ククク、アマテラスよ……随分と久しいな
「ああ、確かに随分と久しいなオロチ」
うむ…まさか話しかけてくるとは思っていなかったな。すぐに噛みついてくるものだとばかり思っていたが。
オロチは長い体で私の周りを囲み鎌首を持ち上げ見下ろしてくる。
ああ、その剣を見るとあの忌々しい記憶が甦る
貴様が我らの首を撥ね飛ばしあの人間に斬り裂かれた記憶が、アァ!
オロチはそういい体を地面に叩きつけ吼える。
ククク、だがアマテラス...この死の力は辛かろう
もはや腕も思うようには動かんだろう
確かに私は妖夢や紫たちの方に展開した鏡を通して本来ならばそちらに降りかかる呪いのようなものを肩代わりしている。腕も大分黒ずみ、それは肘の手前ほどまで侵食してきている。
「それほどでもないさ、だんだん慣れてきたところだ。それにこれはお前の力ではないだろう」
....ならばこれでどうだ
オロチは口を一度閉じまたすぐに開き漆黒の炎を吐き出してきた。咄嗟に都牟刈太刀を両手で盾にして防ぐ。辺りに逸れた炎が轟々と音をたてているが熱さは感じない。
オロチが2発目の炎を吐こうと口を閉じた瞬間を狙い宙返りをしてオロチの囲いを抜け出し胴体を斬りつけようと腕を振り上げる。
だが辺りに響いたのはカランッといった乾いた音だった。私は腕を振り上げたつもりだったが肝心の腕はピクリともしていなかったらしい。それにあの乾いた音は都牟刈太刀を落とした音だったようだ。
ククク、どうした 敵を目の前にして武器を捨てるとはな
どうやらあの炎は防ぐべきではなかったようだ。両腕の感覚がない。やられたな。
その腕ではもうなにも出来まい
アマテラスよ、今ここで我らに喰い殺されるのであれば
他の奴等の命は助けてやろう
私がここで死ねば助ける、か。あり得ないな。ただ今の状況で相手をするのは厳しい。妖夢には首が二本張り付いている。他の二本も紫たちの方を見据えている。
どうしたものかそう思っていると頭のなかに声が響いてくる。
(アマテラス、こっちの準備は出来たわ。そっちは?)
紫の声か、相変わらずなかなかに万能な能力だな。こちらも通力を使い状況を伝える。
(紫だな、こっちははっきり言って最悪だ。両腕が動かなくなった。私と妖夢だけでは厳しい)
(動かなくなった!?すぐに封印して――)
(いや、まだ駄目だ。今封印してもオロチにすぐに破られるだけだ)
(ならどうするのよ)
(そうだな、私がオロチを挑発して注意を引く。その間に妖夢をそっちに避難させてくれ。あと霊夢はまだそっちで必要か?こっちに回せるならいいんだが)
(霊夢?霊夢は問題ないわ。でも霊夢がいくら霊力が強いからといってもこの中では長くは動けないわよ。あの子みたいに半霊でもないと)
(それは問題ない、私がどうにかする。それとオロチは多分あの場から動けないはずだ。動けるならもうそこまで行ってる)
(……わかった、無理したりしないでよね)
「あぁ、オロチ。確かに私だけの犠牲で済むなら喜んでそうするさ」
クハハ!そうか!ならば
「ただ5本程度でそれができるのか?」
……なんだと
お前なら乗ってきてくれると思っていたよ、オロチ。
「貴様は私に二度も負けているだろう。いや、かつて貴様を地上に引きずりおとしたのを含めるなら三回だろ。腕が使えなくてともお前では私を噛み殺すことなど出来はしないさ!」
キサマァ!!すぐに殺してくれるわ!
ガアアァァ!?
オロチの噛みつきを避け尻尾を巻きつけ都牟刈太刀を拾い飛び上がり様にオロチの眼を斬りつける。オロチはまさか眼を斬りつけられるとは思っていなかったらしく避けることも出来ず叫びをあげる。
オロチの体に着地し長い胴体を駆け抜ける。斬りつけた一本が地面をのたうち回り他の四本は全てが私に向かって襲いかかってきている。オロチの噛みつきを避け頭から頭へ飛び移り尻尾の太刀で斬りつけていく。
「どうしたオロチ!そんな動きでは私を喰らうことなど出来ないぞ!」
ガアアァァ!!
