賢者の娘は外の世界に留学したようです 作:エスカルゴ・スカーレット
あれから2人で動画を視聴し、一応最後まで目を通した私達はイヤホンを外して大きく息をつく。どこか夢心地の様な、フワフワした感じがする。
「へ〜……なるほどねぇ。イリュージョニストはエスカルゴ・スカーレットって名乗ったんだね。ていうかエスカルゴって、少年Eと同じ名前…?これやっぱり行方不明になった本人じゃない!?さっすがメリー、大きなヒントだよこれは!!」
「あはは…それなら良かったわ…」
イリュージョニストの名前が、バレてしまった。本当はこの動画は見なかった事にしたかったが、閉じようとした瞬間に見つかってしまったから、仕方ない部分もある。そう割り切るしかない。
このまま蓮子が考えを深めていけば、さっき私が予想した様に色々結び付けて結論を出すだろう。
「…っと、少年Eの事は一先ずおいといてっと。さっき言った日本の例ってやつも見つけたから、ちょっと目を通しといて!私はこのエスカルゴ・
スカーレットと少年Eについて考えてるから!」
「わかったわ」
今度は動画ではなく画像しかなかった。場所は、
どこかのテーマパークらしき場所で、とあるアト
ラクションで遊ぶ為の列らしい。写真はある2枚
しかない。角度的に考えると、撮影したのは人間
ではなく防犯カメラで、これらの画像は、映像を
1枚目は文字通りの長蛇の列で、画面端の最後尾近くに、黒いローブを纏った2人が写っている。しかし、2枚目は黒いローブの2人しかおらず、その他全員が画面から消え去っていた。
記事だけにこの写真関連の人物のインタビューも載っているようだ。答えているのは、当時のこのアトラクションの従業員達。その従業員も入ってきたのが2人だけだったので酷く困惑したそう。
入口の従業員は「背が小さい方は目が紅く、背を測った時に少し動きが変だった。大きい方は紅と黄のオッドアイ」と証言している。
大きいのはまず間違いなくお父さんだが、小さいのは相変わらず予想がつかない。紅い目なんて、幻想郷ではザラに居るからだ。
アメリカの例と日付けが変わらないのを見ると…もしかしたら同一人物かもしれない。このテーマパークは千葉にあって、あちらはラスベガスだ。時差的に考えてみるとこのテーマパークで遊んでから向こうに行ったと考えるのが自然だろう。
あと2人は手を繋いでいる。レミリアとフランの二択ならフランだと言えるのだが…お姉ちゃん達までも範囲に含まれている以上、迂闊には判断が出来ない。
怪しい者をピックアップするとしたら、フランか巫月お姉ちゃんだ。レミリアはこういった場所で手を繋がない性格だし、霊麗お姉ちゃん、または弦月姫お姉ちゃんなら少しくらい照れる素振りを見せるはず。
手を繋ぐと、照れてお父さんより後ろを歩くのがあの2人だ。そういった面からも、フランか巫月お姉ちゃんのどちらかだと言える。
2人共、翼があって目が紅い。判断がつかない。
どちらもオネダリ上手、甘え上手、外への興味…いや、巫月お姉ちゃんは確か外に行きたくない側だったような……?
だとすればこれは、お父さんとフランのデートを撮影したものかもしれない。仮に、フランが列に耐えかね、早く行きたいと言えば…お父さんなら火を出して待ってる者全員に催眠をかけて、別な場所へ移動させたりするかもしれない。あくまで推測だが、お父さんなら有り得ない話ではない。
「どーしたのよメリー、画面睨み付けちゃって。また何か見つけた?」
「んーん、何でも。ただ、エスカルゴ?って人の行動範囲が広いなって思って。移動も早いし…」
「それなんだけどさ。私、ひとつだけある方法を思い付いたんだよね」
「?」
「思い出して。エスカルゴとケーネは、ファストフード店を出て、それから2人の居た席の空間に穴が空いて、そこから穴を通して、手でトレイを持ってったよね?」
「そうね」
「てことはだよ?穴が大きければ手だけじゃなく全身通れるんじゃないの?まるでワームホールのように。空間と空間を繋げて通るんじゃ行動範囲なんて有って無いようなものだよね。どこにでも行けちゃうんだから」
「拡大解釈にも程があるわよ…流石にそんな事は現代の技術でも無理だって…」
洞察力が優れすぎてて怖い。そのワームホール、私達が普段スキマと呼んでいるソレそのものだ。
「これこそオカルト…。やっぱりこれヒトの仕業じゃないよ。都市伝説とかそんなモンじゃない。正真正銘…妖怪の仕業よっ!!」
