ポケットモンスターThunder/Sound   作:keruru

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ついにバトルシーンです!


今回ポケモンを知らない方にはちょっと難しい表現があるかもしれないです。ちょくちょく調べながら読んでもらうことをオススメします

ドゾー( 。・∀・。)っ




覚悟の雷音

〜side上鳴

 

 

 

 

空に向かって吸い込まれていくように上昇していくコインを眺めながら、ボールを握った右手に意識を集中させる。

 

 

 

太陽の光を反射して煌めくコインを眩しげに見つめること2秒弱、上昇したコインは物理法則に逆らえず、重力を受けて回転しながら落下する。まるで動画の巻き戻しのように同じ軌跡を辿ったコインはみるみる地面に接近していきーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィィィィンン!!!!!!!

 

 

甲高い音が鼓膜に届いたその刹那、宙を舞うコインを切り裂くように、三者は同時にボールを投げる。

 

 

「行け!イナズマ!!!」

「行って!ツクヨミ!!!」

「行こうか。グリム」

 

 

そう言ってそれぞれが繰り出したポケモンはーー

 

モココ

キルリア

ギギアル

 

以上の三体がフィールド上に対峙した。

 

 

「上鳴、あんたイナズマ進化させてたんだね」

 

「そりゃあな。耳郎だって進化してんじゃん」

 

「半年でだいぶ成長したわよ。ツクヨミ!"めいそう"!」

 

「そりゃあ楽しみだ!!イナズマ!()()()いこう!まずは"じゅうでん"!」

 

 

そう。2人は旅に出ると決めたその日から、同時に修行を開始していた。その内容は別々であり、お互いに何をやっているのかは知らない。2人にとって、このバトルがお互いの実力を目の当たりにする初めてのバトルだった。

 

 

 

 

 

 

〜sideダイゴ

 

 

2人の会話と指示を聞き流しながら、それと同時にギギアルに指示を出す。このギギアルは捕まえたばかりでろくに育成もしていないが、2人を相手する分には申し分ないだろう。

 

 

(へぇ……開幕から突っ込まずにまずは積んで来るか…)

 

「相手方はなかなかやるようだね。グリム!こちらも行こうか!"ボディパージ"!!」

 

 

上鳴と耳郎の指示に軽く感心しつつ、ならばこちらもと積み技を指示。

 

 

「モコ!!」

 

 

「キル!!」

「ギギー!!」

 

 

三者の指示がほとんど同時に飛び、()()()()()()()、それに続く形でツクヨミとギギアルが動き出す。

 

 

 

その状況を見て疑問を持つ人物が1人。それを見てしてやったりとほくそ笑む人物が1人。ダイゴと上鳴である。

 

 

(………ギギアルは50、モココは45と純粋なすばやさ種族値はグリム(こちら)の方が上、レベルもほとんど差は無い……にも関わらずイナズマ(向こう)の方が先に動いた………一体どんなマジックを使ったんだ?)

 

(……よし。まずはいい感じに先手が取れたな。これで少しでも圧を掛けて行けたらいいが……せっかく上回ってたすばやさが"ボディパージ"で逆転されちまった。"わたほうし"で対応していくか?………いや、あのスピードじゃ躱されて終わりだな。となれば…………)

 

 

まずは1つ、と上鳴は勝利へのプロセスを組み立て、相手の行動を観察しながら次の指示を考えてはイナズマに、時には耳郎に伝えながらと、バトルを展開していくーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ここで少々複雑な説明を1つ。

 

ダイゴが不審に感じた‘‘マジック’’に関してであり、上鳴の言う‘‘勝算’’の1つ目……つまりは

 

 

『努力値という概念』

 

 

について。

 

 

 

分かる人には分かると思うが、実機で実装されていた隠れステータス。ノーヒントのプレイではまず気づくことすらなかったあの『努力値』である。

 

上鳴はこの半年、この現世がどれだけ()()()沿()()()()()()()を文献、実証などで調べてきた。

 

その結果分かったのが、

 

 

・『種族値』は一般的に認知されている

・『個体値』は存在自体は立証されているが、実機のジャッジのような人物がいるかどうかは定かではないためVか否かの判断は出来ない

 

ということ。

これに加えて、ダイゴとの石の一件でメガストーン、ひいてはメガシンカの存在が明らかになった。

 

 

