異変の前触れ
この村に続く道をピョンピョン跳び跳ねる影がひとつあった。その影は随分と小さく大きさは一寸ほどしかなくかなり小さい。
さらに緑色に輝いているようにも見えるため玉虫と間違われてもおかしくはない。
だがこの小さな者の正体はその姿を世に広めた
その彼がなぜ神木村に向かっているかというと
「たっくよ~!!
そうもいいながらしっかりと呼びに向かうのはイッスンの人柄ゆえか阿求が美人だからかは当人にしか分からない。
「それにしても神木村か。随分と久し振りだぜ近頃は絵巻やら筆業の絵巻の
そういうと跳び跳ねる速度をあげて神木村へ向かっていった。
イッスン 視点
『
ふぅ~、やっとついたぜぇ。人里からここまでだと随分と距離があるように感じるもんだな。ここに戻ってくると初めてアイツとあったことを思い出す。あれから随分と色々あったもんだ、最初は天道太子としての修行に嫌気がさして里を飛び出してここに来たんだっけなぁ。
「あら!もしかしてイッスンちゃん?」
そう言って一人の女性がイッスンのもとに駆け寄ってきた。その女性は赤を基調とした着物に頭の上には米俵のような髪飾りをつけている。
「ん~?その声はクシナダの姉ちゃんじゃねえか!相変わらず美人だぜぇ!」
「フフフ♪ありがと、イッスンちゃん。随分と久し振りねどこかに行ってたりしてたの?」
「ヘッ!第七天道太子イッスン様には暇なときはありゃしないんでい!」
さすがに編纂作業でずっと籠ってたとは言いたくないぜ、格好がつかねぇからな。
「クシナダの姉ちゃんも元気そうじゃねえか!まあスサノオのおっさんは聞くまでもなく元気そうだがな」
「えぇスサノオもとっても元気よ、今日もお酒作りを手伝ってくれたし今は息子のオオナムチと剣の修行でもしてると思うわ」
そういえばクシナダの姉ちゃんとスサノオのおっさん結婚したんだったな。まさかスサノオのおっさんとくっついちまうとは思わなかったぜ。おっさんが姉ちゃんを好きなのは分かってたがまさかクシナダの姉ちゃんもとはなぁ。
「全くよぉ、まさかスサノオのおっさんとくっついちまうとはなぁ。オオナムチかいい名前じゃねえか!暇なときがあったら三人の絵でも書いてやるよ何てったって天道太子にして旅絵師でもあるイッスン様だからな!」
「まあ!本当!楽しみにしてるわね♪それで今日はどうしたの?シロちゃんに会いに来たの?あっ!そういえばシロちゃんはアマテラス様だったのよね……じゃあシロちゃんじゃなくてアマテラス様って呼んだ方がいいかしら?」
「気にするこたぁねえよ!アマ公はアマ公だ、それに天下のアマテラス様はそんなに心が狭くわねえからな。……おう!おう!すっかり忘れてたぜ、オイラぁアマ公の事を探してたんだった。クシナダの姉ちゃんアイツが何処かで見かけなかったか?」
アブねえアブねえ、危うく本来の目的を忘れちまうところだったぜ。姉ちゃんに感謝だな。
「そうね、シロちゃんはシロちゃんよね。うーん、最近はみてないけれど向こうの神社にいるかしら?」
神社?そんなもん神木村にあったか?少なくともオイラが知ってる限りじゃあそんなもんなかったけどなあ。
「神社?この村にそんなもんあったか?いつそんなもん作ったんだ」
「イッスンちゃんがシロちゃんの事を教えてくれて少しして村長さんがみんなを集めて作ったのよ、とっても立派な
ふ~んアマ公の神社ねぇ……!?
「はあぁぁぁ!?アマ公の神社だぁ!?」
こうしちゃ要られねえ!アマ公の野郎なに自分だけそんなもん作ってもらってやがんだ。オイラに一言ぐらい知らせたっていいだろ!待ってろよアマ公今文句の一つや二つや三つ言いにいってやるからな!
