兎の知らない銀竜の話   作:ちなデ

3 / 4
最近忙しい。
具体的には優勝争いに食い込んできた贔屓の応援と
某炎の紋章の発売で


3.流れ行く雲に

灰色の空に手を伸ばす。

 

その手は流れ行く雲を掴む事は出来なかった。なお、このポエムに意味は無い。ただの現実逃避だ。

 

「それで?納得出来る理由があるんでしょうね。何も無ければキミはそういう趣味という事になるけど」

 

一気に捲し立てる国産まな板(眼鏡付き)。

そう言った後、ソイツは無駄に良い笑顔で宣言する。

 

「安心して! キミがそういう趣味を隠し持ってたとしても、私達の友情は変わらないから!……でも少し距離は取らせてもらうかも」

 

「距離取った時点で友情に変化が起きてるんだよなぁ」

 

何やら腐れ縁の変わらぬ友情に感涙した、そんな昼下がりである。

 

 

 

3.流れ行く雲に

 

 

 

俺、高峯彼方には2人の姉が居る。

 

一人は年の離れた姉で、長女の高峯乃亜。

数年前に姿を消したはずだが、知らぬ間にアイドルになっていた。

 

芸名は高峯のあ。

サイケデリック系アイドルとして活動していたが、たまたま出演した公演で圧巻の演技力を見せ、それが大受け。

現在は女優業を中心に活動してるらしい。

姉弟仲は悪くない。サインも持ってる。というか押し付けられた。

 

もう一人は双子の姉、次女の高峯此方。

俺の天敵で、こんな所にこんな格好で入る事になった元凶だ。

 

この姉は事あるごとに俺を敵視する。

テストの点数からスポーツテストの項目まで、ひたすらにマウントを取りまくる。姉より優秀な弟はいねぇとか言いたいんだろうか。

 

まぁ、頭で負けても身体能力では負けないんだけどね。

 

兎にも角にも、アレは頭脳を持って、時には権力を持って徹底的に俺を叩き、俺は徹底抗戦を貫く(成功するとは言って無い)

いつしか姉弟の間には、埋める事もそもそも埋める気も無い溝が出来上がった訳だ。

 

さて、そもそも何故俺がISを動かせるのが分かったかと言うと、原因は一つ。

あの姉だ。勿論天敵の方の。

 

 

話は2年くらい前まで遡る。

 

 

 

こんな世の中だから、世の女性達はISを使いこなせるか否かが一種のステータスになっている。それすなわち、IS学園の卒業証を持ってるかどうかで、その後の人生が変わってくると言っても大袈裟ではない。

 

そしてその姉も例外ではない。

 

姉はISの適性検査で「D -」というゴミみたいな結果を叩き出していた。

 

ISの適性は、一番上が【S】そしてそこから【A】〜【E】となっている。精密検査なら、更に+ -が付いてくる。

 

学園に入学する為には、最低でも適性が【C +】は無いと、書類選考時点で落とされる。

 

おわかり頂けただろうか。

つまり姉は、どんなに頑張ってもIS学園に入学する事が出来ないのである。

 

この事を知った後の晩飯は、人生で一番美味かった。

 

その後姉は、父親のコネでIS(ラファ何とか)を借り、適性を上げる為にひたすら訓練を行った。

 

訓練の甲斐があったのかどうかは知らんが、中学3年の春時点で、適性は【C -】まで上がっていた。それでも足りないんですけどね。

 

そしてーーー

 

『くっ…!何で…何で上がらないのよ!』

 

今日も今日とて訓練後、姉は簡易検査を受けた。結果は言わずもがな。

 

父親の使いっ走りで訓練場に用があった俺は、たまたま姉がそう吐き捨てた現場に出くわした。スッゲェ苛ついてる。

 

ソイツと目が会う。会ってしまった。

途端ロクデモナイ事を考え付いた様な笑みをしだした。

 

逃げたいけど逃げられない。

 

あの目だ。

憎悪を込めて俺を見下す、深い闇の目。

その目で見られると、途端に動けなくなる。理由は分からない。ただ、幼い頃からあの目が怖かったのだ。

 

ともかく俺は、姉に引き摺られて無理矢理適性検査を受けさせられた。恐らくは、適性の無い奴が居る中適性のある私凄いを演出したいんだろうか。汚い事に、人は自分より下を見ると無意識に安心するって、何かの本に書いてた気がする。

 