つまり、この現世で『努力値』を知っているのは上鳴だけ。今回上鳴は、努力値の存在(それ)を教えることを引き換えにすれば、ダイゴは旅に同行してくれると考えたのだ。ちなみに上鳴は、努力値に気づいているのが自身だけだと知った時「っっしゃぁぁぁああああ!!!俺最強!!俺頂点!!勝ち組決定ーーーーー!!!!」と狂喜しまくったものだが、現実はそんなに甘くはなかった。これだけ聞くと結構なチートに聞こえるが、実際はそうでもないのだ。

その理由は単純で、この世界でポケモンは()()()()()から。データではなく、実際に。そうなれば実機のような、数値だけでは測れないものが存在する。例えばそれはポケモンとトレーナーの絆や友情、モチベーションなどであり、それらによってバトルのパフォーマンスが大きく変わることもまた上鳴はこの世界に来て知った。

 

 

 

追い込まれた時、数値的には不可能なはずの火力が出る。

 

普通ならば絶対に耐えることの無い攻撃を耐えきる。

 

すばやさが負けているはずの相手に対して先手がとれる。

 

 

 

これらがその代表格であり、人で言うところの‘‘根性’’や‘‘気合い’’といったものだろう。それらを上鳴はこの半年の間、幾度ものバトルの中で経験してきた。ーーこれは勝ったな。と思って放ったトドメの一撃を耐えられ逆転負けしたこともあった。

逆にーーもうダメだ。と思っても諦めなかった時、相手の攻撃を耐え凌ぎ逆転勝ちしたこともあった。

 

 

確かに数値は大切な要素だ。こうげきの数値が高ければ実際に火力は上がり、すばやさの数値が高ければ基本のスピードは上がる。だがそれはあくまで要素の1つでしかなく、実機のように次の手をじっくり考える時間もなければ、機械的な確率に結果を左右されることもないのだ。トレーナーの指示1つ、ポケモンの思動1つで勝敗なんて簡単にひっくり返る。

そうやって諦めない限り、最後まで何が起きるか分からないのがこの世界のポケモンバトルであり

ーー実機との最大の差異なのだ。僅かな迷いが敗北へと繋がり、一瞬の閃きが勝利を引き寄せる。相手の思考を完璧に読み切り、己の思考を悟らせない。まさにトレーナー同士の究極の思考が重なり合う、至高のクロスゲーム。

 

 

ーー何が起きても不思議じゃないーー

 

 

だからこそ楽しく、人々は抜け出せなくなってしまうのだ。ポケモンバトルという競技に。

 

 

 

 

 

そして今、ここで繰り広げられているバトルもそれと同じく、三者が互いにしのぎを削りながら熱いバトルに熱中していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バトルは中盤に差し掛かり、互いに削り合ったポケモン達の体力は、大体半分程度になろうかと言ったところであった。

 

 

「イナズマ!"でんげきは"!!」

「必中技か…グリム!"チャージビーム"で相殺!!」

 

イナズマが放った電撃はギギアルに向かってホーミングして行くが、すんでのところでギギアルも同じく電撃を出してダメージを0に抑える。

 

「グリム!そのまま押し切れ!!」

 

イナズマの"でんげきは"と打ち消し合うかと思われたギギアルの電撃はさらに威力を増して"でんげきは"をかき消し、イナズマに向かって放たれる。

 

「……っ!ツクヨミ!!"ねんりき"で逸らして!!」

 

ギギアルへの追撃を狙っていた耳郎だが、予想外の逆襲にとっさに指示を切り替える。耳郎の指示した通り、ツクヨミはイナズマに向かっていた電撃の進路を遥か上空にねじ曲げた。

 

 

「サンキュ耳郎。助かったぜ」

「甘っちょろい攻撃してんじゃないわよ。次は無いからね。」

「はは、厳しいな。……ただ今のを見るに"チャージビーム"でとくこうを上げられたな……これは長引くだけジリ貧だぞ」

「分かってるよ。とは言ってもどうすれば……」

 

 

(まずい……流石はエリートトレーナー。技のチョイスもタイミングも中々にエグい。これで向こうはすばやさ2段階、とくこう1段階上昇…このままズルズル続けても負けは濃厚か……少し早いが切り札を切らざるを得ないな)

 

 

 

「イナズマ!!()()やるぞ!」

「モコ!!」

 

 

上鳴の指示を受けたイナズマは、待ってましたと言わんばかりに力強く頷き、初手と同じく体中に電気を纏わせていく。

 

 

(あれは一手目と同じ"じゅうでん"か……?にしては電気量が先程とは段違い……………っ!まさか?!)

