さて、とりあえずは知っている場所を軽く回って見ようと思いやってきたのは紅魔館。この雪景色のなか相も変わらずの赤さは健在らしい。今は門の前にいるんだが本来ならいる人物がいない。
あるのは何か人の形のように盛り上がった雪だるまのようなものがあるだけ。……まさかとは思うがこれが美鈴だったりしないよな。
そう思いおそるおそる雪の塊に手を伸ばし雪を払いのける。すると出てきたのは鼻で凍った提灯を作っている美鈴だった。
………いや、これ死んでないか?凍ったものをつついてみると直ぐに粉々になった。
「……ん?アマテラスさんですか。ようこそ紅魔館へそういったご用でしょう」
「あー、まあ用はあるんだが平気なのか?
「なんか今少し変じゃなかったですか?寒さでしたら問題ないですよ。私は気が使えるの大丈夫です」
と、いっているが見るだけでわかるがかなり顔が白い。頬に両手を当ててみると氷でも触っているようだそれに声も震えている。これは気という名のやせ我慢な気がしてならない。とりあえず紅魔館内に連れていこう。
肩に担ぐような形になったが問題ないだろうそれに両手が塞がっては扉も開けられないしな。別に私としては蹴り開けても良いのだが向こうとしてはあまり良くはないだろうからやめておこう。
「ありゃ、アマテラスさ~ん平気ですから下ろしてくださ~い。……ダメですかぁ、そうですかぁ」
何か美鈴がいってはいるが今は無視だ。とにかくどうにかして暖めるか風呂にぶちこむかすればいいだろうとは思うが。
などと考えつつ扉を開け中に入る。外とは違いそこまで寒くはない。
「あら、美鈴どうかしたの。そしてようこそおいでくださいました。あなたがアマテラス様ですね。私は紅魔館でメイド長をしている十六夜咲夜と申します」
いつの間にかメイドが目の前にいた。さっきまでは気配もなかったんだが一体何処から?
「あっ!咲夜さん、えっとこれはですね…」
「美鈴が外で雪だるまになって凍えていたから連れてきた訳だ。こちらこそよろしく頼む咲夜」
美鈴を肩に抱えたままお互いに頭を下げる。
「美鈴、あなた平気だっていってたじゃない」
「すみません咲夜さん、アマテラスさんも。修行も兼ねて、と思ったんですが思いの外寒くてですね」
咲夜は美鈴に呆れた顔を向けている。修行にしても無理は良くないと思うんだがな。それにしてもどうやって美鈴を暖めるかだな。できるだけ早く暖めなければいけないんだが。
………はっ!そうか、簡単なことだったな。私がやればいいではないか。
「全く美鈴、今お湯を━━」
「美鈴、私が暖めよう。体で」
咲夜が美鈴にお湯を持って来ると言おうとした時アマテラスからとんでもない発言が飛び出した。辺りが寒さとは別のもので凍ったように感じる。
「「………へ?」」
「やはり凍えているのであれば人肌で暖めた方が早い。というわけで私が一肌脱ごう、なに遠慮することはないぞ」
二人の動きが一瞬完全に停止して直ぐに再度動き出す。それも大慌てで。
「あ、アマテラスさん!?そこまでしてもらわなくても大丈夫ですよ!?」
「そ、そそ、そうです!アマテラス様!そんな…そんな、肌で暖めるだなんて……それにこんな場所で///」
二人はなにやら慌てているがなにをそんなに慌てているのか。寒いならばいたって普通のことだと思うんだがな。それに今なら私がやった方が一番楽だしな。
「なに、遠慮はいらん。飛び込んで来ても平気だ受けとめるくらい雑作もない」
「いやいや!遠慮とかそういうのじゃなくてですね!?初めて会った時もなんというか突拍子のないことをする人だと思ってましたがここまでとは…………え、咲夜さん当たり前じゃないですよね?これ」
「勿論よ!まさかその気になってるんじゃないでしょうね」
そういい何処からともなくナイフを取り出す咲夜。ここで冗談でもいったら間違いなく刺されると思った美鈴であった。そして体温も心の温度もアマテラスの発言で急上昇し咲夜を見て急低下していた。今や体温も心も極寒である。
なにやら美鈴の顔色がさっきよりも悪くなっているような気がする。これは可及的速やかに暖めなければ!というわけで狼の姿へ変わる。サイズは人1人くらい楽々覆えるくらい、これならすぐだ。
「さぁ、美鈴こっちに速く」
「速くじゃな……く、て、ですね……え?え!?」
「そうですよ!そんなに…きゅう、には…」
何故か二人はこちらを見て驚愕の表情をしている。そういえばこの姿を見せるのははじめてだったな。何故か固まってしまっている美鈴を尻尾で手繰り寄せ包み込む。
「うわっ!あっ……暖かい、それになんだか落ち着く…あぁ、眠ってしまいそうになりますねこれ」
そうだろう。私は今は冬毛だからかなり暖かいしモフモフしている。だからといって毛並みはいつもの通り手触り抜群だ。
美鈴が私に包まれ、あぁ~と声をあげている間咲夜は私と美鈴を交互に何度も見てる。………ああ、そうかそうか。
