今日のアニメで登場したカードが出るぞ!
◇
『チーム曹操』――。
官渡の戦いにおいて、かつて最大の勢力を誇った『チーム袁紹』を打ち破り、今や大陸最強の戦力を持つチームだ。
覇王・曹孟徳を筆頭の実力は言わずもがな。夏侯姉妹、荀文若を始めとした決闘者の質も高く、末端に位置する決闘者であっても並のチームのリーダーに匹敵する程である。
その他にも、陳留や許昌を始めとした街を巡回する
こうした実力者が治める土地ということもあり、『チーム曹操』の元へ集う民は後を絶たない。『チーム劉備』や『チーム孫策』といったチームも善政を敷いているが、擁する決闘者の実力、治める土地の広大さ等の理由から、『チーム曹操』に軍配が上がっている。
だが、平和に思われた『チーム曹操』でとある事件が発生した。
◇
始まりは、至って平和な夕暮れ時である。
『チーム曹操』の本拠地のとある料理店。大陸でも5本の指に入ると評されるこの店では、毎日が大盛況で、閉店間際まで全ての席が埋まっている。
その日も、少女は1日中料理の腕を振るっていた。そして本日最後の客を送り出し、店内の掃除へと取り掛かる。
少女の名は典韋。真名を流琉という。
短く切り揃えられた薄緑色の髪の前側を青いリボンで結んでおり、調理をする上での配慮の他に、細かなオシャレも感じられる。袖無し・へそ出しの格好は活発そうな印象も与えるだろう。
だが注目すべき、いや、目を逸らすべきかもしれない。信じられないことに、彼女の履いているスパッツは後ろ、つまりお尻が半分近く見えてしまっている。前部分ももう少しで見えてしまいそうである。幼い少女とはいえ、女性に飢えた男性にとっては、非常に目の毒と言える扇情的な格好だ。
そんな前衛的で挑戦的な料理人・典韋。実は彼女、『チーム曹操』の決闘者であった。大陸最強のチームに所属する人間が、本来ならば料理店で働くようなことは無い。だが、彼女にはちょっとした事情があった。
料理店で働いていることからもわかるが、典韋は料理をすることが大好きである。デュエルの修行をする合間に、新作料理を模索し続ける程だ。そこで、月に1,2回ではあるがこうして領内の料理店の手伝いをしているのである。
「あれ? 何か落ちてる……」
店外の掃き掃除をするために外へ出た典韋は、扉の前に木箱が落ちているのを見つけ、拾い上げる。客の落とし物なのかもしれないと考え、とりあえず表面を確認する。しかしそこには何も描かれておらず、持ち主を特定できるような手掛かりはない。そのため、持ち主には悪いと思いつつ、木箱を開けてみる。
そこに収められていたのは――
◇
中天に浮かぶ満月が光り輝く真夜中の城内を、それに劣らぬ金色の髪を持つ少女が歩く。少女の名は曹操。真名を華琳という。名前からもわかるが、大陸最強のチーム、『チーム曹操』を纏めるリーダーである。
小柄な体躯、幾重にも巻かれた金髪、蒼く透き通る瞳、そして大胆に露出した肩と胸元。これだけならば可憐な少女に見えることだろう。だが、髪留めに使用しているドクロの飾りと右手に持つ大鎌の形をしたデュエルディスクがその印象を覆す。更に言えば、一歩踏み出す毎に滲み出る覇気が、彼女の実力の高さを証明していた。その姿、まさに絶対王者。
