狼?いいえ大神です!   作:片腕仙人

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あややや


黒くて速いアイツの名は◯◯◯◯

春の暖かさが溢れるいたって平和な1日。

 

長い冬だったこともあり妖怪、妖精、動物達も春を堪能しているのか騒動も起きずに平和も平和。

 

それは神社も例外ではない。

 

だがこんな状況でも忙しなく動き続けている者もいる。漆黒の綺麗な羽根を持つ彼女もその一人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あややや、確かこの辺だと思ったんですけどねぇ」

 

私こと射命丸文は今とある人物を追っている最中です。最初に目撃したのはあの赤い霧が出現したときですかね。あの場に私は介入しなかったもののスクープの為に潜入していたんです。

 

そこである人物を見たんです。着物姿に何か円盤の様なものを背中に着けた女性を。パッとみた感じですと私の部下兼友達の椛と同じ白狼天狗のようにも見えましたがどこか違っていました。

 

そしてその人物は突如現れた謎の蛇の様なものを一瞬で倒してしまったんです!謎の着物美女、これはスクープの予感!とはりきって盗撮……んん!写真におさめたんですが……現像してみればどれもこれも逆光や謎の光でろくな写真がありませんでした。

 

あの時は異変を主にした記事と博麗の巫女を大々的に乗せましたが肝心の謎の人物に触れることができなかったんですよね。

 

写真の出来を見たときは自分の腕を疑ったと同時に撮れていないことに発狂しかけましたよ。

 

 

そして!私の独自調査によると今回の異常に長い冬も異変でしかもその解決に件の人物も関わっているということが発覚したんです。そして遂にその人物の拠点の場所を知ることが出来たんですが……おかしいですね、いくら探してもそこまでたどり着けないんですよね。

 

さっきからずっと飛び続けてるんですが全く距離が縮まらないです。これはナニかありそうですね。という訳で取材モード(人間ぽい)に変化して地上から攻めましょう。

 

 

あやや!?さっきまでは村にさえ入れなかったのにすんなり入ることができましたね……。周りを見てみても特に変なところはありませんし……まあ、入れたんですから良しとしましょう。

 

 

 

 

 

 

しばらくその辺をぶらぶらしながら取材をしていましたが随分と平和な村ですね。ここは人里からそれなりの距離があるので妖怪が入り込んだりしてそうですが…そういった話は聞けませんでしたね。

 

それはともかく聴き込み再開です!

 

「すみませ~ん!私、射命丸文というものなんですがお話よろしいですか?」

 

「あら、この辺じゃみない人ね。どうかしたの?」

 

あややや、随分とお綺麗な人ですね。ただ頭の上の飾り、多分米俵のような見た目ですが重くないんでしょうか?

 

「私、人里から来たんですがこの辺に白い着物をお召しの方はいらっしゃったりしませんか?それと見ておいた方がいい場所なんかも教えていただけるとうれしいです」

 

 

「う~ん、そうねぇ。白い着物を着ている人は見かけないわねぇ…ごめんなさい。見ておくといい場所だったら御神木の『コノハナ様』とあっちにある神社かしらね」

 

御神木に神社ですか、気になりますね。特にその神社というのが気になります。

 

「ご親切に有難うございます!では早速行って参ります!」

 

ご親切な方に別れを告げまずは御神木へ向かってみます。コノハナ様というのはここからでも見ることのできるあの木ですか。ここからでもかなりの大きさだというのがわかりますね。一枚ここで撮っておきましょう。そして後であの引きこもりに自慢してやります。

 

 

「はぁぁ~、近くで見ると尚更大きく感じますねぇ。いや、実際大きいんですがね。なんというか、こう、神聖な物を感じます。ここでも一枚撮っておきましょう」

 

あれ?私、ただ観光しているだけになってきている気がします。いえいえ、これは取材ですよ取材。地域取材です。

 

………この木の上の方で昼寝でもできれば最高でしょうねぇ。

 

それでは神社の方に向かいましょう。

 

 

射命丸は写真を数枚撮って神社のある方へ歩いていった。背中を見つめる二人の視線に気づかぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サクヤ、どう思う」

 

「そうですね、一見害は無いように見えますが。それに私とアマテラス様の結界を越えられたということは悪意はないはずです」

 

「まあ、もし何かよからぬことを企んでいると分かればすぐに私が何とかしよう。ではまたな、サクヤ姫」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふう、それなりに歩いてきたはずですかなかなか見えませんね。村からもだいぶ離れたはずですが本当にあるんでしょうか?

あの人が嘘を教えるような人には見えませんでしたし、いっそのことここから変化を解除して低空飛行していった方が楽でしょうか?

 

ですがこの木々が作り出した自然のトンネルをゆったり歩いていくというのもいいですね。所々から日の光が差してとても綺麗です。

うん、歩いていくとしましょう。

 

ただ、なんというか視線を感じる気がします。例えば、そことか。

 

そう思い草むらに向かって風を吹かせてみます。すると草むらから飛び出してきたのは、

 

「ウサギですか」

 

どうやらウサギだったようです。その後ろからリス、猪と続き…ちょっと多くないですか?そして最後は犬…ん?…犬?あれ、狼じゃないですかね?

