賢者の娘は外の世界に留学したようです 作:エスカルゴ・スカーレット
…その後私は、蓮子に宥めてもらって漸く泣き止んだ。お父さんはいつの間にか消えていたが、きっと空気を読んでくれたんだと思う。
お父さんが居たその場所には『準備が整ったら俺が1人で居るときに呼んでくれると助かる』と書かれた紙が置いてあった。私はその紙をスマホケースに入れ、大切に取っておくことにした。
そして次の日。空が明るくなり始めた朝早くに大学に集合した私達は、そこから共にタクシーで京都駅に向かい、始発の新幹線に乗った。駅弁の朝ご飯を食べ、一緒に二度寝に入る。
気付けば新幹線は、元首都である東京へと到着していた。新幹線を下りて東京の街に降り立つ。人の数が京都と比べて多いが、私が想定していたよりかは少なかった。もしかしたら首都が京都に変更されたのも影響しているのかもしれない。
「お婆さんはどこに住んでるの?一軒家?」
「…ヤバ、乗り過ごした。ていうか寝過ごした」
「えぇっ!?」
「てへへ、起きてすぐ下りればよかった…東京駅まで来る必要無かったなぁ…」
「しっかりしてよぉ〜…とは言えないか…。私も寝てたし…」
「ううん、メリー起きててもどこで私を起こせばいいか分からないでしょ。ま、東京だから電車は数分おきに来るし、何の心配も無いんだけどね。行きましょ!新幹線の次は京王線よっ!」
「…うんっ!」
大都会の東京から京王線で移動し、都内某所で下車する。そこもまた全方位が高層ビルに囲まれている都会だが、そこから更にバスで移動する。暫く行くと都会らしさは段々と薄れていき、遂に緑に囲まれた土地に到着した。見た目は田舎だ。
「この辺なの…?」
「そ。実家には行かないで真っ直ぐお婆ちゃんの家に行こうと思ってるけど…どうする?」
「そうね、そうしましょ。でも、泊まりがけって言ってたけど…。どこに泊まるつもり?」
「どこって…お婆ちゃん家でしょ?」
「『でしょ』って…。アポ無しでしょ?」
「まぁそうだけどさ、お婆ちゃん一人暮らしだし大丈夫大丈夫♪」
「えぇ〜…」
確信も無しにそんなことは言わないだろうし、きっと大丈夫なのだろう。不安は残るが、ここは彼女に任せてついて行くしかない。
田んぼ道を暫く歩くと一軒の家が見えてきた。決して大きくないサイズの和風の家だが、何故か庭の敷地内に大きな蔵がある。蔵といえば大きな家にあるというイメージが強いだけにこの状態に違和感を覚えてしまった。……違和感といえば、もう一つある。だが上手く言えない。外見のことなのだが…上手く言い表せない違和感がある。
「あの蔵、やけに大きいわね…」
「でしょでしょ?何か無駄に大きいよね。中には何あるのか気になってしょうがないよ」
「蓮子も知らないの?」
「知らない。危ないから絶対に近寄るな、とだけ昔から言われてきたからさー…。妖怪とかを封じ込めてたりするかもね♪」
「あはは…有りそうで無さそうね…」
寧ろ、妖怪を閉じ込めているのは蔵の中にある
「でもさ、蔵と言えば家と同時に建てるものだと思うでしょ?」
「違うの?」
「あの蔵、私が小さい頃に建てられたんだよね。中身とかが増えた訳じゃないのに、何故か建築…というか増設?されたんだよね。でも子供はさ、新しい建物とか見たら探検したくなるじゃない?なのにダメだダメだって言われてさー…子供心に不満だらけだったよ」
きっとそれだ。私があの蔵に対して抱いた謎の違和感の正体がわかった。妙に綺麗なのだ。家は実に年代物という感じがするのに、蔵の方は少し綺麗に見えた。その差が違和感だったのだ。
「いつか、中が分かると良いわね」
「そんな日が来るとは思えないけどね…。まぁ、中入ろっか。…おばーちゃーん!来たよー!!」
玄関を開けるなり元気に声を張り上げる蓮子。急に大声を出すので少しビックリしたが、それはどうやら中に居た蓮子の祖母…菫子も同様だったらしい。「えっ!?」という声が聞こえた後に、スリッパを履いて走ってくる音が聞こえてきた。
