ストライクウィッチーズの世界に日本が転移!?(リメイク)   作:RIM-156 SM-2ER

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皆様。遅れまして申し訳ございません。
今回は金曜の9時に投稿する予定だったんですが、できませんでした。本当に申し訳ございません。
今回は、かなり長いお話となっておりますので、そのせいで投稿が遅れました。
では、本編どうぞ


第50話 ズボン事件

早朝。基地は寝静まっている。スクランブル当番で待機している人間や夜間当直で管制塔や無線室なんかに詰めている人間以外は、ほとんど熟睡している。

そんな静かな基地の中を国防軍組の4人は、タンクトップ姿で走っていた。戦闘機隊の人間は、スクランブル当番じゃない限り基地の外周を走り、その後筋トレをするのが日課であった。なぜなら戦闘機パイロットというのはトップアスリート並みの運動を強いられる仕事だからだ。体の何倍もの重さがかかる中、パイロットは体を動かさなくてはならない。日々、鍛えていなければ冗談ではなく命に係わる。

別にスピードを合わせているわけではないが、4人とも似たような鍛え方をしているからか、固まって走っている。

しばらく走っていると、4人の前の方に坂本が見えてきた。どうやら坂本もトレーニング中のようだ。

 

「おはようございます。坂本少佐」

 

一番先頭を走っている桜田が、坂本に挨拶をした。

 

「ああ、4人ともおはよう」

 

もはやこれも見慣れた光景だ。坂本も朝早くからトレーニングをするから戦闘機隊と鉢合わせすることが多い。

坂本を加えて5人がしばらく走っていると、緑川が腕時計を見る。

 

「今浦少佐、桜田少尉。そろそろ時間ですよ」

 

今浦も腕にしてある支給品の時計を見る。

 

「あ、ほんとだ。ではお先に」

 

そういうと今浦と桜田は、集団から離れて行った。その日のスクランブル当番は、任務に支障が出ないように軽いランニングをするだけにとどめる。今日は今浦と桜田がそうであった。

そのうち坂本も別のトレーニングをするために集団から離れ行き、最終的に緑川と川野の2人だけとなる。

 

 

ランニングをはじめて1時間ほどたった時、起床ラッパの音が基地内に鳴り響いた。残っていた2人も、ランニングをやめて首にかけていたタオルで汗を拭く。

 

「ふぅ。じゃぁ、少し休憩した後ジムに行きましょうか」

 

そういうと緑川はそばに置いてあったスポーツドリンクを飲む。川野も同じように汗を拭きながらスポーツドリンクを飲む。近くにあった作業帽をかぶって2人はジムに向かった。

 

―――――――――――――――――――――

 

川野はジムでのトレーニングが終わった後、緑川と別れてシャワーを浴びた。身も心もさっぱりとした後、珍しく訓練飛行の予定のない川野はデジタル迷彩服と作業帽を着て食堂に向かった。

その途中、どうしてもウィッチ隊の居室の近くを通るのだが、今日はどこからかバルクホルンの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「・・・・?」

 

どうしようかと少し悩んだが、何が起きているのか気になって声のする方へ行ってみる。

すると少し開いたドアの向こう側からバルクホルンの声が聞こえてくる。部屋の中を覗いてみると、五味屋敷のように散らかっていて、足の踏み場はほとんどない。

 

「バルクホルン大尉?どうしたんですか?」

 

薄暗い部屋の中で誰かに向かって怒鳴っているバルクホルンの後ろから、川野は声をかけた。

 

「ああ、川野か。いや、ハルトマンが起きなくてな。手伝ってくれないか」

「んん・・・・あと1時間」

 

バルクホルンの足元に視線をずらすと、確かに床でハルトマンが丸まっている。川野は、少し苦笑いしてハルトマンの部屋に入っていく。

川野はハルトマンの傍までいって中腰になると、ハルトマンに向かって話しかける。

 

「ハルトマン中尉。朝ですよ。起きてください」

「あと2時間」

 

さっきよりも1時間も要求が伸びている。ハルトマンは起こすとさらに寝ようとするのか、と思いながら川野は窓の方へ行ってカーテンを開ける。

 

「中尉。朝日を浴びて、シャワーでも浴びればすっきりしますよ」

「んん、あと1時間」

 

川野は、一向に起きようとしないハルトマンをどうするべきかと思案する。そうやってドアの方まで向かっていると、右足の半長靴の裏から何か硬いものを踏んだ感触が伝わってくる。

