空にポッカリと空いた穴に入るとその先は迷宮、ではなく桜並木の続く幻想的な場所だった。
「わぁ~!アマテラスお姉様これが桜?私初めて見た!すっごい綺麗だね!」
「確かに綺麗だ………だがな、フランこれは全て他から集めてきた春だ」
「えっ!?」
どうやら春が未だに来ないのはここにいる者によるもので確定だろう。それにしてもこの場所……まさかとは思うがこの事態を起こしている犯人は……いやまだそうと決まったわけではない。
「でも、まさかこんな場所に繋がってるとは思わなかったけどここどこだろう?アマテラスお姉様知ってる?」
「ああ、何度か来たことがある正規の方法ではなかったがな。ここは罪の無い死者が成仏するか転生するまでの間を幽霊として過ごす世界、冥界だ。ここに住む虫、鳥、獣、人間は基本死んでいるが危険はないはずだ」
フランは私がいったその言葉にとても驚いていたが私はこの石畳を挟むように並んでいる桜の続く先のほうが気になる。桜が続く先にはかなり立派な屋敷が建っている。やはりこの犯人は私の知っている人物らしい。
「………はぁ」
「ん?アマテラスお姉様どうかした?」
いかんいかんついため息が出てしまった。フランにはなんでもないと伝えておこう。そのままフランと一緒に石畳を歩き続け屋敷のやたら長い階段の下までやって来た。
「うわぁ……これ登るのぉ……」
確かにこの長さの階段を脚を使って登るとなるとかなりキツイだろう。だが律儀に登ってやる道理も必要もない。フランの前で少し宙に浮いてやるとフランもその手があったか!といったような表情をして羽根を広げ飛び上がる。
そして階段を登っていると少し拓けた場所に門のような木製の建物がありさらにそこから階段が続いている。多分ここからが彼女の敷地という境かなにかなんだろう。
そしてここが境目であるのであれば―――
「私の主は今は誰ともお会いにはなりません。どうぞお引き取りください。もし強引に先にいくというのであれば……斬り捨てます!」
そういい刀を抜き、こちらに向けてくる銀髪の少女………………だれだ?てっきりアイツが来ると思ったんだが。
「誰かは知らないが私たちはこの先に行きたいだけなんだ。通してくれ」
「聞こえなかったのですか。この先にはいかせません」
どうやら先に行くには彼女をどうにかしないといけないらしい。仕方ない。ならこちらも刀ではないが
「フラン、さがっていろ」
そういいフランには少し離れていてもらう。
私は草薙剣を取り出し逆手に持ち、刀の少女と向かい合う。
先に動いたのは少女のほうだった。真っ直ぐにこちらに駆け私を真っ二つにする勢いで上段から振り下ろす。
その攻撃を摺り足で最小限の動きでかわす。少女は振り下ろした刀を綺麗な動作で素早く持ち直し斬り上げてくる。
「はぁ!」
それを再度最小限の動作で避けて今度は反撃する。避けると同時に右手に持った草薙剣の柄の部分で少女の胸を突く。
少女は「くっ!」と苦痛の表情を浮かべるが構わずに再度斬り掛かってくる。それを草薙剣の平の部分で受け流し少女を飛び越え距離をとり背後に着地。
飛び越え様に少女の横顔を尻尾で軽く叩くことを忘れない。ただし眼などに当たらないよう細心の注意をはらいながら。
少女のほうへ向き直ると少女もゆっくりとこちらを向いたが表情はどこか不満げに見える。それからも少女が斬りかかり私が避ける、受け流す、隙を見つけて尻尾を軽めに打ち付けるなどしていた。
それを続けていて分かったことがある。この少女確かに太刀筋はいい。いいのだがはっきり言って素直すぎる。素直すぎて次の太刀筋、どこを狙っているのかどういう軌道を描いて来るのかが簡単にわかってしまう。
今もほら―――迫ってくる刃をかわして尻尾でペチリと叩く。しばらく前から私は避けることと尻尾で叩くことしかしていない。
この少女も頑張ってはいるがもう大分息があがっている。少女の横凪ぎを後方宙返りで避け大きく距離をとる。少女を見てみると何故か体が小刻みに震えている。……汗が乾いて冷えてきたんだろうか?
「………あー!もうっ!!なんなんですか!あなたは!!」
……何故そんなに怒っているんだ?