たどり着いた場所は練兵場。日々、『チーム曹操』の決闘者が腕を磨く場所であった。
曹操は、練兵場の中心に佇む、愛する部下へ声をかける。
「こんな時間に私を呼び出すなんて、どういうつもりかしら。流琉」
真夜中に練兵場に来る決闘者など滅多にいない。陽の光が無く、カードのテキストを読むのにも一苦労だからだ。だというのに曹操がこの場所を訪れたのは、数刻前に彼女の部屋に一通の手紙が届けられたためである。
差出人は典韋。内容は『大事な話があるから、深夜になったら1人で練兵場に来て欲しい』というものだった。
「私とデュエルしてください、華琳様」
「ほう……」
実力があまりにも高いことから、滅多にデュエルを挑まれない曹操。そんな彼女に、典韋は
己のデッキに曹操に勝てると考える程に自信があるということだろうか。彼女の瞳はいつになく輝く。
「余程自信があるようね。余程いいカードみたいね、『貴女が今日手にした「No.」』は」
「っ! なぜそれを……!?」
典韋の瞳が驚きで見開かれる。今日、料理店の外で「No.」を手にした彼女はそのカードをまだ誰にも見せていない。だというのに、なぜ持っていることを知っているのか。
「この曹孟徳を舐めないで貰いたいわね。手にしたばかりで影響は薄いようだけど、「No.」が放つ力は健在。
関羽のように遠く離れた「No.」を感知することはできなくとも、同じ城内にいれば私でも「No.」の気配を掴むことは出来る」
事も無げに言い放つ曹操。大陸最強のチームを率いるだけあって、その能力は計り知れない。
「ここ最近負け続きで悩んでいたことは知っている。そんな時に「No.」を拾ったことで、力を誇示するために私に挑んできた。どう、間違っているかしら?」
「……そこまで知っているのなら話は早いですね。確かに華琳様の言う通りです。私は弱い。昔は互角だった季衣にはもう全く敵わない。あの娘が「No.」を持っているから……。
でも、私は今日「No.」を手にしました。これがあれば私は強くなれる……! 華琳様を倒して、私の強さを証明してみせます!!」
「No.」がもたらす影響か、典韋の瞳は妖しく光り、そのフィールが昏くなっていく。手にしたばかりの「No.」でこれ程の闇のフィールを放つとは。典韋が抱えていた心の闇はそれほどまでに深いということか。
「いいでしょう。その偽りの自信、『覇王・曹孟徳』が打ち砕いてみせよう。人の真似をするのはあまり好きではないけれど、今はこの言葉が相応しい――」
――狩らせて貰うわよ、貴女の「No.」を!
その瞬間、曹操が放つフィールが典韋を圧倒した。あまりにも強烈なフィールに、一瞬意識が飛びそうになる。もしも「No.」を手にしていなければ、これだけで戦意を喪失していてもおかしくは無かっただろう。
「「デュエルディスク、セット!」」
2人は同時に叫び、その手に持ったデュエルディスクを空中へと放る。死神の鎌を思わせる曹操のデュエルディスクも空中で変形し、デュエルに適した形態となって曹操の左腕に収まる。典韋も重く巨大なデュエルディスクを構え、共に戦闘態勢は万全だ。
「「デュエル!!」」
◇
「先攻は私が貰う! 私は、魔法カード《おろかな埋葬》を発動! デッキから《トリック・デーモン》を墓地に送る!
