何度目だろう。   作:ウェットル

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 前回も続きを期待されたので、その人数分だけ続けようと思います。


鳥なき里の蝙蝠たちと。

 無数の同じ時。

 無数の同じ日を迎え、同じ場所をめぐり、同じ誰かと出会う。

 言うまでもないが人間の第一印象というものは、当の本人が変化しない限りは変わりなどしない。無限に繰り返される同じ日々は、確かに、その無限のうちにある日々の積み重ねでボクを変化させていった。

 

 ・・・・・・してしまった。

 これこそが、ボクを大きく苦しめる『今』の現実を知らしめたのだ。

 

 強くなれば、強くなるほど強者が寄ってくる。

 弱かった最初の時期よりも、歯牙にかけることが増えてくる。

 いわゆる「雑魚には興味がない。」とでも宣うかのような一見気高くも見える姿勢が、今度は「強者には興味がある。」というふざけた姿勢に変わっていく。

 弱さを着飾れば、かつてと同じような『今』を繰り返すことはできる。

 

 それでも相棒(リジル)の事情や、ボクの生まれを知れば。

 あるいはそれらを悟りでもすれば、やはり同じ『今』が繰り返されるのだ。

 

 決して悟られないように、どこか遠くの僻地まで隠れ潜んだこともある。

 それでも、その僻地での出会いや絆から、三大勢力が関わる諸問題を被った人間を守るために動いてしまう。動かなくても、弱いもののフリをしても、彼らの欲望は人間のようには尽きることがなく、人間のように尽きることを知らない。

 皮を被った人間もどきたちは、特別な力というものに執心する。

 神に選ばれた聖なるもの、神に選ばれなかった悪しきもの。神を由来としない人間の力、技術、あるいは見ず知らずの異国の神話を由来とした神秘。

 人間が星をつかもうとするように、やがては月にたどり着いたように。

 彼ら三大勢力もまた、「星を見上げて、直接つかもうとする。」者たちであった。

 

 善も悪も、正義も非道徳も関係がない。

 星の輝きさえあれば人間と同じように、彼らもまた星をつかもうとするのだ。

 星の輝きの正体が、太陽と同じ恒星だろうが関係もないと誇る、あるいは驕るように。文字通りの天敵である太陽を掴む偉業、これを果たしたいと願うように。

 

 だからこそ、ボクと相棒の存在に気がついてしまう。

 そうしてまた、ボクが知る『今』を繰り返すことになる。

 

「これの前の周回だと、そういうたぐいのバカをやったんだよ」

 

『”そう そいつら 気の毒だった また こいつら 刺す?”』

 

「しないって。今回は、そういう手間がいらないみたいだ」

 

 ガラケーと呼ばれる旧式の携帯端末のボタンを、相棒は柄で何度も押しながら入力する。メール画面をメモ用紙の代わりにして、あるいは皮紙の代わりにして。

 

『”これ おもしろい でも 疲れる”』

 

「やっぱり、傷が刻める羊皮紙のほうが好み?」

 

『”当然 新鮮な インク 新鮮な 皮紙 あったら もっと いい”』

 

 さすがに、それは毎回用意できないなぁ。

 相棒の感性的には、狩ったばかりの獲物の「毛皮」で皮紙を作ったほうが、本当は気分が良いらしい。気持ちはわかる、紙質のいい手帳に日記を認めるのは最高だ。

 良心が傷まないわけではないが、獲物(テキ)獲物(テキ)だ。

 

「・・・・・・それを教えてくれたのも、結局はあいつらか」

 

 眼下に広がる、馬型の魔獣にも似た悪魔の残骸。

 今回での『今』における、あれの死に場所は違うが、状況は同じだ。

 何人か欠けていたり、引きこもっているはずの誰かが誰かの背中に隠れていたりと、なにかがズレているが問題はない。それもまた、繰り返される『今』のパターンのひとつ。

 はぐれ悪魔バイザー。彼女を殺めた学生たちの集い。

 そこに偶然、いるはずもない誰かが勇気を出して遊技盤に立っただけ。

 

 だからこそ、今回は必要がない。

 相棒に共感するような、可憐な吸血鬼(男の娘)がいるのだから。

 

 彼女らに同情はない。彼女らに確保という発想はない。

 敵は殺す。裏切り者は殺す。敵を騙すためには味方から、といった方便も通じない場合の『今』もあった。力あるものには責任が伴うとは、どこのアメコミを由来とした思想だったか。この世界にはなぜか存在しないが、今でも魂の奥底に刻まれてはいる。

 

 そういう意味では、彼女らはあくまで。

 目の前の外道に責任のツケを払わせているだけに過ぎないのだろう。

 ただ、手段が最低最悪の最後の手であるはずの処刑だ。悪魔たちにとってはどうだかは知らないが、人間たちにとっては平成を迎えた時代において、どの国でも決して肯定はされがたい手段のひとつ。

 どの『今』においても、彼女らのやり口に嫌悪感を示す神器持ちの人間は珍しくはなかった。この瞬間での『今』の始まりより前、堕天使によって殺されるはずの者たちが偶然でも生き残っていれば、必ず彼女らの支配が神器使いたちに抗われる『今』にたどり着く。

 

 今回は、そういう順番をめぐった『今』ではなかったようだ。幸運にも。

 その中でも、相棒と血みどろなトークが噛み合う彼さえいれば、問題はない。

 ・・・・・・相棒が彼へからかうものを、噛み合った会話と読んでいいのかは怪しいが。

 

『”おまえ 誰か 加勢 しない なぜ?”』

 

「そういう『今』は、もう過ぎ去ったからね。全部。

 ボクがいなきゃ成り立たない『今』のひとつなんて、何もしなければ始まらないのと一緒さ。何千何万回前だったか忘れたけど、執着するならともかく・・・・・・」

 

 決して、狙いは定めない。ボクも、相棒も。

 まだ、彼女らがボクたちの獲物になる『今』には至っていない。

 今回はどうやら、ひさしぶりに羽を休めるらしい。今回はどうしようか。

 

「偶然、もしかしたらが。

 それが叶う、幾つかの『今』のルートの辿り着き方さえ知らないんだ。

 ひとつの『今』だけに対して、無理にこだわる必要はない。そんなことをしていたら、今回の相棒と出会った頃より前の『今』に、とっくに廃人になってるよ」

 

 正義を夢見る『今』は終わった。

 外道に逃避する『今』も終わった。

 悪道に酔いしれる『今』も終わった。

 ありきたりな人生を辿る『今』など決して始まらない。

 逃げ回る人生を繰り返す『今』さえ、最期までは続かない。

 

 ならば。

 

『”おまえ 男 好き ?!”』

 

「いや、そっちもイケるけど。

 そっちだけが理由じゃないから。女の子もイケるからね?

 ・・・・・・このパターン、何度目だっけ??」

 

 隣人としてあろうか。友としてあろうか。

 なんなら侍ってしまおうか、いっそ寝てしまおうか。

 少なくとも同僚はご勘弁、知ってる『今』を繰り返すほど酔狂じゃない。

 

 

 

 せめて、ゆるやかに。安らかに抗い続ける『(ユメ)』を。

 

 

 

 

 

『”この 私 知らない 説明 責任 果たせ ┐(´д`)┌ヤレヤレ ”』

 

「だから、ごめんって・・・・・・もう使いこなしたの? 相変わらずだね?」




 原作の蝙蝠って表現、吸血鬼のことを考えるとややこしいよね。
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