イッスン緑色の光を紅くしてピョンピョン跳ねながら神社に向かっていった。
「あっ……イッスンちゃん場所わかるのかしら。まあ平気よねきっと。さあスサノオ達のためにご飯作らなくちゃね♪」
そういうとクシナダも家に戻っていった。
場所を聞かずにいったイッスンはというと━━━
しまったぜ、ついつい場所を聞かずに来ちまった。さすがに戻って場所を聞くのも格好がつかねえしな。どうしたもんか……
場所がわからず絶賛立ち往生中だった。紅くなった色もすっかりもとに戻っていた。そんなかてに話しかける人物が一人。
「これ、これ玉虫や。こんなところで何をしているのです?」
桃色の着物を着て髪を前で二つに纏めている女性、彼女は
「おう!なんでぇいサクヤの姉ちゃんじゃねえか。また着物に潜り込んでまさぐってやろうか」
イッスンからサクヤと呼ばれている彼女は木精サクヤ神木村の御神木に宿る聖霊のような存在である。
彼女はイッスンの言葉を聞いて胸元を隠すようにして怪訝な表情をしている。
「今回はどんな用で来たのです?」
「アマ公の野郎に会いに来たんだ、何でも神社なんて大層な場所にいるようじゃねえかそれは一体何処にあるんだ?」
「ふむ、我らが慈母アマテラス大神様に御用と其ならば向こうにずっと行けばたどり着けるでしょう」
「そうかい!ありがとよ!サクヤの姉ちゃん、またな!」
『
「ふーん、ここがアマ公の神社かよ。なかなかいいじゃねえか」
神社は独特の雰囲気があり周りが木々に囲まれていてそこから日の光がもれてとても神秘的な空間を作り出していた。本堂に続く道も広く屋根には狼の石造の様なものもある。
「なんでいこの石造良く見りゃあ旅の道中で出会った筆神たちじゃねえか。ここがアイツの神社ってのは本当みたいだな、オーイ!アマ公いるんだろ出てこいよお前の相棒で第七天道太子のイッスン様がわざわざ来てやったぞ!!」
イッスンが賽銭箱に登りそう叫ぶが特に返事もなく誰かが出てくる気配はない。
「出てこないなら勝手に入るからな!……よし、もうあがるからな」
そう言ってピョンピョン飛びながら廊下を進んでいく。
「たくよぉアマ公の癖にこんな立派なもん作ってもらいやがってかなり広いしよぉ、おまけに庭に池までありやがるたぁな……」
ここまでやるかねぇ、と若干呆れながら進むイッスン。庭の様子に目を向けながらも進み続けると縁側で眠りこけている一人の女性を見つけた。それを見たとたんイッスンは緑色の光から真っ赤になり今までにないくらいの早さで女性のもとに向かう。
「やい!やい!やい!このイッスン様がわざわざ来てやったってのに眠りこけてるたぁどういうこったアマ公!!おい起きろこの寝坊助犬!オイ!」
そう言いアマテラスの周りを跳ね回り、胸の上で跳び跳ねたりして必死に起こそうとしているが随分とグッスリ眠っているようだ。
「━━━きろ、━━マ公」
随分と聞いていないはずの声が聞こえる。別に喧嘩したとか何処かの国にいってしまったとかではない。ただ久しく聞いていない声。
一緒に旅をしてお互いに成長しあって支えあって相棒と呼べる存在である彼。まさか夢にまで出てくるとは思わなかった、それに何故かこの声を聞くと胸が苦しく…苦しく、じゃない。なんだか胸の辺りがむず痒いようなナニかが跳ねてるような…そんな感じが。
「いい加減起きろってんだよ!この寝坊助犬!!」
「ん?……ん?イッスンか?」
別に夢でもなんでもなかった本当にいた、イッスンが。胸の上でピョンピョン跳ねている。うむ、これはあまりいい気分ではないな。
「どうかしたのか?イッスン、随分と赤くなったな。新種の玉虫にでもなったようだぞ。あとそこで跳ねるんじゃない」
「はあぁぁぁ!?オマエがさっさと起きないからだろうが!それによおなんだこの神社は!?オイラはこんなもんが建ったなんて一言も聞いてないぜぇ!」
ああ、たしかにイッスンにはこのこといってなかったはずだ。別に忘れたわけではないぞ。そのうち言えばいいかとか思って結局伝えてなかっただけだ。もしかしてイッスンそのために来たのだろうか。
「すまないな。このことはいつか言おうとは思ってたんだけど、それを言いにわざわざここまで来たわけか。あと跳ねないでくれ」
「ちげぇやい!それもあるが本題はこっちでい、アマ公今から人里にいくぞ。オマエに会いたいって嬢ちゃんがいるってんでわざわざオイラがきてやったんだからな。わかったらさっさと起きろってんだ!」
人里に私に会いたい人が?人里か、基本は神木村にいるから向こうの里にはほとんど行くことはないし。熱狂的な信者……ではないか。まあイッスンがわざわざ来るというてことはその人物が美人か可憐だということなんだろう。コイツは余程のことがなければ来ないだろうからな。そう思いながら上半身を起こす。
「分かった、今…起きるそんなに赤くなるな。戻れなくなるぞ」
ふむ、しかしこの色が変わるのはいったいどうやって……?