 

「ん?・・・・あ」

 

踏んだものの正体を確かめるべく、右足をどかすと川野は固まった。

 

「どうしたんだ」

 

バルクホルンは、気になって川野の足元を見ると、そこには半長靴の足跡がうっすらとついた柏葉付き騎士鉄十字章が落ちていた。

柏葉付き騎士鉄十字章は、世界中を探しても受賞者は991人しかいない。この2つ下の一級鉄十字章の受賞者が30万人ほどといわれるから、どれほど貴重なものかわかるだろう。川野は、そんな貴重な勲章を踏んでしまったのだ。

 

「床に柏葉付き騎士鉄十字章が!?」

 

軍規に厳しいバルクホルンなんか悲鳴じみた声を上げて勲章を拾い上げる。川野の半長靴の足跡がうっすらとついてしまった勲章をしばらく見た後、怒り心頭といった様子でハルトマンに近づいた。

 

「さっさとおきんか!?ッ!」

 

ハルトマンの上にあるタオルケットや軍服の上着なんかをバルクホルンがはぎ取っていくと、なんとハルトマンは半裸姿で寝ていたのだ。ハルトマンもそれに気が付いたらしく、目を開けてバルクホルンにとbがめるような視線を送る。

バルクホルンは顔を赤くしながら、この部屋に唯一いる男性の存在を思い出して、川野の方を向く。

 

「川野!」

「・・・・」

 

川野は、彼から見て右上に視線をずらしていた。一言も発することなく、この場において唯一の正解というべき対応を取っていた。

ひとまず彼の様子に一安心したバルクホルンは、ハルトマンの方を向く。

 

「とにかく何か着んか!穿かんか!」

 

バルクホルンはそう言って手に持っていた衣類や近くにあった本を投げつけるが、さすがエースウィッチというべきか、ハルトマンは少ない動きでそれらをよける。

まさに暖簾に腕押しという言葉がぴったりであった。バルクホルンは、いよいよハルトマンを起こすことをあきらめた。

部屋の隅でいまだに上に視線をずらして固まっている川野を部屋の外に連れて行くと、去り際にハルトマンの方を見た。

 

「とにかく、とっとと着替えて食堂に来い!」

「ん・・・・」

 

わかったのかわからないのかハッキリしない返事に呆れつつも、バルクホルンは部屋の扉を閉めて川野とともに食堂に向かった。

この後、この小さなウィッチが大事件を起こすなど誰にも予想できなかった。

 

――――――――――――――――――――

 

バルクホルンと川野が食堂につくと、緑川とシャーリーが食堂でふかしたジャガイモを食べていた。

緑川は、少し挙動不審気味な川野を見ると、芋を食べる手を止める。

 

「川野少尉。何かあったの?」

「え。い、いえ・・・・何もありません」

 

川野は少し慌てながらもそう返した。今朝あったことは、墓場まで持っていこうと誓ったのである。緑川も少し不審がりながらも、それ以上詮索することはなかった。

すると、今まで芋を一心不乱に食べていたシャーリーが食堂を見渡してからポツリとつぶやく。

 

「しかし、だれも起きてこないな」

「まったく。どいつもこいつもたるんでる!」

 

バルクホルンはジャガイモを食べながら、心底憤慨したような様子でそう言った。

 

「まぁ、しばらくネウロイも現れないみたいだしいいんじゃない?」

「甘いなリベリアン。備えよ常に、だ」

 

するとその時、食堂の外の廊下をマイケル達が通りかかった。どうやら今浦達とのスクランブル当番の引継ぎを終えたらしい。

 

「あ、マイケル!おはよう」

「あ?ああ、おはよう」

 

マイケルは、あくびをしながらシャーリーに返した。すでに彼は耐Gスーツを脱いでパイロットスーツだけの姿になっている。

 

「マイケル、朝食食べるか?」

「いや、いい。このまま寝るからな」

 

それだけ言うと、マイケルは自室に行ってしまった。シャーリーは、そっけないマイケルの様子に何やらふてくされたような態度になる。

 

「なんだ・・・・。あ、その大きいのは私のだろ!」

 

どうやらシャーリーが食べようとしていた芋をバルクホルンが食べてしまったようだ。勝ち誇ったような表情になるバルクホルンをシャーリーがにらみつけた。

その横でコーヒーを淹れてから席に座った川野が二人をいさめた。

 