 

ダイゴが直ぐに勘づくが、その頃にはイナズマの動作は完了していた。

 

 

「いくぞイナズマ!……"過剰充電(オーバーチャージ)"!!!」

 

 

上鳴は、この半年間でバトルを積み重ねていく中で、実機には存在しなかった技を使うトレーナーやポケモンがいることを発見した。…厳密には実機の技を進化させたり複合したりしたものなのだが、それをこの世界では『特技』と呼んでいた。

 

"じゅうでん"を何度も何度も繰り返し、熟練度を上げ体の蓄電許容量を底上げすることで習得したのがこの"過剰充電(オーバーチャージ)"であり、イナズマの特技。

 

 

全身に電気を迸らせながら、眼前の敵を真っ直ぐに睨むイナズマの片手には、自身から流れ出る電気を利用して帯電させた石ころが握りしめられている。

 

イナズマはその石をギギアルの遥か上空に向かって投げる。投擲された石は綺麗な放物線を描き、電気を帯びたままイナズマとギギアルを結んだ延長上に落下する。

 

 

(……なるほど。そういう事か……)

 

上鳴の意図をいち早く察したダイゴは、ギギアルに防御体制に入るよう指示を出す。

 

 

(…バレたようだが関係ねぇ!!このまま押し切る!!)

 

「イナズマ!!"ほうでん"!!!」

 

 

イナズマは全身に纏った電気を全て電撃に変え、ありったけの力で四方八方に撒き散らす。

 

 

ーー"ほうでん"という技は本来、一対多数の状況で使うのが好ましいとされる。その理由は電撃をあらゆる方向に放つことが出来るからであり、敵に囲まれた時は得策となり得る。しかし単純な電気量は"ほうでん"の方が多いものの、1対1の状況では電撃に指向性があり威力が高い"10まんボルト"のほうが重宝される。

 

そこで上鳴は考えた。"ほうでん"の電撃を全部相手にぶつけりゃ良くね?と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「貫けイナズマ!!"コイルガン"!!!」

「モコーーー!!!!」

 

イナズマが放った電撃は全て、見えない何かに導かれるように収束し、巨大な電撃となってギギアルに向かって一直線に飛んでいく。

 

 

(やはりか……!恐らくこの技のタネはあの電気を帯びた石……放った電撃をあの石で引きつけることによって指向性を生み出している。……防御は間に合わないか)

 

 

ダイゴはいち早く仕掛けを見破ると、防御が間に合わないことを悟り防御体制に入りかけていたギギアルに別の指示を出す。

 

 

「かき消せグリム!"ラスターカノン"!!」

「ギギーーーー!!!」

 

 

イナズマから放たれた巨大な電撃とギギアルが放った銀色に輝く光線がぶつかり合い、規格外の爆発を起こす。

 

 

「……っ!!」

「見えねぇ…っ!」

「………」

 

爆発の余波で巻き上げられた土煙が辺り一面を覆い隠して3人の視界を奪う。

 

 

「グリム!!歯車の回転で全て吹き飛ばせ!!」

「ギギ!」

 

そんな中ダイゴの指示が飛び、ギギアルの高速回転によって起きた突風が土煙を全て薙ぎ払う。

 

視界が晴れたその先にはーー

 

「……イナズマ!!」

 

 

大技の反動と爆発のダメージで動けなくなっているイナズマが苦しげな表情で立ち上がろうとしていた。

 

一方のギギアルは、ダメージを受けつつも平然と構えている。

 

 

(マジかよ……!あんだけの爆発だってのに怯みすらしないのか?!)

 

 

その状況を見て不味いと感じた耳郎が、いち早くツクヨミに指示を出す。

 

「ツクヨミ!!チャームボイス!!」

「キル!!!」

 

ツクヨミは鳴き声にも似た音波をギギアルに向かって放つ。

 

 

「……甘い。躱せグリム!!これでキルリア(片方)を落とすぞ!"ミラーショット"!!」

 

ギギアルは自身に向かってくる音波を横移動で悠々と躱し、そのままツクヨミに向かって真っ直ぐな光線を放つ。

 

 

(………っ!!どうする?回避?相殺?……いや、どちらも今のあたしとツクヨミじゃあ

力不足……………………………………っ!!)

