狼?いいえ大神です!   作:片腕仙人

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人里でのお話


慧音と阿求とアマテラスと

異変が起こった日から数日が経ち幻想郷にはいたって平和な日々が続いていた。

そして一応はその異変の解決に協力したアマテラスはというといつもと同じように神社の縁側で空を見上げていた。

 

「よし、人里に行くことにするか」

 

そう一言呟き、せっせと準備を始め準備が終わるとすぐに出ていってしまった。

 

 

 

 

場所は移り人里、今日も大変賑わっている。

 

移動の道中は特に何事もなかった。小さなタタリ場の一つくらいあるかと思ったのだが、まあないならそれでいいのだが。

人里にきたということで尻尾と耳は隠してある。

 

やはり人里というのは良いところだな。その辺を見渡せばすぐに食事処や出店が目に入ってくる。幸いなことの幾度の旅を重ねたことで資金はたっぷりある。それでは始めるとするかな目指せ人里全制覇!(食べ物に限る)だな。

 

そして私は人里の端の店から順に入っていきその店の全てのメニューを食べては次の店へ、気に入ったものがあればお代わり持ち帰りをして更に別の店へ。そんなことを繰り返し何軒目だったかわからなくなった頃に次の店へ行こうとした時だった。

 

「そこのお前!お前か人里の食事処を片っ端から在庫切れにして回っている者は!特に怪我人が出たとかではないがせめて加減というものを,だな…………アマテラスか?」

 

「ん?おお慧音か数日ぶりだな。一体なんの騒ぎだ、こんなに人だかりができて」

 

アマテラスがいう通り慧音の後ろには一体誰がこんな騒ぎを起こしているのか、慧音が無事に騒ぎを静められるかが気になった者たちで人だかりができていた。

 

店側としては売れるのはいいだろうが一人で在庫まで食い尽くされるのは流石に思うところがあるのだろう。

 

「それはこちらが聞きたい。食事処の店主が揃いも揃って助けを求めてきたと思えばその原因がまさか私の知り合いだったとは……」

 

慧音は頭に手を置き大きなため息をつく。そして後ろに振り向き集まった人達の方へと体を向ける。

 

「皆、彼女は私の知り合いだ。彼女には私からキツく言っておくからここは許してやってくれ」

 

集まった人達はそれなら、と口々に言って散らばっていった。アマテラスはいまいち状況がよくわかっていないらしくキョトンとした表情をしているが手は止める気がないらしくずっと動かし続けている。勿論口も一緒に。

 

「アマテラス、ここでは他の人達に迷惑がかかる。寺子屋の近くで話すとしよう」

 

「ん?ああいいんだがまだ食べ終わっていない。もう少し待ってくれ」

 

「………わかった、でもそれで終わるにするんだ。勘定は私がしておくから、それでいくらになる?」

 

慧音は店主に値段を聞き一瞬固まったがまた大きなため息をつきしぶしぶ払っていた。

 

「アマテラスそこまで急がなくても━━「終わったぞ」!?速くないか!?さっきまで結構な量が残っていたはずだが……まあいいそれじゃあ行こう」

 

慧音に促されアマテラスは後に続き店を後にする。場所は移り寺子屋の前にやって来た。

 

「さて、アマテラスまず最初に私に言っておくことがあるんじゃないか」

 

私が慧音に言うべきこと………ああ、なるほど。

 

「店での勘定はすまなかった、ありがとう」

 

「ああ、確かにそれもそうだが他にあるだろう」

 

この他にだと……わからないな特になにもない気がするが。首をかしげて悩んでいると。

 

「アマテラス、お前はあの時戻って来ると言って出ていっただろう。私はずっと待っていたんだぞお前が戻るのを」

 

 

…………不味い、完全に忘れていた。何かを忘れていると思っていたがこれだったか。ここは何とか悟られないように誤魔化すしかない。

 

「……………そのことなら、そうだ。あれだ……急用ができてしまって、だな」

 

「ほう、それはいったいどんな急用なんだ?」

 

あー、っとそれは何かいい返事はないものか。などと考えているといきなり両肩を掴まれた。

 