更に、墓地に送られた《トリック・デーモン》の効果発動! デッキの「デーモン」カードを1枚手札に加える! 私が手札に加えるカードは《デーモンの騎兵》!」
《おろかな埋葬》は、デッキからあらゆるモンスターを墓地に送ることができる便利なカードだが、使用する時点で手札を1枚消費するため、使うに見合ったカードを墓地に送らなければ意味が無い。
だが、曹操が墓地に送ったモンスター《トリック・デーモン》の効果により、手札の損失を取り戻した。手札枚数で不利となる先攻プレイヤーにとって、手札を回復するカードは非常に有用なのである。
「そして、手札に加えた《デーモンの騎兵》を召喚!」
左手に槍を持つ幽鬼の兵が駆ける。下級モンスターとしては高めの1900という攻撃力を持ち、アタッカーとしては十分。このモンスターこそ、曹操のデッキの切り込み隊長。
「私はカードを1枚伏せ、ターンを終了するわ。さあ、貴女が手にしたという「No.」をさっさと見せてみなさい。完膚なきまでに叩き潰してあげるわ」
「わかりました。たとえ華琳様であろうとも、私の新たなデッキと「No.」で叩き潰してみせます! 私のターン、ドロー!」
主に向ける言葉とは思えない語気で話す典韋は、闇のフィールを徐々に広げながらデッキよりカードを抜き放つ。普段は相手をリスペクトするデュエルを行う彼女からは考えられない言動と動作である。しかもそれは主君に対しての発言。普通ならば処断されてもおかしくはない。
「まずは、《デビル・クラーケン》を召喚します!」
現れたのは、巨大なイカ。だが、その攻撃力は1200。見た目とは裏腹に随分と貧弱なモンスターである。
典韋は料理が大好きなだけあって、美味しそうなカードを集めた【クッキング流】と呼ばれるデッキを扱う。強力なデッキとは言えないが、普段見られないカードを用いて戦うその姿は、多くの決闘者を魅了してきた。
とはいえ、今の彼女の鬼気迫る表情を見て心を打たれる決闘者はどれだけいるのだろうか。
「続いて、ライフを1000ポイント支払うことで、魔法カード《
典韋 LP8000 → LP7000
《デビル・クラーケン》の頭に乗った戦士族モンスター《カルボナーラ戦士》。「カルボナーラ」とは「炭焼き」という意味であるが、どこからどう見ても戦士族のこのモンスターとの関連性は不明である。
「2体のモンスターの攻撃力は私のモンスターよりも低い。また、《簡易融合》で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。
だが、共にレベルは4。エクシーズ召喚をするつもりね」
「仰るとおりです! 私は、レベル4の《デビル・クラーケン》と《カルボナーラ戦士》でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
2体のモンスターは、それぞれ水色と茶色の球体となり、銀河の渦へと吸い込まれる。その渦は今、典韋の瞳を模したかの如く、妖しく光り輝く。
巻き起こる爆発の色は、全てを飲み込む黄金。
「現れよ、【クッキング流】の新たな力! 《No.50 ブラック・コーン号》!」
典韋が呼び出した「No.」――。
それは、トウモロコシのような船体を持つ巨大な帆船。中に浮かぶその大型「No.」は、練兵場の半分を埋め尽くす。
「来たわね、「No.」……!」
「いきますよ、華琳様! ブラック・コーン号の効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、このカードの攻撃力以下のモンスター1体を墓地に送り、1000ポイントのダメージを相手に与えます!
ブラック・コーン号の攻撃力は2100! よって、攻撃力1900の《デーモンの騎兵》を墓地に送ります!」
ブラック・コーン号の周囲を旋回していた光球が、先端に取り付けられた砲身に吸い込まれる。それは、騎兵を撃ち抜くための砲弾。
騎兵へと狙いを定めた帆船は、爆音と共に砲弾を発射した。
「甘い! その効果にチェーンして、私は罠カード《デストラクト・ポーション》を発動! 自分フィールドのモンスター1体を破壊し、その攻撃力分だけ私のライフを回復する!」
「っ!?」
砲弾が直撃する直前、曹操が発動した罠の効果により騎兵の身体が砕け散り、それにより生み出された闇が彼女に活力を与える。
曹操 LP8000 → LP9900
「更に、破壊され墓地に送られた《デーモンの騎兵》の効果発動! 私の墓地から騎兵以外の「デーモン」モンスターを特殊召喚する! この効果は『場合の任意効果』であるため、チェーン2以降に破壊されても発動可能!
