そのあと俺は世界に生れ落ちる事になったんだが、正直に言うとおれ自身、自分が何時生まれたのかという事を把握していない。
如何いうことか、だって? まず俺と言う存在が如何いうモノとして世界に生れ落ちたのか、からを説明する必要があるだろう。
先ず、俺と言う存在。地球帝国宇宙軍、太陽系外延遊撃部隊直属、第六世代恒星間航行決戦兵器。そう、俺は生物としてではなく、マシーンとしてこの世界に生を受けた。
名はバスターマシン8号。……あー、まぁ、これが本名と言えば本名か。今は八雲って名乗ってるがな。
で、だ。俺が生まれた時期に関してだが、これが今一つはっきりしていない。というか、おれ自身が生まれた時代と言うのが何処を指すべきかが解らないんだよ。
先ず最初に俺が生み出されたのは、人工知能としての形だ。俺の姉に当るバスターマシン7号、彼女も人の形をしたマシンなんだけど、彼女と一緒にユング大統領の勅命の下に開発されたデータの塊として先ず俺達は形を成した。その後、そのデータの器としてナノマシンの集合体の肉体を得る事になったんだ。
あー、確かにそういう点ではお前らも近い存在ではあるよな。とはいえ、俺の領域に至るまで何千年掛かるか……ま、気長に開発していくといいさ。
そんなわけで生まれた俺達だが、気付いたときには俺は俺としての、前世の自我を含めた8号としての自我を確立させていたわけだ。
で、自我を確立させた俺が先ず最初に何をしたかと言うと……何もしなかったわけなんだな、これが。
というのも、俺がはっきりとした自我を持って行動可能な状態に至ったのが、既にユング大統領が人口冬眠に入る直前。人類は宇宙超獣との戦いでほぼ壊滅状態。今にも太陽系に引篭もろうとするそのカウントダウンのまっ最中だったんだよ。
先に稼動を開始していた7号は、大統領らの眠るヱルトリウムを抱き、無人バスター軍団を育てながら人類守護の任についた。正直に言うと、もう既にこの時点でこの世界における物語と言うのは既に終わっていた。次に『物語』が始まるのは一万二千年後。正直備えるにしても時間と言うものが有り余りすぎていたわけだ。
其処で俺がやったのが、本来の任務。太陽系外延遊撃任務だ。
嘗て俺の居た地球と言う惑星は、太陽を喰う『宇宙怪獣』の脅威に晒されていた。この宇宙怪獣らは人類の奮闘の果てに、なんとかそれらの主戦力を殲滅するに至った。特にグレートガンバスター、ガンバスター4,5,6号機の三機の活躍は大きかったと言える。
で、この宇宙怪獣の大半の殲滅を達したはいいものの、だからといって宇宙怪獣の脅威が完全に払拭できたかと言えばそうでもない。何せ宇宙怪獣と言うのはそれこそ宇宙に星の数程蔓延っていた。俺の任務と言うのは、その宇宙怪獣残党の殲滅と言うものだ。
やり方は至って簡単。餌に釣られた宇宙怪獣を罠で嵌めて袋叩きにしただけ。
具体的な説明? えー、先ず俺の持つ能力に関する説明をしようか。俺の持つ能力の一つに、指揮能力ってのが存在する。まぁ正式名称は別にあったんだけど、俺も忘れた。……いやぁ、ロボが忘れるのか、って言われると困るのは困るんだけど、一万年も使わない言葉だと流石にな。
で、その指揮能力によって指揮される軍団。バスター軍団という、量産型の無人バスターマシンだ。コレは一応俺の姉に当るバスターマシン7号も持つ機能だ。
シズラーって呼ばれる量産型ガンバスター型のヒトガタ機動兵器。ナノマシンによってかなり量産性の上っているコイツラの大軍を率いて、俺は先ず当時の人類の生存圏――地球とシリウス――から離れた位置に拠点を築く事にした。その地点ってのが、バーナード星系の地球型惑星だ。
……いや、んなモノは無いってんだろ? 確かにこの世界にはそんな惑星は存在しない。ただ、俺の居たあの世界には存在してたんだよ。そもそもの話、あの世界における太陽系ってのが冥王星の外に魔王、智王、神無月、雷王と、此処に比べて大分差異があったんだって。地球って言っても別の惑星と考えたほうが良いぞ。
……おーけー。続きだな。バーナード星系に居を構えた俺達は、次に自己増殖を開始した。ナノマシンの集合体であった俺達八号系バスター軍団だ。バーナード星系に存在していたデブリやら惑星やらを素材に、宇宙怪獣と戦う為の戦力を一気に増産させた。とはいえ生産ペースなんて知れたもので、大して良いペースともいえないんだが、長い年限津で見れば十分な速度だったんだ。
で、バーナード星系において俺は宇宙怪獣を呼び寄せ、そこで連中を一つ一つ潰していったわけだ。
……宇宙怪獣を如何やって呼び寄せたか、だって?
