続けるかも解りませんし、続けられるかも解りません
「ふざけてるのか?」
「私はふざけていません。本心で言っているんです」
時は夕暮れ、中学校生活最後日である卒業式があったその日、学校の屋上で一つの壁にぶち当たった。壁と言っても、目の前の少女の対応をどうするかだが……
『氷川紗夜』
俺が通っていた中学校の生徒会に所属してした優秀生。腰まで伸ばした水色のロングヘアーと綺麗な翡翠色をした目を持つ美人だ。頭脳明晰で一度やると決めた事は最後までやり通す生真面目な人だと噂で聞いた事がある
そんな彼女がわざわざ手紙を使って呼び出して来たので、何事かと思い軽い気持ちで屋上にやって来た。
しかし、開口一番に言われた事に俺は驚きを隠せない。
俺は言われた事を振り返りながら彼女に答えを返す
「『私と一生を共にしませんか?』か。普通ならお前みたいな美人にこんな告白をされた奴は喜ぶ所だろうなんだが……何故俺なんだ?俺とお前は殆ど関わりが無い筈だが?」
「貴方はそうでも、私はずっと見ていました。貴方の生き方、考え方、立ちはだかる壁に立ち向かう姿。全てを見ていたつもりです」
こいつもか?どいつもこいつも見下した目で俺の事を見やがる。穢れた過去を持つだけで、人間は簡単に切り捨てられる。俺だってこんな人生を送る為に生まれたわけじゃない。少し突き放せばこいつも引くだろ
「俺の事を……ね。それはどういう気持ちで見てたんだ?『穢れた息子』『人殺しの息子』それとも『税金泥棒』としてでも見ていたのか?」
俺は彼女を睨みつけながら周りの人間に言われている汚名を並べながら吐き捨てる様に声に出した。しかし、一切臆することも無く、こちらを見ながら真っ直ぐと据わった目をしながら彼女は口を開いた
「いいえ、そんな感情で貴方を見ていた訳ではありません。ただ……」
「ただ?」
「私も貴方みたいになりたいと思ったんです」
「…………は?」
彼女も自分の意思を貫き通す、そんな強い感情を感じさせる目をしながら言葉を投げ掛けてくる。
だが分からない。俺の過去についてはこの学校の誰しもが知っている。お世辞にもまともな人生とは言えない
6年前、俺が小学生だった頃に父親が殺人事件起こし逮捕されて刑務所に収監された。それからは母親が一人で俺を育ててくれたが、時が流れると共に家計が苦しくなり、まともな食生活も送れなくなっていくと、母親の精神状態が不安定になり、日々に発狂したり錯乱状態になった。日頃から暴力を振るい、気に入らない事があるとすぐさま酒に溺れた
そんな狂った家庭から俺は逃げた。
家から逃げ出した所を警察に保護され、母親は精神病院送りとなり、俺は児童養護施設に入ることになった
そこからは普通の生活が送れると思って期待を寄せていた。俺と同じく、親が子育てが出来ないと判断され保護された子供や事件や事故で親を失った子供達が過ごしていた。
施設での生活は一言で言うなら快適だ。食事は三食栄養を考えられた食事が出るし、暇つぶしにとおもちゃやゲーム等もある。部屋も広く、一人一人に一部屋あるぐらいだ。前とは比べ物にならないぐらい良い生活だ。
しかし、中学校に上がると、快適で気楽だった生活が一変した。運の悪い事に、父親が殺した人の子供が同じ学校、同じクラスに居たのだ。そこからは最悪の日々。『穢れた息子』『人殺しの息子』等と蔑まれ、3年に虐めを受けた。殴られ蹴られの肉体的苦痛や蔑みや陰口の精神的苦痛。初めは辛いと思っていたが、次第に陰口を言われても気が触れる事も無くなり、肉体的にも殴られたり蹴られても痛みを感じなくなってきた
そんな事があってもう三年。ようやくあの忌まわしい学校生活が終わると思っていた矢先にこれだ。はっきり言って意味が分からない。輝かしい未来が待つ彼女が暗く、忌まわしい過去を持つ俺になりたいなんて……
久々に、イライラしてきたな。
なぜ俺を目指す? 自分も同じ経験をした?
いいや無い。俺みたいな奴が居たら真っ先に集団から浮いてくる。今まで何もないはずが無い
ならなぜ? 分からない。
なら、問い詰める他ないな……他に方法があるか?
徹底的に………確実に聞き出す……!!
「きゃあ!?」
気づけば俺は彼女を腕を掴んで引っ張り、勢い良く体勢を崩して彼女を床に押し倒す。誰だって強姦されかければ嫌でも話したくなる。話そうとする筈だ。
「答えろ、何故俺に近づく?」
彼女の身体に乗り、馬乗りの状態で問い詰める。その際に彼女の首筋を触り、腰まで撫でるように触れながら胸まで手を運び、程よく成長したその胸を揉みしだく
「っ!?………これが貴方のやり方ですか?」
「お前だって初めてを失いたくないだろ?なら質問に答えろ。そうすれば解放してやる」
自分でもこれは犯罪だと分かっている。だが、彼女の言葉の真意を知りたい。命綱無しの綱渡りだが、どうせろくな人生を送ってはいない。今更刑務所に入ろうが死のうが恐怖すら感じない。
ただ知りたい。彼女が何を思って俺に近づいたのかを
そしてその答えを待っていると、彼女から衝撃の回答が帰って来た
「……………ですよ」
「!?……おい、もう一度言え!!」
小声だったが、微かに聞こえた彼女からの回答に驚きを隠せない。何かの間違いだろと俺は声を荒げながら問いただす
「しても良いですよ、貴方となら。それに貴方以外にこんな事、受け入れたくありませんしね」
「お前、自分が何を言って「取り敢えずは」っ!!」
首筋に突然強く刺されたかのような感覚に襲われる。その原因を確かめようとするが、身体が思う様に動かなくなっていた。まるで電気に痺れたかのような鋭い感覚に身体が耐え切れず、俺は床に伏してしまった
「いきなり求めてきた事には驚きましたが、いずれはしようとしていた事ですからね」
拘束から解放された彼女は一切逃げ出そうとはせずに、俺の事を見下してくる。まだこんな事されるのかと内心諦め始めた所で彼女の顔を見てみると、そこにはさっきまでとは別の姿が見えた気がした
「すみません、本当はこんな事したくは無かったのです……いいえ、元々予定していた事ではあったのですが」
右手に黒い物体を握り締め、微笑みながら自分を見下してくる。しかし、重要なのはそこじゃない。
何度も、何人も見てきた瞳、いつ見ても誰しもが異常だと思う目を彼女はしていた
児童養護施設に入る子供は何かしらのトラウマを持って来る子も多い。過去のトラウマが原因で精神が病んでしまう子も何人も居る。一目見たら恐怖し、謎の寒気を呼ぶ光の無い暗い瞳。彼女はまさに病んだ子供と同じ瞳をしていたのだ
「貴方を逃がすつもりはありません。貴方のような人は世の中にそうは居ませんからね。『遠坂響』さん?」
「っ………」
逃げ出そうとはしたが身体が動かない事によって逃げられない事を嫌でも実感する。彼女によって身体が持ち上げられるが抵抗する事さえ叶わずに彼女に身を任せるのであった。