閑話を書いてたんですがちょっと進めたくなったのでこっちを先に
すいむそう
西行寺幽々子首謀の異変がかなり危険ではあったものの死者も出ずに無事に解決した。ただしアマテラスの腕は犠牲にカウントしなければ。解決の後の宴会が開かれてから数日。
美しい桜も散り山は淡い緑色へと変化し穏やかな日が続いていたが人々は春の名残なのか浮き足立っていた。
そんな中でも変わらぬ場所、変わらぬ人物は存在している。そう、天照神社そしてアマテラスである。変わらぬといってもアマテラスの生活は少しだけ変わりはしているが、主に両腕が。
だがそこはアマテラス、何だかんだで上手くやっているし濡神も手伝ってくれていることで問題はない。
そのアマテラスは今は冬毛から変わりモフモフ状態から夏用の姿へ変わっている。髪は後ろでひとつに結びポニーテールにし着物には冬の時はファーが着いていたが綺麗になくなって薄めの生地へ変わりスリットが入っている。ただ濡神に言われたのか肩には羽織の様なものを掛けている。
ちょっとしたアレンジが入っているが花魁風夏照の誕生である。
そんな夏仕様の神、アマテラスは神木村を散策していた。勿論耳と尻尾は隠しているがこの村ではあまり意味はないようにも感じる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
さて、今私は神木村にいる。何故かというと簡単だ、神社に居ると濡神が安静にしていろと事あるごとに言ってくるんからだ。まあ、心配してくれているのは分かるんだか少ししつこすぎてなぁ....
今回もその辺を見回ってくると言っただけなのに「見回りなら私が行ってきます!」と言って私を神社から出さない気だったから黙って出てきたんだが何やら村が騒がしいような気がする。
といっても別段危機が迫っているというわけではないようだ。丁度あそこにミカン爺がいるし聞いてみることにしよう。
「ミカン爺何かあったのか?」
「んん?...おお!お主は天照か。あのとぼけた顔からは想像もできんくらいの姿じゃわい。慌ただしいのは宴会が近いからだと思うぞい」
宴会が…か。特に特別な日でもないはずだがなにかあっただろうか?
「ふふ、とぼけたは余計だ。なにか祝い事でもあったか?」
「いやそういうわけではないんだが、無性に宴会をしたくなってしまってのぉ。村の皆も乗り気でな、それで皆こんな調子なんじゃぞい。それよりお前さんはどうしたんじゃ」
ただ宴会がしたいだけだったわけか。まあ別にいいんじゃないかたまには村ぐるみで何かをやるというのも。
「私は少しこの辺を見て回ろうとしているだけだ散歩と思ってくれればいいさ。とりあえずはクシナダのところにでも顔を出してみる。宴会の準備で忙しいかもしれんがな」
「クシナダじゃったらあの辺におったぞい。さてわしもそろそろもどるぞい、ではな」
そういいミカン爺は家へ入っていった。それではクシナダのところに行ってみるか。宴会の前は酒屋は忙しいだろうが今ではスサノオが一緒にいるし幾分か良くはなっているだろう。
そういえばクシナダが湧き水を汲みに行ったときは自分の倍以上はある入れ物を背負って行っていたがあれだけの物を背負ってを一人でどうやって村に戻ったのかは未だに謎だ。
などと考えながら向かっていると水車の前に立っているクシナダの背中が見えた。なにやら考え事をしているようだ。
「クシナダ、何か悩みごとか?」
「あら、アマテラスちゃん。そうなのお酒の注文が沢山入ったのはいいんだけど水車が壊れちゃったの。そのせいでお酒が作れなくて....スサノオに頼んで直して貰おうと思ったんだけど、スサノオは泉に水を汲みに行っちゃってね」
水車が壊れた、か。たしか前にもそんなことがあったな。あの時はまだ私も甦ったばかりで筆業もほぼ全てが使えず、人型にもなれなかったな。今思い返してみるととても懐かしい。
「それなら私が直そう。放っておいたら一人で直そうとしかねないだろ?無理にでも」
「うぅ...そうね、ありがとうアマテラスちゃん。でも私にだって直すことはできるのよ」
たしかにクシナダなら普通は出来ないようなことでも気合いでやってのけそうだしな。そう考えながら尻尾を使い水車に画龍を使い元の状態へ甦らせる。
水車に黒い墨の様なものがまとわりつき、すぐにパッと弾け飛ぶ。
すると水車の欠けていた部分が元通りになりいつものように回り始める。
「アマテラスちゃんありがとう!これでお酒が作れるわ。そういえば前にも壊れていた水車がいつの間にか直ったことがあったけどあれはアマテラスちゃんだったのね。本当にありがとう!」
そういいクシナダはアマテラスの頭を撫でる。狼の時によく撫でていた癖のようなものだろう。ただアマテラスは今は人型、狼の時と人型では感覚が若干違って―――
(あっ、尻尾が。ふふふ♪)
でも、無さそうである。折角隠していた尻尾も現れブンブンと左右に振ってなかなかに気持ち良さそうにしている。
その時クシナダはあることに気づいてしまった。アマテラスの後ろにとある人物がいることを...
