前日の分を見ていない方は前話からどうぞ。
「来たわね、カムイ」
「アクア、来たよ。ガロン王は偽物だった。本人は、とっくの昔に死んでいたんだろうね」
「そう...」
「ごめん、アクアにとっては実のお父さんなのに」
「...構わないわ。所で、これで全員?」
集まったメンバーは、自分、ギュンター、ジョーカー、フェリシア、フローラ、リリス、ラズワルド、ルーナ、オーディンの9名が暗夜側、アクア、リンカ、スズカゼ、そして異界から現れた謎の勇者に指導を受けて戦士としての頭角を現したモズメという少女の4人が白夜側。
総勢11人、これが異業神ハイドラ討伐部隊の総勢だ。
「なぁ、あのモズメっ子からドニさんと同じ匂いを感じるのは俺だけか?」
「僕も思った。とんでもなく強くなるよあの子」
「ドニさんって、鍋を兜にしてる勇者さんの事か?」
「ああ...ってカムイ様⁉︎何故それを⁉︎」
「いや、クロムさんとかルフレさんが『こんな時、ドニが居てくれれば!』ってちょくちょく言ってたから」
びくっと反応するラズワルドとオーディン、ついでにルーナ。
「ドニさんってのも世界を渡り歩く英雄だったりするのか?」
「ああ、あの方は平民上がりでありながら王国最強と名高い最強の男だったからな。ブラッディ・コート・ポットとは彼を指す字名だ」
「ま、まぁ僕達の故郷の話ですけどね」
「へー、じゃあルキナさん達もこの世界にいるのかな?」
「いや、そういうわけじゃなくて」
「というかカムイ様、どうしてルキナ達の事知ってるんですか?」
「ああ、僕はちょっと前に異世界での戦いに巻き込まれてね、その時に一緒に戦った仲間なんだ、クロムさんとルフレさんとルキナさんは」
「スケールがデカい⁉︎フフ、だが異世界の危機を救ったという点では我も同じ事」
「オーディン、何張り合おうとしてんの」
などと微妙に衝撃の真実を知りながらアクアの説明を受ける。
意訳するとこう、『無限渓谷に敵はいる。殺るぞ』
「じゃあ、一番槍貰います!」
「待ってくださいカムイ様!万が一の事を考えて私が前に!」
「急速落下!」
「聞いてない⁉︎というか落下が速い⁉︎」
「このようにすれば敵の元へ行けるわ、行きましょう」
そうして、王族から先に落ちるという前代未聞のハイドラ討伐隊の進軍が始まった。
「ここは透魔王国、歴史の闇に消えた母さんと私、そしてミコト様とカムイの故郷よ」
「つまり、ハイドラを倒せば良いんだな!」
「カムイ様、理解を放棄してどうするのですか」
「だってこの土地の枯れ具合だと領地としての旨味はないだろ?だったら亡国の事とか気にするだけ無駄だろ」
「確かに、ここの土地、耕しても土に栄養がないんで駄目な奴ですわ。暗夜麦なら育つかもしれませんが」
「ああ、アレ基本不味いしな」
無言で頷く暗夜側の一同。パンが作れないわけではないのだが、何か根本的に不味いのだ。暗夜麦は。
「さて、進みましょう。ハイドラはこの電撃作戦を予想していたとしても、カムイの戦力を想定には入れられていないはず。最短で透魔城まで突き進むわよ」
そうして、数多の罠を潜り抜ける。
「カムイ、砦の龍脈を起動させて道を作るわよ!」
「あの程度の障壁なら飛び越えて行けばいい!スピリットセット!フィオルンさん!ホウオウさん!四段ジャンプだぁ!」
「カムイ、ここでは龍脈で写し身を作れるわ。敵兵力を削りましょう」
「ああ、向こう側の敵からは金の匂いがする!絶対に倒そう!」
