8号始まり物語(仮)   作:朽葉周

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04 覚醒

ノノと名乗った姉さん。矢張り記憶系に異常が生じているらしく、俺に関する記憶どころか、自分の来歴に関する記憶までの一切合財が綺麗さっぱりなくなっていたらしい。

 

とりあえず自己紹介しつつ、自分が姉さんの昔の知り合いであった、程度の事を仄めかしつつ、軽く姉さんの額に触れておく。

 

接触箇所から伝達したデータ。それは、この一万年の間に蓄積された、俺自身の自己進化時のデータマップだ。

 

姉さん――7号も、完成時点で相当化物染みたスペックを誇る存在ではあるが、やはり時間における進化こそが俺達の強みなのだ。そこで姉さんにはいざと言うときに急速に自己進化が可能なように、俺のデータを元とした自己改良プログラムを入れておいたのだ。

 

どうせ冥王星にたどり着くまで多少時間も有るのだし。その間に内蔵システムの改良くらいはしておいても問題ないだろう、と判断したのだ。まぁ本人に相談無くやったのは問題かもしれないが、身内の判断という事で。

 

一応言っておくが、その時記憶に関しては何も弄っていない。というのも、ボディーの改造はともかく、記憶と言うのは精神に密接に関連した物だ。当時の地球帝国宇宙軍の黄金期でさえ精神に関するものはかなりデリケートで、自由自在なんてのはとても無理だったのだ。そんな中で幾ら記憶喪失を直したいからといって精神に干渉するのは幾らなんでも無理が過ぎる。

 

俺も姉さんと再会できたことで安心してしまったという事も有って、どうせそのうち記憶も取り戻すだろうと判断し、結局記憶に関しては放置する事にしたのだ。

 

そんなわけで旅に出てから三週間ほど。漸くたどり着いたカロン宇宙港。……そんなところにまで宇宙港があるのか、って? 勿論無人だよ、無人。バスター軍団……宇宙怪獣監視のためにはカロンの更に外側に行く必要も有るしな。

で、其処にたどり着いたタイミングで丁度事件が発生した。いや、起されたってのが正確かな。

 

どうも件のタイタンに眠っていた宇宙怪獣――その当時の人類は『重力変動体』って呼んでたんだが――を、『永遠のトップレス』と称した連中が目覚めさせてしまったらしい。

 

……まぁ否定は出来ないな。態々人類の天敵を目覚めさせるなんて、俺から見ても馬鹿らしいとは思う。まぁ、何時か破られる封印なら、此方か解くのも一つの手では有る。無論準備が整っている状況ならの話だぞ?

 

で、そんなわけでタイタンに眠る異性人のバスターマシン復活を狙った連中……秘密クラブって組織が、7号系バスター軍団、宇宙怪獣をひきつけるって狙いの元姉さんを囮に冥王星に送り込んだ、ってのが真相だったわけだ。

 

おかげで真宇宙怪獣覚醒時に無人バスター軍団は二手に分裂させられて、余分な消耗を強いられる事になっちゃったわけなんだな、これが。

 

それからどうなったかって? 焦るなよ、ちゃんとはなすって。

 

話はちょっと戻って、カロン宇宙港の話だ。タイタンで事が起こった影響で、太陽系外延に布陣していたバスター軍団の群……ガス星雲と合わせて赤い天の川って呼ばれてたんだけど、これがあふれ出したんだ。タイタンで目覚めた宇宙怪獣を押さえるために活動が活発化したってのが理由なんだが、この所為でカロン宇宙港がその機能を休止させちまったんだよな。

 

で、バスターマシンとしての機能を休止させてる姉さんだ。あわや冥王星手前のカロンで足止めかって所で、幸いフラタニティの知り合いであるカシオってオッサンが貸切の宇宙バスで迎えに来たんだよ。

 

コレ幸いと俺達はカシオ氏のバスに乗り込んで、早速冥王星へ。カシオ氏に自己紹介なんかしつつ、たどり着いた冥王星。まぁ、第二次カイパーベルト会戦、だっけ? そのときに行方不明になったバスターマシン33号。これを姉さんは回収して自機にしたい、と考えてたみたいなんだけど、二十年近く昔に行方不明になってた機体が無事に存在してるわけもなく、見事に白骨化してたんだよ。