「あら、濡神ちゃんも一緒だったのね」
クシナダのその一言にアマテラスは一気に固まる。クシナダに撫でられてもかろうじて隠していた耳は頭の上に現れると同時にペタりと折れ尻尾も一瞬だけピンっとなり直ぐにだらーんと垂れ下がり顔が青くなっている。
アマテラスはギギギと錆びついた器械のようにゆっくりと背後へと向きそして絶望した。
「どうも、クシナダさん。それと母様、こんなところで会うなんて奇遇ですね....何を、していたんですか?」
その言葉は至って普通の一言だったがアマテラスに向けられた視線と全く笑っていない表情が相まってかなりの圧がアマテラスに向けられているのがわかる。しかも普段の糸目がばっちり開いて黄色の瞳で見つめている。
「ぬ、濡神...えっと、これは...」
「私はせめて今日は安静にしていてくださいといったはずですが」
「アマテラスちゃんどこか悪いの!?」
クシナダは濡神の言葉を聞いてかなり心配しているようだ。
「ええ、まあ何があったかは省いてしまいますが簡単に言ってしまえば母様は今両腕が使えない状態なんです」
「えっ!?駄目よアマテラスちゃん!しっかりと安静にしていなきゃ!大丈夫?辛くない?」
「へ、平気だって...そんなに心配しなくても...」
「駄目よ!」「駄目です!」
アマテラスは二人の気迫に負け何も言えない。というよりも何をいっても敵わないと本能が囁いているのかもしれない。
「という事で母様!クシナダさんもこう言っていることです。今日は安静にしていてください。いいですね?」
「わ、わかった.....でも少しくらい」
い・い・で・す・ね・?
濡神の言葉にアマテラスは再度凍りついたように固まり青い顔で頭を上下に振りまくっている。
「わかってくれましたか。では母様、私はクシナダさんとお酒作りについてお話がありますので一人で真っ直ぐ寄り道せずに戻ってくださいね。ああ、それと神社にリリーさんが来てます。なんでも母様にお話ししたいことがあるとか」
濡神はそうアマテラスにそう伝えるとクシナダの背中を押しながらその場を去っていってしまった。
「........戻るか。それにしてもいつから濡神はクシナダと仲良くなったんだ?まあ、気が合う人物を見つけるのはいいことだ」
それよりも神社にリリーが来ているのか。話があるといっていたらしいが何かトラブルでもあったのだろうか。ひとまず神社に戻らなくては。勿論、寄り道せずにな。
もし寄り道でもしたら何処からともなく濡神が現れそうだし....