「ここでは、橋を龍脈で操れるみたい...カムイ、空を飛ぶのを少し待ってくれないかしら」
「まさか、母様⁉︎」
「私は透魔王の眷属のひと」
「敵ならぐだぐだ喋っているでねぇですよ」
「ナイスモズメ!横Bからの、飛び蹴りッ!着地読みの上スマだぁ!」
「ここの床動くのね、敵が待ち構えているだろうから注意しましょう」
「あ、先に跳んで掃除しておくわ」
「ようやく、たどり着いたわね。ここが王城よ」
「そうか。じゃあ正門から入るのも馬鹿らしいから城壁登ろうか。ロープ出してくれジョーカー」
「ええ。しかし、どうしてカムイ様はこうも逞しくなられてしまったのでしょう」
「きっと良き出会いがあったのだろうよ。異世界での戦いでな」
そうして、雑魚を掃除しながらやってきたのは玉座の間の前。
この奥に、ハイドラがいる。アクアの国である透魔王国を滅ぼした最悪の竜、異形神として暗夜竜を操っていた元凶。
「...行こう」
「珍しいわね、あなたとモズメがそんな普通のことを言うなんて」
「ここまで来たら、正面突破でしかねぇです」
「爆弾があれば城ごとハイドラを倒したんだが、無い物ねだりはしょうがない。真っ正面から行くのが最適解だ」
そうして、門をこじ開ける。奥には、この城の空間を捻じ曲げて作られている亜空間に、巨大で邪悪な竜がいた。
「待っておったぞ、カムイ」
「白夜と暗夜の為に、この世界の為に、お前を倒すぞ、ハイドラ!」
瞬間、この城での戦いで弓聖へとクラスチェンジしたモズメの弓がハイドラの目と思わしき部分を射抜く。だが、竜の鱗で弾かれて致命傷には至らなかったようだ。
「あの鱗、破るにはカムイ様の妙なのが必要みてぇです。そこらの武器しか持ってないんじゃ深手は負わせらんねぇですね」
「...皆、ハイドラの相手は僕がする。皆は水から湧き出してる雑兵を任せるよ」
「信じてるわ、カムイ」
「雑魚の掃除が終わったら、援護しますからね!カムイ様!」
「さぁ、行こうか!スピリットセット!ジーノさん!セレビィさん!癒しの力、頼みます!」
ジーノさんは、シンプルに能力値の高いレジェンド級のスピリット。そしてセレビィさんには長期戦になるほどにじわじわと効力が生まれる力がある。
ボスクラスの相手をする時の鉄板スピリットセットであり、キーラとダーズを同時に討伐したあの時のスピリットセットもこれだった。
「さぁ、タイマンだ!」
「貴様さえ居なければぁあ!」
ハイドラのブレスをジャンプで回避する。これはダメージ時間の長い技だ、故にとりあえず殴れる隙だろう。
「空Nを喰らえ!」
安定のとりあえず空N、そして空中ジャンプで離れる。
ハイドラは大型ボスらしく先ほどの攻撃など意に介さず、右腕によるなぎ払いを仕掛けてきた。空中回避でタイミングから離れる。が、続いて放たれたのは左腕でのなぎ払い。ちょっと連打は厳しい。
空中での緊急回避は一度しかできないのだ。
「カムイ!」
「大丈夫!12パーくらいだから!」
ジーノの防御力を超えて12%もダメージを与えてくるとは、油断しているつもりはなかったが恐ろしい敵だ。
そうして頭を振り下ろしてくる。ハイドラのハンマーのような頭の形は伊達ではないのだろう。しっかりと余裕を見て回避をする。
そこで、背後から何者かが襲ってくるもこちらを攻撃する前に生き絶えた。ジョーカーの暗器とモズメの矢によってだ。
正直、本当に心強い。
「カムイ様、回復の杖は⁉︎」
