兎の知らない銀竜の話   作:ちなデ

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贔屓がアホみたいな試合をしてしまったのでブチギレ投稿。
後悔は後でするタイプ


1.灰色の空の下で

下ろし立ての制服に手を通す。

 

白を基準としたソレは、

制服にしては派手過ぎるんじゃないかと思う。

とりあえず誰かの葬式があったとして、この制服じゃ行けないよなぁとか、どうでもいい事を考える。

 

次は下だ。

 

俺としては最後の抵抗で、ズボンタイプを所望したが、

あのロクデナシと書いて姉と読むが当然の如く却下。

俺の元には当たり前の様にスカートタイプ。

 

交渉の余地は無かった。全身の穴から血を吹き出して絶命すれば良いのに(オブラート)

 

嫌々ながら本当に渋々とスカートを履く。

そんでもって、部屋の姿見にて最終確認。

 

腰ぐらいの長さがある癖の強い銀髪は、

そのままだと不格好なため、後ろで一つに括ってる。

邪魔だから切りたいと言えば、くたばれの一言で返される。括ったのは俺なりの抵抗だ。

 

改造が許されるという学園指定の制服。

個性を出す気が無いので、当然無改造。

そして、膝丈ぐらいのスカート。

 

…どう見てもただの女生徒にしか見えない。

 

近くで見てた、諸悪の根源と書いて姉と読むが嗤う。

これから精々頑張りなさいと。

 

去って行く背中を、俺は強い憎悪を込めて見つめる。

どうかアイツがロクでもないお亡くなり方をします様にと。

 

 

入学前の、1コマだった。

 

 

 

 

1. 灰色の空の下で

 

 

 

 

左の席で、一心不乱に仮想キーボードを叩いている水色髪の少女越しに空を見る。

 

教室から見えるソレは、青一つ無い模様。

今朝観た天気予報曰く雨は降らないらしい。

 

成る程見事な一色だ。

こういうのを灰色の空と言うのだろう。

詩的だ。だが無意味だ。

 

「席に着いてるな。HRを始める」

 

教室に入って来たのは、茶色ボブっぽい髪の女性。

おそらくこの人が担任だろう。

 

「日向(ひゅうが)だ。本日からこの1年4組を受け持つ事となった」

 

教壇に立ち、威風堂々と名乗る。成る程只者では無い気を纏ってる。元は代表候補生だったとか?後でググッてみよう。

 

「私のクラスからは、一人の脱落者も出す気は無い。君達も、そのつもりで着いてきてほしい」

 

と、先生は教壇を降り

 

「よろしく頼む」

 

と、見事な礼をした。

30度。一般的に、敬意を持って行われる礼だ。

 

呆気に取られる教室内。

だがその心意気に胸を撃たれたのか疎らに拍手が起きる。その波は大きくなり、やがて教室全体に巻き起こる。

鳴り響く日向コール。涙してる人も散見される。

何だこの状況。

 

隣の席でひっそりと、仮想キーボードを叩いてた水色眼鏡も、この時ばかりは手を止めていた。

 

かくいう俺も同じく手を叩く。この先生に着いて行こう。心無しか、空の隙間から青が覗いてる様に見えた。

 

「ありがとう。では改めて自己紹介をしてもらう」

 

騒ぎを止め、【あ】から順に…、と言いかけた所で先生が止まる。

 

何かを思案してる顔。伝え忘れが有ったのだろうか。

 

「ふむ、その前に私から一つ」

 

態々自己紹介の時間を削ってまで伝える事だ。

何よりあんな生徒思いの先生が言う事だし心して聞くとしよう。

 

「皆、瑞雲は好きか?」

 

………は?

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

「いい加減にして下さい!」

 

日向先生による【楽しい瑞雲講座】は、唐突に現れた女性のお手本通りの3点バースト射撃により終わりを迎えた。ゴム弾だからセーフらしい。

 

既に1限目も半分以上過ぎてるし、そもそも自己紹介前に話す内容なのかとも思ってた訳で、隣の水色眼鏡は再びキーボード叩き始めるし、俺はやっぱり空を見てた。

先程青が見えると言ったな、すまん気のせいだったわ。

 

「副担任の春田(はるた)です。日向先生が謎の体調不良により倒れてしまったので、ここからは私が引き継ぎます」

 

体調不良なら仕方ない。あったかくして寝てほちい。なお現実は冷たい床の上。教室の隅とも言う。

 

「改めて自己紹介……は、時間がありませんね…。では、クラス代表と副代表をこちらから指名させて頂きます」

 

曰く、近々行われるクラス対抗戦に参加する代表者でもあり、生徒会や委員会が開く集まりにも参加する、いわばクラスの顔役。

 

んで、副代表とはその代表のサポーターって事らしい。

 

まぁ、専用機を持ってる訳でも無く国家代表候補生ーー所謂ISバトルの国際大会での国の代表の候補ーーでも無い俺が指名される事はまず無いだろう。自己紹介の時間をすっ飛ばしたおかげで一切クラスメイトを把握して無いけど、2-3人くらい名の知れた人ぐらいいると思うし。