 

ちょっと待ってください!犬にしては大きいですし牙も鋭すぎます!完全に狼ですよ!ここ狼なんているんですか!?

そ、それよりもですよ……狼にもしもであったらどうすればいいんでしょうか?死んだふりは良くないでしょうし、かといって弾幕を撃ち込む訳にもいきません。とにかくあっちの出方を見ましょう。

 

 

「グルルル………フッ…」

 

 

狼は少しだけ唸り声をあげそっぽを向いて欠伸をしながら何処かにいってしまいました………なんでしょう、少しバカにされたような気がします。

 

ま、まあいいです。少し周りに気を配りながら進みましょう。それにしてもあの狼、綺麗な模様でしたね。なんというか種類なんでしょうか。気になりますね、帰ったら椛に聞いてみましょう。

 

 

などと考えながら進んでいるとようやく神社の鳥居が見えてきました。さて、ではこの辺で変化を解き一息に鳥居へ飛び上がります。

鳥居の上から今まで歩いてきた方に目を向けると先ほどまでいた村が見えました。人もかなり小さいですが目視できます。

 

はぁ~、ここも随分といい眺めですね。ですがここには取材として来ているんです!当初の目的を果たすとしましょう。

鳥居の上から神社を見下ろす形で一枚写真におさめます。

 

ここから見る限りでは人はいませんね。中央の石畳の道の両脇には様々な動物の石像があります。建物そのものも綺麗で立派、何処かの神社とは雰囲気からして違いますね。

 

ん?おっと!あそこに見えるには白い着物の人物!

 

レンズを覗き込み写真を瞬時に一枚。……レンズ越しでもわかったんですがあの方ではないですね。しっかりとは見れてはいなかったですがあの女性には椛と同じような耳がありましたし、それ以外もさっきの女性とは違ってましたし、具体的にはメイクとかです。

 

ふ~む…となるとですよ。いい加減下に降りて直接、ですがもう少しここで……もしかするととっておきのスクープが撮れるかもですしね。う~ん、ちょっと悩みますねぇ。

 

「どうした?悩みごとか?」

 

「ええ、少し迷ってしまいまして」

 

「そうか、迷ってるのか」

 

「はい、迷ってます……………?」

 

ん?……私は誰と話して…!?すぐに横を向き確認します。

誰もいない…いやそんなはずは、

 

「随分と綺麗な翼だな、鴉」

 

「きゃっ!どちら様ですか!?」

 

私の翼とその付け根に誰かに触られた感触。すぐに振り返り触った人物を捕まえようと手を伸ばす。

 

「あややや!?危なっ!」

 

手を伸ばした先には誰もおらずしかも危うく鳥居から脚を踏み外してしまいそうでした。何とか耐えたので良かったんですが…

 

「危なかったな」

 

その声が背後から聞こえた瞬間、最速で振り返りカメラを構えます。速さではちょっとばかし自信があるのでこの振り向きはかなりの速さですよ。

 

「全く!どちら様ですか!勝手に私の翼を……さわっ…た…のは…え?」

 

レンズに写ったのは大口を開けた白い狼、しかも隣に居れば誰であろうと絶対に気づくレベルの大きさです。さっき来る途中で見た狼よりも遥かに大きいです。もはや鳥居にどうやって乗っているのか聞きたいほどです。ですがその狼は大口を開けているんです……つまり。

 

「あ、あややや……そのぉ、大きいお口ですねぇ…えと、私はこの辺で…おいとまし――ンー!?んー!ンンー!!」

 

や、ヤバいです!まずいです!死にます!!現在私は頭からぱっくりといかれてしまっています!お腹の辺りに牙が当たっている感覚があります。さっさと逃げるべきでした!

 

というか何ですか、あの口を開いてから私を咥えるまでの速度は!?全く認識できませんでしたよ!あぁ、私はもうダメです…死にます。すみません、椛…先立つ不幸を許してください。

 

今思えばあのときの狼はこうなることを知っていたのかもしれません。あのときバカにされたように感じたのはきっと、また新しい餌が来たとでも思われていたんです……。

 

うぅ…暴れようにもこの状況では……ひぇ!?何ですか!?急に衝撃が!私を咥えたまま鳥居を降りたんですか!

 

いやぁ!!やめてください!咥えたまま振り回さないでください!