「うるせぇやい!いいからいくぞ!」
そう言いイッスンは先に行ってしまう。……私も行かなくてはいけないな。横になっている体勢から立ち上がり空を見上げる。
今日は………いい天気だ。
「おい、アマ公なにやって……なんでコイツ立ったまま寝てやがんだ、嘘だろ……おまえ」
『
人里、幻想郷の人間が暮らしているここ幻想郷では人里内にいる人間を襲うことは禁じられている故に妖怪に教われる心配のない安息の場。木造の家屋が並んでいて活気の溢れる人たちが多く住んでいる。その賑わう街道を歩く人物が二人、着物を着た女性背は高く凛とした顔立ち。そしてその女性の肩に乗っている者小さい人物。そうアマテラスとイッスンである。
「それでその阿求嬢が私に会いたいってわけか。会ってどうする気だ?」
私にあったところでご利益もなにもないが一体なんのようなんだ…なにかしてしまっただろうか。わからん。
「それは会ってからのお楽しみってな!それにしても……オマエ随分と注目されてるようじゃねえか」
「なに、いやそんなはずは…ないと思うが。耳も尻尾も隠した。やはり少し変だろうか?」
そういわれ周りを少し見てみると確かに見られてるような気がする。私の今の格好はいつもの着物に頭の耳をペタりとさせ髪に紛れ込ませ尻尾は帯に巻き付けるようにして隠している状態。さすがに犬耳に尻尾まで生えた状態では騒ぎになりかねないので隠すようにしている。まあアマテラス御忍びバージョンといった感じの筈なのだが。注目されてる、何故。
「イッスンよ、私はどこか変か?」
「そりゃあオマエそんな隈取りつけてりゃ注目もされるに決まってんだろ、それになあその格好のオマエはそれなりに美人といってもいいくらいなんだからよ。見られるくらいは我慢しな、さっさと来なかった罰だと思ってな」
ふむ…そういうことか。この隈取りは取ることはできるにはできる。だがこれを取ってしまうと私の毛並みがただの白になってしまう。この銀色に輝く毛並みは気に入っているのだが。
「オイ!そこの着物の姉ちゃん!」
と、いきなり声をかけられ何だ?と思い声のする方へ顔を向ける。
「なんだ随分と美人さんじゃねえか!ここらじゃ見ねえ顔だがどっから来たんだ?」
「ああ神木村から来た」
正確には神木村の外れにある神社だがな。
「ほう、そうかい。ほれこれでも食べな美人だから特別だ。他の連中もどこの美人さんか気になってた見てえだしな」
少しだけ周りに耳を傾けてみる。
「ねえあの人凄い綺麗」「私も隈取りつけたらきれいになるかしら」「綺麗なだけじゃなくてキリッとしててカッコいい」
どうやら見ない顔だということで注目されていただけなようだ。
「ほら、これやるよ!」
そういい包みを渡された。開けてみると中には団子が入っていた。
「ふむ、すまない」
「おう!いいってことよ!」
これを機会にこちらにもたまに来てみるとしよう。それと━━━
「イッスン、人里とは良いところだな」
「………団子もらったからか」
「ああ、そうだ」
「……さっさといくぞ!アマ公!」
イッスンに急かされてはいるが自分のペースでゆっくりと町並みを見ながら歩いていると一層賑やかな声が聞こえる場所にたどり着いた。中を覗いてみると里の子供たちの姿が見える。
「イッスンここは」
「ん~、ここは寺子屋だぜ。ここにはなオマエ何かよりも綺麗な慧音の姉ちゃんがいるんだぜぇ!」
慧音の姉ちゃん。ここで教鞭をとっているのは慧音という人物らしい。
「ん?その声はイッスンか?」
そういい現れたのは腰まで届く青のメッシュのはいった銀髪に頭の上には紅いリボンをつけた独特な形の帽子をかぶり、胸元のあいた上下一対の青い服を着た女性だった。
「おう!噂をすればなんとやら、久し振りだな慧音姉ちゃん!」
「うむ、久し振りだなイッスン。編纂作業はもう終わったのか?それとそちらの方は?」
編纂作業?イッスンはそんなことしてたのか。コイツは面倒だからやったりしないと思っていたがそうでもないようだ。
「そのことはいいんだよ別に、それよりも聞いて驚け!コイツはななんとあの有名なアマ━━」
「アマテラスという。宜しく頼む」
「ああ宜しく。イッスンから聞いているかもしれないが
ふむ、寺子屋の教師か。確かにそんな雰囲気はある。見た感じは皆に信頼される教師といったところだろうか。
「ほぉ、アマテラスというとあの天照大神と同じ名か。いい名前だな」
「そういった風に言われたのはあまりないが言われてみると存外悪くないものだな、うむ悪くない」