「いいかアマテラス、私は別に怒っているわけじゃない。ちゃんと正直に言ってくれていればそれまでだったんだが……隠そうとしたのは良くない、だからお仕置きだ」

 

そういうと慧音は私の肩に置いた手に力を入れて頭を後ろのほうに引く。それを見ていた周りの人達はこれは重いのが来るなぁと思いアマテラスに向け心のなかで合掌を送っていた。

 

ああ、この感じは分かるぞ。これはあれだ、私も使うことがあるあれだな。頭突き━━━

 

その瞬間すごい早さで接近する慧音の頭、そのままアマテラスと衝突し辺りに絶対に頭から鳴ってはいけないような音が響きわたる。

 

端から見ていてもかなりの衝撃だということがわかる。こんな頭突きを貰えば悶絶してしまうのも無理はない。案の定悶絶し頭を抱えるしゃがみこんでしまっている、慧音の方が。

 

アマテラスはというとなに食わぬ顔で慧音を見下ろしている。これに驚いたのは慧音もそうだがこれを見ていた住民たち。

慧音が頭突きをしているのを日頃から見ていてその威力と石頭をよく知っている者たちからしたらあの慧音の頭突きを受け平然としている事もそうだが何よりあの慧音が悶絶してしまっている事の方が衝撃的だっただろう。

 

「慧音、平気か?私の頭はかなりの石頭だから気を付けた方がいい」

 

「ぐ、くぅ……そ、そう、だな。次は気を付ける事にする。とりあえず中に入ろう……まさか私の方がこうなるとは

 

慧音はなにか最後の方に言っていたがよく聞き取れなかった。特に重要というわけではなさそうだったので特に聞き返すことはしなくてもいいとは思う。そして慧音に案内されるままついていき寺子屋の一室。

 

「さて、それじゃあ聞かせてもらうことにしようか」

 

「なんのことだ?」

 

「……君の事についてだ!教えてくれるんだろう」

 

ああ、そうだったそうだった。ついうっかりしてしまっていた。どうやらあの頭突きはそれなりに効いていたらしい。

 

「ああ、そうだったな。私はアマテラスだ」

 

「……それは、わかっている。回りくどいのは無しでいくぞ、ズバリ君は何なんだ」

 

「天照大神」

 

私は天照大神、嘘はない。これは完璧な答えだな!うん。

 

「だからそれは君の名前だろう、そうじゃなくてだな━━━」

 

「いや…あの、本物の天照…」

 

その力の入っていない声を聞いた慧音は少し呆れた様子をしてしまっている。

 

「いくら名前が同じと言ってもこんな身近に天照大神がいるわけないだろう。それに天照大神というのは伝承にもあるように狼のような姿をしていて背中には鏡のような物を背をっている。それに数々の奇跡も起こしてきていてだな」

 

その伝承はよく知っている、というよりも私がやったことが伝承だったり絵巻だったりで書かれて知られていって今に至るという感じなのだが、慧音は教師故かなにやら説明モードのような感じになってこっちのことはお構い無しという風に話続けている。これはこっちが口を出しても聞いてもらえないだろう。見せた方が絶対に早い。

 

慧音が説明に夢中になっている間に人型から狼の姿に戻る。勿論背中には鏡を背負っている。ただ紅魔館の出来事から二つほど鏡が見当たらない。ただ鏡は二つだけではないので今回は沖津鏡(おきつかがみ)を背負っている。この鏡は複数のパーツでできていて合体、分裂を繰り返している不思議な鏡。なぜそうなっているのかは私も知らない。

 

「慧音、それはこんな見た目か」

 

「ん、ああそうそうこんな風に大きな狼で背中に鏡を…せおっ、て……え?」

 

慧音はいきなり目の前に現れた狼を見て呆気にとられポカーンとした表情を晒している。一度見せればいいだろうからすぐに人型に戻る。ただ今回は尻尾と耳は隠していない。

 

「ほ、本当に天照大神なのか!?でもこんな身近にいるはず…といってもさっきのは絵巻に書いてあったものと同じだった。あっ、えっと、疑ってしまい申し訳ありませんでした大神様」

