ポケットモンスターThunder/Sound 作:keruru
ポケモンの二次なのにまだバトルの描写がありません。ゆっくりのんびり行かせてもらいます。
ドゾー( 。・∀・。)っ
〜side上鳴
言い争うこと実に30分弱、既に陽も暮れかけ、薄暗い市場の中で開いている店はこの店の他にはない。
「だからこの石は俺が先に狙ってたんだって!」
「そんなことはない、この石は僕が先に狙っていたよ」
「だってこのおっちゃんは俺がここを立ち去ろうとした瞬間にこの石を出してきたんだぜ?絶対俺に売ろうとしてたじゃねーか!」
「いや、この店主は僕がこの店に立ち寄った瞬間にこの石を差し出してきたんだ。あれは僕に向けて売ろうとしていたね。」
(…こいつ絶対に譲る気ねぇな……はたから見たら8歳かそこらの健気な少年と18歳の青年の喧嘩だぞ?普通譲るだろうが!それでも立派なポケモントレーナーかお前は?!)
「だからこの石は俺のだって!!」
「いや、この石は僕のだ」
「俺のだ!!」
「僕のだ」
「俺だ!!」
「僕だ」
***
こんな調子で30分である。
(黙って静かに見守ってたおっちゃんもめっちゃ欠伸してるし……というかさっきから体が左右に揺れてるような…普通に寝てないか?このおっちゃん。万引きしてもバレねぇぞこれ。)
一向に埒があかない口論に先に痺れを切らしたのは上鳴。先に言い争いを止めてしまうのは何かと負けな気がしたが、このままでは今晩のカレーどころか夕飯すらまともに食べられるか分からない。上鳴は頭の中で食欲とプライドを天秤に掛けた結果、天秤は食欲に傾いた。
「もういい!この石はお前に譲る!!」
上鳴の急な譲歩に、ダイゴの表情は一気に明るくなる。
「本当かい?!ありがとう!この恩は忘れないよ!」
少年のような純真無垢な笑みを顔に浮かべて、ダイゴは高らかに感謝の意を述べてくる。
(調子のいい事言いやがって……こいつ中身本当に子供だな……………ん?ちょい待ち、今こいつなんて言った…?)
ーーこの恩は忘れないよ!ーー
「…………これだァァァアアーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
突如、上鳴の頭に閃光が走った。
***
「……なるほど。で、この石を譲ってくれる代わりに僕に一緒に旅をして欲しいと……まったく…よく考えたね………」
翌日、ミシロのはずれに来て欲しいとダイゴに頼んだ上鳴は、また同じように耳郎にも同じ場所に来るように言った。
「え…?この人がダイゴさん……?あの…?新聞とかに載ってるダイゴさん……?なんで?……なんで上鳴がそんなに仲睦まじく喋ってんの?……え?……え?!……もうなんか色々と脳の容量が上限越えそうなんだけど……」
上鳴の提案を受けたダイゴは上手くやられたとでも言うように、腕を組んで考え込んでいる。耳郎は耳郎でパニックなようだ。口をパクパクさせ、言葉が上手く続いていない。普段のクールな彼女からは想像出来ないレアな様子である。
(やっぱり敬語なんだな耳郎。まぁ今大注目のエリートトレーナーだし。それもそうか……尤も俺は昨日の一件で敬意なんて一瞬で無くなったけど。)
なんてことを考えていると案の定耳郎が突っ込んできた。
「ちょっと上鳴!あんた年上に敬語も使えないの?ダイゴさんに失礼でしょ?」
「悪いが俺は10歳も年下の少年に石の1つや2つも譲れないような奴は敬意なんて持つ必要は無いと思ってる。」
「は?石……?あんた本当に昨日一体何があったの?」
「実は昨日かくかくしかじかでな……………」
俺は昨日のダイゴとのいきさつを耳郎に話した。
「……なるほど、昨日そんなことがあったの。まぁ上鳴の言ってる事も分からなくは無いけどダイゴさんは無類の石好きとして有名なのよ?まさかそんな事も知らなかったの?!そこは普通あんたが譲るでしょ………」
「もちろん石好きってのは知ってたけど……んな事言ったってあの石は…………」
そこまで言って上鳴は言葉を止めた。恐らくダイゴに譲ったあの石はメガストーンで間違いないだろう。それも前世の記憶が確かならばあれはメタグロスナイト。メタグロスを相棒とするダイゴには絶対に渡したくない代物だったが、こうなってしまった以上仕方がない。確かに自身がダイゴと対戦する際にはこれ以上ない脅威となるだろうが、こちらの実力がそれを超えればれば済む話だ。対策は後からでも何とかなるだろう。