男に適性は無い。空が青い地球は丸い並みの、公然とした常識だ。姉はそんな俺を見て笑いたいだけなんだろう。

 

果たしてそれは上手く行かなかった。

 

 

表示された結果には【A】の文字。

 

その日、俺は理不尽にも姉の逆鱗に触れたのだ

 

 

ーーー

 

 

 

「そんな事があったんだ」

 

いつの間にか隣に座っていた理子が言う。

 

岸原理子。

 

俺と幼馴染。腐れ縁とも言う。

 

初対面は幼稚園の時だ。

その時から姉との仲が悪く、最早定期と化した喧嘩をしてる最中に、二人纏めてドロップキックされたのがキッカケだったと思う。

何故そんな事をしたのか、数年後本人に聞いても覚えて無いの一点張の模様。

 

ともかくそこから俺達は意気投合し始めた。

姉はその輪の中に入らなかった。そらそうか。

 

卒園を気に別れたが、その後世の中が変わるに連れて、俺も姉とは別の学校に転校する事になり、転校先の学校で再会した。小4頃の話である。

 

「しかしなぁ…幼小中と続いて高まで同じかよ」

 

「何年間同じ顔を見続けたと思ってるのよ」

 

これを【親の顔より見た面】と言います。

最も、小4を最後に本家から離されて暮らしてた俺にとっては、比喩でも何でも無いだろう。

 

「こういうのを何て表すんだっけ?」

 

「腐れ縁だろ」

 

風情も何も無いねと笑われれば、

違いないと笑う。

 

流れ行く雲の下。俺達は取るに下らない話に花を咲かせるのであった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「それで、女子として入学した感想は?」

 

「いやーキツイっす」

 

口調は柔らかく。佇まいは女子っぽく。俺口調にがに股なんてもっての他。

 

この半日それを意識しまくったせいで、既にグロッキーだ。

 

アレだ内股意識なんて無理。ワタシ口調ってなんやねん。俺の中の何かが物凄い勢いで削られてる気がする。

 

「そもそもどうしてそんな格好?」

 

「あの()のせい」

 

全てはアレ()のせいだ。アレが妙な事を言い出さなければ、俺は今頃スポーツ推薦を貰った高校に入れただろうに。

 

「…元々は、替え玉受験用だったんだよ」

 

「…ええぇ」

 

流石の腐れ縁もドン引きしてる。俺もそんなん思い付いた屑にドン引きだ。

 

アレの適性は結局【C】止まり。

それではそもそも受験すらさせて貰えない。

 

そこで考え付いたのが、適性【A】を叩き出してしまった俺を代わりに受験させる事。

 

不本意ながら双子という事もあって、顔立ちはそこそこ似てるらしい。短髪と長髪の違いはあるが、そこら辺を補完すればほぼソックリだと言う。誠に遺憾である。

 

適性【A】は貴重らしく、ほぼ確実に受かるとの事。そこに漬け込んだ作戦らしい。現にほぼノー勉強なのに受かってしまった俺。

 

「それで目出度く合格。俺は解放されるはず…だったんだけどなぁ」

 

「男性操縦者……織斑君が出てきてしまったと」

 

ポテチ片手にニュースを見た時は、驚きはしたけどそれだけだった。大変だなぁとか思っていた様な気もする。要するに他人事だった訳だ。

 

 

俺もISを操縦出来る男の一人だというのに。

 

 

その後、本家に呼び出された俺は、開口一番姉に告げられた。

 

『私、アンタとしてIS学園に入学するから。アンタは私として学園に入学しなさい』

 

ちょっと何言ってるか分からなかった。

 

 

「ちょっと何言ってるか分からない」

 

「俺だって分かんねぇよ」

 

両方女として入学するなら、1億歩ぐらい譲って分かるかもしれないけど、性別を逆にして入学する意味が全く分からない。

 

 

「あっ……でもまさか…えぇ…」

 

理子は何かに気付いた様だ。同じ性別なりに、察する事があるのか。

 

「何か分かったのか?」

 

「いやぁ…でも…分からないから…うん」

 

途端に歯切れが悪くなる理子。気になるが、分からないなら仕方ない。

 

ともかくだ。

 

「これで、俺がこんな格好で居る理由を分かってくれたよな」

 

幼馴染は、物凄い顔をしながら凄まじい速度で、大きく頷いた。

だから何でそんな顔してんだよ。

 

 

 

※change

 

 

 

昼休み明けの授業。岸原理子は窓際の席に座る彼…もとい彼女【高峯此方】を見ていた。

 