「大丈夫だリリス!そこでモズメたちに矢弾を供給することを止めないでくれ!」
「我が手を受けてもさして応えぬとは、誠に、誠に許し難い!」
今度は、邪悪な水弾を5つ作り出し、それを自在に操ってくる。
この手の攻撃は見慣れているが、5つという量は厄介だ、それにそこそこ大きい。間を抜けて跳ぶのも一苦労だ。
そして、続けて放たれる水流。こちらの動きを制限して水弾に当てようとする戦術だろう。実際にそれは躱しきれずに水弾のダメージを受けてしまった。
1発、20%ほど。これは喰らい続けると厳しい。
一旦深呼吸をする。冷静に、動きを見きれ。
どんな奇想天外な敵でも、その攻撃にはパターンが存在する。それは、魂がもつ癖のようなものだ。
そうして、2分ほど猛攻を躱し続けた。
「何故だ、何故当たらぬ!」
「戦いの経験だ。僕は、ファイターとしてはそう強くはないのかもしれない。けど、それでもあの戦いを生き抜いて、戦い抜いてきたんだ!」
「僕には見えるぞ!お前の倒し方が!」
「小癪なぁ!」
右腕の振り払いが来る。まずはその場回避で抜ける。
左腕の振り払いが来る。これもその場回避で抜ける。
そうすると、頭での叩きつけがやってくる。それを横にダッシュで回避して、横スマッシュを叩き込む。
この動きは、パターンは取れている。
「ならば、これはどうだ!」
放たれる5つの水弾。それを、大きくなる前に青銅の刀による空Nや空前で払いのけていく。すると、力は霧散して巨大になる前に消える。
そうして出来た安全地帯から、空中でNBを放ってハイドラにダメージを与える。
「なんだ⁉︎何なのだコレは⁉︎我は何を相手にしている⁉︎戦いが続くたびに強く鋭く洗練されていくこの強さはなんだ⁉︎」
「我が血の力では決してない!あの女の血でも決してない!神の力でも決してない!悪魔の力でも決してない!理解できない!何なのだ、何が貴様を強くする⁉︎何が貴様に力を与える⁉︎仲間の絆とやらか⁉︎透魔王の歌とやらか⁉︎一体、貴様は何なのだ!カムイィイイイイイ」
「決まってる。僕は、1人の!」
「ファイターだぁああああああああ!」
そうして、だいたいの攻撃を回避し。時に相打ち覚悟でダメージを与えることで両手と頭を破壊することができた。
「これが、お前の正体か。ハイドラァ!」
「まだ終わらぬ!我は透魔竜ハイドラ!世界を犯す災厄の竜!たかがひとりにやられてなるものかぁ!...ッ⁉︎」
そのコアには、しっかりと矢が突き刺さっていた。
深く、深く。
そうして、その矢をキッカケに手裏剣や暗器、投げ棒や手斧といった遠距離から攻撃できる手段は全て放たれていた。
「1人じゃないのよ、カムイは」
「そうですよ!カムイ様は、カムイ様なんですから!」
「フェリシア、理由になってないわ」
「おのれぇ!」
そうして、コアからのブレスで反撃がされるが、それを防いだのはリリスだった。
「えい!」
ブレスを、しまうというむらびとさんのような技によって。
「な、我が力が何故そこに⁉︎」
「...私も、あなたの娘だからです。お父様」
「そうか、あの時あの残りカスが戦いを選んだ理由が貴様かぁ!」
そして、その言葉を聞く前に信じて前に出た3人の剣士。
ラズワルドと、ルーナと、オーディンだ。
「あいにくと」
「デカブツ退治は!」
「我らの得手とするの所なのだ!」
すれ違いざまに放たれる3つの斬撃が的確にコアを傷つけ、最後の切り札を叩き込める穴をこじ開けてくれた。奴を倒す為の、風穴を!