 

 

耳郎は今の自身とツクヨミの力ではこの攻撃を凌ぐことは出来ないと判断しーーある決断をする。

 

 

(……ダイゴさんと上鳴がやり合っている時にあたしは何もツクヨミに指示を出せなかった。さっき攻撃を躱されたのも結局はあたしの力不足……情けない話だけど、今ここで仮にこの攻撃を耐えてもきっと上鳴の足を引っ張るだけだ)

 

 

「…っ!おい耳郎!!何やってん……」

 

 

必死の形相で自身の心配をしてくれる上鳴に軽く微笑み、口の形だけで言葉を伝える。

 

 

 

ーーー ま か せ た ーーー

 

 

 

それだけ伝えるとフィールドに視線を戻し、ツクヨミに最後の指示を出す。

 

「ツクヨミ!!頑張って!イナズマに"いやしのはどう"!!!」

「キルーーーー!!!!」

 

 

ツクヨミがイナズマに淡い光を放った瞬間、無慈悲にも迫った光線がツクヨミの体を吹き飛ばす。

 

回転しながらフィールドを転がったツクヨミは、目を回して倒れ込む。

 

「……っ!!ツクヨミ!!!」

 

耳郎がツクヨミに駆け寄り、その体を抱きしめる。

 

「お疲れ様。ツクヨミ………ごめんね……………」

 

上鳴の位置からはツクヨミを抱えて俯く耳郎の表情は分からなかったが、その体が小刻みに震えていたのは視認できた。

 

「………」

 

上鳴は無言でフィールドに意識を戻し、光に包まれたイナズマの傷や体力が回復して行くのを確認する。

 

 

フィールドに残ったのは言わずもがな、ギギアルとイナズマ。

 

 

(サンキューな耳郎…後は任せてくれ)

 

心の中で耳郎に感謝を述べると、頭を切り替えてバトルの現状を把握する。

 

 

(さっきまでは数の利でなんとかなってたが…こうして1対1になるとまともにやり合っても勝ち目はほぼ0と見ていい………追い込まれたな……)

 

 

「…………」

 

ダイゴは何も言わずにこちらに目を向けている。

こちらの出方を伺っているのか、はたまた策を練っているのか。

 

 

(……どちらにせよ下手に突っ込めば負けは確実。いくら体力的に有利といえども、この程度すぐにひっくり返されてしまうだろうな…かと言っても切り札はほとんど見せている…………………いや、まだ1つ…使う気はなかったが……賭けてみるか……あれに……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この半年、ずっと試してきた。

 

 

 

 

 

自身が強くなるためには、()()は不可欠なものだと知っていたから。

 

 

 

 

 

可能性はあった。ただ1度も成功しなかった。

 

 

 

 

 

やろうとする度に耳郎の恐怖に満ちた顔が蘇ってきて、それが自分の無力さを象徴するトラウマになっていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上鳴は思い出すー

 

 

 

 

「まかせた」と自身に微笑みの中で伝えてきた耳郎の顔をーー

 

 

 

 

前世で死ぬ間際に垣間見えた、絶望に満ちた耳郎の顔をーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ、ダメだなこんなんじゃ」

 

 

気がつくと笑っていた。

 

 

「何が守るだ。この程度の(トラウマ)も壊せないくらいで最強を目指すだなんて良く言えたもんだな」

 

 

敢えて自嘲し、己を鼓舞する。

 

 

「……イナズマ、行けるか?」

 

 

耳郎を守る(最強になる)ため、上鳴は覚悟を決めた。

 

上鳴の意図を察し、一瞬躊躇いの表情を見せたイナズマだったが、覚悟を決めた上鳴(トレーナー)の気持ちに答えるべく、イナズマもまた覚悟を決める。

 

 

 

「……面白い。君は何を見せてくれるんだい?」

 

ダイゴも目を見開き、不敵に笑いながら上鳴を真っ直ぐ睨む。

 

 

 

 

 

 

「……これが正真正銘最後の切り札」

 

上鳴は右手を開き、そのまま前に突き出す。

 

「…っ来い!!イナズマァァァアア!!!!!」

「モコーーーー!!!!!!」

 

 

イナズマは雄叫びと共に電撃を放つ。

その電撃が向かった先はギギアルーーーではなく、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上鳴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回、上鳴覚醒です。

感想や評価が貰えると嬉しいです。


ではまた次の話で!!

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