少し整えられた白髪にラフな格好、丸みのある眼鏡で、柔らかそうな印象が与えられる。
「あらあらまぁまぁ…相変わらず元気ねぇ蓮子。いらっしゃい。…そちらは?」
「あぁ、こっちは─────」
「初めまして。留学生の、マエリベリー・ハーンです。宇佐見さんにはいつもお世話になっ…」
「って言うのは建前でさ!実はメリーね、幻想郷から来た妖怪なのよ!」
「へぇ…!」
「まだ途中なのにぃ…」
眼鏡の奥で彼女の目がキラリと煌めいたように見えた。それから、菫子に「上がりなさいな」とリビングに通された。彼女が用意したお茶に口を付けつつ、蓮子と彼女のやり取りに耳を傾ける。
まずはここに来た目的を。そして、その理由。菫子は、楽しげに話す蓮子を見て、ただただ目を細めていた。見た目と第一印象の通りで、優しいお婆ちゃんらしい。
すると唐突に私に話が振られた。2人の会話は聞いていたので、特に焦る事無く返事が出来た。
「メリーさんは紫さんの娘って本当…?確かに、外見はとてもよく似ているけれど…」
「ええ。私、本名は八雲茜っていいます」
「あらまぁ…。紫さんより優しそうに見えるわ♪
…あ、こんな事言ったら怒られちゃうから秘密にしておいてね♪」
「そうですね♪」
「…それでねお婆ちゃん。その紫さんと話して…幻想郷に行けるようになったの。勿論あくまでも一時的にだけど。でも私ってお婆ちゃんみたいに超能力が無いから、自分の身を守れなくて……」
「そうねぇ…妖怪さん達は強いしね。人間もね」
「人間も……?お婆ちゃんみたいな人がいっぱい居るの?」
「まさか。私みたいな超能力者は居なかったわ。でも、私なんかよりもずっとずっと凄い人達が、あの世界には居るのよ」
「お婆ちゃんよりもかぁ〜…。楽しみだけど少し怖いなー。でもカードも何も投げられない私は…どう身を守ればいいと思う…?」
「そうねぇ…。蓮子、時間と場所が分かる以外は至って普通の女の子だからねぇ……」
「それって褒めてるの〜?」
「勿論褒めてるわよ?…そうねぇ…あなたが普通だからこそ、妖怪からの護身の方法は、限られてくるわねぇ。これは難しい問題ね」
「なんで少し嬉しそうなのよ〜?」
「ふふっ…とうとうこの時が来たのかーってね、嬉しくなってね…♪」
「この時って…?」
すると菫子は、無言でポケットに手を入れて、緑色のあるものを取り出した。
「え…ちょっ、お婆ちゃん…!?」
「お婆さん!?」
取り出したソレは拳銃。そして彼女は、それをあろう事か蓮子に向けたのだ。私達が驚いたのも無理は無いだろう。もし蓮子に撃つようなことがあれば、私が彼女を守らねば。……そう身構えた瞬間、菫子は引き金を引いた。
「「…へ?」」
弾丸は飛び出さなかった。代わりに、銃口から何か細いものがカチャンと落ちた。蓮子がそれを拾って見つめているソレは、精密に出来ている鍵らしい。
「蔵に行ってきなさい蓮子。あなたの求めているものが、そこにあるわ」
「え?でもあそこって、危険だから近付くなってお婆ちゃんが……」
「そう、今まではね。だけどもう大丈夫よ。今のあなたには、あの蔵に入る資格がある。幻想郷に行きたいのなら、蔵で装備を整えなさい。もしも拒むなら、幻想郷には到底行かせられないわね」
「……わかったよ。行ってくるね、お婆ちゃん。行こ、メリー!」
「え…でも私は…」
チラリと菫子に目をやると、ニッコリ微笑んで頷いてくれた。OKという事だろう。これまでは蓮子すらダメだったのに、何故初対面の私がOKなのだろうか。そこは気になったが、蓮子に手を引かれ聞きそびれてしまった。
「はぁ…ハラハラしたー…ホントに撃たれるかと思ったよ…」