私は、《トリック・デーモン》を守備表示で特殊召喚!」
騎兵と入れ替わるように、悪魔の奇術師が現れる。
《デーモンの騎兵》の効果は、破壊効果でのみ発揮される。それ以外の除去または戦闘破壊に備え、曹操は《デストラクト・ポーション》を伏せていたのである。
更に、特殊召喚した《トリック・デーモン》は、戦闘破壊またはカード効果で墓地に送られた場合に「デーモン」カードを手札に加える。
一切の隙もない完璧なコンボ。これこそが覇王のデュエル。
「くっ……。ブラック・コーン号はカード効果を発動したターン、攻撃が出来ません。私は、カードを3枚伏せて、ターンを終了します……」
悔しげな表情を露わにする典韋。だが曹操はその怨嗟の瞳を受けても怯まない。それどころかニヤリと口を歪ませていた。
「その「No.」は確かに強力なカード。だが、どれだけの力を手に入れても、決闘者が使いこなせないようでは意味が無い」
「……何が、言いたいのでしょうか」
「わからないなら教えてあげましょう。流琉、貴女は「No.」を手にしたことで相手をリスペクトするデュエルを捨ててしまった。本来の自分を失った決闘者を蹴散らすことなど、この曹孟徳にとっては児戯に等しい」
決闘者には、それぞれ特有のデュエルスタイルがある。
例えば『チーム劉備』の関羽ならば、《銀河眼の光子竜》を主軸とした、光属性のパワーデッキ。
例えば『チーム孫策』の孫策ならば、持ち前の勘の良さを活かし、カード名を指定するカードを駆使したトリッキーなデッキ。
例えば『チーム曹操』の典韋ならば、普段は誰も使わないカードを用いて対戦相手の油断を誘い、その隙を攻める【クッキング流】。あまり使われないカードで勝利を掴む彼女のスタイルは、味方も相手も魅了してきた。
だが、「No.」に支配された典韋からは、対戦相手を叩き潰そうという意思が前面に押し出され、普段のデュエルができていない。なるほど、確かにデュエルスタイルを変えたばかりの決闘者を倒すことは曹操にとって容易だろう。
「私のターン、ドロー! 私は、《カメンレオン》を召喚!」
曹操は、手札に加えたモンスターを即座に召喚した。
仮面を貼り付けたその爬虫類は、カメレオンと呼ばれる動物を元とした姿をしているだけあって、身体の色を夜闇と同化させ、姿が見えにくくなる。
「《カメンレオン》が召喚に成功した時、効果発動! 墓地から守備力0のモンスター《デーモンの騎兵》を、効果を無効にして守備表示で特殊召喚する!」
《カメンレオン》がその長い舌を目一杯伸ばすと、墓地に眠る《デーモンの騎兵》を釣り上げる。釣り上げられた騎兵は身体がべたついていて、少しだけ不服そうだ。
「《デーモンの騎兵》を《カメンレオン》で特殊召喚したということは……!」
「ふふ、気付いたようね。貴女が「No.」を出すというのなら、私も
私は、レベル4の《デーモンの騎兵》に、レベル4の《カメンレオン》をチューニング!」
曹操の命令を受け、2体のモンスターが上空へと浮かび上がり、まずは《デーモンの騎兵》が4つの光球へと姿を変え、一直線上に並ぶ。
「漆黒の闇を裂き天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ! 万物を
それを《カメンレオン》のレベル分、つまり4本の輪が囲み、強く発光する。
月明かりに照らされたフィールドが、太陽の光を浴びたかのように輝き、紅蓮の竜が現出した。
「蹂躙せよ、《琰魔竜 レッド・デーモン》!!」
巨大な翼を広げ、大地を踏みしめる悪魔竜。紅く燃え滾る瞳と身体を持つそのシンクロモンスターは、眼前の敵を睨め付け咆哮する。今すぐにでも踏み潰し、焼き尽くしてやりたいと叫んでいるかのようだった。
それも当然だ。レッド・デーモンは曹操のエースモンスターのうちの1体。覇王たる彼女のエースを務めるのだから、出るだけで威圧感を発することが出来てもおかしくはない。
現に、典韋の足がレッド・デーモンの威圧に押され、小さく震えている。
「《トリック・デーモン》を攻撃表示に変更し、レッド・デーモンの効果発動! 1ターンに1度、このカード以外の攻撃表示モンスターを破壊する!
さあ、レッド・デーモンよ! 弱者は全て焼き尽くせ!
