ストライクウィッチーズの世界に日本が転移!?(リメイク)   作:RIM-156 SM-2ER

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皆様、お久しぶりです。
そして、新年あけましておめでとうございます。
新年早々の投稿でございます。
では、本編どうぞ


第55話 オペレーション・オヴァ―ロード

さて、欧州戦線から遠く離れた日本の永田町では、対ネウロイ戦争が始まってから何度目ともわからない国家安全保障会議が開かれていた。

主題は、ガリア解放作戦―作戦名、オーヴァーロードについてであった。

居並ぶ閣僚らの目の前には作戦概要が書かれた書類がおかれ、モニターの横には国防軍制服組のトップである東 統合参謀司令本部長官が座って、作戦の説明をしていた。

 

「つまり、ガリアのネウロイの巣が破壊でき次第、海兵隊4個師団からなる上陸部隊はコタンタン半島に上陸。その後、第2陣のリベリオン軍3個師団、ブリタニア軍2個師団の上陸を待って、コタンタン半島内陸部に侵攻し、隊を二つに分け、海兵隊1個師団、リベリオン軍1個師団からなる計4万名の部隊はシェルブールに向かい、残る海兵隊3個師団、リベリオン軍2個師団、ブリタニア軍2個師団の計12万はクータンス、サン=ロー、バイユーを解放、このラインで警戒線を引きネウロイのコタンタン半島侵入を阻止します」

 

東の説明に合わせて、モニターに映し出されたコタンタン半島の地図に友軍部隊を表す青い凸型のアイコンが現れ、シェルブールとクータンス―サンロー―バイユーに向かう。クータンス―バイユー間にラインが引かれ、そこからコタンタン半島側がすべて青く塗られた。

 

「ここまでが作戦の第1段階です。第1段階が終了次第、リベリオン軍47個師団、カールスラント軍30個師団、ガリア軍12個師団、ブリタニア軍10個師団の上陸を待ち、3つの軍集団を編成します。編成が完了次第、セーヌ川を最終到達ラインとして侵攻を開始するのが第2段階です」

「3つの軍集団の内訳と任務の内容は?」

 

外務大臣からの質問に、東は答えた。

 

「まず、ブリタニア軍10個師団より編成される第21軍集団の任務は、北部ガリアよりブリタニア海峡沿いに侵攻、ルーアンより北を担当します。次にリベリオン軍20個師団、ガリア軍12個師団、カールスラント軍10個師団、我々の3個師団2個旅団からなる第12軍集団はルーアンからトロアを経由してディジョンまでの地域を担当します。リベリオン軍30個師団からなる第6軍集団はディジョンからニースまでの地域を担当し、ロマーニャおよびヒスパニア方面から進軍してくるロマーニャ軍およびヒスパニア軍と共同で南部ガリアのネウロイを一掃します」

「つまり、セーヌ川に連合軍が到達し、それより南部にいるネウロイの一掃が第2段階ということか?」

 

官房長官の言葉に東はコクリと頷いた。

 

「その通りです。第2段階が完了したら、我々は軍集団を再編成します。まず、ブリタニア軍10個師団に加え、新たにファラウェイランド軍5個師団を加えた第21軍集団はベルギカ、ネーデルラント方面の開放を行います。次にリベリオン軍35個師団、カールスラント軍10個師団、ガリア軍12個師団、我々の4個師団からなる第12軍集団はライン川までの地域を解放します。リベリオン軍15個師団からなる第6軍集団はアルザス地方を担当します。軍集団の再編成が完了次第、セーヌ川を攻勢発起点とし、ライン川を目標ラインとする第3段階を発動。ガリア、ベルギカ、ネーデルラントを完全に開放します」

 

モニターの地図は、セーヌ川から南側が青く塗られており、北側が赤く塗られていた。しかし、東の説明と同時に青い部分が北上し、ライン川まで到達する。

 

「以上が、オーヴァーロード作戦の大まかな説明となります」

 

東がそういうと、官房長官が彼に質問する。

 

「ライン川よりカールスラント側への侵攻をしないのか?」

「ライン川よりカールスラント側は、ベルリンのネウロイの巣の勢力圏ですから、これをどうにかしないことには何とも・・・・」

「そうか。いや、わかった。説明ありがとう」

 

官房長官は東の説明に納得したようであった。すると大泉が口を開く。

 

「我が国の投入兵力は各国と比べて少ないようだが、もう少し増員することは、やっぱり無理かね?」

 

