無限渓谷の城砦に滞在して3日。
その間、連絡の行き届いていなかったマークス兄さんがやってきたりしたハプニングはあったもののとりあえずなんとかなった。
ヤクシの石様様である。というかレオン様様である。レオンが弟で本当に良かった。
そして、俺は今なんだかやけにフレンドリーなリンカとスズカゼと共に白夜王国の王城に案内されている。
「なぁ、これ暗夜で言うところの“殺す前にはワインを振る舞え”的な奴か?」
「...カムイ様、私達はカムイ様に着いて行きます、何があっても、どこであっても」
「ジョーカー、それってあの世までとかって話じゃないよな⁉︎ごめんだぞそんなの!罠ならどうにかして逃げるからな!」
「安心しろカムイ、命の恩には命で返す。貴様が本当にそうなのかは知らないが、白夜王城まできちんと案内する。任せてくれ」
すると、門の前で赤揃えの武具を装備した見覚えのある武者が走ってきた。あれは、道場の中で唯一役に立ったあの道場の師範代だ!
「スズカゼ、リンカ!」
「これは、リョウマ様⁉︎」
「あなたは!鬼神流の!」
「...すまん、鬼神流とはなんだ?」
どうやら、スピリットでしかなかった鬼神流の人は記憶を引き継いではいなかったようだ。自分があの世界の記憶を引き継いでいるのはファイターとして存在を確立していた自分のような者だけなのだろう。
そのあたりの事をマリオさんに聞いてみたいと思った。あの人大乱闘参戦経験最多を誇るレジェンドだし。
「すいません、知り合いに似ていたもので」
「そうか、だが神を名乗る流派の者に似ているとは、少し誇らしいな」
「...ははは」
「と、そうも言っていられないんだ。北方の山の村々が敵襲を受けている。いま、そのあたりにはヒノカ達がいるはずなんだ。スズカゼ、リンカ、手を貸してくれ」
「...襲撃は、ノスフェラトゥによるものですか?」
「ああ、暗夜の卑劣な兵器だ」
「...なら、手を貸します。僕はカムイ、そしてこちらはギュンターとジョーカー。守る為の戦いなら、任せてください」
「カムイ...?まさか、お前が?」
「はい、暗夜王国第2王子です。思う所はあるかもしれませんが、今は」
「...ああ、きょうだいを助けるのが最優先だ。力を借りるぞ、カムイ!」
そうして、森の茂る山間の村々にて、戦闘音が聞こえる。
助けたい。理由も分からずそう思った。
そのために、やるべき事は!出来る事は!
「スピリットセット!シーダさん!ホウオウさん!モトクロッサーさん!空での速さ、お借りします!」
僕の呼び声に答えて、スピリットが力を貸してくれる。
今回のスピリットセットは、シーダさんがメイン。ジャンプ強化のアビリティを持っている強力なスピリットだ。そして、サブに付けているのはホウオウさんとモトクロッサーさん。ホウオウさんは空中ジャンプの回数を一度増やしてくれる力を持ち、モトクロッサーさんは地上、空中での移動速度を上げてくれるという効果を持つ。
この力と、自分の空逆があれば、木々の枝葉を飛び移り、山を飛び越えながらあの場所に辿り着けるだろう。
「じゃあ、リョウマさん!先行きます!」
「何を...何を⁉︎」
「空中を跳ねている⁉︎しかも凄い速さだ⁉︎」
「...私より忍者をしている気がしてなりませんね」
「スズカゼ殿、忍は空を飛びません」
「それよりも各々方、我らは我らの戦いをしましょう。カムイ殿が奇怪な事と敵の数は関係がありません。カムイ殿が王女様方を護衛しているうちに我らはノスフェラトゥを殲滅するのが得策かと」
「...そうだな、礼を言うぞ老騎士殿。行くぞ!リンカ、スズカゼ!」
「「は!」」
「ジョーカー、白夜の者に遅れを取るなよ」
「ご心配なく、誰に鍛えられたと?」
「フ、それなら安心だな。行くぞ!」
「癒しの杖なら私も使えます!援護は任せてください!」
背後で、森に足を取られているノスフェラトゥを倒していくリョウマさん達が見える。戦っているのは、僕1人じゃない。
たとえ一時であっても、白夜と暗夜の者が手を取り合えた。それは、きっとおおきな一歩なのだ。
そうして森を飛び越え、ノスフェラトゥの拳を受けそうになっていた天馬武者を救う為に上空から空下を放つ。
急速落下とその衝撃波によりダメージを与える技。
こういった、奇襲にはもってこいなのだ。
「空から⁉︎」
「安心してくれ」
「僕はカムイ。あなた達を、助けに来た!」
「そうか...サクラは今足を挫いている。大きくは動けない」
「ならばあなたはサクラさんの護衛に集中して下さい。もっとも...」
「1匹たりとも通すつもりはないですけどね!」
まず、先程空下で吹き飛ばした 一体が丁度いい距離にいたので、横B先端当てで思いっきり吹っ飛ばす。まず一体。レジェンド級のスピリットであるシーダさんの力は、反則とも言えるバースト力を自分に与えてくれるのだ。
次に、山から降りてくる4匹のノスフェラトゥが来たが、纏まっている。攻陣を保っているのだろう、連携攻撃に気をつけなくてはならない。
が、正直レジェンド級のスピリットの防御力をもってすればその程度の攻撃力など誤差でしかないので、強気に攻める。横Bで固めて派生のキックで2体纏めて飛ばす。その後の後隙を殴られるも、ダメージは3%ほど、無視していい。
