米花町の中心で ■ を叫ぶ 作:たけのこ
アルアル口調で喋ってるけど、これは最早長年の癖だから抜けない。心のうちはわりとペラペラ日本語が流れてます。
こちとら来日7年だぞ?いい加減覚えるわ。テレビ、雑誌、お友だちとの会話......日常でじゃぶじゃぶ日本語が飛び交ってたんだ。そりゃ覚える。
でも、ほら、イメージあるじゃん?
何故か多くの日本人は中華服を身に纏った私(友人は《チャイナ娘》と呼んでいた)を、【アルアル】と喋ると思い込んでいるのだ。片言の日本語で喋ると、買い物でオマケくれたり、「私、日本語わからないアル」と誤魔化せたり、いろいろ得してるので、そのままにしている。
それに夢を壊さないって大事だよね?
私が今、こうして日本にいる理由は村の掟【死の接吻】があるからだ。
まだ幼かった私が家族旅行で日本に訪れたさい、ある子どもと出会った。
フラフラと迷子になってた私は通りかかった公園で小休止しようとしていた。
「変な髪の色ー!」
「変なのー!」
複数の少年に囲まれた金髪で日に焼けた肌をした
正義感が刺激されたのか、女尊男卑社会で育ったせいか、私は迷わず、その女の子の助太刀に出向いた。
苛めっ子は大したことなかった。
「大丈夫アルカ?」
パッと振り替えって、女の子の顔を見ると、蒼い瞳に涙をため、フルフルと唇を引き結んでいた。
「余計なことするなっ!」
――――ゴォンッ
女の子の頭が私にダイレクトに直撃し、バサリと倒れたのである。
そして、目が覚めれば、私を負かした女の子がいた。眉を寄せて、小さく謝られたが、それどころじゃない。
女傑族には絶対に破ってはならない掟がある。
隠し事は苦手だし、口を割らされる。同い年の女の子に負けたということを。
私がするべきことはひとつ。
「私 ポプリ。お前 名前 教えるヨロシ」
「......ふるや れい」
彼女は居心地悪そうに答える。
私はサッと距離をつめ、彼女に【死の接吻】を授けた。
目の前の彼女は目を大きく見開いて、目を白黒させている。日に焼けた肌の顔を真っ赤に染めて「......え..ぇ....」や「......あ......」と顔を手で覆い、とても混乱しているとみてとれる。
「お前殺す。これ絶対的制約ネ。それまで精々強くなるヨロシ。
くたばるなヨ、フルヤ レイ」
狼狽えた彼女に、キリッと瞳をあわせ、宣戦布告した。満足感と新たな敵の出現に気分が高揚し、私は中国へ帰国した。
そのときのことを、オババに報告すれば、鬼畜すぎる修行が始まった。
ちょうど閉鎖的なこの村から出ていきたいと思ってたし、私の【死の接吻】の相手は日本にいる。
自分が強いという自負心があった私には屈辱だったけれど、旅立つ口実ができたのはラッキーだった。