漸く発見された姉さん……バスターマシン7号。彼女の反応を最初に発見したのは、なんと地球ではなく火星における地方都市の一角での事だった。
といっても彼女を探知したのは俺ではなく、彼女の手足であるバスター軍団によるもの。擬態状態で何等かの信号を発信したらしい7号を探し、雷王星の巣からビーストロン級及びツインテール級が派遣され、彼女の回収に向ったのだという事を少し送れて報告された。
で、俺も慌てて先行したビーストロン級を追いかけたのだが、正確な位置を把握できていなかった俺は結局彼らに追いつくことが出来ず、漸く火星に到着した頃には、火星に送り込まれていた偵察機であるツインテール級が人類のバスターマシンによって破壊されてしまったあとだった。
しかも最悪だったのが、此方の探し人であるバスターマシン7号が、当時地球圏の平和を守ると自称するトップレスの組織、フラタニティに回収されてしまっていた事だ。幸い7号をバスターマシンとしてではなく野良アンドロイドと認識していたおかげで面倒な状況にはなっていなかったが。
当時の事を考えると、俺や彼女のような一桁台のバスターマシンが下手に世に出てしまうと、確実に人類はその進歩の脚を止めてしまう。何せ自分で言うのも何だが、俺や7号は間違いなく神の如き力を持っている。特に永い眠りについていた7号とは違い、一万二千年の年月の中で自己進化を繰り返していた俺なんかは、遺伝子細工をはじめとして多分ビッグバンくらい起こす事もできる、ソレくらいの力を得てしまっていた。
ただでさえ一撃で惑星を真っ二つに出来るようなそんな超越的な力だ。出来れば人類に晒すことなく、秘密裏に此方に回収したい。そう考えて、俺は密かに彼女に接触する方法を考える事にした。
まぁフラタニティに回収された7号を追ってビーストロン級がフラタニティの基地に接近したのだが、残念ながら姉さんの回収には失敗した。まぁツインテール級で失敗した時点で、ビーストロン級で回収できるとも思っていなかったのだが。
早々に7号系バスター軍団からの姉さんに対する接触を諦めた俺は、今度は地球側から姉さんに対しての接触を試みてみる事にした。
というのも、当時の俺は地球圏の文明再建のために影ながら地球圏の経済活動にかなり手を貸していた。何しろ俺と言う存在はソレ単体でも地球圏の全ての情報を自由自在に操れるというとんでもないレベルの情報処理能力を持っているのだ。
これが現地球帝国再建の折にかなり役に立ったのは言うまでも無い。そんな俺の能力故に地球には色々な伝手が存在しており、これを利用してなんとかフラタニティに接触、もしくは潜入できないかと考えたのだ。
まぁ、俺の視点から見れば一万年以上衰退した文明だし、有る程度地球側から圧を掛けつつ此方の力技を使えば潜入も出来るだろう、と軽く考えていたのだ。
……が、これが想定外の失敗と言う結果を受けてしまう。というのも、フラタニティに属する人間――つまりトップレス。彼らと言うのは超・能力者。
俺が侵入しようとするたびに、予知能力か気配察知かは知らないが、その都度地味に警備が厳しくなるのだ。一応光学迷彩とかその手の技能があるには有るのだが、相手が透視能力を持っていて、此方のステルスを見破れないとも限らない。そして見破られてしまえば、そんな技術が存在するという事事態を知られてしまう。それこそ最悪の展開と言う奴だ。
しかもトップレスの所属するそのフラタニティと言う組織。地球帝国軍の正規の命令系統からは若干外れているらしく、凍京を通しての依頼と言う形にしても中々に圧力を掛ける事ができなかった。
ガキ中心のいい加減な組織に見えるフラタニティだが、その実は中々に強固と言うか、ガードの固い組織となっていた。
そうしてなんとかフラタニティの姉さんに接触できないかと考えている最中、何時の間にか姉さんの反応が火星近隣のフラタニティの基地から木星方面へと移動していた。
因みにだが、その当時の地球圏における木星とは、本来の巨大なガスの星ではなく、旧地球帝国宇宙軍が建造していたヱルトリウム級三番艦が居住地として無理矢理改造されてしまった物だ。最早戦艦としての機能は無く、良くてコロニー、ぶっちゃけ遺跡と呼ばれるような扱いをしている現『木星』だ。
雷王星の拠点に戻るつもりになったのかな? なんて考えつつ、木星であればなんとか姉さんに接触できる可能性もあるのではないか、と考え、即座にかの地へと急行する事に。
そうしてたどり着いた木星。入港・入国自体は簡単に済ませることが出来たのだが、肝心の姉さんの居場所が今一つ探知しきれない。システム的な探知能力で言えば互換性の有る7号系バスター軍団に劣るし、ネットワークから姉さんを探そうと思えば、今度はフラタニティの持つ特権によってその行動の殆どがネットワークに記録されていないと言う有様。
只でさえ木星なんてだだっ広い建造物の中なのだ。まさかこの宇宙時代にネットワークとオフラインだなんて。コレで如何やって探せと言うのだ。まさか直感で?
