【完結】大乱闘より帰ってきてしまったカムイくん   作:気力♪

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思ったよりも分量が増えてびっくりな自分でした。後2話くらいですが、頑張ります!


ミコトとアクアと弟と父と

「カムイ、ああカムイ!帰ってきてくれたのですね!」

 

玉座から駆けつけて俺を抱きしめようとするどこか懐かしい女性。

 

しかし、ダッシュ投げを無意識に警戒していた自分はその場回避を咄嗟に出してしまった。

 

俺の体を通り抜けて俺の後ろでビタンとつまづく女性は、白夜王国の女王、ミコト様。

 

俺の母親を名乗る、女性であった。

 


 

『なぁレオン、知ってたのか?』

『...うん。兄さんとは血が繋がってないって事は、皆知ってた』

『...そっか』

 

『それでも皆は、俺をきょうだいと呼んでくれたんだな』

 

それは、とても暖かい真実だった。

 

たとえ血が繋がっていなくても、暗夜の皆はきょうだいだ。今なら、胸を張ってそう言える。

 

だって、あの幽閉の日々は楽しかったのだから。心の底から、皆のおかげで。

 

『うん、やっぱ頑張るわ。暗夜と白夜が殺し合わなくて済むような仕組みを作り上げてみせる』

『できるの?兄さんは今、白夜に亡命した逆賊として扱われてる。白夜との繋がりは作れても、暗夜との繋がりは難しいかも知れない。ま、僕たちきょうだいは別だけど』

『やる。その為の道筋は、もう見えてる』

 

『だからレオン、女の子を口説くやり方を教えてくれ!』

『...兄さん、それカミラ姉さんに殺されるよ。下手したら』

『...待ってくれレオン、カミラ姉さんと血が繋がってないってことは、あの過剰なスキンシップはもしかしなくても⁉︎』

『ほら、狙った獲物は逃がさない的な奴じゃない?』

『...暗夜に帰るの怖くなって来た』

『...そっか帰って来てくれるんだ』

『そりゃ、約束は守るって言ってるだろ。大切な弟との約束なんだ、それを守らないのは男じゃない』

 

『てな訳で、頼むわ』

『明日ね、大体僕もそんなに女性経験ないし。ちょっと部下の馬鹿どもに聞いてみる』

『ありがとう、レオン』

『いいよ、きょうだいなんだから』

 

そうして、ふらりと聞こえて来た歌声に惹かれていく。心に安らぎを与え、しかしどこか悲しみを訴えかけるような、不思議な歌だ。

 

プリンさんの、心が踊りついでに命も絶たれる歌声とは大違いだ。

 

そうして、泉で歌う彼女に見惚れた。

 

「あなた、カムイ王子ね」

「そういうあなたは、アクア王女」

 

歌を切り上げてこちらを向いたアクア王女。名前と顔は知っていた。あの戦いにおいて、僕らを助けてくれたスピリットの1人だったから。

 

しかし、それが僕と対をなす人質として白夜にいるとは不思議なものだ。

 

「あなたは、暗夜で生まれて白夜で育った」

「あなたは、白夜で生まれて暗夜で育った」

 

「なんだか、奇妙な縁ですね。というわけでアクアさん。ちょっと面白い話があるんですけど乗りませんか?」

「私に?」

「はい。マークス兄さんから白夜に攫われた暗夜の王女が居るってのは聞いていたので」

 

それはレオンからの又聞きだが、まぁ言わなくて良いだろう、うん。

 

「白夜と暗夜との交易を仲介する会社を作るつもりでいるんです。それが成立すれば、暗夜側から白夜を攻撃する必要は無くなる。そうすれば、戦争は終わる。今短期的に進めてる策と並行して、長期的に戦争を無くす策としてそんな事を考えてます」

「...その、会社というのは何かしら?」

「マリオさんに聞いた話では、いろんな人からの支援でいろんな人が集まって仕事をする集まり、みたいな感じでしたね」

 

マリオさんは実は配管工という人々の飲み水を守る仕事をしている人たちの社長さんらしい。まぁ、副業で稼ぎすぎたので実質趣味みたいなものだとも言っていたが、それは王子でありながら商人の真似事をする自分も同じようなものだろう。

 

「...商人とは違うのかしら」

「実の所、軽く聞いただけの話なのでわかってないんですよねそのあたり」

「案外適当なのね」

「いえ、当時は見るもの聞くもの全てが輝いて見えていて、いろんな事を聞いていたんです。でも、そのせいでそんなに深いところまで理解はできていなかったというか」

「...そう」

「はい、そうなんです」

 