うん、真っ直ぐ戻ろう。直ぐ戻ろう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
場所は移り『天照神社』
「よし、寄り道はしなかったぞ」
濡神にいわれた通り真っ直ぐ神社に戻ってきた。あたりは春の景色から変わり夏模様になっている。ただ大半はそうだが私の神社は少し特殊で流石に雪が降っているということはないが春に咲く草花や樹などが存在している。桜に紅葉したカエデ、梅なんかもあったりする。
つまりはそれぞれの季節、四季がいっぺんに訪れている。まあ、大半はその時の季節のものなんだが、今で言えば夏に咲くようなものが主だ。
っと、それはいいとしてリリーはどこにいるだろうか。
「あっ!アマテラスさ~ん!こっちですよぉ~!」
ん?ああ、あそこか。やはり春の妖精ということもあってか桜の樹のしたにいた。勿論この桜も満開だ。季節外れではあるが。
「やあ、リリー元気だったか?」
「はい!勿論ですよ~!春ですよ~!」
「いや、夏だが?」
あれ?夏であってるよな?冬が長すぎて私の感覚が少し狂ってるのかもしれん。
「はぃ~そうなんです...夏なんですぅ....でもここだけは春ですよ~!!ここには春がありますよ~!!」
「そ、そうか...それでリリーはどうしてここに?確か春が過ぎたら次の春まで冬眠するといっていなかったか?」
春告精であるリリー・ホワイトは冬の季節の替わり頃から春にかけてが行動時期、であっていたはず。
「それなんですがアマテラスさん、そのですねぇ...もしよろしければですね、その~...アマテラスさんの神社の隅の方でいいので置いていただくことは」
「なんだそんなことかいいぞ」
「ああ、そうですよね..やっぱり駄目ですよね....ん?今なんて?」
「別にいいといった、むしろいいのかこんなところで。探せばもっといい場所はあると思うんだが...」
「いいもなにも私はここがいいんです!この神社にはいつでも春があるので私としてはここが最高の場所なんですよ!本来なら私は春以外だとかなり力が弱まってしまうんですがこの村と神社の近辺なら力が弱まるどころか強まっています!!気がするだけかもですが!!」
そういいながら顔をずいっと突き出してくる。
おお、そこまで言ってくれるとはなかなかにうれしいな。むしろここまでは聞いておいて――いや、住まれるのは困る...とは言えまい。私の答えは最初からなにも変わっていない。
「そこまで気に入っているならリリーが良ければ好きにするといい私は歓迎するぞ」
リリーはその言葉を聞くと顔がパッと明るくなる。さすがは春の妖精なだけはある、とても明るいいい笑顔だ。
「ありがとうございますぅ!アマテラスさん!濡神さんにも伝えなきゃですね!...あっ、でも私が行っても村人さんたちは驚かないでしょうか?」
ふむ、リリーを見て驚くかどうかかぁ。....何故だろうな全くと言っていいほど驚く場面が想像できない。むしろ歓迎されるだろうな。
「平気だと思うぞ。私や濡神、がいることもあって妖精ってだけでは驚いたり差別したりなんてことはないだろう。かえって歓迎されると思うぞ。そうだ、ちょうど今日は宴会があるらしいからその時にいってみるといい。それまでは、そうだな好きにくつろいでゆっくりしていてくれ」
さて、私も縁側で日向ぼっこでもしていよう。濡神曰く安静、だからな。安静安静、静かにしてますよ。
日は沈みあたりは薄暗くなってきたが村の方はこれから賑やかになっていくことだろう。リリーがこの神社に住むことになったのはさっきまでここにいた濡神に伝えてある。まあもうすでにここにはいないんだがな....リリーは濡神に連れられて宴会に行ったし。
怪我人を一人にするのはよくないと思うぞ二人とも。まあ別に平気だがな。そういえばリリーがここに住むにあたって何かできることはないか?と聞いてきたから巫女的なことをしてもらうことにした。
といっても巫女が何をするのかよく分からないのが難点だ。とりあえずその辺を掃いててくれればいいんじゃないだろうか。それと巫女服だがどうしたものか....何か手本があれば作れなくもなさそうだしそれも探さなくては。
だが今はとにかくゆっくりしていよう。
「濡神もいないことだし早めに寝てしまおう。また戻ってきたりしたらきっと口うるさ――」
「私がなんでしょうか?母様?」
「!?.......い、いや、濡神はいつも気にかけてくれてありがたいと思ってだな...」
「....そう、ですか。ふ~ん」
な、なんだその疑いの眼は...別に嘘なんていっていないぞ。戻ってきたら勝手に出歩いていたことを怒られそうとかは思っていない。
「まあ、いいです。母様、リリーさんから話は聞きました。私はリリーさんがいいのであれば大歓迎です。村の皆さんも同じく歓迎されてましたし」
「そうか、それなら良かった」
「はい良かったです。...ところで話は替わりますがなぜ勝手に出歩いて――」
「濡神!私は急激に眠気が襲ってきてもう立ってもいられなさそうだから先に寝ることにする。それと明日は人里の方に脚を運んでみるから心配しないように。ではおやすみ!」
アマテラスは口早にそういうと奥の方へと進んでいき尻尾を使い器用に襖を開け逃げるようにして消えていった。
濡神はため息をひとつつき今回は多めにみることにしてあげようと思ったようだが次もしも同じようなことがあったら多分同じようにはならないことだろう。
まだ、密かに始まった異変に気づくものは誰もいない。
閑話は霊夢とアマテラスの出会いとか三妖精と一緒に何かしたりとかを考えてます。というか三妖精の方は書いてました。途中まで。