「くっ…ガハァ!?」
頭の影から接近してきていた一本の体当たりを避けきることが出来ずにくらってしまい紫の達の方まで吹き飛ばされてしまう。しまった少し調子に乗ったかもしれん……
吹き飛ばされたときに妖夢がいた場所には既に誰もいなくなっていた。どうやら紫はやってくれたらしい。
「お前!平気か?」
仰向けに倒れた視界に白黒と金髪の少女が入ってきた。ただちょっと待ってくれ
「…おい、一歩も動くんじゃないぞ。危ないからな…」
「は?どういうことなん『ザシュッ!』……だ…ぜ…」
金髪の少女、魔理沙が私の言葉に疑問符を浮かべていると顔の直ぐに前を尻尾で持っていた太刀が通過し地面に突き刺さった。数本の金髪が宙を舞っている。
「あ…あぶなかったぜ…」
確かにかなり危なかった冷や汗もかなり出ているな。無理もない。
「アマテラスさん!」
「アマテラスお姉様!大丈夫!?」
いや、大丈夫じゃない。両腕は使えないし体は痛いしな。あとは任せてもいいだろう?………そうはいかないよな、やっぱり。
フランと妖夢に引き起こされなんとか立ち上がる。
「紫、やはりオロチはここまでこれないらしい」
「そのようね。ただこれからどうするのよ」
そうだな、やることは簡単だ
「なに簡単だ、今から紫以外でオロチの首を消し去って西行妖を封印する。それだけだ」
「ちょっと待ちなさいよ!あんたね、簡単に言うけどこの妖力の濃さじゃあ全員はムリよ!」
霊夢はそういうがこれしか方法がないんだ。それに考えなしにいっているわけではない。
「霊夢、私も考えが無いわけではない。ここには私の鏡が5つある。それを着けていれば問題ない。着けるといっても背負うようなことはしなくていい。体が重くなったりはしないだろう、むしろ軽くなるはずだ」
「そう……ねぇ、あんたなんで私の名前知ってるのよ」
「…………フランは真経津鏡だ」
「う、うん…わかった…」
次は妖夢と魔理沙
「妖夢は辺津鏡、魔理…白黒は神獣鏡だ」
「はい、わかりました」
「……おう……白黒…」
妖夢は一度つけているからすんなりいったな。魔理沙は…なぜそんな疑いの眼を向ける?別に怪しいものじゃないぞ。
そして咲夜
「咲夜は沖津鏡」
「これは、こうでしょうか?」
うん、それでいいそれでいい。
「……………………」(ジー)
「………巫女は八咫鏡だ。これで問題なく動けるはずだ」
何故だろうな、霊夢がこちらを凄まじい疑いの眼で見てくる。だから別に怪しいものじゃないぞ。
さあ、オロチを倒し幽々子を救おう。
「ねぇ、アマテラス。私には?」
ん?紫?
「お前には無いぞ。もしオロチがお前に何かしようとしたら自分でなんとかするんだ。スキマがあるからいいだろ。なんだその顔は」
物欲しそうにしていてもなにもやれんぞ。尻尾で地面に突き刺さってしまっている都牟刈太刀を抜きオロチを見据える。
「オロチの倒しかただが一撃でかたをつけてほしい。隙は私が何とかする。霊夢たちはいけそうか」
「………ええ、任せなさい」
その言葉を聞くと同時に地を蹴りオロチへ接近する。オロチは待っていたとばかりに漆黒の炎を放とうと口をこちらに向けてくるがそうはさせない。太刀を前方に投げ地面に突き刺す。
それを足場にオロチよりもさらに高い位置まで跳躍する。全ての首が視界に納まった状態で桜花を使いオロチを拘束する。
オロチの足元に草花が生え口元まで一気に伸び口が開かぬように巻きつき炎を吐けないようにする。
だがこれでは直ぐに引きちぎられてしまう。
今のオロチはいわば闇の集合体のようなものだ。冥界には太陽の光は普通であれば届かない。届いたとしても霊達に影響のない程度のものだろう。
だが今は私という存在がいる。たとえ冥界であろうとも私、天照大神が存在しているのならばどんな状況であろうと必ず太陽は昇る。
空中で静止した私の背後に光明の光、深紅の太陽が顕現しオロチを照らす。
オロチの首は全て苦しそうに地面をのたうち回っている。ここぞとばかりに霊夢達がそれぞれの首へ向かっていく。
禁忌 「レーヴァテイン」!
フランが燃える剣を出現させオロチに突き立て真っ二つに斬り裂く。斬り裂かれたオロチはそのまま炎に包まれ燃え尽きた。
幻符「殺人ドール」!
咲夜がオロチの首の周りの大量のナイフを出現させそれが鱗をものともせずに突き刺さりあっという間にオロチは針山と化した。
人鬼「未来永劫斬」!
妖夢は刀を鞘に納め居合いの姿勢をとりオロチに向かい駆け出し刀を高速で抜刀しオロチの背後で鞘に納める。するとオロチの首は数瞬遅れて地面にドスンと落下した。
恋符「マスタースパーク」!
その言葉と同時に八卦炉から虹色の極太のレーザーが放たれオロチをのみ込む。あとに残ったものはからだに半分が消え去ったオロチのみだった。
霊符「夢想封印」!
陰陽玉が霊夢の周りを高速で回転しその勢いを保ったままオロチに向かって放たれる。放たれた陰陽玉はオロチの胴体を貫通し消滅した。
霊夢達の活躍でオロチの完全に倒されたがまだ一番の大仕事が残っている。
「紫、封印しろ!」
オロチが消滅したことで再度、西行妖が活動を再開してしまう前に封印しなくては
「言われるまでもなくもうやっているわよ」
西行妖の周りに紫色の結界が張り巡らされどんどん集束していく。そして結界がいっそう強い光を放つと同時に辺り妖力が霧散し本来の環境へ戻った。どうやら封印は成功したようだ。
その証拠に西行妖の根元には捕らわれていた幽々子の姿が。ただまだ眠っているようだな。妖夢はそれを見ると「幽々子様!」と声をあげかけよって無事を確かめている。
霊夢たちも解決したことが分かったらしく安堵の表情をしている。
だがこの状況に水を差す奴が一人。
おのれ!アマテラス、覚えているがいい必ずやキサマの首を喰い千切って―――
言いきる前に一閃で切り裂く。その不粋な奴は黒い靄となり消え失せた。
さて、では私は色々と問い詰められる前に退散するとしよう。去ろうとした時私の耳元で誰かが囁く
「アマテラス、今回は宴会に参加しなさいよね。というよりも強制参加よ」
……………はぁ、仕方ない。今回は参加だな。
そう思い勝手に物実の大鏡を配置しひとまずは神社に戻ったアマテラスだった。
西行妖「復活できたと思ったら蛇に乗っ取られて気がつけば再度封印されていた……なんだこれは」
次は宴会、それにまだからんでない人たちとからませます。多分閑話が続くと思います。