大泉も、これほどの陸上戦力の数では、カールスラント軍やリベリオン軍などの部隊の掩護や機動性を生かした火消しに回らざるえないことはわかっていた。

しかし、それでは日本が戦後のイニシアティブを握るのは難しいと考えていたのだ。圧倒的空軍、海軍戦力を持っていても、どうやっても陸をカバーできるだけの陸上戦力がなければ軍事的イニシアティブを握るには一歩足りない。

ランドパワー国家を黙らせるには、海軍だけでは足りないのだ。そこで日本も圧倒的質とそこそこの量を持つ陸上戦力があることを見せつけたいと思うのは当然であった。

 

「不可能です。これ以上の動員となりますと、ほか戦線より部隊をさらに引き抜くほかありません。しかし、ほか戦線でもわが軍は浸透してくるネウロイへの機動防御任務がありますから、これらがなくなるとほか戦線の余裕がなくなり、崩れる可能性があります」

 

東はきっぱりと答えた。

 

「う~む。本土から部隊を引き抜くのも不可能なんだね?」

「はい。すでに本土の部隊は予備役を総動員しています。すでに現役の隊員にも、国防法にのっとり戦時下ということで依願退役などを禁止しておりますし*1、採用定員を増やしていますが、新規入隊者が戦力になるまで時間がかかります。この状態で本土から部隊をさらに派遣すれば、本土の防衛や災害時に対応できません」

 

このネウロイとの戦争がはじまり日本が介入して以来、国防軍もただ「人が足りない」などと言っているだけではなく、きちんと増員に動いていた。

日本がこの世界に転移してきた直後、1939年の国防軍の採用人数は全部合わせて約16,000名であった。しかし、ネウロイとの戦争がはじまり、新たな国防大綱と中期防衛力整備計画が発表された1940年は約23,000名、その後も増えていき1942年には応募者約60,000名の半数近くとなる約30,000名が採用された。これは1940年に発表された中期防衛力整備計画*2と1943年の中期防衛力整備計画*3のための増員であった。

しかしながら、それらを実戦配備することはできないのだ。軍隊というのは一般人から人を集めて銃と弾を渡したから戦えるというわけではない。きちんと戦えるように体力と技術を身に着けるために訓練を行い、それらを指揮する下士官や士官を教育し、指揮命令系統をきちんと作らなければ戦えないのだ。そのため、書類上では国防軍はかなりの拡張されてはいたものの、実際にそれらがきちんと戦力として機能するのはまだ先のことであった*4

 

「そうか。いや、すまない。無理を言ったな」

 

軍事のプロに無理といわれたものは、逆立ちしようが無理である。大泉はすぐに引き下がった。すると、代わりに国土交通大臣が口を開く。

 

「この作戦の統括指揮は誰がとるんだ?」

「階級的な問題から、総指揮官をリベリオン陸軍のドナルド・D・アイゼンハワー大将が努めます。藤木中将は、作戦統括参謀長として上陸作戦の実質的な指揮を執ってもらいます」

「わかった。いや、ありがとう」

 

すると今度は国家安全保障局長が質問をする。

 

「上陸時のエアカバーはどこがやるんだ?まさか、エアカバーなしで上陸するわけではないだろう?」

「はい。エアカバーにはブリタニアに駐留中の第101海兵戦闘飛行隊と第1空母打撃艦隊、米海兵隊第12海兵航空群、それとブリタニア駐留の各国ウィッチ隊などです」

「ブリタニア軍やリベリオン軍の戦闘機隊は参加しないのか?」

「はい。そもそもネウロイに対する攻撃能力がウィッチ隊や我々の戦闘機隊よりも乏しいうえに、IFF(敵味方識別装置)を搭載していませんから、むしろ現地部隊の足かせとなります」

 

参謀はきっぱりとそう言ってのけた。確かにIFFの搭載を考えていない戦闘機に、いちいちIFFとバッテリーを搭載するには時間も予算もかかる。それに十分なエアカバーがすでにあるのだ、なら参加してもらわない方がいっそいい。

最後に質問したのは防衛大臣であった。

 

「肝心の巣の破壊の方はどうなっているんだ?」

「現在、威力偵察作戦が進行中です。作戦の結果次第ですが、現在のところは徹甲空対艦誘導弾による飽和攻撃を予定しています。三菱に増産を要請しており、11月までに50発が納品される予定です」

 

ここで言っている徹甲空対艦誘導弾とは、転移前の2027年に国防空軍及び海軍で正式採用された27式空対艦誘導弾―ASM-4の改良型であるASM-4B*5の外殻などを装甲素材などで分厚くするなどのさらなる改良を加えたものであった。

 

「もし、それで破壊不可能であった場合は?」

「その際には、()()()()()()()()事態となる可能性もあります」

 