「でも、本質は捉えられたとは思ってます。そして暗夜からの支援は確実に取れます。暗夜には信頼できるきょうだいがいますから」

「それで、白夜からの支援を取り付ける為に私を?」

「はい、白夜と暗夜の橋渡しをするのには、絶好の人材だと思ったので」

 

「...それは、ミコト様から離れてしまうという事よね。あなたの実の母親は、ミコト様なのよ?」

「...それでも、俺は約束したんですよ。心の繋がった大切なきょうだいと」

 

「必ず帰るって」

 

真っ直ぐに見つめ合う俺とアクアさん。

 

少しして、「あなたなら、大丈夫かもね」と呟いた。

 

「聞いてカムイ。暗夜と白夜の戦争の裏にはある者がいる。呪いのせいでその名前は出せないけれど、そいつをどうにかしない限り、あなたの言う会社とやらが成功しても意味はないわ」

「分かってます。そいつの名前は暗夜においては異形神ハイドラと呼称してます。父さんが、狂わされ操られている元凶です」

 

「なので、必ず倒します」

「...どうして気付いたの?歴史から居なくなっているはずなのに」

「父さんが妙な宗教にかぶれたのと、暗夜の戦争方針が変わったのが同時期でしたから。そこに関係性がないとは思えませんよ」

「...そう」

 

「とりあえず、これからこっちで集める証拠を根拠の裏付けとして父さんを弾劾してマークス兄さんに王位を継がせます。会社設立はそのあとなので、白夜でゆっくりしていてください」

「ええ、あなたを信じてみるわ、カムイ」

 

そうして、その夜の密会は終わった。

 

世界を変える為の、大きな一歩として。

 


 

白夜王国にやってきて3日、自分がミコト様の息子であるという事(勘違いではないかと少し疑っているが)がきっかけで白夜の資料室への立ち入りを許可された。

 

が、レオンから少しキナ臭い情報がもたらされた。

 

白夜王国との国境近くで暗夜王国の大軍が演習をする計画があるようだ。

それはつまり、ミコト様が作ってる忌々しい白夜の結界を破る術が考案されたのかもしれない。

 

あるいは...

 

「誰だ、お前」

 

そんな考えを吹き飛ばしたのは、書物を積んで勉学に励んでいる少年だった。年の頃はレオンと同じくらいだろう。

 

「俺はカムイ。まぁ、客人扱いされてるよ」

「そうか、お前が暗夜のッ!何をしに来た!」

「ガロン王を追い落とす資料を集めにだよ」

「...暗夜で育った、お前が?」

「暗夜で育った俺だから、やらなくちゃならないんだよ」

 

そうして、刺さるような視線と共に資料を読み進める。

 

やはり、金の動きは変わってきている。間違いなく、このタイミングからガロン王の動きは変化しているのだ。

 

俺が暗夜王国に攫われる少し前、俺の実の父親である(らしい)スメラギ様が殺される少し前。

 

その時に、ガロン王は操られたのだ。

 

「なぁ、タクミ王子」

「なんだ、暗夜の」

「人の心を操る術っての、白夜にどれくらいある?」

「...暗夜じゃないんだ、そんな非道な術はウチにはない」

「じゃあ、それを解く術については?」

「...無病息災という祓串があると聞いている。もっとも、作るのに相当な費用がかかるからまだ量産はできてないがな」

「博識だな、タクミ王子は」

「うっさい、僕はこういう面できょうだいを支えるって決めているだけだ」

「とすると、やっぱりあの策しかないか」

「何を考えている?」

「ちょっと、借りたいものがあってな」

 

そんな話をしながら、しっかりと警戒してすぐに弓を取れる位置にいるタクミ王子。正直、心強い。

 

「タクミ王子がいるなら、白夜は大丈夫だな」

「なんでそんな事を?」

「血の繋がってないきょうだいがいるんだから、血の繋がった敵がいるのもおかしくない。それをちゃんと認識して、戦う事を選べるのは、多分すごい事なんだよ」

「...変な奴だな、暗夜の」

「いや、俺なんかまだまだだよ。世の中には爆弾で自爆する事でフィールドに帰ってくる凄い人もいるんだから」

「それ凄いの意味違うだろ!」

 