 

そういい慧音は頭を下げてくる。

 

「あー、別にそんなことをしなくてもいい。私も最初からもっと詳しく説明しておけばよかったわけだしな。それに話し方も楽なものでかまわない」

 

慧音はそうか、と頷き少し固くなってしまっていた表情が和らいだようだ。ただ何故か少しそわそわしているようにも見える。

 

「そ、それでだなアマテラスできればでいいんだが大神のその力を見せてはもらえないだろうか、それと出来ればでいいのだが伝承のオロチのことも本人から聞きたいのだが……」

 

「少し長くなるかもしれないがそれでもいいのであれば」

 

「そうか!では少しだけ待っていてくれ今書くものを持って━━」

 

「すみませ~ん、慧音さんいらっしゃいますか」

 

慧音がいそいそと筆と紙を用意していると寺子屋の玄関のほうからそう声が聞こえてきた。

 

「ん?すまないがもう少し待っていてくれできるだけすぐに戻ってくるから」

 

そういうと慧音は玄関の方へ向かって行った。

 

多分こういったことはよくあるのだろう。きっと人里で起きた問題や相談事などが慧音の元にやってくるにちがいない。

 

そんな風に考え感心しているとなにやら玄関の方が騒がしくなって誰かが廊下を走っているような音が聞こえてくる。何故だろうか、凄く嫌な予感がする。なんというべきかこう野生の勘の様なものが隠れろといっているような。

 

 

とにかく今は隠れることにしよう。とはいったもののここは寺子屋でもしかすると慧音の自宅も兼ねているかもしれない。勝手に棚やらを探るわけにもいかない。

 

ということでさっき慧音が持ち出してきた筆を少し拝借し壁に這わせるように線を書く。這わせると言っても筆を直接壁に押し付けているわけではないので汚れることはない。

 

線を書いた場所には薄い猫の足跡のような模様が現れる。そこに向かって軽く飛び上がり壁に張りつく。それと同時にさっきまではどんどん大きくなってきていた足音がすぐそこまで来たと思えばいきなり障子が開け放たれさっきまでは私がいた場所に向かって着物の少女が飛び込んできた。

 

うーん、どうやら嫌な予感はこれだったらしい。

 

「どこですか!?天照大神はどこに!?」

 

少女は飛び込んできたと思えばすぐに起き上がり辺りを探し回りはじめた。何故か四つん這いになってではあるが。

 

「おいおい阿求、そんなに激しく動いて平気なのか?少しは落ち着け」

 

「何を言っているんですか慧音さん!?このチャンスを逃してしまっては天照大神には会えないかもしれないんですよ!?というかどこにいるんですか!」

 

下で起こっていることを聞く限りでは彼女が阿求という人物らしい。そういえば会いに行くといって忘れてしまっていたな。

 

「いやここに……さっきまでいたんだがな」

 

「は!ということはまだこの部屋の何処かにいるかもというわけですね。出てきてくださーい!怖くないですよぉ~!」

 

阿求はそういいながら机の下や棚などのなかを覗きこみ私のことを探しているらしい。ただそこに隠れるのは無理があると思うんだが。慧音も辺りを見回して私を探しはじめたらしい。

 

「たしかにここにいたんだがいったいどこに…!」

 

慧音はふと天井を見上げそしてちょうど私と視線があってしまう。

 

「………」

 

「………」

 

「どこですか~!何もしませんから~!」

 

慧音との間になんとも言えぬ空気が漂う。阿求は未だに気づいておらずに探し続けている。

 

「えーと、なんでそんな所に」

 

「それは、私の勘が隠れなければ殺られると察知したから…だろうな。流石にあれには捕まりたくない」

 

阿求の方を指で指し示してそういう。慧音もなんとなく分かったらしくなんとも言えぬ表情をしている。

慧音に意識が向いていたせいか私は阿求が随分と静かになったことに気づくのが遅れてしまった。

 

「見つけた!そこぉ!!」

 