東の言葉の意味が分からない無能など、この部屋には一人としていなかった。国防軍が無制限の武力行使を認められる防衛出動が発動されている状態で、総理自身が決断をしなければならない事態など、そう多くはないからだ。

この会議の長でもある大泉に、視線が集まった。大泉は、重々しく頷くと東に告げた。

 

「わかった。万が一がないと信じたいが、そういうことになったときのために横須賀の潜水隊を派遣しておいてくれ」

「わかりました」

 

横須賀の潜水隊―横須賀にいる原子力潜水艦部隊である第1戦略攻撃潜水艦隊配下の戦略潜水隊のことだ*6。つまり、核弾頭搭載型を含む、潜水艦発射型弾道ミサイルや巡航ミサイルを搭載した原潜を欧州に派遣するということだ。

転移前の日本は、水素爆弾5発、原子爆弾を20発配備していたが、転移後にネウロイの脅威にさらされてから、ひそかに量産を行っていた。

 

「我々はあらゆる手段を使ってでもネウロイをこの地上から撃滅しなければならない。そうしなければ、待っているのは人類の滅亡だ。そのことを重々心に刻んで、作戦に臨んでほしい」

「はっ」

 

この日の会議はこれにて終わり、ネウロイへの反抗となるガリア解放作戦の内容が決定された。

 

―――――――――――――――

 

会議が終わり、自身も市ヶ谷に戻ろうとしていた東のもとに、黒木国家戦略情報大臣がやってくる。

 

「黒木大臣。いかがしました?」

「ええ、例の電波妨害型ネウロイと、それに付随するネウロイの電波情報についての話でね」

 

東は、黒木の言葉を聞いて「ああ、あのことか」と思う。

 

「あれが、どうかしたんですか?」

「あとでそちらにも通達が行くと思うけど、あれに付随する情報はすべて機密扱いということになったわ」

 

情報の機密指定などについては、内閣府に新たに設置された公文書管理局が行っている。とはいえ、機密指定の決定には国家戦略情報大臣もある程度関わっているということであったから、黒木は正式に伝達が来る前にそのことを知っていたのであろう。

 

「なるほど。ちなみに、なぜですか?」

「1に、我が国の電子戦技術を他国に悟らせないこと。これからは、通信、レーダーなど電子戦が非常にカギになることはわかっているでしょう?他国に電子戦技術の情報を悟らせるのは、あらゆる面で得策ではないわ」

「では2つ目は?」

 

1に、と黒木が言ったということは、少なくとも理由は2つあるということだ。東は、2つ目の理由を尋ねた。

 

「2つ目は、分析の結果、ネウロイの電子技術が非常に高いことが判明したからよ」

「つまり?」

「分析の結果、ネウロイは2020年代の我が国と同じ電子技術を有している可能性がある。そんな情報が各国に知れ渡ったら、パニックと士気の低下は免れないわ。もしかしたら、それ以外の攻撃面でも人類のはるか先を言っているかもしれないのだから」

「たしかに、そうですね。わかりました。情報提供ありがとうございます」

 

そういうと東は黒木に頭を下げて、会議室を去っていった。

 

――――――――――

 

その1週間後、日本政府は連合軍連絡会議にてひそかに、潜水艦4隻及び中央放射能除染団から1,000名余りの兵員とその装備を欧州に派遣することを告げた。

対ネウロイ戦において役に立たないといわれる潜水艦の新規派遣に、各国は不審がったものの、日本政府はドーバー海峡沿いに配備することでレーダーに映りにくいネウロイの侵入などを、早期探知するためであると説明した。

*1
日中紛争後に自衛隊法より改正された国防法では、外国からの武力行使による有事下の場合の国防軍職員の依願退職などを禁止していた。また任期制兵士に至っても、任期は有事下が解除されるまでとされ、例外は病気や定年とされた

*2

・1940年度中期防衛力整備計画

【概要】

1940年国防大綱に基づき、海上戦力や陸上戦力の拡充を行うものとした。これらの計画を達成するため、1年あたり7兆円の国防予算の増額が行われた。

【主な内容】

海上戦力:1個揚陸艦隊、1個揚陸支援任務群、1個補給艦隊の整備

(強襲揚陸艦2隻、ドッグ型揚陸艦4隻、ミサイル巡洋艦1隻、ミサイル駆逐艦2隻、高速戦闘支援艦3隻)

陸上戦力:1個20000名級海兵機甲師団の整備。

     1945年中期防衛力整備計画に盛り込まれる部隊の人員教育

航空戦力:2個戦闘航空団及び1個早期警戒飛行隊の整備

*3

・1943年中期防衛力整備計画

【概要】

本来であれば1945年からの中期防衛力整備計画に盛り込まれる予定の内容であったが、ネウロイとの戦争がはじまり、企業の兵器増産体制が整い、入隊者数なども順調であることから、1940年の中期防衛力整備計画の内容を合わせて、本来の開始年を繰り上げて発表された。

