米花町の中心で ■ を叫ぶ 作:たけのこ
日本に来たばかりの話。
観光巡りから帰ってきた私は、マンションの一室で
帰り際、ザワザワと騒がしく、お隣さんや上の階の人たちが慌ただしくマンションのエントランスへ駆け込んで外に出てた。
......はて。今日は何かイベントがあっただろうか?
首を傾けるが、思い当たる節はないし、そもそも誘われてもいない。ので、私の優先は今しがた、拾ったばかりの
いつもより静かなマンションを降りると、妙な団体さんとすれ違った。
「爆弾が仕掛けられてるのはこのフロアか?」
「それらしきものは見当たらないな......」
「イタズラの通報だったのか?」
「......いや。犯人の要求はきてたぞ」
団体さんは重厚そうな服装をきていて、ガチモンの人にみえる。この前、放送してた刑事ドラマに出てた爆弾の解体屋そっくりの恰好だ。何かの撮影かと思い、会釈をするに留めてスルーした。
最後尾にいた軽装の男とバチりと目が合う。
ははーん。わかったぞ。この男はあの団体さんのマネージャーかディレクターだな。さっきの団体さんはエキストラか役者さんってところか。
今から撮影が始まるから、マンションの住民は出ていったのか。知らなかった。回覧板に書いていたのかな。読み飛ばしたり、ちゃんと理解してなかったりしてたのかもしれない......日本語むずかしい。
「あのー、ここに何か不審な物ありませんでしたか?」
ヘラりと笑い、サラサラした肩まで伸びてる髪をした男が私に話しかけてきた。
......もう撮影が始まってるのか?
「不審な物 知らないアル」
「そっ――」
「私 落とし物 拾ったネ」
「――か......えェェッ!?」
ほれ、と紙袋を掲げる。男はぎょっと表情をかえた。
「それ、ちょおっと詳しく見せてくれない?」
男が手を伸ばしてきたので、サッと距離を取る。
「私 これ 交番に 届けるアル。お前に 渡せないネ」
「いやいや、俺がそのお巡りさんだからね?ほら、安心して渡してくれないか?」
「ハッ。そんなウソ、この私に通じると思たカ?そんなんじゃ レッドカーベットは夢のまた夢。お前、この業界向いてないアルヨ」
「うッ!し、辛らつだな......」
団体さんと男を見比べながら、鼻で嗤った。すると、《ピ......ピ......ピ......》と紙袋の中から音が聴こえる。
「それ爆弾じゃ!?......いいから早くそれをこっちに寄越せ」
サァと青ざめた表情をした男は迫真に迫っていてなかなかリアリティがあった。
「オババが言ってたネ。【落とし物は交番に届けるべし】これ日本の常識アル」
「そうだけど!そうじゃない!ちょっと待ってチャイナちゃん!!」
来日する前にオババから日本の常識を私に教鞭を執った。日本は細かいルールやモラル、道徳心に厳しい国だそうで、中国の田舎から出てきたわけだし、恥を晒しかねないように頭に叩き込まれたのだ。
「用がないなら私の目の前からさっさと消えるネェェェエ!」
「ぁべしッ!!」
女傑族流のアッパーを食らわせてやった。まったくしつこい男だった。男は宙を舞い、ドサリとアスファルトに落ちた。「萩原ァァア!!」って後ろで騒いでたけれど、今はこの落とし物が先だ。その男の介抱は任せたぜ、モジャモジャ男。
無事に交番に届けると、お巡りさんは腰を抜かしていた。何故か私のすぐあとにやって来たさっきの団体さんがお巡りさんから紙袋を引っ手繰った。
......あいやぁ!それは撮影の小道具だったのか。持ち主が見つかってよかった。
良いことをするってすばらしいアルナ!