「こっちは真剣にやってるんです!なのにあなたは!!剣も使わなければ反撃もしてこない!それだけではなく尻尾でペチペチと……ふざけないでください!!」
別に私はふざけているつもりはなかったんだが………フランにふざけているように見えるか眼で訴えかけてみるとなんともいえぬ表情と眼をされてしまった。……私はふざけてはいなかったんだがとにかくそんなつもりはなかったということをいっておこう。
「すまなかった、別にそんなつもりはなかったんだ……どうすれば許してもらえるだろうか?あといつになれば通してくれるんだ?」
「絶対に通しません!
本気で、か。彼女がそういうのであれば本気でいこう。草薙剣を逆手から通常の自然な持ち方に直し構える。
脚に力を込め一気に少女の元、間合いまで踏み込み刀めがけ薙ぎはらう。今回は本気の一撃、ガキンッ!!と刃同士がぶつかり合う。少女はなんとか力を受け流そうとしているが上手くいっていないらしい。
だが少女は本気と言っていた。ならこのまま続けよう。振りきった草薙剣を支点にし体を浮かせ胸に二発蹴りを放つ。剣を支点にしたまま着地し怯んでいる少女に突撃し過ぎ去り様に胴体を斬り裂く―――のはいくら本気といっても流石にやり過ぎなので平の方で叩きつける。私が普通に斬り裂いてしまうと彼女が真っ二つになってしまう。それは流石にまずいからな。
少女は私の攻撃がもろに入ってしまい桜の幹に叩きつけられる。なんとか起き上がろうとしているが額に脂汗をかきかなり辛そうにしている。起き上がられる前に近づき刀を脚で踏み動かせなくして首筋に向かい刃を振るう。
少女は迫り来る刃にギュッと眼を瞑る。それを見てすぐに草薙剣をしまい尻尾で軽く首に触れてみる。少女はビクッとしてうっすらと眼を開けこちらを見て自分の状況が分かったのか呆気にとられている。
その時、私や少女、フラン以外の声が聞こえてきた。
「そこまでよ、勝負あり~♪ふふふ♪」
声のする方向へ眼を向けるとそこには着物姿で頭には額烏帽子のついた帽子を被っているピンクの髪をした女性が扇子を開きパタパタさせながらこちらに近寄ってきた。
その女性の周りには人魂がふゆふよと浮かんでいる。
「幽々子様!?」
倒れていた少女は驚き、フランはこちらに駆け寄ってきた。私はというと―――
「幽々子、久しぶりだな」
「ええ、お久しぶりね。アマテラス」
話ながら倒れている少女を引っ張りおこす。
「幽々子様、こちらのかたとお知り合いだったんですか?」
「そうよ妖夢知り合いよ」
妖夢と呼ばれた少女は申し訳ありませんでした!と頭を下げる。ただ妖夢からすれば私は侵入者、謝る必要はないだろう。
「謝る必要はない。それよりもこれを食べろ。傷がよくなるぞ」
そういい真骨頂を渡す、というよりも口に押し込む。どうやら自分の傷が一瞬で直ったことに驚いているようだ。
「あら~?私にはくれないの?」
「幽々子、お前には必要ないだろ」
「アマテラスお姉様、この人は?」
おっと、そういえば今回は私だけでなくフランも一緒だったな。妖夢とやらにも名乗った方がいいな。
「フラン、こっちは
「あらあら~♪いつから妹ができたのかしら?」
「別に妹という訳では―――!」
幽々子の言葉を否定しようとした時ふとフランの顔が目にとまる。
フランは私の顔を見てキラキラと輝いている瞳でこちらに期待の眼差しを向けている。
「…………まあ、成り行きでだな…うん」
「ふふふ、よろしくねフランちゃん。私は西行寺幽々子こっちは
「妖夢です、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!私はフランです!幽々子さん、妖夢さん」
これで一通り名乗り終えただろう。
「そういえば妖夢、負けちゃったわね」
「うっ………それは……すみません…」
「アマテラスもちょっとは手加減してあげたらよかったんじゃない?でも妖夢が本気でっていったのが良くなかったのかしら?まあここじゃあなんだから中で話しましょう。それと妖夢、お腹減ったわ~」
幽々子はそういうと自分だけ先にいってしまった。幽々子はどこか気の抜けているような感じだが時折確信をついてくる。それに今も私と妖夢の戦闘を見ていたらしい。敵になるとかなり厄介な女性なのは違いない、今回はそうならなそうだがな。
そう思いながら私は幽々子の後ろを着いていき幽々子の屋敷、白玉楼へ脚を踏み入れた。
「あっ!待ってくださーい!幽々子様ー!
「アマテラスお姉様待ってー!」