 

……ロボが白骨化するのか、って? あの世界のバスターマシンって何故か骨格持ってたり内臓があったりして、割と人間っぽいつくりに成ってたんだよ。

 

んで、白骨化したトラントロワの前。そこで、急に姉さんが覚醒した。

 

……なんでって? 知るかよ。ただまぁ、その同時期、タイタンでは宇宙怪獣が復活して、正に地獄絵図のような有様になってた。7号系のバスター軍団が呼びかけてたのが漸く通じたのか、目覚めた宇宙怪獣に呼応したのか。あるいはお姉様――姉さんがそう慕ってたトップレス、ラルク・メルクマーレの危機を本当に絆から感じ取ったか。

 

結局ご都合主義的に覚醒した姉さんは、迎えを伴ってフィジカルリアクターでタイタンにワープしていったんだ。

 

俺? 当然姉さんを追う……心算だったんだけど、よく考えるとその場には俺以外に此処まで送ってくれたカシオ氏がいたわけだ。

 

彼を放置して幾のは流石に忍びないだろう? 何せ此処に放置してしまうと、下手すると暫く冥王星で野晒しになっちゃうんだから。

 

仕方ないので俺がカシオ氏を抱えてカロン無人宇宙港へ。当然道中カシオ氏に色々聞かれたわけで、話せる範疇だけ有る程度話しておいた。

 

そうして彼をカロンに送り届けた後になって、漸くタイタンに向ってワープしたんだ。ワープに連れて行かなかったのかって? 心得も無い人間の時間をずらす程鬼畜じゃ無いよ。

 

で、タイタンにたどり着いたときには既に事は終わる直前。巡洋艦級をバスタービームで倒したその直後だったわけだ。その爆風をやり過ごしつつ、なんとか姉さんと合流したわけだ。姉さんは帝国宇宙軍にバスターマシン七号として認識されてしまった後だったんで、無線で姉さんと秘密裏にやり取りしつつ、姿を隠して姉さんと合流。俺は姉さんの傍に出て、姉さん専用のお世話用アンドロイドと言うことに擬装して、その傍に席を確保する事に成功したんだよ。

 

で、此処までで話は綺麗に纏まったように見えるんだけど、問題は此処から先だ。

タイタンの宇宙怪獣の覚醒に呼応して、エクセリオンブラックホールに封印されていた宇宙怪獣までが活動を活発化させ始めたんだ。

 

……だな、まずはエクセリオンブラックホールから説明しよう。

先ず最初に、エクセリオン級。第四世代型の宇宙戦艦で、縮退炉を装備した高性能な戦艦だ。大昔の宇宙怪獣との戦いのその最初期に建造され、後に多くの派生型が建造された傑作機だな。

 

このエクセリオンなんだが、壱番艦エクセリオンは、地球圏に進行してきた宇宙怪獣の群を抑えるために、縮退炉を暴走させてブラックホールになったんだ。

 

これが地球圏第十一番惑星ブラックホールエクセリオン。当時は既に色々データが失われたり言葉がなまったりで、『ブラックホールエグゼリヲ』って呼ばれてたんだけど。

 

本来ならこのブラックホールエクセリオン、10番惑星雷王星と一緒に7号系バスター軍団の資源になるはずだったんだけど、予想外にもこのブラックホールに対して適応進化してしまった宇宙怪獣が現れたんだ。それが後にエグゼリヲ重力変動体と呼ばれる宇宙怪獣だ。

 

人類とバスター軍団の調停という名目でブラックホールエグゼリヲを訪れた帝国軍だったんだけど、丁度その時宇宙怪獣が覚醒を開始。なんとか姉さんがそれを抑えようとしたんだ。事実姉さんの能力で十分に抑えられると俺も判断したんだ。……けど、やはり事前に認識をすり合わせておく必要があったんだろうな。手柄を焦った人類が余計な手出しをしてくれたおかげで、見事に姉さんの重力結界は崩壊。ブラックホールから這い上がり、逆にソレを自らの力としたエグゼリヲ重力変動体がついにその姿を顕わにしてしまった。

