紅魔館を後にしてフランと共にゆっくりではあるが飛んで匂いの方向へ向かっている。ただフランには絶対にわからないだろう。私でさえほんのわずか、微かにしか感じれないからな。
「お姉様~、こっちで本当にあってるの?」
やはりフランには宛もなく飛んでいるように思えてしまっているらしい。ふむ……もし私がフランの立場だったらどうだろうか。……少し考えてみたがとても不安になった、とだけいっておこう。
「ああ、こっちであってるはずだ。微かにだが匂いを感じる」
私がそういうとフランは鼻で辺りを嗅いでいるようだがいまいちといった様子だ。
「う~ん、私は何も感じないけどなぁ……それよりもお姉様!私ね爆神様に輝玉を教えてもらってるんだ!まぁ、まだまだ失敗ばかりなんだけどね」
「爆神から教わってるのか。誰しも最初からは上手くはいかないものだぞ、フラン。続けることが大切だ、続けていればその筆には魂が宿るからな」
それ以外にも紅魔館での出来事や爆神が壁を爆破してしまったことなどを聞いたり会話をしながらしばらく飛んでいると私たちの他にもなにやら声が聞こえてきた。
「この大雪は誰かが引き起こしてるかもっていってたけど誰がやってるんだろう?その辺にいたりしないかな黒幕」
「そう簡単にはいかないだろうな、それにそんなにすぐに黒幕が見つかったら誰かがもう終わらせているだろう」
「くーろーまーくー♪」
私とフランはいきなり目の前に現れた女性を見てお互いに顔を見合わせていた。その女性は全体的にぽわっとした柔らかい雰囲気で髪と服が寒色の色で統一されている。ただこの吹雪のなかこんな場所にいることから人では無いのは確かだ。
だが私たちはそれよりも気になっていることがある。
「…………フラン」
「………うん、いたね。黒幕……身近に……見た感じ雪に関係してそうだし」
とりあえずは話しかけてみることにする。
「そこの黒幕、この吹雪についてなにか知ってることはないか?」
「ふふふふ♪この吹雪の黒幕を探しているの?それは私よぉ♪くーろーまーくー♪」
再度お互いに顔を見合わせ頷き。そっと私は
「……えっ、ちょっと――」
そのまま二人で一気に距離を詰めて頭から脚にかけてを一気に振り下ろし切り裂く。
「熱!ちょっと!ま、待って危なっ!?」
だがギリギリのところで避けられてしまった。フランは横回転しながら回転切りを二回放つ。
「きゃぁぁ!?死んじゃうから!?ちょっとかすった!?」
どうやら避けられたがかすりはしたらしい。このままいけば問題なく倒すことができそうだ。さらに二人で追撃しようとしたとき目の前の女性は器用に空中で土下座を繰り出した。
「ごめんなさい!!!ゆるして!!」
突然のことに私たちはお互いに顔を見合わせる。
「お姉様、なんかこの人違うんじゃないかな?」
「ああ、確かになんだかただいじめているだけに思えてきたな。ただ警戒しておくことにこしたことはない」
もしものことがあると悪いので武器はしまわずにして土下座している人物に視線を向ける。
「あ、あの…許してくれますか?」
「「まあ、一応は」」
彼女は私たちの言葉に安心したらしく安堵の表情を浮かべ自然な体勢に戻った。
「ところでお前は黒幕では無いようだがなんであんなことをいったんだ?」
フランも頷き彼女に視線を向ける。
「それについてはごめんなさい。なんというか、こうくーろーまーくー♪っていって出ていったら面白そう思ったんだけど今は後悔しているわ……。私はレティ・ホワイトロック、寒気を操る妖怪よ」
「そうかレティ、私はアマテラスというこっちはフラン。私たちはこの吹雪の原因を探している。確か寒気を操る妖怪といったな?本当にお前の仕業じゃないんだな」
「ちょっと待って!私は確かに寒気を操ることができるけど流石にここまではしないわよ!それに私もそろそろこの長い冬が終わって眠りたい気分なのよね」
少しだけ語気を強めていってみたがどうやら嘘をついているというわけではなさそうだ。となるとやはり上にいくしかないか。
「お姉様やっぱり違ったね。これからどうする?」
「まあ、匂いを追って上に向かうしかないだろうな。レティ、この辺で見かけない人物や怪しいと思った奴はいなかったか?」
「う~ん、そうねぇ……あっ、そういえば刀を持った見かけない子が最近の行ったり来たりしてたわね。その子じゃない?」
刀を持った、か。少なくともこの人物には直接あっておくべきだな。間違いなく関係がある……はずだ。
「レティ、情報感謝する。私たちは先を急ぐ、すまないな」
「ありがとう!お姉さん!」
「ええ気をつけてねぇ~♪」
そういいレティは私たちに手を振りながら見送ってくれた。ただ少し気になることがあったが……どうするかな。
「ん?、アマテラスお姉様どうかした?」
「ああ、少し気になることがあってな。少しだけいいか」
アマテラス達が飛び去っていった頃―――
レティは飛び去っていった方向を見ながら誰かに話しかけていた。
「ねぇ、あなた本当に良かったの?久しぶりに会ったんじゃないの?」
「問題はない、特に話すことなど我にはないのだ」
なにもないところからいきなり声が聞こえ吹雪がなにか形を作っていく。そして現れたのは首に大きな法螺貝を下げ立派な角を持った牛が現れる。
「でも慈母ってことはお母さんじゃないのかしら?凍神」
『
「確かにあの御方は我らが慈母だが、なにかしたいかと言えば今はこの角で突き上げ吹き飛ばすことだろう」
(あらあら、反抗期?)