そう思い一人頷いているとイッスンが肩でなにか喚いている。
「おいおい慧音の姉ちゃんコイツはな、なんと本物の━━「それよりも慧音嬢、授業はいいのか?」
「ああ今は休憩の時間なんだだから平気だ。あと慧音と呼んでもらってみもいいだろうか。私もアマテラスと呼ばせてもらう、なんというか慧音嬢はなんというか、こう……ムズムズするんだ」
「ああ、そうか。ならば慧音と呼ばせてもらおう」
うむ、慧音とはいい関係をきずくことができそうだ。出来ればこの辺りに
「ところでアマテラスとイッスンは何処かに向かう途中だったのか?」
「………ああ、これから阿求嬢のところ向かおうとしていたのだったな。なあイッスン」
「その通りでい、阿求の嬢ちゃんが待ってんだそろそろいくぞ」
「阿求の屋敷だったらあそこに見える大きな━━!?」
慧音は途中でいいかけていたことをやめて驚愕の表情を浮かべある方向を見つめている。私もその視線の先を目で追ってみるとその理由がすぐにわかった。紅、さっきまではなんともなかったが紅い雲、霧のようなものがかなりの速度で拡がってきていた。
「おいおいなんだ!あの紅いのは!」
「これは!?アマテラス、君もみんなを避難させるのを手伝ってもらえないかあの紅い霧が体にいいものには思えない。私は里のみんなに知らせてくる頼めるか?」
紅い霧…霧、前にもこんなことがあったはずだ。今回は紅か、次あたりは青でも来そうだな。流石にあれはいいものではなさそうだ。これからのためにも手を貸すくらいは安い。
そう思い人里の空に手をかざし丸い円を書くように動かす。
すると曇っていた空に急に太陽が現れた人里全体を照らす。さらに風をイメージして大きく手を動かすそうすると里の周りに風が吹き抜け紅い霧を吹き飛ばす結界のように里を覆う。
「なっ!これは一体!?アマテラス、君は……なんだ?」
今までの表情と違いなにか見定めるようにこちらを見てくる慧音。
その目は今まで里を守ってきた守護者そのもののように感じる。
確かに目の前でこんなことをされれば何者か疑ってしまうのも無理はない。ただ今はこの霧のほうが重要だ。
「これは後で詳しく説明しよう。慧音嬢は里の住民が外に出ないように伝えておいてくれ。私は少し野暮用ができたのでな」
「……ああわかったでも必ず後で教えてもらうからな気を付けるんだぞ」
「おい!アマ公なに勝手に決めてやがんだオイラはいくといってねえぞ!」
「ほぉ、怖気付いたかイッスン。ならばここに残ればいいそれにここにいた方が安全だ」
コイツは反骨精神の塊のようなところがある。こう言えば必ずといっていいほど
「なんだと!?オイラだけ置いていこうたぁいい度胸じゃねえかよ!」
反発してくる。
「…ならばどうする?」
「着いていくに決まってるだろ!!」
このやり取りも少しばかり懐かしいな、あのときはいつもこうしていた。奴との戦闘時もそうだった。
「だそうだ。コイツも連れていくが問題ないだろうか慧音」
「あ、あぁ…気を付けるんだぞ」
慧音はイッスンとのやり取りをみて若干困惑ぎみになっているがそれは今はいい、霧が拡がってきた方向に向かって走り出す。
そのまま人里をでて少しいったところで走ったまま両手を前に出すようにし軽く飛ぶ。
すると一瞬で人型から一般的な大きさを遥かにしのぐ大きな狼の姿に変わりそのまま霧の発生源が存在するであろう場所へ向かっていく。
「おい!オマエいつからそんなにデカくなった!?」
私がいつまでもあの大きさのままだと思うなよ。神だとしても成長するさ。
霧のなかに佇む紅い屋敷その屋敷の図書館のように大量の本棚がある場所で二人の人物が話していた。二人は特徴的な帽子、一見ドアノブカバーのように見えるZUN帽をかぶっていて一人は背中にコウモリのような羽が生えている。もう一人は椅子に座り水晶のようなものを覗いている。
「どう計画は順調かしら?」
羽の生えた人物がもう一人に聞く。
「ええ、順調よ。もうそろそろ霧で多い尽くせるはずよ……これはどういうこと!?」
水晶を覗いていた人物が急に驚きの声をあげる。
「どうかしたのかしらなにか問題でも?」
「いえ、問題はないわ。ただ人里?かしらそこだけ霧が避けてるというか弾かれているみたい。それに私が魔法で曇らせたはずなのにここだけ太陽が出ているのよ、
「なっ!?これは厄介なことになりそうね」
「ええ、でも貴方なら平気でしょう?」
「フフフ、ええ平気よ貴方も平気でしょ親友?」
図書館には二人の笑い声が響き渡っていた。
少し追加したところもあるので変な部分があるかもしれません