リンクさんのアレ、一発芸かと思ったら普通に実戦で使ってくるのだから恐ろしい。崖外でNB当てても帰って来られるのはけっこうしんどいのだ。

 

などと言いつつ、隠し持っていたヤクシの石を握る。

 

白夜側の関係資料の写しは大体終わったと、念を送る。

 

これからが、勝負だ。

 


 

「リリスさん、やはり筋が良いですね。ここはこんな感じに力を開くのです」

「はい!...凄い、できました!」

「ええ、流石あの人の娘ですね」

 

何やら物凄く仲の良くなっているリリスとミコト様。念のための人質として軟禁されているジョーカーとギュンターには申し訳ないが、実の息子との触れ合いが出来なかったミコト様への対応をリリスに任せたのは案外悪くなかったのかもしれない。

 

「ミコト様、カムイです」

「そんな、お母様でも母さんでもママでも良いんですよ?カムイ」

「そうですよ!カムイ様、ちゃんと言ってあげて下さい!」

「心から思えていないのにそのような大切な言葉を吐くのは不誠実だと思っています。...というのを何度言えばいいんでしょうね」

 

もはやテンプレと化したやりとりである。

 

「それよりカムイ様、見てください!とぉ!」

 

リリスの翳した手から、団子か突然に現れる。隙は大きいが回復アイテムを生産する技だろうか。まぁ、その手の技は大体回復効果がおまけなのは周知の事実。何が飛び出てくるのか体が反射的に警戒をしてしまった。

 

「どうですか!」

「その団子にフレームで重なると大ダメージを受けるとかか?」

「カムイ、何を言っているのですか」

 

とするとなんの技だろうか?

 

「これは、収納の術と名付けています。竜石からの力で異空間への入り口をつくり、そこに物を入れるというものですね。リリスさんには才能があったので、ちょっと教えていました。これがあると料理も掃除も便利なんですよ」

「はい!取り出せる量もコントロールできる上に、出す過程でふるいをかけたり混ぜたりできるので、お菓子作りの手間が大幅に短縮できてしまうのです!」

「ああ、むらびとさんとかしずえさんとかの収納技か。アレNB食べられるから怖いんだよなぁ」

 

なんて会話を挟みつつ、ミコト様にあるお願いをする。都合のいい時だけ息子である事を利用するようで心苦しいが、やらなくてはならない事なのだ。

 

「ええ、ですが条件があります」

「何ですか?」

「家族みんなで、街を回りましょう。あ、リリスさんも一緒にきて良いですからね!」

 

そんな訳で、白夜王族プラス自分とリリスという謎の豪華メンバーによる街歩きが急遽決定した。

 


 

白夜の街は、本当に豊かだ。太陽の恵みが溢れ、木々は鮮やかに彩り、食物も衣服も容易く手に入り、そして、人々が笑顔を絶やさない。

 

本当に、美しい。

白夜に来る前に一度見た暗夜の街では、皆が皆怯えていた。皆が皆苦しんでいた。それでも、頑張ろうと皆で生きていた。

 

だが、そこに笑顔はなかったのだ。

 

「なぁリリス、目標は高いな」

「大丈夫ですよ、カムイ様なら」

 

「カムイ様は、私に幸せをくれました。なら、暗夜の皆を幸せにするなんて訳ないですよ!ちょちょいのちょいです!」

「リリス...」

 

「お前ミコト様の駄目な所ばかり学んでないか?」

「そんなことはないですよ!」

 

だが、正直ミコト様の印象は最初に出会った時のダッシュ掴み失敗して転んだあのイメージのままなのだ。いくら高貴な母親らしさを見せても、あれが覆ることはないだろう。

 

失礼だと思うが、まぁ仕方ないのだ。

 

「カムイ!こちらの店の串焼きは絶品だぞ!」

「お、この前の兄ちゃんじゃねぇか!白夜王族のお付きとは、出世したねぇ!」

「いいや、カムイは私たちのモガガガガ」

「ええ、お付きとしてしっかり護衛をさせていただいてます。正直緊張ばかりですよ」

 

ヒノカ様の口を塞ぎつつGを払って串焼きを買う、「何をするのだ!」と抗議が来たが、そりゃ自分が白夜の王子である事はまだ秘密なのだから当然だろう。

 

自分は、暗夜に帰るつもりであり、暗夜を救う為にここにいるという宣言は、最初の日にしっかりと言ったのだから。

 