いっその事小型偵察機でも大量生産して、それを木星の中にばら撒いてやろうか、なんて事を考えていると、今度はフラタニティが7号系バスター軍団に対して喧嘩を売り始めた。
というのも、7号系バスター軍団の一部に、人類側から木星急行って呼ばれてる一団が存在しているんだが、この木星急行と言うのの行動が太陽系内の定期巡回。人類側にしてみれば馬鹿げた量の宇宙怪獣が我が物顔で木星近辺を回遊しているのだ。下手に手を出せば被害が馬鹿にならないとして放置していたコレに、フラタニティは何故か突然手を出す事を決定した。
俺としては貴重な防衛戦力を削られるのも好ましくない。ので、実はその群の大半がガワだけのハリボテに差し替えられていたりするのだが、この木星急行をフラタニティのバスターマシンが見事迎撃。まさに超・能力者ならでは、というべき、お手軽に絶対零度を軽く超越したマイナス一兆二千万度とかいう謎の一撃で木星急行を丸ごとカチカチに氷漬けにしてしまったのだ。
昔ながらのバスタービームって実は冷凍光線だったんだよなー、なんて懐かしみながらその様子を観察してた俺だったわけなのだが、此処で思わぬチャンスが巡ってきた。というのが、俺の肉眼で姉さんの姿を確認する事に成功したのだ。
ヱルトリウム級三番艦の外壁。そこで、バスターマシン90号の一撃で雪が降り積もる中、宇宙空間で雪だるまを作ってわーいわーい喜ぶ7号。……相っ変わらず天然さんみたいだ。
が問題は、姉さんが木星急行――サザゴラス級が撃墜された事に関して何の反応も示していないと言う点だ。
無人バスター軍団は地球圏絶対防衛システムであり、同時に姉さんの手足。木星急行撃破はいわば姉さんが小指を角にぶつけたに等しい損傷だというのに。
これはやはりシステム的な問題が発生しているのか、あるいは姉さんが頭ぶつけて記憶喪失になってるとか、バスターマシンが記憶喪失? んな馬鹿な、とは思いつつも姉さんならありえると思ってしまうそんな可能性も考慮に入れなければならなくなってしまった。
如何した物かと考えているうちに姉さんはフラタニティと共にタイタンの基地へと移動してしまった。
タイタン周辺は監視が厳しく、帝国軍人どころかフラタニティの人間でさえも不用意に出歩く事ができないほどの厳重な警戒態勢となっている。
というのも、全てはタイタンの底に眠る巡洋艦級。ギドドンガス級に関する話だ。
この巡洋艦級は嘗ての大戦……雷王星会戦の折に生き残った物と思われるギドドンガスがタイタンに封印されていた物で、地層の奥深くに厳重に封印され、尚且つ木星急行によって監視されていたのだ。
が、現地の人間、特にフラタニティに属する秘密クラブとかいう連中が、何を如何血迷って解釈したのか、タイタンの地底に眠るソレを『異星人のバスターマシン』と解釈したらしい。
バスターマシンって言うのはそもそも地球人の純科学の結晶なのに、如何して異星人のバスターマシンなんて言葉が生まれたのか。
首をかしげながらもそのままタイタンを監視していると、姉さんが何かやらかしたらしく、静かなタイタンの地表が唐突に騒がしくなった。
なんだろうなー、なんて思いながらタイタンのネットワークに侵入してみたところ、フラタニティのアンドロイドが立ち入り禁止区域に侵入したのだとか。
多分姉さんの事だろうと当たりをつけて、そのままネットワークを監視していると、どうやら姉さんは冥王星に眠るトラントロワを回収しに行くらしい。……冥王星に?
少なくとも俺の感覚には、木星から同属……バスターマシンの反応なんて感知していないのだが、まぁ此方としては好都合。タイタンにこっそりと侵入して、そのまま空港から姉さんの乗る船に同乗し、そこで姉さんに接触する事に漸く成功したのだった。
■ツインテール級
海老の味はしない。
■ビーストロン級
そこそこデカイ強襲母艦。
■一桁台バスターマシン
物理法則を書き換えるフィジカルリアクターは科学が至った魔法の杖。
少なくとも惑星を軽く真っ二つに出来る存在は人類からすれば規格外。
■フラタニティ
要するにαナンバーズとかGATとかの特殊部隊。
■マイナス一兆二千万度とかいう謎の一撃
バスタースマッシュ。
■バスターマシン
実はバスターマシン、宇宙由来の未知の技術の類一切使われていない純地球製の科学力で生み出されたスーパーロボット。