ストライクウィッチーズの世界に日本が転移!?(リメイク)   作:RIM-156 SM-2ER

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ストパン第3期放送記念第4弾


第20話 第一歩

「このレポートは・・・・本当なのか?」

 

この日、在扶日本大使館から送られてきたレポートは日本政府に衝撃と怒りをもたらした。

国家安全保障会議が開かれ、出席者全員がレポートを読んでいた。そのレポートには驚くべきことが書かれていた。

 

「この”山”攻撃作戦が()()()2()()()()()()()()というのは事実なのか・・・・?」

 

石田の声は震えており、かなり怒っていることがわかる。基本、温厚な石田が声を震わせていることで、彼がどれほど怒っているのか分かる。

石田の言葉に国家戦略情報庁長官が頷いた。

 

「はい。扶桑に潜伏中の諜報員からも、この作戦を肯定するような報告が上がっています」

 

転移してから、国家戦略情報庁は遊んでいたわけではなかった。

転移から1週間後、海外にいた邦人や諜報員が日本各地に現る、ということがあった。彼らが現れたことに国家戦略情報庁は驚き、戸惑った。しかし、優秀な諜報員が戻ってきたことは幸運に違いなかった。諜報員は再配置され、扶桑には多くの諜報員が送り込まれたのである。

政府高官の御用達料亭である、あの赤坂の料亭にも日本の諜報員は紛れ込んでいた。地方の農村の貧しい農家の娘で、金に困って売られたというストーリーのもとでだ。

他にも様々なストーリーのもとで諜報員が扶桑皇国に送り込まれていた。

 

「我が国もなめられたものだ・・・・・」

 

官房長官も怒り心頭といった感じでレポートをテーブルの上に放り出す。このレポートが書かれた理由は、会議から2日前にさかのぼる。

 

――――――――――――――――――――

 

「挺身作戦から一か月後。海軍は独自に紀伊型戦艦4隻を基軸とする艦隊をもって”山”を撃破する作戦を立案・実行しました」

 

すると駐在武官は信じられなさそうに首を横に振る。

 

「そんな話・・・・聞いたことも・・・・」

 

竹井は、そんな駐在武官の反応に「無理もない」という表情をした。

 

「ええ。海軍が勝手にやったことですから・・・・挙句に失敗したとなれば、誰にも言わんでしょう」

「なるほど・・・・」

 

竹井は車いすを窓際まで移動させると、外に広がる美しい庭園を眺めながら語り始めた。

 

「当時の軍令部総長であった堀井は挺身作戦時の失態を取り返そうと躍起でした」

 

――――――――――――――――――――

 

1938年9月29日。この日、扶桑皇国海軍舞鶴鎮守府と佐世保鎮守府から扶桑皇国の誇る最新鋭戦艦「紀伊」「尾張」「駿河」「近江」の4隻を中核とする、駆逐艦16隻、軽巡洋艦8隻、重巡洋艦4隻の大艦隊が出港した。

彼らの目的は浦塩にこもる”山”の撃破であった。合計32隻もの大艦隊が浦塩から10kmまで接近。紀伊型戦艦4隻の砲撃をもって、怪異のコアを破壊・撃破せしめんとする作戦であった。

空を飛んでいれば砲撃を当てることは容易ではないが、地上で鎮座する目標に対して砲撃を当てることは比較的容易であった。

彼らは浦塩南600kmで合流すると、浦塩に向かった。

 

「化け物め!この41センチ砲に勝てると思うなよ・・・・」

 

この艦隊を指揮する中将は、まだ見ぬ敵に対して闘志を燃やしていた。「紀伊」艦長はそんな中将を尻目に、電探室に艦内電話をかける。

 

「電探室。何か異常はないか?」

『ありません。本艦隊に接近する目標は確認できません』

「そうか・・・・引き続き頼む・・・・」

 

艦長は艦内電話機から手を離すと、首からかけた双眼鏡を使って外を見る。大海原には彼ら以外におらず、波も非常に穏やかであった。

 

「あと4時間もすれば浦塩か・・・・」

 

双眼鏡から目を離し、艦長は腕時計を見ながらそう言った。

艦長はこの作戦には反対であった。何せウィッチの援護が必要最低限なのだ。おそらくウィッチ隊への対抗心だろうが、怪異との戦いにおいてウィッチ隊が少ないということは致命的であった。

 

「うまくいくといいが・・・・」

 

艦隊は波を切り裂きながら、ゆっくりとそして確実に浦塩に近づいていた。4時間後、徐々に浦塩が見えてきた。戦前は大陸の窓口として栄えた浦塩市街地は確実に破壊され、その上には”山”がわがもの顔で鎮座している。

 

「なめよって・・・・。艦隊単縦陣!奴を確実に仕留める!」

 