「ム、そういえばそうだったな」

「忘れちゃダメですよ、ヒノカ姉様」

「ま、コイツが白夜の王子だなんて認めてないけどね」

「タクミ、そう突っかかるな」

「フフ、皆元気ねぇ」

 

そうして和気藹々としつつたどり着いたのは王都の中央広場、なにやらデカイ石像から懐かしい響きが聞こえるような気がするが無視しよう。白夜で買った青銅の刀が便利なのが悪い。何せ必殺回避10という破格の能力値を誇るのだから。

 

尚、リョウマさんが奢ってくれるという話なので10本も買ってしまった。後悔はしていない。

 

あのチェーンソーがないのに与えるダメージもバースト力も変化しなかったのは確認できている。つまり、剣ならなんでもいいのだ。スマッシュホールド時のあのガリガリがない事は少し弱くなったとも言えるが、そもそも横スマなんて多用したら後隙で殺されるので関係は多分ない。

 

そんな事を思っていると、平穏な空気に戦場のものが混ざったのを感じた。これは、奇襲の類だ。

 

「リョウマさん!ミコト様の護衛を!リリスとアクアとサクラ様は後衛、ヒノカ様とタクミ様は迎撃しつつ市民の避難を!俺は、敵を倒しに行きます!」

「敵だと⁉︎どこに...ッ⁉︎」

 

反射的にリョウマさんが放つ雷撃により奇襲を仕掛けてきた透明な兵士は手傷を負う。

敵の武器は鉄の剣。

 

「兄さん、僕が!」

 

そして、追撃の弓。タクミ王子の弓さばきによりその見えない兵士は消滅した。

 

「こいつら、見え辛い!」

「カムイ、あれはドラゴンキラー!あなたを殺すための剣よ!」

「大丈夫!」

 

「あいつらからは、剣士として脅威を感じない!獲物が立派であろうとも!」

 

同時に攻め込んできた3人の透明剣士。ドラゴンキラーが唸りを上げているような気もするが。

 

ぶっちゃけ、カウンターすれば怖いことは特になかった。

 

「軽い軽い!そして、吹っ飛べ!」

 

綺麗に同じ方向に飛んで行った透明剣士3人を、そのまま空上でバーストする。

 

スピリットセットはまだしていないが、それでもバーストできたということは軽いという事。

 

なら、気をつけるべきはこちらに対して尋常じゃない剣気を当ててくるあの奥の剣士だけだろう。あの剣気、アイクさんに匹敵するかもしれない。

 

そうしていると、周囲からサンダーが飛んでくる。ルフレさんほどの精度はないが、囲まれて打たれるのは結構に厄介だ。

 

故に、ここはいつもの手で行こう。

 

「スピリットセット!アルカードさん!アナさん!ロボボアーマーさん!寄って斬るの、頼みます!」

 

スピリットが力を貸してくれるのを感じる。

 

まず、サブスピリットに置いたアナさんの力により、俺の体にフランクリンバッヂが取り付けられる。これにより、遠距離からの攻撃を全て反射する事ができる。そして、それを補強するのがメインスピリットのアルカードさんの剣攻撃強化の力と、サブスピリットのロボボアーマーさんの武器攻撃強化の力。これで青銅の刀の攻撃力を強めて早期バーストを狙う。遠距離を使う的に対しての鉄板スピリットセットだ。

 

「カムイ!危ない!」

「大丈夫!飛び道具は、全て反射だ!」

 

スピリットセットの隙を狙った魔術師たちが反射によるダメージを受けて怯んでいる所を、すかさずタクミ王子の弓が貫く。

 

凄まじい精度だ。これならば残りのダークマージたちは適当に殴る程度でいいだろう。

俺が攻め込んだ段階で増援のダークマージがやってきて白夜の民に無差別攻撃を始めている。タクミ王子とヒノカ王女はそれの対応に追われているが、逆に言えば対応してくれている限り民に被害は出ていないのだ。

リリスとサクラ王女の献身的な杖によるところも大きいが。

 

なんにせよ、後詰めにはリョウマさんがいる。ミコト王妃の事は心配しなくて大丈夫だ。

 

そう思って侍にDAを放つが、それは侍によってカウンターされた。見切り、回転のスレスレを潜り刀を振るう事によって。

 

こいつ、かなりできる!