1940年の中期防衛力整備計画に引き続き、1940年国防大綱に基づき、さらなる陸上・海上戦力の拡充を行うものとされた。

【主な追加内容】

海上戦力:1個空母打撃艦隊、1個戦略潜水艦隊、1個揚陸支援任務群、1個補給艦隊の整備

(原子力航空母艦1隻、ミサイル巡洋艦2隻、ミサイル駆逐艦5隻、汎用駆逐艦3隻、原子力ミサイル潜水艦2隻、原子力潜水艦6隻、高速戦闘支援艦3隻、潜水救難母艦1隻)

陸上戦力:1個20,000名級海兵機甲師団および、1個15,000名級機甲師団、1個15,000名級自動車化歩兵師団、1個10,000名級空挺師団の整備。

航空戦力:2個戦闘航空団及び1個早期警戒飛行隊、3個無人攻撃偵察飛行隊の整備。

*4
1944年時点で、1940年および1943年中期防衛力整備計画の達成状況は以下の通り。

【1940年中期防衛力整備計画での達成状況】

<海上戦力>

・1個揚陸艦隊(艤装中:強襲揚陸艦1隻、ドッグ型揚陸艦2隻/建造中:強襲揚陸艦1隻、ドッグ型揚陸艦2隻)

・1個揚陸支援任務群(艤装中:ミサイル駆逐艦1隻/建造中:ミサイル巡洋艦1隻、ミサイル駆逐艦1隻)

・1個補給艦隊(艤装中:高速戦闘支援艦2隻/建造中:高速戦闘支援艦1隻)

<陸上戦力>

・1個20,000名級海兵機甲師団(装備・人員共に充足。現在、部隊連携訓練などを行っており、本来であれば1945年中の実戦配備を予定していたが、編成が順調に進んだため1944年には実戦配備できる予定)

<航空戦力>

・2個戦闘航空団(装備は充足。現在、パイロットの育成中)

・1個早期警戒飛行隊(装備は充足。現在、パイロット育成中)

 

【1943年中期防衛力整備計画での達成状況】

<海上戦力>

・1個空母打撃艦隊(建造中:原子力航空母艦1隻、ミサイル巡洋艦1隻、ミサイル駆逐艦2隻、汎用駆逐艦3隻、原子力潜水艦1隻/発注済み:ミサイル駆逐艦1隻、原子力潜水艦1隻)

・1個戦略潜水艦隊(建造中:潜水救難母艦1隻、原子力弾道ミサイル潜水艦1隻、原子力潜水艦1隻/発注済み、原子力弾道ミサイル潜水艦1隻、原子力潜水艦3隻)

・1個揚陸支援任務群(発注済み:ミサイル巡洋艦1隻、ミサイル駆逐艦2隻)

・1個補給艦隊(発注済み:高速戦闘支援艦3隻)

<陸上戦力>

・1個20,000名級海兵機甲師団(部隊の7割が編成完了)

・1個15,000名級機甲師団(装備・人員の9割が編成完了。1944年中に実戦配備へ向けた訓練に移れると思われる)

・1個15,000名級自動車化歩兵師団(装備・人員共に編成完了。現在実戦配備に向けた訓練中。1945年初頭に訓練は修了する予定

・1個10,000名級空挺師団(装備・人員の5割が編成完了)

<航空戦力>

・2個戦闘航空団(装備は調達段階。パイロットも育成中)

・1個早期警戒飛行隊(書類のみの存在)

・2個無人攻撃偵察飛行隊(編成完了。現在、実戦配備に向けた訓練中)

*5
M6で飛翔するASM-4の改良型で、主な改良点としてP-1哨戒機への搭載を可能にしたことや、飛翔時に複雑な軌道を描き、迎撃を受けにくくするようにしたことなどがあげられる

*6
第1戦略攻撃潜水艦隊には2つの潜水隊が組み込まれており、1個戦略潜水隊には原子力戦略ミサイル潜水艦1隻と原子力攻撃潜水艦2隻が配備されている。




いかがでしたでしょうか?
新年一番に投稿するような内容ではない気もしますが、ご容赦くださいませ。
では今年もよろしくお願いいたします。

次回 第56話 少しづつ

お楽しみに

ネウロイの瘴気の正体は?

  • 1:放射線もしくは放射能物質
  • 2:有毒な重金属などの微粒子
  • 3:毒ガス
  • 4:日本でもよくわからない

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