「まぁまぁ。芋は、これだけあるんですから」

 

そう言って山盛りになった芋を指さすと、シャーリーとバルクホルンは川野の方を向いて息ぴったりに言う。

 

「「それとこれとは話が違う」」

 

余りの迫力に川野は小さく頷いて「わかりました」というと静かにコーヒーを飲み始めた。

 

――――――――――――――――――――

 

事件は、それからしばらくたってから起きた。

スクール水着型の扶桑のズボンを持った坂本と何やらしおらしい宮藤とペリーヌが部屋に入ってきたのだ。

食堂には、食事を終えてゆったりしていた緑川、川野、シャーリー、バルクホルンの4人と遅れてやってきて食事をとっているルッキーニとハルトマンがいた。

何やら様子のおかしい宮藤とペリーヌを見て、くつろいでいた4人が首をかしげていると坂本が4人を呼び寄せて事情を話した。

 

「つまり?お風呂を出たらクロステルマン少尉のズボンが消えていた。そういうこと?」

「はい・・・・」

 

緑川の言葉に、ペリーヌはそう言った。

 

「で、代わりに宮藤軍曹のズボンを穿こうとしたと?」

「はい・・・・」

 

川野の確認に、宮藤は顔を真っ赤にしながら答えた。その宮藤のズボンは、畳んでテーブルの上に置いてある。

 

「あの、そろそろ服を・・・・」

 

どうにも恥ずかしいらしく宮藤はそういうが、バルクホルンが首を横に振った。

 

「いや、これは証拠物件だ」

「そんなぁ・・・・」

 

そんな宮藤の様子を見かねた緑川のは、スッと立ち上がると宮藤のところに行く。

 

「宮藤さん。ちょっと来て。服、貸してあげるから」

「あ、ありがとうございます!」

 

そういうと緑川と宮藤は食堂から出て行った。2人を見送るとバルクホルンが仕切り始めた。

 

「さて、では事件を整理しよう。まず、なぜペリーヌのズボンがなくなったかだ」

「もともと穿いてなかったとか?」

 

ニヤニヤしながらからかうように言うシャーリーに、ペリーヌは声を荒らげて反論した。

 

「そんなわけありませんわ!」

「ということは、誰かが盗んだ可能性が高いというわけだ」

 

バルクホルンは顎に手を当ててそういった。すると、川野は、芋を食べる手が止まり、いやに挙動不審なルッキーニの様子が気になる。

 

「ルッキー二少尉?どうかしたんですか?」

 

すると、ペリーヌも自分の前に風呂を出たのはルッキーニであったことを思い出す。

 

「そういえば、私の前に脱衣所にいたのも・・・・」

 

その言葉で、その場にいた全員の視線がルッキーニに集まる。ルッキーニは冷や汗を垂らし、がたがたと震えている。

 

「まさか・・・・」

 

バルクホルンのその言葉で、耐え切れなくなったのかルッキーニは持っていたフォークを放り出して逃げ出した。逃げ出した際に、ルッキーニの軍服の上着がめくれて、ペリーヌの純白のズボンが見える。

 

「あ!私のズボン!」

 

その瞬間、ルッキーニの容疑は確定した。その場にいたペリーヌ、バルクホルン、川野、シャーリー、坂本の5人は、ルッキーニを追いかけ始めた。

 

「まて!!」

 

ルッキーニはテーブルの周りを一周回るように逃げると、宮藤のズボンの前で躓いてしまう。その時、咄嗟に宮藤のズボンを手に取ってしまった。

 

「あ、宮藤さんのズボン」

 

川野がそういうと、ルッキーニは慌ててそれをもって食堂から出て行ってしまう。5人もそれを追って外に出ると、ちょうど着替え終わって第1種女性用夏服を着た宮藤と緑川がやってきた。

 

「どうしたの?」

「あ、いえ。ルッキーニ少尉がズボンを盗んだ犯人だったようで。現在、宮藤さんのズボンももって逃走中です」

 

緑川に呼び止められた川野は、手短に現在の状況を答える。

 

「え、私のズボン!」

「とにかく追うわよ」

 

状況を理解した2人は、川野とともに4人の後についていった。

 

 

ルッキーニを追って、7人は屋外に出た。しかし、逃げ足の速いルッキーニを見失ってしまう。

 

「どっちに行った?」

「さぁ?」

 