そして、ダメージにより硬直がなくなったのでとりあえず小ジャンからの空Nを放つ。巻き込みで2人をひっかけられたので、サクラさん達に近い方に追撃を入れる。空上で更にかち上げてもう一段ジャンプ、そして上Bでバーストする。
これで、残りは3匹、うち2匹は当てた感じから強攻撃ならバーストできる。
「東の山から3匹来たぞ!気をつけろ!」
「ありがとうございます!天馬の人!」
ノスフェラトゥのスピードはそう早くない、纏めて倒せば天馬の人にたどり着く前に片付けられるだろう。
というわけで、適当な攻撃をしてきた無傷のノスフェラトゥに下Bでカウンター、続けて帰ってきた2体のノスフェラトゥを上強で纏めて宙に。
そして、ジャンプ、上強、ジャンプ、上強、ジャンプ、上強。
三連コンボによってノスフェラトゥ達は上空バーストできた。それを確認しないまま次に行く。
そして、3匹のノスフェラトゥが攻陣のままに攻めてくるが、山に足を取られている連中などただの的だ。
空前にて浮かし、ジャンプして空上で追撃。先程の連中よりも軽かったのか3匹のノスフェラトゥはそれでバーストできた。
残りを探すが、どうやらリョウマさんとギュンター達が残りは倒してくれたようだ。
「無事か!ヒノカ!サクラ!」
「リョウマ兄様!ええ、カムイのおかげです。まるで宙を跳んでいるかのような華麗な動き、侮れませんね」
「ああ、正直俺も目を疑った。だが、詳しい事は後でいいだろう。救出もできた事だ、きょうだい皆で王城に帰ろう」
「はい!」
そうして、帰ろうとした時に服を掴まれた。
先程の天馬武者さんだ。リョウマさんの言葉が正しいのなら、彼女がヒノカ王女なのだろう。第一王女は空を飛ばなくてはならない運命でもあるのかとちょっと思った。カミラ姉さんとヒノカさんとピーチ姫を見ていると。
「カムイとは、カムイ、なのか?」
「...よくわかりませんが、僕は暗夜王国第2王子のカムイです。先程はヒノカ王女様だとは気づかずに申し訳ありませんでした。怪我などはありませんか?」
「...そのことについても、王城についてから話そう。だがヒノカ、俺たちならわかるはずだ」
「ええ、カムイはカムイだ!帰ってきたのですね!」
「すみませんサクラ王女、話がさっぱり見えないのですが解説してはくれませんか?」
「す、すいません。私も実はさっぱりです」
そうして、山の村々を襲うノスフェラトゥからヒノカ王女とサクラ王女を救出するという緊急任務は達成された。
「ギュンター、これで多少は信用されるかな?」
「わかりません。ですが王族2人の命を救ったともなれば発言が完全に無視されてしまうことはないでしょう。カムイ様にはすぐそこまで選択が迫っています。暗夜で生きるか、白夜で生きるかの」
「ギュンター?」
「どちらにせよ、我々はカムイ様のお供をします。それだけは信じてください」
「そうです!カムイ様の為なら、私は命を惜しみません!」
「ありがとう、ギュンター、ジョーカー。あと、リリスはなるべく命とか懸けないでほしいかな。大切な、家族なんだから」
そうして、やってきた白夜王国。太陽が眩しくて仕方ないが、この感覚に懐かしさを感じる自分がいる。
あの世界での戦いの時は、本当に驚いたものだ。世界はこんなにも明るいのかと。
それを見て感動して涙を流してしまっていた所を、ネスさんとリュカさんに慰められたのはいい思い出だ。
「さぁ、ここが白夜王城だ。暗夜育ちで見るもの全てが珍しいのはわかるが、少しキョロキョロしすぎだぞ、カムイ」
「すいません、こちらの串焼きはいくらなのですか?」
「これかい?そうだな、リョウマ王子のお付きの人なんだし50でどうよ」
「いえ、権力をそのように扱えば落ちる先は邪悪のみです。定価で買わせていただきたいと」
「これは驚いた。そんなら定価は70だよ。だけども、あんたの心意気に免じてもう一本おまけしてやるよ」
「...ありがとうございます」
「リョウマ様を頼むよ!」
そうして、2本の串焼きを持ってきた俺を見て、なんだか「コイツはもう...」と言った視線を感じた。
「リリス、おまけもらったから一本食べるかい?」
「はい!頂きます!...ですが、これが70Gですか」
「ああ、相当だぞこれは。肉なんて高級品、暗夜では500Gは下らないのに」
敵の大きさを感じ取ってしまった、一幕であった。
確かに、こんな良い暮らしができるのなら白夜に住んでしまうとも思われてもおかしくはない。だが、流石にレオンは兄を侮り過ぎだと思うのだ。
暗夜で白夜の暮らしができるようにするのが、僕たち王族の仕事だろうに。
そうして何店かの露店を巡りつつ王城にたどり着く。
木で作られた、ちょっと目眩なさそうな城だった。
「白夜って凄いですね、リョウマさん」
「当たり前だ、そうであるように父上も母上も頑張っているのだからな」
そうして、白夜王城の中に入る。
当然武器は取り上げられるのが当然と思い、腰の鉄の剣を渡したところで気付く。
「あ、ガングレリ砦に忘れてきた」
「カムイ様⁉︎」
さらばガングレリ、君のことは忘れない!
ついに使ったスピリットセット。カムイくんは自分が英雄でないときに英雄たちに揉まれた経験から、なんでも使う逞しい子にジョグレス進化しました。パワーインフレが加速する!