艦隊司令は双眼鏡を使って”山”を確認するとすぐさま指示を出した。彼の指示は発光信号や電信を使って、全艦に送信された。すぐさま単縦陣に移行するための行動に移った。鮮やかに陣形をくみ上げていく彼らの動きは芸術的ですらあった。ここに扶桑皇国海軍の練度の高さがうかがえれるであろう。

そして艦隊が浦塩まで10kmという至近距離まで近づく。

 

「艦隊90点回頭!敵に腹を見せる!」

 

各艦の操舵手が舵を切る。きれいな単縦陣を組んだまま、見事回頭に成功する。司令は電探室に確認を入れる。

 

「電探室!敵の反応は!?」

『ありません!』

 

事前の作戦では、小型怪異や中型怪異が出てきて迎撃にやってくると思われていたが、目視確認でもレーダーでの確認でも小型怪異や中型怪異が飛んでいないのが確認されていた。迎撃戦闘を想定していた彼らは肩透かしを食らった気分であった。

 

「好都合だ!主砲、全門を怪異に向けろ!」

 

艦隊司令の指示を受けて、紀伊、尾張、駿河、近江の合計20基、40門の41センチ砲が怪異の方に指向する。

砲術長は砲の仰角、方位を計算しそれを伝える。各砲の砲手が指示された通りに砲を動かす。

 

「仰角、方位よし!!」

「主砲発砲準備!!」

 

砲術長からの報告を受けて艦長は主砲発砲準備の警報を出す。ビーという警報音がして、乗組員たちは主砲発砲を悟る。発砲音に鼓膜がやられないように、耳をふさぎ、口を開ける。

 

「てぇえええ!!」

 

ドォオオン

 

41センチ砲のあまりにも大きな発砲音と衝撃波は海面を揺らす。放たれた41センチ徹甲榴弾は”山”に向かって飛んでいく。

結果。”山”への直撃弾は20発。うちコア近辺に着弾したのは2発であった。ほか20発は”山”を外れて浦塩市街地に着弾する。

 

「どうだ!?」

 

徐々に煙が晴れていく。

 

「ッ!」

 

着弾点の装甲は大きくえぐれてはいるものの。コアに届くことはなかった。しかしこれは好機であった。再び同じ地点に命中させれば、”山”のコアを確実に破壊できる。

 

「第2射よぉーい!」

 

すでに次弾は装填され、諸元も修正されている。先ほどよりは命中率が良いはずだ。

艦長が双眼鏡を使って”山”を見るが、すでに再生が始まっており、穴は徐々に閉じていく。時間がないと判断した艦長はすぐさま第2射の指示を出した。

 

「てぇええ!」

 

再び海面が揺れ、41センチ砲弾が放たれる。

しかし、どれもが外れるか、先程の着弾点の近くに当たっただけで、致命傷とはならなかった。

第3射の用意をしているうちに、怪異の再生は完全に終わった。その代わりに天辺が赤く光り始めた。

 

「なんだ・・・・?」

 

彼らは突如起こった”山”の異変に釘付けとなった。次の瞬間。赤い光線が放たれ、重巡洋艦が水柱に包まれる。

 

「な、何という威力だ・・・・」

「重巡が一発で大破とは・・・・」

 

ボロボロになった重巡洋艦を見て、彼らは悔しげな顔をする。

 

「仇を取るぞ!第3射・・・・うてぇえええ!!!」

 

3度目の砲撃が行なわれる。しかし、4隻の戦艦が発砲炎で包まれると、怪異は見当違いの方向にビームを放つ。

 

「なんだ?」

 

全く意図がわからない中、”山”が再び爆炎につつまれる。今度はコアの周辺でも沢山の爆発が起こった。

しかし、煙が晴れると、今度は傷一つない”山”の姿がそこにあった。

 

「ば・・・・馬鹿な!!命中弾は多数出ていたはずだ!!」

「なぜ、先ほどは有効打を与えられたのに今回は傷一つないんだ」

 

艦橋が驚愕につつまれる中、”山”のビームが「紀伊」前方を航行していた駆逐艦に当たる。攻撃された駆逐艦は赤い火柱をあげると、船体の中ほどが折れて轟沈する。お返しといわんばかりに重巡洋艦が砲撃する。

しかし、再び怪異がビームを放つ。すると、”山”のだいぶ前で、放たれた砲弾がビームに当たり爆発する。

 

「まさか!?核に近づくであろう砲弾を光線で破壊しているのか!?」

「そうか。核への命中針路上に光線を放ち、砲弾が命中しないようにしているのか・・・・」

 

艦橋にいた面々が考察を述べる。そうこうしているうちに、また1隻の駆逐艦が沈められた。

 

「くそっ!攻撃を続けろ!!とにかく手数で押し切るぞ!」

 