誰が選ばれるか、高見の見物させてもらうわ。

 

「代表は更識簪さんにお願いします」

 

更識って誰?と思ったら、隣の水色眼鏡がものすんごい動揺した。クラス中が思わずこちらを見るレベルに。想像してくれ。俺含めた29人×2の目線が一斉にこっち向くんだぜ。普通にコワイ。水色改め更識もそりゃビビりますわ。(他人事)

 

「それで副代表ですが……お隣の高峯此方(たかみねこなた)さんにお願いします」

 

そんで次に呼ばれた名前に、俺は一瞬遅れて反応してしまう。クラス中の目が一斉に俺の方に向く。他人事と高を括ってたからに、心構えなどしてるはずも無く、情け無くビビってしまった。

 

水色も俺を見る。コイツが高峯か……とか思ってるんだろうなぁ。

 

「代表に選ばれた二人はお互いに協力し、クラスの皆さんは、そんな二人を支える様にして下さいね」

 

チャイムが鳴り、HRが終わる。

 

春田先生は気絶もとい体調不良で教室の隅に放置されてた日向先生の首根っこを引っ張って教室を後にした。

 

春田先生を怒らせてはいけない。

このIS学園に来て、最初に学んだ事だった。

瑞雲は知らん。

 

 

※change

 

ISーーーー正式名称インフィニット・ストラトス。

 

その速さは既存の戦闘機を置いて行き、力は戦車など相手にならず、それでいて搭乗者は、既存の兵器の何よりも安全というチートスペック。

 

既存の兵器を過去にした、戦闘用外骨格(パワードスーツでも可)。それが世間一般の常識。

 

この【世界一安全な兵器】が、元々は宇宙開発用に造られた事を知るのは、機体の作製者とその友人。一部の研究者達だけであろう。これも全て白騎士が悪い。詳しくは【白騎士事件】でググろう。

 

さて、チートスペックじみたISだが、唯一の欠点があった。

 

女性にしか動かせない事だ。

 

この事がきっかけで、女>>>男の図式が出来上がり、所謂女尊男卑の風潮が高まっていったのだが、それはまた別の話。

 

重要なのは、女性にしか動かせない。

 

……はずだった事だ。

 

 

「り…遼来々!」

 

「泣く子も黙るとはどういう了見だ!!」

 

今しがた、少しアレな自己紹介をした少年を、黒スーツの女性が出席簿でしばく。

 

彼こそが、世界初の男性操縦者。名を織斑一夏という。

 

藍越学園に受験する予定だったが、当日道に迷い、彷徨った挙句IS学園の受験用に用意されていたISを起動させてしまったのだ。名前が似てるから仕方ないとは本人談。

ともかく、こうして彼は一人目の男性操縦者として、連日お茶の間を賑わすのである。

 

とあるニュース番組では徹底解剖と称して彼の事がある事ない事取り上げられ、深夜の報道番組ではいつも通り専門家がダニの話をし、ネット掲示板では【二人目発見www】という釣りスレが定期化した。

 

そんな混乱の中、程なくして二人目の男性操縦者が見つかったと発表される。

とある掲示板では、釣りと思われてたスレから本当が出てきてしまい、ちょっとしたお祭り騒ぎになったとか。

これはすこぶるどうでもいい話である。

 

「少し良いかな?」

 

出席簿による物理と衝撃波(担任が有名人という事実に伴うクラスメイトの歓声と悲鳴)による特殊攻撃でHPはほぼ空になり、体力回復のため仕方なく机に突っ伏していた一夏は、突然声をかけられた。

 

「ああ……確か高峯だっけ?」

 

「そうだよ織斑君。一応二人目って言われてる、高峯彼方(かなた)だ」

 

銀の髪を首元で切り揃え、赤い縁の眼鏡をかけた、下手すると少女にも見えるその人は、笑みを浮かべながらその手を伸ばす。

 

女所帯の中で、数少ない…どころか二人しか居ない男。同じ境遇同士、仲良くしない理由が無い。少なくとも、彼ーー織斑一夏はそう思えた。

 

「ああ、彼方。これからよろしくな」

 

彼としては、特に何も考えず自然な笑みを浮かべ、伸ばした手を受ける。所謂握手だ。

 

「っ……うん…よ…よろしくね?」

 

何故か顔をほんのり紅く染めながら、そう答えた。

 

 

この物語は、たまたまISを動かしてしまった二人の異常な少年が、IS学園という全寮制のほぼ女子校で送る、愛と勇気と姉弟の物語ーーーー

 

 

 

 

ーーーに、なるかもしれない

 




【TIPS】
・日向先生
1年4組の担任で無類の瑞雲好き。海軍に所属してる相方が居るらしい。容姿のイメージはスーツ着た艦これの日向。

・春田先生
1年4組の副担任。だが力関係だと担任より上だったする。偶に学園内のカフェでコーヒーを入れていたりする。イメージはドルフロのスプリングフィールド。

・織斑姉弟のやり取り
三国志繋がり。一度使ってみたかった。
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