そのかけ声同時に阿求は自分の背丈よりも高い位置にいる私のもとまで脅威的な跳躍をして腰に手を回ししがみついてくる。

流石にこの行動は予測できず壁から剥がれ落ちてしまう。咄嗟に阿求を守るように反転しそのまま床に落下、受け身も取れず背中をもろに叩きつける形になってしまい自分の肺から空気が抜けるのを感じる。しかも阿求の重みも重なりかなりの衝撃だった。もしかするとオロチの一撃よりも強いかもしれない。

 

「二人とも平気か!?」

 

私たち二人を心配し慧音が駆け寄ってくる。

 

「慧音さん!やりました!天照大神捕まえました!!見てください、私、やりまし 、たよ……ガクッ」

 

そう慧音に伝えると阿求は私の上に馬乗りになったまま目を回して倒れてしまった。

 

「あぁ、体が弱いのにあんな風に動くから。すまないがアマテラス阿求を家まで連れていくことになりそうだ。というよりもそっちは大丈夫だったか?かなり痛い落ちかただったけど」

 

「何とか、無事だ。ものすごく痛かったがな」

 

「なんなら少し休んでからにしても━━」

 

その言葉に手を突き出し問題ないということを慧音に知らせ阿求を背負い立ち上がる。

 

「それなら阿求に屋敷まで連れていこう。屋敷までは私が案内をしよう」

 

 

 

 

『阿求邸』

 

 

気がついたときに感じたのはいつも感じる感覚。これは眼を閉じていてもわかります。これは私の家の私が使っている布団です。

こうしていると日々の編纂での疲れを癒すためずっとこうしていたい気分です。

 

ずっとこうしていたいのはやまやまですが何かを忘れているような気がします。確か私は慧音さんの所に行っていたはず、なんですがなぜ寝ているのでしょうか。慧音さんにあってとても重要なことを聞いたはず、そうです編纂に関わるような……!!

 

そうですっ!天照大神その人を捕まえたはずでした。こんなことしている場合ではありません!

 

勢いよく飛び起きその当人を探すため辺りを見回します。すると目に飛び込んできたのは左右に揺れる白とも銀ともとれるような綺麗でふさふさした尻尾のようなものでした。

 

 


 

 

慧音に案内され無事に阿求を送り届け寝室に布団を敷き寝かせた。

慧音は今、阿求の家の人に色々と説明するために席を外している。

対して私は御茶請けとして出されたきんつばに手をつけようとしているところ。見ただけでも分かるがこれはかなり良いものだ。

ついつい意識せずとも尻尾が左右に揺れてしまう。

 

というわけで早速いただこうと思うのだが何故か先程から視線を感じるというか寺子屋で感じた嫌な予感がするような……。

いや、きっと気のせいだろう目の前の御茶請けに比べたらそんなのは些細なことに過ぎない。というわけでいただきますッ!?

 

いざ、食べようとしたその時いきなり尻尾を何かにガシッと掴まれた。私は特に尻尾が弱いとかそういう訳ではないが突然の事もあり全身が強ばってしまった。おそるおそる尻尾の方を見てみると先程まで眠っていた阿求が私の尻尾を握りしめていた。それだけでなくかなり激しく撫で回し始めた。

 

「阿求さん、あの、できれば一言いってからでお願いします…聞いてますか?」

 

阿求は熱心に私の尻尾を触りあらゆる角度から観察しているらしく聞こえていないらしい。別に触られるのが嫌いな訳ではないのだがここまで熱心にされると落ち着かない。とりあえずは終わりまではなにもせずにしていよう。

 

 

と、思ったわけだが尻尾にある手の感触がどんどん付け根の方に近づいていく。

 

「ん……そこまでだ」

 

「うッ!」

 

そういい阿求の頭に軽めにチョップを落とす。

 

「うぅ~、いいじゃないですか。減るものでもないですし」

 

「確かに減りはしないがずっとやられているこっちの身にもなってくれ」

 

そう伝えると阿求はしぶしぶといった感じに離れて布団に戻った。

それと同時位に慧音が戻ってきた。

 

「阿求、起きたのか。どこか痛いとことかないか?」

 