バルクホルンとシャーリーは、あたりを見回してルッキーニを探すが、その姿はどこにもない。

 

「とにかく行こう!」

 

とりあえず7人は、4組に分かれてルッキーニを探すことにした。しかし、身軽でこの基地の構造を完全に把握できるルッキーニをなかなか見つけられない。

緑川と川野も手当たり次第にあたりを探して回るが、見つけることができない。しかし、どこからか宮藤の悲鳴が聞こえてくる。

 

「今のは?」

「あっちに行きましょう!」

 

どうやらバルクホルンたちも宮藤の声を聴いてやってきたようだ。合流して4人で声のした方に行くと、宮藤のズボンを持ったルッキーニがいた。

 

「いたぞ!」

 

バルクホルンの声に反応してか、ルッキーニは4人の方をチラリと見た後に再び逃げ出した。ほかにも騒ぎを聞きつけたペリーヌも合流してルッキーニを追って、再び庁舎の中に入っていった。

 

 

しかし、宮藤達6人は再びルッキーニを見失ってしまう。そこで3組に分けてルッキーニを探すことにした。しかし、部屋が多く外以上に隠れるところが豊富な室内では、捜索は難航した。

2階を探している緑川と川野のもとに、バルクホルンとシャーリー、そしてエイラを加えた3人がやってきた。

 

「ルッキーニは下に逃げたらしい」

「わかったわ」

 

シャーリーが緑川に短く情報を伝える。5人はルッキーニを追って下に行く。ちょうど1階に降りたとき、ルッキーニを見つけた。反対側からは宮藤とペリーヌがやってきた。

 

「まて!」

「ルッキーニちゃん!ズボン返して!」

「返しなさい!この泥棒猫!」

 

左右をはさまれたルッキーニは、後ろの通路に逃げ込んだ。8人が通路にたどり着いたとき、ルッキー二の姿は再び消えてしまう。

 

「どこに行った?」

 

バルクホルンがあたりを見回すが、ルッキーニの姿は認められない。とりあえずそのまま通路を通って外に逃げたとにらんで8人は外に向かった。

8人が外を探し始めたその時だった。突然ネウロイ襲来を告げる警報が鳴り始めた。

 

「敵襲ですの!?」

「く!出撃準備だ!」

 

バルクホルンが指示を出すと、出撃準備ができていない緑川と川野以外の6人は格納庫に走った。

 

――――――――――――――――――――

 

一方、スクランブル当番で待機していた今浦と桜田は、困惑していた。なぜなら待機室にあるディスプレイにはネウロイ出現の情報は表示されておらず、戦闘機に乗り込んで管制塔に確認しても管制塔でもネウロイ出現を確認していないからだ。

 

「どうなってるんだ?」

『ともかく、詳細が判明するまで出撃は許可しない』

 

ふと今浦がウィッチ隊の格納庫の方を見ると、あちらも何やら混乱しているようであった。

 

「くそっ!何がどうなってるんだ!」

 

今浦は大型ディスプレイのふちをドンとたたいた。

 

――――――――――――――――――――

 

緑川と川野は、ルッキーニを探していた。ネウロイの出現は緊急事態ではあるが、今日はスクランブル当番機以外の機体はすべて整備中であり、出撃できないからだ。

川野が屋外を探していると、出てきた通路の方からガチャリという音が聞こえる。

 

「?」

 

川野が音のした方に向かうと、そこにはルッキーニとハルトマンがいた。

 

「ハルトマン中尉!ルッキーニ少尉!」

 

先ほどまで自分を追いかけていた川野が現れたことにびっくりしたのか、ルッキーニはビクッとする。しかし、どうにもそれにしては怯えすぎているように見える。

 

「どうしたんですか?」

「えっとね。そのね・・・・」

 

もごもごとなるルッキーニに代わって、隣にいたハルトマンがしゃべった。

 

「さっきの警報。ルッキーニが間違って押しちゃったんだって」

「え!みんな、出ていきましたが・・・・?」

 

そう言って川野は、まじまじとルッキーニをみる。ルッキーニは申し訳なさそうにうつむて何も言わない。

 

「とにかく格納庫に行って知らせに行きましょう。ルッキーニ少尉、ズボンの件と合わせて自分で謝ってくださいね」

「うじゅ・・・・」

 

そういってルッキーニは小さく頷いた。

 

 