「「「「「行け!カムイ!」」」」」
「ああ、これで最後だ!チャージ切り札解放!激流咆!」
水流にてハイドラコアを上に飛ばし、風穴に竜の力の全てを込めたブレスによって貫き破る。
「こんな、コトが⁉︎私は、ワタシは...」
そうして消し飛ぶその寸前に
「...ああ、ミコト。カムイは、大きくなったな」
そんな言葉が、聞こえた気がした。
エピローグ
「えー、ではこれより。透魔商社の起業祝いパーティーを始めます!白夜王国の方、暗夜王国の方、思うところは多々あるとしても、互いの利益とその先の笑顔の為に今は同じ方向を歩いて行けると信じています!では、乾杯!」
ハイドラを倒してから、半年が経った。
まず、変わったことといえば呪いがなくなったこと。それにより透魔王国の存在が認識され「実は俺、透魔の人間だったんだ!」と気づく人々がそこそこに出てきた。普通なら今の生活を保つのだが、忠義の深い者たちは透魔の姫君であるアクアの元に集まるようになった。
それが、現在の透魔商社の社員たちである。
正直人材集めに関してはエリーゼに頼んで暗夜のスラムから使えそうなのを教育していくしかないと思っていたからこれは朗報だった。
まぁ、持ち上げられるアクアとしては微妙な感じをしていたが。きっと白夜でもここまで持ち上げられたりはしなかったので戸惑っているのだろう。
だが、暗夜と白夜の戦争が終わったかといえば、実の所そうではない。ガロン王を操り、ミコト様を暗殺しようとしたハイドラを倒すという目的があった為に休戦していたが、それがなくなった今は純粋に互いの国の為を思って諸侯は戦端を開いている。
白夜側は、新体制になって落ち着く前に暗夜の戦力を削ぐ為に。
暗夜側は、これからの新時代において少しでも暗夜の立場を白夜の上にする為に。
その2つの思いから暴走する諸侯は多く、未だ完全なる休戦は成立していなかった。
しかし、これからは変わる。変えてみせる。
白夜と暗夜、2つの国を結ぶこの商社の目的は、公正公平で継続的な貿易の実現。
現在の戦争国家暗夜王国を作り上げたキッカケである白夜の食料輸出規制戦略をさせない為の、決して途切れないパイプライン。
戦争国家暗夜王国に対抗する為の武器の原材料、主に鉄鉱石などを継続的に輸入する為の決して途切れないパイプライン。
それを、暗夜白夜分け隔てなく繋げるのが、自分達透魔商社の役割である。
これを機に、白夜の商人は大口の食料輸出先として透魔商社を利用し、暗夜の商人は大口の原料輸出先として透魔商社を利用する。
それが、未来の平和につながる実現可能なプランだった。
「俺は、白夜王国の為ならなんでもするだろう。貴君のジークフリートと剣を合わせることだとてな。マークス新王」
「構わない。私とてそうだ。私は暗夜王国の為ならなんでもする。それが貴君の雷神刀と剣を合わせることでもな、リョウマ新王」
そして、その戦争中の両国家の新王は、現在このパーティーに参加している。他の白夜のきょうだいも暗夜のきょうだいも共にいる。
そして、彼らを束ねる2人の王は、物騒な事を言い合いながらもしっかりと手を握り合っている。後ろ手にナイフを持つような真似をせず。しっかりと。
レオンとタクミのように一見相性の悪い者も、エリーゼとサクラのように一瞬で親友になった者もいる。
この多種多様な光景が、自分達が作る未来だと信じたい。
そう思って、配膳の仕事をしている実の妹を見る。
彼女は、商社の高い地位を望まなかった。故に、今でもジョーカーの元で自分のメイドをやってもらっている。
そのうちこっそりと商社の仕事を回して、その功績で取り立てるつもりでいるのはリリス以外の皆の知るところではあるが、それはいいだろう。
「さて!ここにいる皆様方にお聞きしたい事があります!」
「金色の、刃が回転する刀について情報を持っている方はいらっしゃいませんか?」
まずは、透魔商社を作るキッカケになってくれたあの戦いの立役者、あのチェーンソーを探せるまでの組織になる事。それが、当面の目標だった。
ちゃっかりとパラレルプルフでクラスチェンジしたオーディンさん。まぁテンプレなんですけども。
というわけで、ここからはダイレクトマーケティングタイム!
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