うぷっ……狼の口内ということもあって気分が悪くなってきました……

 

「ぶへっ!……うぅ…」

 

死を覚悟していましたが突然吐き出されます。辺りを見てもどこか別に場所に連れてこられたという訳でもなく神社のままです。しいていえば鳥居の上ではないこと。恐る恐る振り返ってみるとそこには狼はいませんでした。狼の代わりにその場にいたのは――

 

「無事か?災難だったな」

 

着物を着た顔に特徴的なメイクをした女性でした。どうやら人間のようです。

 

「あ、はい…えっと、無事です」

 

とりあえずは返事をしておきます。それにしてもあの狼はいったいどこに……

 

「それで、()()神社。この天照神社に何の用だ?妖怪」

 

……ん?この人の神社?ということはもしかして…

 

「えっと、あなた様の神社ですか?ということはつまり…」

 

私の顔が少しだけひきつっていると、目の前の女性はこちらを見据え疑いの表情を向けてきます。しかもさっきとは違って圧迫感がとてつもないです。それにさっきまで頭の上になかった耳と尻尾がいつの間にか生えています。

 

あややや……これは、アウトですね。許してもらえばいかもです。

噛みちぎられて真っ二つになろうがなるまいが私は既に積んでいたわけですんね…

 

「ふふふ、どうしたんだそんな死んだような顔をして。別に喰ったりはしないさ。ちょっとした冗談だ、さあこっちに」

 

え?……どういうことですか?……え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぉ!酷いですよアマテラスさん!!私、本当に死ぬかと思ったんですよ!」

 

「悪い悪い、ただな結界を越えて村をうろつき、神社の鳥居に勝手に登っている妖怪がいたんだからこれくらいはいいだろう」

 

 

うぅ…それは確かにそうなんですが…

えっとあの後ですね、吐き出されてからこちらのアマテラスさんという方に連れられて神社の縁側へ来ています。この方、何を隠そうこの神社の神様である天照大神だそうで、それ私が探していた件の人物でもあるんです。

 

 

「まあ、もし悪意のある妖怪ならあのまま噛みちぎったがな」

 

 

「うぇ!?じょ、冗談ですよね!?」

 

「ああ、勿論」

 

ははは…この人、冗談はもう少しそれっぽい感じで言ってほしいですね。真顔で言われては本気でいってるとしか思えないです。

 

 

「それで、文だったな。私に用があるらしいが」

 

「そうでした!そうでした!はい、私こと射命丸文は文々。新聞というものを執筆しておりましてですね。最高のネタ、んん!最近話題の謎の着物の美女ことアマテラスさんに取材をしたくうかがったわけです!……まあ、食べられかけてしまったわけですが…」

 

「取材か?まあ別にいいけど…といってももう数枚それで勝手に撮っているんだろう」

 

あややや……バレてましたか、なかなか目ざといですね。

 

「そ、それは、そうですが一度それは置いておきましょう。では取材を始めさせていただきますね!」

 

 

アマテラスさんにはだいぶからかわれました。こっちからしたらたまったもんじゃありませんでしたけど。が、ここからは私の本領発揮です。天照大神ことアマテラスさんの有ること無いこと根掘り葉掘りお聞きして最高の新聞を作って見せます。これで講読者も一気に増えるに違いありません!

 

いきますよアマテラスさん!

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『妖怪の山 ~射命丸宅~』

 

 

いや~、かなりの情報が聞けましたねぇ。やはり本人に取材するのが一番ですね。何処かの引きこもりみたく遠くから写真を撮って書くよりも断然こっちの方がいいですよ。

 

さてさて、記事にできそうなメモはまとめ終わったので早速写真を現像していきましょう。かなりきわどいアングルの写真もあるはずなので楽しみですねぇ。

 

 

どれどれ、どんな感じになって………!?

 

「な、なんですかこれ!?」

 

現像してみた写真はどれもこれも異変の時に撮った物と同じように謎の光でろくなものになっていなかったり何故か逆光になっていて新聞に使えるものではありません。

 

これも、これも、こっちも、あああああ!!全部ダメです!嘘でしょ、そんなことが……ん?この写真変ですね。

 

目に留まったのは一枚の写真。いやまあ、これも謎の光で使えないんですが…なんというかその光が文字のようになって…!

 

あややや……やられましたね、これは…

 

その写真にはこんな風に読みとれる文字が浮かび上がっていました。

 

 

――――――――――――――――――

 

射命丸 あまりきわどいのは良くないぞ

 

 

それと鳥居にあがった罰だ

 

 

アマテラス

 

――――――――――――――――――

 

 

あぁ……マジですかぁ…アマテラスさん……

 

これも神様の気まぐれですかね……

 

さすがに写真無しの新聞にはできませんしねぇ…

 

 

せめて一枚くらいは何か…

 

「ん?この写真はうまくとれてますね……あややや、でもこれは…流石に使えませんねぇ~、飾っときましょうかね」

 

 

上手く現像できた一枚、その一枚は私とアマテラスさんのツーショット写真でした。アマテラスさん、ふふふ、これじゃあ使えないですよ。

 

まあいいです、書けるだけ書いてみますか。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

この後出版された文々。新聞は誰がどう見ても完全に神木村の観光新聞だったという。

 

このおかげで神木村には人里から観光にやってくる人がちらほら居たとか。

 

 

某神社の巫女は後にこの記事をみて「あんたでもこんな記事書けるのねぇ……」と少しだけ感心したらしい。

 

 

この時の文々。新聞の講読数はいつもよりも多かったらしい。若干講読者も増えたとか。

 

射命丸はこの時「なんでいつもよりも多いんですか!なんか納得いきません!」と語っていた。

 

 

 

 




まともに書けば読まれる文々。新聞
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