「あ、メリーは知らないんだったね。お婆ちゃんってああいう所があるのよ。超能力を使って急にドッキリを仕掛けてくるの。まぁ、今のは超能力じゃなくて物理的だったけどさ。ポンッて花とか出すのかと思ったら、まさかの鍵とはね〜」
「花…?なんで花?」
「ほら、コ〇ンにそういうシーンあったじゃん。夜、入院した〇ナンのお見舞いに灰〇が来て銃を突き付けるシーン。そのまま引き金を引くけど、実は花でしたーってやつ」
「あー」
そういえばあった…ような気がする。まずい、サラッとしか読んでいないものだから、あんまり深くは覚えていない。
「なーんて話をしてるうちに着いたね!さァて、この蔵で装備を整えられるって言ってたけど…。何があるのかなぁ」
「まさか、今日中に蔵の中を知ることになるとは思わなかったわね♪」
「そうね!よしっ、鍵は開いた!開けるわよ!」
「「いっせーの…せっ!!」」
声を揃えて同時に蔵の扉を開けた。しかしその大きな蔵の中には、とてつもなく巨大な機械と、説明書らしき紙の束が傍にあるだけだった。
「何、この機械…?工場の中にありそう…」
「この紙はどうやらこの機械の説明書みたいね。
『業務用3Dプリンター機』…?」
「…!」
菫子はきっと、この3Dプリンター機で装備を整えろと言いたかったのだろう。その意図をすぐ汲み取った私達は、説明書を一緒に読み込んで、作業を開始した。
段落あると見易さ違います…?
3Dプリンター機では長さ高さ奥行それぞれ2mずつの物体までなら作れるって事にして下さい。何せ「業務用」ですから。
何故菫子がこんなの買ったのかは追々書いていくかもしれませんし、放っておくかもしれません。いや、次の話で書きます。
菫子の年齢について
深秘録の登場時点で、菫子は高校一年生。つまり15歳か16歳ですね。まぁ東方なので明確な年齢は出ていませんよね。(ちゆりと教授は珍しい例)
と、ここで思い出して欲しいのは、「エスカルゴ幻想入り時点で既に菫子の夢幻病は治っていた」という事です。
仮に、菫子との入れ違いでエスカルゴが幻想入りしたとすると、菫子20歳時点でエスカルゴは16歳ということになります。
菫子20歳(エスカルゴ16歳)
ただしここでもう一つ思い出してほしいことが。
幻想郷と外の世界の時間の流れ方は違うってことです。(本編で書いた通りこれは俺の作品特有のオリ設定なので鵜呑みにはしないでネ。蓮メリを本編と同じ世界線で早く書きたくてこんな設定にしたのです。後悔は一切してません)
幻想郷の1年は外の4年としていましたね。
(それくらいすごく離さないと、蓮メリの時代に追いつかないだろう、というメタ的な理由で…)
菫子20歳(エスカルゴ16歳)
24歳(17歳)
28歳(18歳)
32歳(19歳)
〜〜〜〜〜〜〜〜
とすると、エスカルゴは幻想郷で35-16年もの間過ごしているという事になります。一方外では、エスカルゴ幻想入りから19×4年も経過しているという事です。
つまり、菫子の年齢を求める式は
彼が幻想入りした時の菫子の年齢+エスカルゴが幻想入りしてから経過した年数×4
となるので、数字を代入すると
20+19×4=20+76=96
ですね。………96歳だと!?
曾お祖母ちゃんとかそういう年齢じゃないか!!
そう。エスカルゴは、外で生きていたら92歳の爺なのです……!!幻想郷に来てて良かったね!!
西暦は2093年。うーん、遠い。
菫子もその子供も、結婚(出産?)が遅かったのかもしれませんね。でも、蓮子が大学一年生だと
仮定すると、年齢は19歳か18歳ですから、96歳と
18(19)歳という年齢差は案外起こり得るかも?
菫子39歳
子供0歳
菫子78歳
子供39歳
蓮子0歳
菫子96歳
子供57歳
蓮子18歳
あー、溢れる無理矢理感。でも2人とも高齢出産だったとしたら96歳と18歳の祖母と孫も誕生することになりますね。うーん、無理矢理感。