艦隊司令は悪態をつきつつもそういった。

それ以外の解決手段は見つからない以上、艦隊司令の言うことに従う以外なかった。

その後も、扶桑皇国艦隊は”山”への攻撃を続けるも、一向に有効打を与えることはできなかった。逆に扶桑艦隊は駆逐艦3隻、重巡洋艦1隻が轟沈。重巡洋艦1隻、軽巡洋艦2隻が大破、軽巡洋艦3隻、駆逐艦5隻「尾張」「駿河」が中破。駆逐艦1隻、重巡洋艦2隻、「紀伊」が小破という大損害を被り、”山”攻撃作戦は扶桑海軍の敗北という形で終わった。

――――――――――――――――――――

 

「そんなことが・・・・」

 

駐在武官は初めて聞く話に驚いた。

 

「その後、作戦を立案した堀井は、これらの作戦で出た損害を近海哨戒中にネウロイに襲撃されたものだとして隠蔽しました。作戦に参加した全員には箝口令が敷かれ、徹底的に隠蔽したのです」

 

竹井は恥じ入るように、体を震わせながら語った。

 

「タダでさえ挺身作戦の責任があったのです。この作戦が表に出れば堀井の軍法会議は免れなかったでしょう」

 

竹井はここで言葉をいったん区切る。

 

「私もこの作戦のことは風のうわさで聞きました。海軍内にいる昔の部下に調べさせて、ようやく噂が真実であると確認できました」

「何故・・・なぜあなたは私にこのことを・・・・?」

 

駐在武官はずっと気になっていたことを竹井に尋ねる。駐在武官の問いに竹井はキョトンとする。そして優しく微笑んだ。

 

「我が国を救おうとしてくださっているのです。協力するのは当たり前でしょう?」

 

駐在武官はじっと竹井を見るが、その言葉に裏はなさそうであった。

 

「情報提供感謝いたします。早速、本国に伝えましょう」

「・・・・駐在武官殿!」

 

駐在武官がお辞儀をして部屋を出ようとすると、竹井がそれを呼び止めた。くるりと駐在武官は振り返る。

 

「なんでしょうか?」

「どうか・・・・どうかこの国を、救ってくだされ」

 

駐在武官はこくりと頷く。

 

「微力ですが・・・・善処いたします。それでは」

 

駐在武官は見事なお辞儀をすると、今度こそ部屋から出て行った。

その日の夜。大使館に戻った駐在武官はレポートを書き上げると、それを本国に送った。

 

――――――――――――――――――――

 

「このレポート通りなら、扶桑海軍は重大な情報を隠匿し我々に不利益を被らせたことになる」

 

防衛大臣も不機嫌そうにレポートを放り投げる。外務大臣は石田の方を向くと、興奮したようにこういった。

 

「すぐにでも扶桑皇国に抗議すべきです」

「いや、おおっぴらに抗議したら情報提供をしてくれた竹井という退役軍人の立場が悪くなる・・・・」

 

官房長官が外務大臣をたしなめた。

外国に情報を流すという事は、非常に危険なことだ。下手をすれば逮捕されるし、下手をしなくとも信用をなくすことは間違いない。

恩を仇で返すような真似をしたくはない、というのが彼らの気持ちであった。

国益となるのであれば、彼らは恩を仇で返すこともする。しかし、国益にもならないのにそれを行うことは、信用を失い長期的な利益を損なうことを日本政府上層部は知っていたのだ。

 

「いまは秘匿し、この戦いが終わったあとにどうするか考えるべきだ」

「そうですね」

 

外務大臣も幾分か冷静になったようであった。

石田も気持ちを落ち着かせると、防衛大臣の後ろに控えていた国防軍の制服組トップであるJDCF司令長官*1の方を向く。

 

「統合司令長官。こないだの会議の内容は知っている。核兵器の使用という意見も出たそうだね」

「はい。結論は出ませんでしたが」

 

統合司令長官は石田の言葉に、短く肯定を示す。そんな統合司令長官に石田はレポートを指し示した。

 

「このレポートを国防軍でも検証してくれ。次の作戦に活かせるかもしれない」

「分かりました。至急、統合参謀部*2に持ち帰って検証します」

 

統合司令長官は早速、後ろの副官に言ってレポートをかばんに入れる。

 

「次の作戦においては、閣僚諸君は見物人にはなるな。国防軍をできる限り助けろ。人事を尽くせ、そして天命を待とう。いいな?」

 

石田の言葉に閣僚たちは頷いた。

ついに、この戦争を終わらせる第一歩が踏み出された。

*1
統合司令長官とも言われる

*2
統合国防参謀司令本部の略称




次回 第21話 光

ネウロイの瘴気の正体は?

  • 1:放射線もしくは放射能物質
  • 2:有毒な重金属などの微粒子
  • 3:毒ガス
  • 4:日本でもよくわからない
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