…まぁ、ファストフード店での映像を見ただけでここまで辿り着けたのなら、どの道彼女にバレただろう。イリュージョニストが「妖怪」ってことくらい。
「…超技術を個人開発したっていう可能性は?」
「まず有り得ないわ。第一資金が無いだろうし。あの違法カジノで資金を得たとしてもそれ以前の彼の行動には説明がつかない。立体ホログラムはまだ分かるけどね。それとカラーコンタクトよ」
「カラー…コンタクト?それがどうかしたの?」
「エスカルゴは、あの時代はカラーコンタクトが販売停止になっている事を知らなかった。それは一体何故?その答えは簡単よ。母親Yの言う通り
『別世界に旅立った』せいで当時の日本の常識を知らなかったから!そりゃあ知る由もないわよ、別な世界に居たんだから。そしてボロが出て急ぎ能力を使って警察から逃れて、騒ぎに便乗して、食べかけのバーガーとポテトを空間に開けた穴を介して取り戻したッ!!」
…蓮子は探偵なのだろうか?私も正解を知ってる訳じゃないが、これが正解だろうと思わせられる妙な説得力がある。
「テーマパークでこのちびっ子と遊んだあとは、アメリカ・ラスベガスにあの空間を繋げる能力で高飛びし違法カジノに参加、そして会場の全員を
洗脳してジャンケンに勝利して、1000億円を丸々
ゲットしたのよ!」
「凄い推理ね…」
「妖怪なら北朝鮮で無双したのも説明がいくわ。だとしたら日本の破壊者もきっと彼ね………とか考えたんだけど、こっちの方はどうにもこうにもしっくりこないのよね」
「えっ……どうして?」
「だってメリー、考えてもみて。破壊者は軍隊を利用してでもこの国を破壊しようとしてたのよ?でもその後に現れた彼は、寧ろ日本をエンジョイしてるじゃないの。ケーネとのファストフード店とか、ちびっ子とのテーマパークとかさ?」
「そうね…言われてみればそうかも」
「…私の結論はこうよ。少年Eが何らかの理由で人外となり日本から姿を消す。その後、別世界でスカーレットという性を得て、彼はエスカルゴ・
スカーレットと名乗り始める。日本の破壊者は、エスカルゴと顔が似てるだけの別人。…それで、エスカルゴは別世界で能力を得て、それを日本やアメリカで楽しむのに使ったり、北朝鮮で軍隊を潰すのに使った。こちらの世界で楽しむ際、偶に能力を使う、または使ってしまう事があったが、それをイリュージョンと偽り何とか誤魔化した。
………どうっ!?」
「凄いわ、蓮子…。人物の関係的には、私も多分そうじゃないかなって思ってはいたけど…そんなしっかりした筋道を立てて推理は出来ないわ…」
怖すぎる。まさかこんな、漫画みたいな洞察力を持った人間が実在するなんて。さっきから奥歯がカチカチ鳴りっぱなしだ。しかしそれほどまでに蓮子の推理力は異常だ。良い意味で。
それに加えて子供レベルのナゾナゾでも解くかのような圧倒的早さ。これにはかなり驚いた。
「へっへーん、凄いでしょ!自分の中でも、過去最高の推理よ!間違えている気がしないわ!!」
「そうね…」
私が知っている限りで唯一あの推理を否定できる部分は「日本から姿を消す」の部分だけだ。一応
幻想郷は日本にあるので、正しくは「(幻想郷から
見て)外の世界から姿を消す」だ。
「それにさー、日本の破壊者と北朝鮮の破壊者、結び付けるにしても証拠が足りなさすぎるのよ。顔が似てるっていうのは元クラスメイトの証言、このただひとつだけ。映像も画像も不鮮明で声が入っていた訳でも無い。結び付けるのは少し早計だったかもしれないわ。…シルエットはまぁまぁ似てたけど翼が生えてれば誰だってあんな感じのシルエットになるだろうしね」
「確かにそれもそうかも…」
何はともあれ、蓮子が「日本の破壊者≠北朝鮮の破壊者」という結論を出してくれてよかった。
これで万が一お父さんと邂逅する事になっても、お父さんが責められる事は無い。
(こりゃあ、夢に一歩近付けたかなっ…♪)
「…っ?あれ……?」
「どしたの?」
何となく気配に違和感を覚えた私は、小さく声を漏らしてしまい、蓮子はそれに首を傾げる。
「いや…何でも………」
「……?」
そんな、まさか。現在…この大学の近くに居る。
選択肢が多い中で、過去の発言などから選択肢を少しずつ潰していき、ひとつの答えに辿り着く。
なんかこういうの好きです。
そりゃ蓮子も「日破壊者≠北破壊者」にしたくもなりますよ。やってることは似ていても、色々と違いますからね。