3人が格納庫に向かう途中、警報を聞いて急いで帰ってきたミーナとリーネと出会う。川野はちょうどいいといわんばかりにミーナに事情を話すことにした。

 

「ヴェルケ中佐!」

「あら?川野さん。どうかしたのかしら?」

「先ほどの警報なんですが、どうやらルッキーニ少尉が謝ってスイッチを押してしまったみたいで。ハルトマン中尉が見つけたんです」

「つまり誤報ってこと?」

 

そういってミーナは、川野の後ろにいたルッキーニをみる。申し訳なさそうにうつむいている様子から、本当らしいとミーナは判断した。途端に厳しい顔になる。

 

「とにかく格納庫に行きましょう。たぶんみんな発進しようとしているわ」

「あ、それと。実はルッキーニ少尉がみんなのズボンを盗んで回っていまして」

「本当?」

 

ミーナがルッキーニをにらみつけると、そのあまりの圧にルッキーニは怯えて萎縮してしまう。

 

「わかったわ。ともかくみんなから盗んだズボンは私から返却します。あとで警報の件と合わせて覚悟しておきなさい」

「ひぃいいいい」

 

黒いオーラを放つミーナを前に、言われたルッキーニだけでなく川野も若干ビビってしまった。大の男を委縮させるだけの何かが、今のミーナにはあった。

川野とルッキーニ、ハルトマンは、ともに格納庫の方に向かった。

 

――――――――――――――――――――――

 

格納庫は、混乱のただなかにあった。

ズボンを穿いていないペリーヌは、出撃をすることをためらい。サーニャは、ズボンを盗まれたエイラが穿いた自分のズボンを取り返そうとする。今浦達は、一向に次の情報が来ないために苛立っていた。

 

「何をやっとるんだ。全機、我に続け」

 

混乱を極める彼女らを見て、バルクホルンはあきれ果てて自分だけで発進しようとした。その時、それを止める声が響き渡った。

 

「みんな待って!」

 

この緊急事態に、なぜ止めようとするのかわからずバルクホルンは困惑する。

 

「中佐。敵が!」

 

バルクホルンが状況を話そうとした時だった。

 

「ネウロイはいません。警報は誤報です」

「「「ええ!!」」」

 

先ほどまでの騒ぎは何だったのかとその場にいた全員が驚いた。

 

「出てきなさい」

 

ミーナが厳しい口調でそういうと、物陰からハルトマンと川野に連れられたルッキーニが出てきた。川野は呆れたような声で状況を説明し始めた。

 

「先ほどの警報は、ルッキーニ少尉が誤って警報装置のスイッチを入れてしまったことによる誤報です」

「「「「ええ!」」」」

「なるほどな。それで管制も把握してなかったわけか」

 

ミーナたちの後ろから戦闘機から降りてきた今浦が不機嫌そうな声でそう言った。今浦は、ずいぶんと不機嫌そうな声でルッキーニの方を見ると、普段と全く違う口調でルッキーニに言った。

 

「ルッキーニ少尉。あとでお話がある。覚悟しておきたまえ」

「うじゅ・・・・」

「うじゅ、じゃなくて?」

「はい・・・・」

 

普段の優しい雰囲気とは全く違う今浦の様子に、ルッキーニもすっかり怯えてしまった。

 

「それと、これも没収しました」

 

そういうミーナの手元には、今までルッキーニが盗んだズボンがあった。盗まれた本人である宮藤とペリーヌ、エイラはミーナのもとに駆け寄った。

坂本は腕を組んで感心している。

 

「さすがだな。ミーナ」

「いいえ。今回はハルトマン中尉の御手柄です。この混乱の中、素晴らしい冷静さでした」

「どうもどうも」

 

ミーナの言葉で、全員の視線がハルトマンに集まる。全員が追いかけても捉えられなかったルッキーニを捕まえ、盗まれたズボンを取り返したハルトマンを、全員が口々にほめたたえる。

 

「さぁ、今から表彰を始めましょう。ハルトマン中尉、準備はいい?」

 

実は今日はハルトマンに柏葉付き騎士鉄十字章の一つ上の勲章である柏葉剣付き騎士鉄十字章が叙勲される日だったのだ。ミーナとリーネは、朝から出かけて勲章を取りに行っていたのだ。

ハルトマンは、ミーナの問いかけに元気よく答えた。

 

「了解」

 

叙勲のことと今回の事件のことで皆からほめたたえられるハルトマンの後ろでは、ルッキーニが何か言いたげな顔をして立っていた。

 