おもむろに尻尾を伸ばし咲夜もこっちに引っ張り包み込む。
「きゃっ!……モフモフ…」
ふふふ、私の毛並みは最高だからな。そのまま眠ってもらったっていいんだが生憎今はこの雪と春について調べないいけない。美鈴が暖まるまでではあるが咲夜も堪能してもらおう。
そう思い尻尾をもて余しながら待っているともう一人誰かがやって来たようだ。
「ああ!!なにこのおっきいの!咲夜~!美鈴~!ずるい私もまぜてよ!!」
そういいながらこちらに突っ込んで来たのは特徴的な羽根に金髪で元気のよい少女。フランドール・スカーレットだった。
フランはそのまま私に突っ込みボスッという音をたて埋もれてしまった。
「フラン、私だからいいかも知れないがあまりその速度で突っ込まない方がいい。普通なら結構な衝撃だからな」
「ん?アマテラスお姉様の声?もしかしてこのおっきいのがそうなの!」
肯定を意味するように埋もれたフランを鼻先でつついてやる。フランがやって来ると咲夜は妹様!といいサッと私から離れて姿勢をただし、美鈴はもう平気ですよ~といいながら咲夜の隣辺りに立ちこちらを見ている。
「そういえばアマテラスお姉様はここになにしに来たの?」
「ああ、そういえばまだ伝えていなかったな。フラン少し降りてもらえないか?」
「えぇ~……わかった」
フランは不満そうにしてはいるが素直に降りてくれた。狼から人型に戻り瓶を懐から取り出す…のだが私が口を開く前にフランが先に開いた。
「わぁ!アマテラスお姉様もふもふだ!かわいい!」
ん……かわいい……なんというかムズムズするな。今は冬毛ということもあって着物の首の周りと両手首、裾にファーというらしいがもふもふしたものがついている。それに髪型も変わって肩にかかるくらいの長さでふわっとした感じの髪になっている。
「確かに、外で見たときもそうでしたが改めて見るとかわいいですね」
「はい、お綺麗です。参考にしたいくらいです」
むう…やはりなれないというかなんというか……流石にここまで言われると照れてしまう。
「あっ、アマテラスお姉様照れてる」
咳払いをして多少強引に話を切り出す。
「んん!それよりもだ私がここに来たのはこれが理由だ」
3人に春度の入った瓶を見せる。
「花びら?」
「これがどうかしたんですか?」
「…………」
それぞれ近くで見たり各々の感想をいっている。
「これは春度という物らしい。この大雪はこの春度が足りていないのが原因なようだ。自然の物か人為的なものかはまだわからんが…私もこの雪には苦労させられていてな、調べているところなんだ。なにか知っていることはないだろうか?」
咲夜と美鈴はお互いに話し合いなにか心当たりがあるか相談しているようだ。フランは相も変わらずこちらを見ている。何気なしにフランの頭を撫でていると美鈴と咲夜は相談が終わったらしい。
「アマテラスさん、すみません。私たちにはこれといって思い当たることはありませんね」
「お力ななれず申し訳ありません」
二人は空振り、フランも………まあ知らないだろう。
「なに、問題はない。一応他にも宛が無いわけではないしな。私はそっちに向かってみることにする」
そういい立ち去ろうとすると。
「んんん………あっ、アマテラスお姉様ってこれからこの大雪について調べるんだよね?」
「ああ、そのつもりだが」
フランは腕を組んで少し考え込みすぐによしっ!と気合いを入れてこちらを向き―――
「アマテラスお姉様!私も一緒に調べる!いいよね!」
フランが一緒にか……人数が多ければもしもの時に役に立つし私が気がつかないことに気がついてくれるかもしれないな。
「私は構わないが」
「やった!じゃあ一緒に――「妹様!いけません!まだお嬢様のお許しが……」
「まあまあ咲夜さん!そんな気難しくならないでこれも一種の勉強ということで。それにアマテラスさんも着いていますし」
その言葉に私も頷き肯定の意思を見せておく。咲夜はこの状況にしぶしぶではあるがフラン同行することを許してくれた。ただ危険なことはしないでほしいとのこと。一応咲夜も一緒に来るか聞いてみたがどうやらまだ紅魔館でやることがあるらしいく同行できないらしい。
フランは一度準備するために自分部屋に戻るらしいがマフラーを巻いてすぐに戻ってきた。これで準備完了らしい。
それじゃあいくとしよ。
フランは行ってきます!と元気良く告げて私のあとに続き歩きだした。向かう先は本のわずか、微かに匂う春の香りのする空。
なにが待っているかはまだわからないが少し気を引き締めていかなければいけないかにしれんな。…………飛ぶのはあまり得意ではないしな。
こうしてフランを連れてゆっくりと目的地へと向かっていった。
尚、咲夜はレミリアからこの大雪の調査を命じられて博霊神社に向かったり結局アマテラスの後を追う形になってあのとき一緒にいけばよかっただろうか……と若干後悔することになるがそれは少し先のお話。