彼女の幼馴染【高峯彼方】が言うには、窓際の彼女こそ全ての元凶であると言うのだ。

何故、態々男女逆にして入学してるのか。聞いた時は全く意味が分からなかったが、こうして冷静に考えると幾つかの仮説が立てられる。

 

①自らのIS適性を隠すため

この学園の正式資料では、此方の適性が【A】で彼方の適性が【C】になっている。適性検査は毎年やる訳では無く希望制となっているので、よっぽどの事が無い限り適性についてはバレ無い筈だ。適性から替え玉受験疑惑が出るのを恐れて、男女入れ替わりのリスクを負うなど本末転倒な気もする。

 

だが、可能性としての否定材料も無いので保留。

 

②ちやほやされたかった

理子から見てた此方は自尊心が高い人間だった(とは言っても幼稚園の頃の話だが)

その延長で、自尊心を満たすため男装に踏み切ったのでは無いか。

…ほぼ女子校でやる意味。

これが男子校だったらあり得なくないかもしれないけど、生憎そういう訳では無い。彼女が同性愛者なら話は別だが。

 

ちやほやされたいだけで男装に踏み切るのは、どうも根拠としては弱過ぎる気がするので却下。

 

③彼方への嫌がらせ

……あれだけ溝が深い姉弟だ、あり得ないとは言えない。

好きの反対は無関心とはよく言うが、あの姉弟は一周回って憎しみ合ってると言っても良いかもしれない。

もし殺しが合法化されたら、真っ先にお互いを始末しに行くだろう。そんなレベル。

 

あり得そう。

 

まああれこれ考えて幾つか仮説を立ててみたけど、一番の理由は、アレだよなとも思う。

 

 

 

時間は進んで放課後の教室である。

 

朝から何かしら一夏と行動したがる彼ーー

理子視点からだと【彼女】になるが。

 

ともかく彼女は、一夏相手にグイグイ行ってる。近すぎるほど。

 

「織斑君、高峯君、まだ教室にいたんですね。良かったです」

 

この後どうしようか一緒に帰ろうよとか何か話してる所に登場した、1組副担任山田先生。

 

緑っぽい短髪に眼鏡属性ってキャラ被ってない?とか思った理子だが、一部分を注視した結果、生意気言ってすみませんでしたとは本人の談。

 

童顔眼鏡巨乳の山田先生が言うには、二人に寮の部屋が用意されてる事。それぞれ別部屋になってしまった事が明かされる。

 

えー……一緒の部屋じゃないんですかと此方。安全上のため仕方ないですとは山田先生。荷物ねぇよと一夏が言えば、用意してきたぞとは突然乱入してきた担任の弁だ。

 

その後、お手洗いやお風呂に関する話が山田先生と交わされていたが、その間此方は熱に浮かされた様な表情で、一夏を見ていた。

 

その姿に、野次馬とそれに混ざってた理子は同じ事を思う。

 

 

「これは濃厚な薔薇のかほり」

 

「完全にアレですね間違いない」

 

「【朗報】二人目は同性愛者疑惑」

 

「たまげてないからセーフ」

 

 

寧ろ口に出してた。

不幸な事に、山田先生と話していたはずの一夏にも聴こえており、此方との距離をそっととった。だが、気づかない此方。

 

 

ーー1番の理由…これかもね

 

 

この調子だと、彼方が彼方を取り戻したとしてもその後苦労するだろうなぁと。

 

謂れのない風評を払拭する幼馴染の姿を想像しつつ、理子は小さく溜息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【TIPS】
・高峯乃亜
サイケデリック系アイドル。高峯の家督を継ぐ立場に居たが、突如失踪。何故かアイドルになっていた。彼女曰く【口説かれた】らしい。
弟妹が居るのはもちろんオリ設定。

・高峯此方
のあさんが家督を継ぐのを放棄したため、彼女にとばっちりが来る。
苦労人でもあるが、それとは別に幼少期から彼方を虐めてる人。
彼方に対しては当たりがキツイが、それ以外だと割と普通に打算的な人。

・高峯彼方
此方に人生振り回される人。此方とは細胞レベルで仲が悪い。
女尊男卑の風潮が強くなると、此方と父親の策で実家を離れ、祖父母の家で暮らし始める。その先の学校で理子と再会する。

・此方が男装してる理由
ニュースで見て一目惚れした一夏にお近づきになるため。
計画がガバガバなのはご愛嬌。恋は盲目。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。