起きたらマ(略)外伝?   作:Reppu

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お盆だから帰ってきました。


SSS36:整備士の述懐

「フラットな視点で見れば、シャア少佐はマ大佐に技量的に劣っていたとは言い難いですね」

 

そう私に話してくれたのは、以前軍で整備士を務めていた男性だった。彼は数奇な縁からあの大戦末期に起きた青年将校の反乱部隊、それもその総帥であるシャア・アズナブルの機付整備員をしていたのだという。

 

「機密文書の開示であの一件。ええ、そうです。テキサスコロニーの戦闘が広まった事で随分と評価が下がったのは知っています。事実2対1で双方大破、シャア少佐はKIAになった訳ですし確かに戦闘では負けたのでしょう。ですがその一事を以て全てを決めてしまうのは違うのではないでしょうか?」

 

そう言うと彼は手にしたマグカップを傾け、その中身を口へと含んだ。

 

「こんな事を言うと、お前はネオジオニストか!なんて言われてしまうのですけどね」

 

自嘲気味に笑いつつも、彼の目には確かな信念が宿っていた。

 

「確かに彼は思想的に危険な人物で、大罪を犯した人間です。けれど少なくとも部隊の上官としては良い人でした。…だからこそ、あれだけの人間がついて行った」

 

小さく溜息を吐くと、彼はカップを置いて表情を作り直す。そして明るい声音で言葉を続けた。

 

「話が逸れました。ええと、そう、彼の実力があの一戦では評価しきれない、という話でしたね。では何故私がそう思うのかと言えば、私が彼のMSを整備していたからです」

 

彼の発言に私は眉を顰める。それを見て彼は自分の発言が誤って伝わった事を理解したらしい。

 

「ああ、誓って言いますが、私の腕が問題だった。という事ではありません。極端な話、全てが絡み合った結果とでも言うべきですね」

 

「どう言う事でしょうか?」

 

「テキサスコロニーでの戦闘の前に、ネオジオンがソロモンへ攻撃を仕掛けたのはご存知ですか?」

 

その言葉に私は小さく頷く。ペズンで蜂起した彼等は瞬く間にルナツーを攻略すると同時に、継続的な物資確保を目的としてソロモン攻略を行ったのは開示された資料で確認出来た。尤もその作戦は読み切られており、迎撃を受けるどころか危うく艦隊を喪失しかける程の危機的状況に陥ったのだが。

 

「あの時ルナツーへの進軍を偽装していた艦隊に退路を断たれかけたネオジオンは、率直に言ってあそこで終わっていたんです。ですがそうならなかったのはシャア少佐のおかげでした」

 

「ソロモンの最悪の一日、ですか」

 

私の言葉に彼は頷きつつ、説明を続ける。

 

「アリソン少佐が殿を申し出たんですが、それに対してシャア少佐は笑いながらこう言ったんです。いや、私が行く、と。まあ実際はニュータイプ部隊のエースと二人でだったんですが」

 

たった2機のMS。だがその2機が生み出した被害は甚大だった。死者こそ少なかったが、エンジンの破壊や四肢を喪失し行動不能になる艦艇やMSが続出。それこそソロモンに於ける戦闘で発生した被害の半分近くがこの2機によって引き起こされたと言うのだから、正に最悪の一日に相応しい戦果だろう。

 

「あの戦闘でシャア少佐は敢えて損傷機を増やす戦いをしました。撃墜してしまった方が追撃が迅速に、かつ苛烈になるという打算によるものでしたが。逆に言えば僅かな時間を増やすために難易度の高い方法を選択出来たのは、彼の技量があっての事でした」

 

その事実に私は素直に頷かざるを得なかった。彼の言う通り、どちらが難しいかなど考えるまでもないからだ。

 

「解りますよ、マ大佐もシミュレーションで同じ様な事はしています。だから、これだけでは優劣の判断には物足りない。そして何度も言いますが、テキサスコロニーの一件。同じ事が出来るなら、直接戦って勝った方が優秀だとしたくなるのは無理もありません。ですがここにMSの差が加わればどうでしょうか?」

 

「MSの差?」

 

成る程確かにテキサスコロニーにおける戦闘で彼等が使用した機体は別のものだ。だがどちらも専用機であったし、それには同道したニュータイプ部隊のエースも含まれる。ならば条件はそこまで不公平とは言い難いのではないだろうか?考えが顔に出たのか、私を見て彼は我が意を得たりと口を開く。

 

「そこで、私が知っている情報です。ソロモンにおける戦闘を突破しましたが、残念ながらそれは余裕綽々と言う訳ではありませんでした。特にシャア少佐のゲルググは酷使されていて、オーバーホール寸前という有様だったんです」

 

「ちょっと待って下さい」

 

彼の言葉に思わず私は口を挟む。テキサスコロニーの戦闘は幾つか映像も開示されていて、その中には確かにパーソナルカラーに塗られた赤いゲルググが映っていたからだ。だが、そんな私の言葉に彼は頭を振る。

 

「あの時少佐が乗っていたのはS型と呼ばれるエース向けの性能向上モデルでした。それを更に専用にチューニングしていましたから、一般的な機体を比べると平均で凡そ30%、加速性能だけなら40%以上の差があったんです。ですが、それが仇となりました」

 

S型は性能と整備・生産性をトレードオフした機体だったのだと彼は言った。

 

「ある程度の交換部品は用意されていましたが、先程言ったとおりあの時の機体は工場送りにするような状態だったんです。当然そんなものに乗らせる訳にはいきませんから、艦にあったA型を急遽塗装したのがテキサスコロニーの機体です」

 

「つまりあの機体は…」

 

「見てくれだけ専用機に仕立てた、ただの量産機ですよ。ブレードアンテナもダミーだったくらいです。エースの機体も損傷は少なかったんですが、武装のいくつかは機能不全を起こしていました。真面に使えたのは多分ビームライフルとサーベルくらいだったんじゃないかな?」

 

唐突に齎された情報に私は思わず手が震えた。それが本当ならば、あの一戦の評価は大きく変わると確信したからだ。

 

「OSの方も下手に弄れないって事で、本当にあの機体はただの色違いだったんです。対してマ大佐が乗っていたのは、今日までその存在が秘匿されていた超の付く高性能機。機体性能が戦闘における全てだとは言いませんが、決して見逃せない要素である事も確かでしょう」

 

彼はテーブルに置かれたカップを見つめながら、言葉を続ける。

 

「だから、ほんの少しだけ思うのです。もしあの時少佐が万全の機体に乗っていれば、もしかしたら結果は変わっていたかもしれない。なんて」

 

彼は苦笑しながらも、言葉を紡ぐ。

 

「尤も運も実力の内ですし、何より機体が使えないほどの状況に追い込まれたのは間違いなく少佐とマ大佐の実力差でしょう。つまり指揮官としてなら少佐は明らかに負けていたと言う事でしょう。ですがそれを踏まえた上で私はもう一度言います。少なくともパイロットとしての技量は、決して劣るものではなかったと」

 

そう言う彼の目は、何処か寂しげに揺れていたのだった。




作中に入れようと思っていたけど、尺の都合でカットした設定。
アムロとシャアが二人がかりでオリ主に負けるのは相当なデバフがあるに決まってるだろぉぉん!?(深夜テンション)
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