「はい、平気です。あえて言うとすれば頭でしょうか。ね」

 

ジトッとした表情でこちらを見てくる。

 

「慧音、阿求は平気だ。なにも問題ない」

 

「そ、そうか。ならいいんだが…」

 

「それでは早速作業に移りましょうか!慧音さん、そして天照大神様で、合ってますよね。私は稗田阿求です、よろしくお願いします」

 

「よろしく、気軽にアマテラスと呼んでくれ」

 

阿求は頷くと慣れた手つきで準備を済ませ慧音もその隣で同じように筆を持つ。ただ向こうはやる気満々なのだが私としてはなんの事だかわからない。確か慧音はオロチの伝承の事だった筈だが阿求の方は聞いていなかった。会った状況がなんとも特殊だったから聞く暇もなかった。

 

「慧音はオロチとのことについてというのは聞いていたが阿求の方は何が聞きたいんだ?」

 

「そうでした、まだ伝えていませんでしたね。私も慧音さんと同じくオロチについてもそうですが私は幻想郷縁起という幻想郷の土地、その地の人物、妖怪などの事をまとめた物を編纂しています。そこにアマテラスさんの事も加えたいと思っている訳でして質問したりお話をして私個人ではありますがその人について書き記しているんです。まあ危険な妖怪などは噂などが主ですが」

 

なるほど、それで聞きたいわけかそれなら特に問題もないし別に書かれるのが嫌と嫌という訳でもない。というかもう既に色々な物にかかれてしまっているしな。

 

「そういうことならなにも問題ないぞ。答えられることなら答えよう」

 

「ありがとうございます!早速聞いていきたいと思うんですが慧音さんはどうしますか。先に何か聞きたいことは」

 

「いや、私の方は阿求の幻想郷縁起を作る過程で聞けるはずだからそっちが好きにしていいぞ」

 

かくして幻想郷縁起編纂のためのお話という名の質問責め、自分の武勇を語らせられて隈取りがわからなくなる位に赤くなってしまったりしたがそれはまた別の話。

 

 

 

質問責めが終わる頃にはすっかり日も傾いていた。

 

 

「これくらいでいいだろうか?というよりももう勘弁してくれ、あとはイッスン辺りから聞いてほしいな」

 

「はい、ご協力ありがとうございました。これで新しくアマテラスさんの項目を追加できます」

 

「こっちも後の詳しいことはイッスンから聞こうと思う。出来ることならオロチを倒した後のことも本人から聞きたかったんだが無理には聞かないよ、それにこちらとしてもとても有意義な時間だったありがとう」

 

 

長かった質問大会が終わりあとはそのまま帰るのもよし人里で休憩するもよし各々の時間がやって来る。

 

「阿求たちはこれからどうするんだ?私はもう少し人里で腹ごしらえをしていくつもりだが」

 

人里に来てからそれなりに時間がたっているし私がいくらアマテラスだからといってもこの空腹には耐えることができないからな。食べたいときに食べるそれが天照大神。

 

「そうですねぇ、私は編纂の続きをしたいところなんですが生憎さっき使った物で墨を切らしてしまったので墨を買いにいこうと思っています」

 

「私もかなり使ってしまったから阿求と一緒に行こうと思っている。……アマテラス今度はあまり食べ過ぎないように気をつけるんだぞ」

 

む、慧音に釘を刺されてしまった。まあ確かに今回は少し食べ過ぎてしまっている気がするし控えめにするとしよう。

それにしても墨を買いに、と言ったな。

 

「慧音、阿求折角だしこれを試してみないか。私が持っている少し特殊な墨なんだが」

 

そういい二つの硯を渡す。二人は見た目が普通な硯なだけあって色々な角度から少しの間見てからこれは?といった表情でこちらを見てくる。

 

「それは無限墨といって名前のとおり無限に墨が湧き出るという代物だ」

 

二人はそれを聞き再度硯に眼を落とし興味深そうに見ている。

 

「無限墨ですか。こんなものが存在していたんですね、すごいです。ですが貴重な物なのでは……」

 

「そ、そうだぞアマテラス!こんな珍しいものはそうそう手に入らないだろう」

 