「我に気づかぬとは天照大神失格ではないか」
そういい頭をブルッと横に振るう凍神。
(なるほど気づいてほしかったのねぇ…やっぱりちょっとした反抗期ね……ん?)
レティは吹雪の中の人影があるのに気がつき注意深く見てみるとそれは先ほどまでいたアマテラスだとわかった。何故か戻ってきたらしい。レティがどうしたのか聞きに行こうとしたときアマテラスは人差し指を口元に当て静かにするような仕草をする。
レティはなるほど、と思い静かに頷く。凍神はどうやらまだ気づいていないらしい。
「ねえ、凍神本当はアマテラスに気がついてほしかったんでしょ?」
「なに?……我はそんな事はどうでもいい!今、慈母が目の前にいればガツンッと角で突いてやるつもりだ!」
凍神は鼻息を荒くしてレティに迫る。レティはにこにことした表情で凍神を見ている。端から見れば牛に女性が襲われているように見えなくもない。
そうしているとレティからはついさっき聞いた声、凍神からはかなり聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ほう…そうかそうか。凍神、私を角で突くか」
「!?」
凍神は驚き声の方向へ顔を向けるとそこには腕を組んだアマテラスが立っていた。
「凍神、私が気づかないとでも思ったか?残念だったな。私を突くのは勝手だがそう易々とやられはせんぞ。それとたまには神社に来るといい、歓迎する。ではまたなレティ、凍神」
そういうと今度こそアマテラスは飛び去っていった。アマテラスが凍神に向けたその表情はいつもの仏頂面ではなく親が子に向けるような優しい表情だったという。
「よかったわねぇ♪気がついてくれて、ねぇ凍神?」
凍神は『ヴ モ゛ オ゛ ォ゛ ォ゛ ォ゛ ォ !』と凄い鳴き声を上げ木を数本なぎ倒して止まった。レティはそれを見てなんだかとても微笑ましくなったが被害が以外と大きいことにそっと目をつぶったとか…。
「アマテラスお姉様!どこにいってたの?」
「なに、大したことではない。少し反抗期の子に会ってきただけだ」
フランはふーん、といって特に深くは聞いてこなかった。そのまましばらく飛び続けるとだんだんと春の匂いが強くなってくるのを感じる。どうやら匂いの大本の場所はこの近くらしい。
「フラン、匂いが強くなってきた。そろそろのはずだ」
「う~ん、やっぱり私にはわかんないや…でもお姉様がそういうならあってると思うけど」
そこからすぐの空、本来なにもあるはずのない場所にポッカリと空いた穴のようなものが存在していた。そこからかなり強い春の匂いが漂ってきている。
その穴に入っていこうとした時―――
「ちょっと待ったー!ここは通さなぁぁ―――」
通さない!と言いたかったんだろう。だがその言葉は私が放った霧隠によって最後までいえずに固まっている。いやゆっくりではあるが動いている。
その少女はキーボードを持った活発そうな少女だった。その後ろにもヴァイオリンとトランペットを持った少女がいるが同じく霧隠で動けなくなっている。
彼女たちには悪いが構わず先に行かせてもらうことにする。
「フラン先を急ごう」
「え……えっと…この人達は…」
「ぁぁぁぁ…うーごーけーなーいー」
「フラン……目標が目の前にあるんだ。あまり多く足止めされるのは良くない。彼女たちには悪いが先にいこう…もしかするとこの先が迷宮になっている可能性もあり得る」
フランは私と彼女たちを交互に見てなんともいえぬ表情をしているが何をそんなに気にしているんだろうか?それにあちらは三人、こちらはフランと私の二人だ。しかも空中での戦闘になる。
地上であれば問題ないだろうが空中だと動きが目に見えて悪くなるからな、私は。
鏡を足場にして勾玉で――というのもいいがそれでも鏡を全て出さなけれいけないだろう。それにめんどくさ……同時展開はかなりの力を使うことになって消耗が激しいから咄嗟の事態に対応できなくなってしまうからな。
それに二人と三人、一人相手が多いだけで戦況は大きく変わってくる。
というわけだフラン先を急ぐぞ。私は尻尾でフランの腕を絡めとりその穴に飛び込んでいった。
次は冥界へ