宇宙怪獣って言うのは、かなり単純な生物で、既に倒されていたリーダー格を除けば、殆ど本能で動くような連中ばっかりだったんだよ。
で、その連中の本能に、その世界で主流となっていたバニシングドライブってワープ航法があるんだけど、そのワープ航法を使うときに発生する波動、ソレを感知すると、その方向に向かって只管直進する性質……走バニシングドライブウェブってのがあって、つまりはこのバニシングドライブウェーブってのを人為的……機械的かな?に、全宇宙方向に向かって発振したわけだ。
……ああ、そうだ。それだと取り逃しの可能性や、一度に許容量を越える敵と戦う可能性も存在している。そこで考えたのが、誘導迎撃とは別の偵察攻撃部隊だ。
言ってしまえば無人機部隊なんだが、コイツラを宇宙に放つ事で星系図の書換をやったりと、別方面でも利益を得られたのは後から笑ったな。
ただ、コレを続けていく中で幾つか遭遇した問題があった。というのが、この偵察攻撃部隊が稀に大型の部隊を発見する事があったんだよ。
戦力的にいうなら、俺の率いる8号部隊の総戦力で当れば十分迎撃可能なんだけど、俺が出撃して奇襲攻撃を仕掛ければ、そこまで戦力を掛ける必要も無い、と言うような戦場だ。
当然俺は出撃するわけなんだけど、連中の下にたどり着くためには俺もワープをする必要があったわけだ。そう、当然連中はそのワープ波を感知してしまう。おかげで奇襲が察知される事もあれば、宇宙怪獣の別働隊に奇襲を返される、なんてこともあった。
そこで急務とされたのが新式のワープ航法。……無茶なのは当時の俺も理解してたんだけど、他に思いつく人間も居なけりゃ、それを無茶だと諌めてくれる存在も無かったんだよ。
それに俺には前世の自我由来の知識や発想ってのがあったんだ。結果から見ればこの開発は成功。見事に新式の……アイスセカンドを用いないワープ航法の開発に成功しちゃったんだよ。
因みにコレが後に異世界を旅する中で重要な技術に成るとは、マサカこの当時の俺は思っても無かったんだよ。そもそも異世界を旅することに成るなんて全く思ってなかったし。
で、コレを機に更に宇宙怪獣を狩る戦いの中で、俺率いる8号部隊はその一万年と二千年の間に徐々に進化を開始したんだ。元々はアイスセカンドを利用した縮退炉式だった俺達は、次第にアイスセカンドを……あの世界における基本的なエネルギーを利用しない新型縮退炉に。俺の切り札であるフィジカルリアクターはその形を進化させ、有効範囲を広げつつもその姿を形に残す必要性も無くした。
そうして大体一万年が経過したわけだ。……端折りすぎって? そうは言われても、人の営みから外れた時間の流れで戦ってたんだ。宇宙怪獣を倒しては自給自足の補給、って言うのを繰り返していただけだよ。
とりあえず話を戻すが、一万年後。漸く、少なくとも人類の到達可能範囲からの宇宙怪獣の完全駆逐を確認できたってことで、俺は部隊の一部を引き連れて地球に帰還することになった。あと二千年もすればガンバスターとそのパイロット達が帰ってくるはずだったからな。準備、と言うわけでもないが、そろそろ一度帰っておくべきだと判断したんだよ。
■バスターマシン8号(八雲)
地球帝国宇宙軍太陽系外延遊撃部隊直属第六世代恒星間航行決戦兵器。
バスターマシン7号と同時期に就役し、太陽系の外側に残存する宇宙怪獣らの遊撃を任務とするバスターマシンの8号機。
■バーナード星系
第五計画が実行された場合の移住先。今回は8号バスター軍団の材料になりました。武ちゃん哀れ!
■一万二千年
トップ世界では良くある数字。旅立ったノノリリ、もといノリコとカズミのお出迎えも7号・8号のお仕事。一万年と二千年前から愛されていた二人。