阿求と慧音はそう言うが、それがそうでもないんだなこれが。

 

「問題ない、神社に戻れば大量にあるしそれに無限墨といっても何故か私が使うとすぐに失くなってしまうからな。正直名前だけだなすごいのは」

 

「「えぇ……」」

 

アマテラスはこういっているが硯から勝手に墨が湧き出る物など普通は珍しいどころの物ではない。そんな代物を大したことのない物のようにいっているアマテラスを見て阿求と慧音は何とも微妙な表情になっているが有りがたく受けとることにした。

 

「ああ、それともうひとつ出来ればでいいんだがこれを阿求の屋敷の前でも寺子屋の空いている場所でもいいから置かせてもらえないだろうか」

 

そういって何処からともなく大きな台座のついた鏡、物実の大鏡(ものざねのおおかがみ)を取り出す。

 

「えっと、その鏡?は一体何処から……というかそれがあるとどうなるんだ?」

 

慧音も阿求ももうアマテラスが絶対にしまうことの出来ないような大きさの物を取り出してきてもあまり驚かなくなり始めている。多分そういうものなんだと割りきってのことだろう。

 

「なに、これがあると私が神社から人里まで瞬時に行き来できるというものだ」

 

「ほぉ、それは便利だな。寺子屋で良ければ空いている場所があるから置いても構わないが、阿求もそれでいいだろうか」

 

「はい慧音さん。いいですよ、それに門の前でも良いならここに置いてくださってもいいですよ」

 

ふむ、寺子屋と阿求の屋敷前どちらも置いても問題ないらしい。有難い限りだな。感謝感謝。

 

「では両方に置こう」

 

もうひとつ何処からともなく物実の大鏡を取り出す。

 

「「アッハイ」」

 

もう驚かない二人であった。その後お互いに別れアマテラスは人里で再度食べ歩きをして色々と騒ぎにはなったがそれ以外は特になにもない幻想郷にとっては平和な1日だった、らしい。

 

 

 

 

 


 

幻想郷縁起

 

慈母 天照大神

 

能力 筆をしらべる程度の能力

 

危険度 低

 

人間友好度 極高

 

主な活動場所 神木村 天照神社

 

 

絵巻物に記されているとおりの狼の姿をしている。特徴は顔や体にある隈取りの様な模様と背中の鏡。絵巻では大きさまでは記述されていないが普通の狼よりも巨大である。

絵巻では人型の記述はないが人型にもなることが出来る。容姿は隈取りを着けた美人な着物の女性。耳と尾、隈取りが狼の状態と共通している。

 

【筆をしらべる程度の能力】

 

天照大神は筆業と呼ばれる十三の業が使える。それぞれ、『光明(こうみょう)』『画龍(がりょう)』『一閃(いっせん)』『輝玉(てかだま)』『桜花(おうか)』『水郷(すいきょう)』『月光(げっこう)』『疾風(しっぷう)』『紅蓮(ぐれん)』『|霧隠(きりがくれ)』『壁足(かべたり)』『迅雷(じんらい)』『吹雪(ふぶき)』の十三。

その内の『光明』が天照大神が司る筆業。

他の筆業にもそれぞれ別の神が存在している。

 

『輝玉』を司る神は紅霧異変を起こしたという紅魔館に居るらしい。他の神の現在地は未だに分かっていないとか。

 

 

 

 

 

 

《注意点》

 

食事処などを経営している方々への注意点

 

もし隈取りの様なものをつけた着物の女性が里に着た場合すぐに食べ放題や時間制限付きの挑戦の看板を出していたら店内の見えない場所、あるいは急ぎ裏に隠すことをおすすめします。

 

もし見つかってしまった場合はその日の営業を諦めましょう。食材を食い尽くされます。

 

どうしても止めたい場合は寺子屋、上白沢慧音さんを呼びましょう。止めてくれます。

 

 

 

それ以外はとても友好的ですので困ったことがあったら声を掛けてみるのも良い。力になってくれるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 




アマテラスの胃袋はブラックホール。どこかの亡霊姫様と同じレベル
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