 

「ああ、そんな...あなた?」

 

そんな声が響く。ミコト王妃の声だ。

 

何か因縁のある相手なのかもしれない。可能なら、生かして捕らえよう。可能であるとは思えないが。

 

「すいません、ダークマージは完全に任せます!コイツは、ここで倒す!」

 

やってみろ、とばかりに刀が構えられる。

 

そして、放たれるのは小太刀。背後に隠し持っていた一本だろう。それをフランクリンバッジにより反射しながら突っ込む。

 

小太刀を最小の動きで回避したその侍は、こちらの攻撃に対応できるようしっかりと構えている。

 

故に、まずは牽制だ。NBフルチャージをバックジャンプしながら放つ。チャージの段階で回避するのは読めていたので当たるものではないとわかっている。

 

それでも撃ったのは、後々のバースト技を当てるためだ。

 

そうして、侍は水のブレスを回避しながら突っ込んでくるが、あえて再びNBを構える。

 

そして、ノーチャージで放つ。

 

先ほどのフルチャージの弾が来ると想定していた侍はこの弾を避けきれず、結果ブレスの効果により一瞬動きが固まる。

 

そこからは、僕のステージだ。

 

ステップから入り下強で浮かし上強でさらにあげる。そこからジャンプして空前を当てて浮かせて、もう一度ジャンプして空上を叩き込む。

 

全てが青銅の剣によるものであり、2つの攻撃力増加ボーナスを受けている強力な攻撃である。

 

その連続攻撃によって、見えない侍は空に飛んだ。

 

急速落下により先に待ち構えた僕は、どんな行動にも対処できるようにしっかりと見据えて

 

男が、小太刀でミコト王妃を狙うのを見た。

 

そして、何故か一瞬躊躇った後に小太刀を投げ。

それを、ミコト王妃を守るために構え続けていたリョウマ兄さんの雷神刀により払われた。

 

その行動が最後のあがきだったようで、見えない侍は、しかしどこか満足そうに消えていった。

 

「大丈夫か、カムイ!」

「はい、スピリットに助けられました。あの一撃、スピリットなしで食らってたら1発で死んでいたかもしれません」

「...そうね、あの人はそんな剣士だったもの」

 

そうして、ミコト王妃暗殺未遂事件は終わった。

建国時よりの無傷の像は、その光景をただ見ていた。

 

内側に、英雄の刀を宿しながら。

 


 

「本当に行くのですね、カムイ」

「はい、ミコト王妃。正直、あのドラゴンキラーは明らかに僕を殺すためのものでした。今回の目的は、おそらく白夜の王族を殺す事によって戦争を激化させようとする暗夜の、暗夜を操る者の策です。だから、時間を与えてはいけません。最短でガロン王を倒し、暗夜、白夜の戦争を終結させる事が黒幕の思惑を挫く事だと思います」

 

白夜の、血の繋がったきょうだいに見送られて僕とギュンター、ジョーカーとリリスは再び暗夜を目指す。目的地は暗夜の演習場、そこで暗夜のきょうだいと合流して、白夜で手に入れた必殺の策を結実させる。そのために。

 

「カムイ、私は行かなくても良いの?」

「うん、ガロン王を操る者は多分アクアの不思議な歌を知っている。連れていったら逆に警戒されてしまうよ。まぁ、マークス兄さん達に会いたいってなら止めないけど」

「なら、ガロン王を倒したら連絡して。奴を倒すためにはきっと私の歌が必要だから」

「そうだね。じゃあ、今度もモズさんに手紙を渡すから、それで頼むよ」

「ええ。わかったわ」

 

そうして、僕は短い白夜王国での滞在を終えた。

 

「なぁ、リリス」

「何ですか?カムイ様」

「今度は、フェリシアとフローラも連れてまた来よう。戦争を変えた、その後で」

「...はい!」

 

不安はあれど、希望を抱いて僕たちは進む。

 


 

「ミコト様!大変です!」

「ユキムラどうしたのですか?」

「玉座が、ありません!忽然と消えてしまっています!」

「ああ、それですか」

 

「あげちゃいました」

「...は?」

 


 

座らせれば洗脳も解けるという、この凄い椅子を持って!

 

あ、ちゃんとリリスにしまってもらっています。大切なものなので。




黄金のチェーンソーになる剣「俺を拾えぇえええええええええ」

はい、夜刀神さんの出番はありません。ありがとうございました。

カムイ君は青銅の刀というチート装備を使っていきます。威力はスマブラ補正で変化しないのです。2Pカラーみたいな扱いになってます。

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