 

全長一万二千キロメートル。地球よりも尚デカイ怪物だ。姉さんのバスタービームが無効化される光景を見て、正直如何した物かと考えてる俺の視線の先、姉さんに同行していたトップレス、お姉様・ラルク・メルクマーレがその能力を発揮。芯だけになって残されていた雷王星を転移させ、エグゼリヲ変動重力体に直撃させたのだ。

 

あれにはさすがの俺もビックリした。まさか小規模とはいえ惑星を、人間が転移させたんだからもう。そりゃ7号系バスター軍団もトップレスを『脅威』と捉えるわ。納得した。

で、更に人類は追撃を掛けようと提案。直撃した雷王星の中心核で縮退連鎖を誘発させて、エグゼリオ重力変動体をブラックホールに押し込もう、と言う作戦を上げたのだ。

 

これは俺も姉さんも即座に不可能と判断した。何せ相手は『ブラックホールを取り込む能力を持つトップレス』なのだ。此処で新たにブラックホールを生み出したとして、最悪そのブラックホールを取り込まれる可能性はかなり高かった。

更に言うと、仮にブラックホールに閉じ込める事ができたとしても、エグゼリオ重力変動体は何時か必ず開放される。一万二千年でこの規模まで拡大したエグゼリオ重力変動体だ。そう長い時間をかけずに再び人類の前に現れるだろうその時には、先ず間違いなく今以上の力を得ているであろうことは予想に易い。

ならばこそ、倒すのは今その時を除いて無い。そう判断した俺と姉さんは、即座に行動を開始した。

 

姉さんは即座に宇宙全域に散らばった自らの手足、7号系無人バスター軍団に召集をかけ、ダイバスターの建造を開始した。

俺はと言えば即座にその場から飛び出し、赤い天の川の一角に隠しておいた自らの戦力を召集。コレを率いて重力変動体への追撃を開始したわけだ。

 

パリーンと割れる空間から飛び出す俺を見て、目をギョッと見開く帝国軍の連中。通信機越しに見ていたのだけど、あの顔は面白かった。何せ連中は俺の事をお手伝い用アンドロイドと見ていたのに、何時の間にか姉さん――7号と同系統の力を見せているんだから。気分はデンドンマーチだな。……あ、デンドンマーチわからない? そりゃそうだよな。

 

そこから重力変動体との亜光速空間での戦闘は……まぁ、語るべき物も無い。只単に俺が延々苦戦していただけだからな。

 

因みにその当時俺がエグゼリオに挑んだ際の戦力だけど、俺を中心システムに据えたガンバスター級8号強化パーツ『シンバスター』、ソレに加えて量産無人型シンシズラー級を呼び出せるだけ呼び寄せての大群だった。

因みにシンバスターはガンバスターを外延遊撃部隊の技術で再設計した機体で、俺専用の強化パーツだ。宇宙怪獣との戦いでは、サイズと言うのも結構重要な武器になる。

 

シンシズラーのほうは、嘗てのガンバスター量産機であるシズラーを、コレも同じく外延遊撃部隊の技術で再設計した期待だ。

共に縮退炉を平均的に装備した機体であり、二桁バスターマシンともエキゾチックマニューバを考慮に入れなければ余裕を持って戦えるほどの性能を持っている。

本来なら俺も惑星規模の集積構造体を構築しての最終決戦んと洒落込みたかったのだが、俺の守備範囲は太陽系外延。つまり全宇宙に俺のシステムは散らばってしまっているのだ。

 

仮にその時点から招集を掛けたとしても、其処からでは如何足掻いても、地球圏での決戦には間に合わないと判断したのだ。

結局俺は持てる限りの戦力を率いて、地球圏到達までに出来る限りエグゼリオ重力変動体を削る消耗戦に挑む事になった、というわけだ。

 

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