割れていない。

 

戦闘に要した時間は五分、最後あたりの戦闘を身損ねた女騎士は状況を把握するために屋根上に飛んだ。

 

「死闘のルールでは相手が気絶したら無条件降伏させる権利が勝者にある、俺の勝ちで終わりだ」

 

「まさか勇者を倒してしまうとは...」

 

「勇者って言ったって人間だし負けるときは負けるもんだぞ?」

 

「そういうものなのですか」

 

「そういうものなのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジョウマコトが見つかっただってぇ!?」

 

窓際で夜の闇に輝く町の光を見ている途中聞かされた驚きの知らせに黒髪の青年は両目を見開く。

 

「うるさい、見つかったらしいわ。弓の子が負けたみたいだし多分本人」

 

「信条...本当に生きていたのか」

 

「これでやっと次のステップに進めるわ、で、どうやって彼を説得する気?」

 

黒髪の女がそう質問するとどこかわかりきったような顔で男は笑う。

 

「説得も何も事情を説明したら協力するさ、あいつの事だし俺の言った事なら無言で聞くはずだ」

 

確信めいた気で彼はそう呟き不敵に笑う。

そんなクラスメイトのリーダーに向けて一つ女は忠告する。

 

「貴方が思うほど信条君の意思は弱くないわよ?」

 

「いいや、あいつなら従うさ」

 

「どこからその自信がくるんだか...」

 

本当に呆れたように女は呟き、深く深く溜息を吐いた。

過去にあれほどのことがあったのに未だ慢心してるクラスメイトに対してと、百年経った今でもまだ戦ってる馬鹿なクラスメイトに対するものだ。

 

「...信条君は幸せなのかしら?」

 

ふと湧いた疑問を呟くがその質問に答えるものなどいなかった。

全てやり遂げて結局最後に彼にハッピーエンドは待っていたのか。

それだけが心に疑問として残り彼女は静かに首を振った。

 

「考えるのは馬鹿らしいわね」

 

「おーい、行くぞ!」

 

間の抜けた声に女は呆れたように吐息を吐いた。

 

「はいはい、これだからナルシストさんはせっかちなんだから」

 

「いちいち馬鹿にすんだよ」

 

「魔王軍幹部の前でちびったくせに」

 

ガシャんっと突然の言葉に青年が階段を滑り落ちてイタタタ...とぶつけた頭を掻く。

 

数分ほど歩き遺跡城の中央に前以て準備されていた魔法陣の中心へと足を踏み入れる。

二人は進入が不可となっている古代遺跡から王都へと転移呪文を唱えた。

極光が一帯を満たし金切り音のようなものを立てて術式は阻害された。

 

「何が起きてるんだ!?」

 

「わからないわよ、あちら側から阻害されてる...としか思えないわね」

 

魔法陣に触れて苦々しげに女は呟く。

この異常事態に青年ーーシンジは訝しげに魔法陣を見て疑問を抱く。

 

「古代文明の遺産に手を出せるほどの者がいたか?」

 

「心当たりはないけれど現実として魔法陣が使えないわ、つまり阻害か拒絶されてる。王都に異常があったのかも」

 

「もしかしたら例の件の影響か?それだったら面倒だな」

 

心当たりがあるのか男は面倒そうに呟いた。

彼が行ったことを理解してる女はその可能性を考える。

すぐに計画を変更し脳内でスケジュールを組むと魔法陣の移動先変更が最優先事項として浮かんだ。

 

「そうかもしれないわね、とりあえず付近に向かいましょう」

 

そう言って女は術式の改変を開始する。

信頼しきったシンジは欠伸を一つ、惰眠をむさぼるように地べた転がり両目を閉じた。

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