――――――――――――――――――――

 

30分ほどして、全員の着替えが終わり、ルッキーニはバツとして水が入ったバケツを持って立立たされていた。

滑走路横で叙勲式を行うからということで、スクランブル当番である今浦と桜田も参加していた。

主役であるハルトマンは、軍服をきちっと着て軍帽をかぶっている。

 

「エーリカ・ハルトマン中尉。壇上へ」

「はい」

 

坂本の進行で、ハルトマンは特別に設置された壇の上に上る。本日の英雄となったハルトマンの受勲を、全員が祝福していた。みんなが拍手をする中、両手に水バケツを持ったルッキーニはつらそうな顔をしていた。

それを見たリーネが横にいた桜田に話しかけた。

 

「ルッキーニちゃん、ちょっとかわいそうですよね」

「うーん。そういえば、なんでルッキーニ少尉はズボンを盗んだんですか?」

 

桜田はルッキーニの方を向いてそう聞く。

 

「もともと、私のズボンがなくなったからペリーヌのを借りたんだよ」

 

ここにきて初めて明らかになった事実であった。ペリーヌも驚いた様子だ。しかしながら、ルッキーニの信用はすでにゼロであり、その証言を信じる人間はいない。

 

「じゃぁ、他に持って言った人間がいるってことかい?」

「でもそんな人いるんですか?」

「いるわけありませんわ」

 

そんな会話をしている5人をよそに、受勲式は粛々と進められていく。ミーナが口上とともに勲章をハルトマンの首に掛けてやると全員が拍手でそれを祝福した。

しかし、その瞬間。風が吹いてハルトマンの軍服がめくれ上がった。それを見て、その場にいた全員が固まった。

佐官として壇上で叙勲式を見守っていた今浦は、全員の様子がおかしいことに気が付く。

 

「どうしたんだ?」

 

そうつぶやくと、全員の視線が集まるほうを見る。そして今浦も固まった。

 

「あ・・・・」

 

そんな彼らの異変をよそにミーナがのんきなことを言う。

 

「みんな祝福してくれているわ」

 

その時、今浦が後ろからハルトマンに声をかけた。

 

「ハルトマン中尉?」

「はい」

 

どうにも様子がおかしい今浦にミーナと坂本は首を傾げた。しかし、今浦は構わず話を進める。

 

「少し聞きたいんだけどさ」

「?」

「てめぇ、そのズボンは誰のだ?」

 

今浦の言葉を受けて、坂本とミーナもハルトマンのズボンを見た。そこには白と青の縞々模様のルッキーニのズボンがあった。

あまりに衝撃的な出来事でミーナと坂本も言葉を失ってしまう。その横で、先ほどまでハルトマンを褒めたたえ、祝福していた今浦は、怒りに震えていた。

 

「つまり、てめぇで原因を作っておきながら、何食わぬ顔で解決してルッキーニ少尉に全部押し付けて、自分は英雄になってたわけか?」

 

今浦はカツカツとハルトマンに近づく。ハルトマンも今浦の尋常ならざる様子に気が付いたのか身構えた。

 

「厚顔無恥も、ほどほどにしろ!!!!」

 

普段、まったく手を出さない今浦は、珍しくハルトマンの頭にげんこつをくらわした。

その後、叙勲式は取りやめになり頭に大きなたんこぶを作ったハルトマンは、正座させられミーナと今浦の2人から1時間ほどの説教を食らうことになった。

 

 

ちなみに、ハルトマンがルッキーニのズボンを盗んだ理由は、自分のズボンを紛失してしまったことであり、原因はごみ屋敷のようになっている散らかった部屋だと断定された。

数日後にバルクホルンと川野の監視のもと、ハルトマンは自室を片付けさせられ、その際にズボンは無事発見された。




いかがでしたでしょうか?
今回の話、かなり長いせいか最後の方雑になってしまった感が否めない。ご容赦くださいませ。
それと金曜日に投稿する、週2日投稿キャンペーンですが「ワールドウィッチーズ発進しますっ!」の放送終了に伴いまして、火曜日の週1投稿に戻らせていただきます。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回。さようなら

次回 第51話 未定

お楽しみに

ネウロイの瘴気の正体は?

  • 1:放射線もしくは放射能物質
  • 2:有毒な重金属などの微粒子
  • 3:毒ガス
  • 4:日本でもよくわからない
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