私立文月学園。試験召喚システムと呼ばれる特殊な制度を導入しており、学園でありながらそのシステムの研究施設という役割も担っている施設である。
その文月学園では今日、新たな年度を迎え、一学期が始まる。生徒達が校門から校舎へ入っていく中、一際目立つ格好の女子生徒が校門を潜ろうとしていた。
その生徒は服装こそ規範通りであるが、後頭部に結ばれた大きな赤いリボンがあり、顔の両脇には一総ずつまとめて赤い髪飾りをつけているという奇抜な容姿が特異性を表している。
その少女――――――博麗霊夢は校門を潜ろうとするが、そんな彼女に声をかける一人の男がいた。
「お前にしては遅いんじゃないか?おはよう、博麗」
「ええ、つい二度寝をしてしまって。おはようございます、西村せんせー」
名を西村宗一。趣味はトライアスロン、生活指導の鬼であり、何人もの生徒に地獄の補修を受けさせてきた、筋肉教師である。
生徒達からはその姿と教育方針から、『鉄人』という渾名が付けられている。
「二度寝か....前日に夜遅くまで起きていたのか?あまりそういうことはしないほうが体のためだぞ?」
「ええ、私も早く寝たいんですけどね...最近は家での行事準備が忙しくて」
「ああ、お前の家は確か神社だったな。近々祭りでもあるのか?」
「はい、例大祭といいますが、中々大きいお祭りなので先生も来てみては?」
「わかった。予定が開いていれば行くとしよう。...と、本題を忘れていた。これを受け取れ」
そう言うと西村は霊夢に茶色い封筒を手渡す。
「クラスの振り分け試験の結果だ。それにしてもお前程の実力なら十分Aクラスだって狙えただろうに...」
「ネタバレですか?まあ試験中に寝てしまったのは流石に想定外でした...」
そう。この少女、クラスの振り分け試験中に爆睡したのである。しっかり書けていたのは名前くらいであり、それ以外の回答は殆ど読めないくらいの雑さの文字が羅列していた。起きたのも試験が終了した後だったので手遅れ。まったく書けていない状態で試験が終わってしまったのである。
霊夢は封筒を開き、その中にあった一枚の折りたたんである紙を開く。
『博麗霊夢・・・・・・Fクラス』
ですよねー、と霊夢が苦笑する。予想はしていたが、やっぱりか。そういう感情が見て取れる。
「まあ残念だったなとしか言えないが、Fクラスでの勉学、精々励むように」
「はーい、わかりましたー....これクラスによって設備が違うんでしたっけ」
この文月学園では成績累進式の教室設備がある。二年生からは一学期の始まる前に振り分け試験を行い、その成績によってクラスが決定する。より上のクラスにいく程勉強設備は整っているものとなり、下のクラスへいく程設備は貧相になってくる。
「ああ、お前はFクラスだから....畳と卓袱台からスタートだな」
「え、すごい過ごしやすそうですね」
「隙間風もあるしそれら設備もボロボロだぞ?あまり良いものでもないと思うがな。まあ設備をより良いものにしたいのなら試召戦争でも行うんだな」
試験召喚戦争。通称試召戦争というものが文月学園では導入されている。それぞれの試験の点数に応じた強さをもつ召喚獣を召喚して、クラスで戦争を行うことができる。その戦争に勝利することで、勝利したクラスは負けたクラスと設備と交換することができるシステムである。
「考えておきます。それでは私はこの辺で。まだ明久は来ていないんでしょう?」
「ああ、あのバカもFクラスだからしっかり手綱を握ってくれよ?」
「ハハハ...あのバカ久は止められないですって...」
明久こと吉井明久は霊夢の友人であり途轍もないバカである。
「ではまた、西村先生」
そういい残し校舎へ入っていく。Fクラスにはどんな生徒がいるのだろうか、そんな他愛も無いことを考えながら。
――――――こうして、博麗霊夢の二年生での長い学校生活が始まったのである。
...あれ?今回霊夢ずっと敬語調だ...違和感が...