それよりも問題は、ここで自身がメガストーンのことについて触れてしまえば何故田舎の少年が世間に広まってもないそんな激レア情報を知っているのか耳郎に疑念を抱かれてしまうということ。耳郎が前世のことを覚えてないだけに、転生云々の言い訳は出来るはずがない。ここで全て話してしまってもいいのかも知れないが、現世の生活はこれはこれで新しい出会いもありとても充実しているため、わざわざ現状をぐらつかせてまで耳郎に事実を告げるのは意味が無いと上鳴には思えたからだ。それにそもそもそんなことを話しても信じてもらえずに自身の信頼すら失うかもしれない。そういった諸々を考慮すると今真実を告げるのはリスクが高すぎる。
(いつかは言わなきゃ行けないのかも知れないが……タイミングは今じゃない。)
「あの石が………どうかしたの?」
いつの間にか考え込んでいたようだ。自身の顔を覗き込みながら耳郎が少し心配そうに尋ねてきた。
「いや、なんでもないよ。ただ珍しい模様だったから気になっただけ。」
「……そう。上鳴にしては珍しいね。そんなに強情になるなんて」
「ただの気まぐれだ。それよりダイゴさんに答えを聞きに行こうぜ。NOなんて選択肢はねぇけどな」
耳郎の疑問を上鳴は適当にはぐらかすと、少し離れたところでまだ腕を組んで考え込むダイゴの所へ行くよう提案した。
「という訳で、僕らを一緒に旅に連れて行ってくれませんか?」
半ば勝ちを確信しながら笑みを浮かべ、ダイゴに問う上鳴の姿はどこか余裕が感じられる。
「私からも、お願いします!」
上鳴の横で耳郎も頭を下げてお願いする。2人はそのままダイゴの答えを待った。
「分かったよ。一緒に行こう」
その言葉を聞いた瞬間に上鳴と耳郎はお互いに顔を合わせ、歓喜の表情に満ち溢れる。
しかし、そんな2人の視線を遮るようにダイゴが話し出す。
「………ただし、こちらからも一つだけ条件がある。」
ダイゴの突然の言葉に安堵と喜びに浸っていた2人は途端に不安の表情を浮かべ、上鳴が反発する。
「なんでだよ!あの石なら譲ったじゃねぇかよ!!」
突然のことにダイゴに対する非難の声を上げる上鳴。しかし、上鳴の反論に対して落ち着いた、妙に説得力のある声でダイゴもまた話し出す。
「君たちも知っているかもしれないが、僕は先日8つのバッジを集め終わって来月にはリーグ戦を控えている。本当のところは今すぐにでも帰ってパーティの調整をしなくちゃ行けないところなんだ。今回ミシロに来たのは息抜きのつもりでね、正直君たちに出会ったのは予想外だったよ……そこでだ。こういうのはどうだろう?」
ダイゴは咳払いを1つはさみ、その提案とやらを説明しだした。
「君たちの旅の出発はあと半年くらい後だろう?その頃には今年のチャンピオン防衛戦まで終わってしまっている………これは青年の戯言と受け取ってもらっても構わないが、僕は必ず今年のうちにチャンピオンの座を奪い取ってみせる。必ずだ。そうすれば次の1年か2年そこらは時間に余裕ができる。その期間に一緒に旅に出ようじゃないか。…………そしてここからが条件だ。その旅の中で僕は君達にポケモンに対する知識やポケモンバトルの戦法、勝ち方を教えよう。ただし、その代わりと言っちゃあ何だが、君達からも僕に何か示してはくれないか?なんでもいい。ただひたすらに斬新で、新しく、とってもワクワクするような何かをね。」
上鳴と耳郎はダイゴの提案を黙って聞いている。否、何も言えずにと表現した方が良いだろうか。こんなにもあっさりと最強の座を奪い取ってみせると言い切るその圧倒的自信と存在感に2人は完全に圧倒されていた。上鳴に至ってはポケモントレーナーとして限りなく究極に近い域に達しようとするダイゴに対して、純粋な敬意を抱いていたことすら気づいていなかったかもしれない。
そして更にダイゴはつづける。
「そしてその何かを
……試されている。まだ人生経験の少ない上鳴と耳郎にもそれだけは分かった。きっとここで見込みなしと判断されてしまってはもう一生ダイゴと会うことなんて出来ないだろうとも思った。理由はない。ただの直感だ。
上鳴と耳郎は考える間もなく同時に言葉を発した。
「やる」
「やらせてください」
その言葉を聞いたダイゴは満足そうに頷き、そして聞き返す。
「そう来ると思ってたよ。一体何で示してくれるんだい?」
上鳴と耳郎は無言で視線を合わせ、軽く笑顔を含んで頷く。
ポケモントレーナーであるならば、己を語れる手段は1つだろう。
2人は、ダイゴを指さし高々と宣言した。
「ポケモンバトルだ!!」
「ポケモンバトルで!!」
今回ちょこっと色んなフラグを入れてみました。回収するかは気分次第ですが。
次回、バトル予定。お楽しみに