巫女とテストと召喚獣   作:鬼如月

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第一問

「....えぇ...これ学校の設備なの...?」

 

校舎の三階まで上がったところでまず目に入ったのがAクラスの教室。霊夢はその設備の豪華さに目を剥いていた。

 

「ノートパソコンに個人エアコン、冷蔵庫にリクライニングシート。お菓子も食べ放題...振り分けテスト前日、しっかり睡眠を取っておけばよかったわね...」

 

テスト中に寝ていなければ今頃自分はこの教室でゆっくりとくつろげていたのに...とがっくり肩を落とすが過ぎたことなので気を取り直す。博麗霊夢は切り替えが早い女なのだ。

 

豪奢な雰囲気から逃げるようにそそくさとFクラスへ歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二年Fクラスの教室に意気揚々と歩いていった霊夢だったが、教室が近付くにつれて歩幅が小さくなる。

 

「え~と...ここ、よね?酷い格差社会ね...」

 

2-Fと描かれた古いプレートを横目に、教室に目を向ける。窓ガラスは割れており、木は一部腐っているようで異臭を放っている。

 

「ま、まあ中は以外ときちんとなってるかもしれないし?早速入りましょうか」

 

頭の中に広がる不安を振り払い、扉を開ける。そこにはきっと素敵な教室とクラスメイトが.....

 

「早く座れこのウジ虫野郎ッ!」

 

そんな希望(もの)は音を立てて崩れ去った。霊夢の目から光が消える。聞き覚えのあるその声にふつふつと怒りを覚えながら声の主へと話しかける。

 

「...ずいぶんなご挨拶ねぇ、雄二」

「って博麗!?なんでお前がこんなところに!?」

 

彼女を罵倒した赤髪短髪の大男、坂本雄二。博麗霊夢とは友人の枠組みに入る男だ。

霊夢は雄二の隣にある座布団に座りながら罵倒を浴びせてきた本人に愚痴を吐く。

 

「振り分けテストの時に寝ちゃってね...前日に夜遅くまで例大祭の準備をしていて」

 

その言葉に雄二は苦笑する。

 

「あー...なんだ。それは災難だったな。あとさっきのは悪かった、明久が来たのかと勘違いしてな」

 

もう気にしてない、と返事をし改めて教室を見回す。それにしてもなんというか――――

 

「普通ね」

「それはおかしいと思うぞ!?」

 

雄二からのツッコミが入るがそれに対し霊夢ははて、と首をかしげる。確かに窓は多少割れてるし教卓や卓袱台もちょっとボロいとは思うが、それだけではないかと。

 

「それらをそれだけで済ますのは絶対におかしいからな!」

 

え?と目を丸くする。和室なのはむしろ過ごしやすいし多少ボロいだけの中々良い環境ではないか...と熱弁をするも、雄二はそう語る霊夢に呆れた目を向ける。

 

「...そういえばコイツ、環境適応レベルがMAXだったな...」

 

本を取り出して既にのんびり過ごす体制を整えている彼女を見て、小さく溜息を吐く。コイツはどのクラスでもやっていけそうだと。

 

そんな読書を始めた霊夢に三人の人物から声がかかる。

 

「おお、霊夢に雄二。おぬしらもこのクラスなのじゃな」

「霊夢に坂本じゃない。吉井見なかった?」

「...久しぶり」

 

木下秀吉。のじゃ口調と中性的...というかかなり女性よりの容姿が特徴的の男である。博麗霊夢とは友人にあたる。

島田美波。帰国子女のポニテ女子。長年ドイツにいたということで文系科目が致命的である。博麗霊夢とは友人にあたる。

土屋康太。ムッツリーニという名で女子生徒の写真を生徒に売っている(稀に男子も売っている)。女子の目の前で堂々とスカートの中を覗こうとする変態であり、博麗霊夢、ひいては女子の敵にあたる。

 

「あら、皆もFクラスだったのね。またスカート覗こうとしてきたら二度とカメラを持てない体にするからね?土屋」

「ああ島田、明久はまだ来てないぞ」

 

二人の受け答えに島田は落胆して、土屋は顔を引き攣らせて自分の席へと戻っていく。

 

「そう、わかったわ。これから一年間よろしくね?」

「........俺は覗きなんてしない」

 

嘘つけ。そう叫びたい衝動をどうにか抑えて彼を見送った霊夢は秀吉に顔を向ける

 

「それで秀吉も挨拶に?」

 

純粋な疑問をぶつける。彼だけは席に戻るそぶりを見せていないためである。

 

「いや、わしは始業までここにいさせてもらおうと思うての。茶も用意したぞい」

 

そういいながら二人の前に座る秀吉。その手には湯のみと急須がのったお盆がある。

 

「用意がいいな。じゃあ始業までのんびりしてるか、博麗、秀吉」

「ええ、そうしましょうか。ところで二人とも、最近私が読んでる本なんだけど――――

「ほう、歴史ものとな。それは中々――――

 

 

 

 

そうして始業まで、三人でのんびり茶会を楽しむのであった。


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