レッド・デーモンから放たれる炎がフィールドを包み込む。典韋の「No.」だけではない、曹操のフィールドに存在する《トリック・デーモン》でさえも炎に巻き込まれ消えていく。
激しく燃え盛った炎が収まると、そこに立つのはレッド・デーモンのみ。悪魔竜の前では、自身以外に攻撃態勢を取るモンスターの存在は許されない。生き残るべき者は圧倒的な力を持つ己のみ。それは覇王たる曹操の生き様を体現している効果だといえる。
「私の「No.」が……!」
「呆ける暇など与えないわよ! ここで、《トリック・デーモン》の効果を再び発動! カード効果によって墓地に送られたため、デッキから「デーモン」カード、《デーモンの斧》を手札に加える!
更に、これをレッド・デーモンに装備して、攻撃力を1000ポイントアップさせる!」
《トリック・デーモン》を攻撃表示に変更したのは、カード効果で破壊し、その効果を発動するため。そもそも、レッド・デーモンは効果を発動したターン、自身以外が攻撃できなくなるので破壊することには何の問題もないのである。
また、レッド・デーモンの攻撃力は3000。《デーモンの斧》を装備することでその攻撃力は4000まで上昇する。ちょうど初期ライフの半分の数値だ。
「さあ行け、レッド・デーモン!
流琉に覇王の一撃を改めて叩き込んでやりなさい!
紅蓮の炎を纏った斧が典韋へと振り下ろされる。4000ポイントもの直接攻撃という莫大な戦闘ダメージが彼女を襲い、その衝撃が彼女達の立つ大地を激しく振動させた。
「ぐ、きゃああああ!?」
典韋 LP7000 → LP3000
「No.」により生み出された闇のフィールを持つ典韋であろうと、さすがにこの一撃には耐えられなかったか。
衝撃の余波をまともに受け、地面を何度も転がっていく。
「私はこれで、ターンエンドよ」
曹操にとって、デュエルとは強者が力を証明するための神聖な儀式。そのため、相手が「No.」の闇に囚われた部下であろうと容赦はしない。圧倒的な力によって捻じ伏せ、無理矢理にでも叩き起こすのである。
「……私はエンドフェイズに永続罠《神の恵み》を発動! このカードがある限り、私はカードをドローする度にライフを500ポイント回復します!」
ふらつきながらも立ち上がり、《神の恵み》を発動した典韋。その表情には狂気が宿っていた。
「No.」の支配が強くなってしまったということだろうか。
「そして私のターン! まずは《神の恵み》の効果発動です。ライフを500ポイント回復します!」
典韋 LP3000 → LP3500
「続いて、罠カード《活路への希望》を発動!
このカードは自分のライフが相手よりも1000ポイント以上低い時、ライフを1000ポイント支払うことで発動でき、お互いのライフ差2000ポイントにつき1枚カードをドローします!」
典韋 LP3500 → LP2500
「私達のライフ差は7400ポイント。つまり……!」
「そう、私は3枚のカードをドローします!」
典韋の手に、新たに3枚のカードが握られる。これで手札は5枚。
デュエルモンスターズにおいて、手札はライフよりも遥かに貴重だ。例え1ポイントしか残されていなくとも、手元にカードがあれば逆転へと繋げることができるからだ。
「そして、再び《神の恵み》の効果が発動!」
典韋 LP2500 → LP3000
「なるほどね。私がライフを回復し、かつ貴女に大ダメージを与えることを予測していたということか。少しはやるようね。お次はどんなカードを見せてくれるのかしら」
典韋が反撃の狼煙を上げつつあっても、曹操は焦らない。いや、そもそも彼女がデュエル中に焦ることなどあり得ない。
どれ程の強者、強力なモンスターが現れたとしても、それを叩き潰すことこそが覇王たる曹孟徳の歓びとなるからだ。
「私は、儀式魔法《高等儀式術》を発動します。手札からレベル6の儀式モンスター、《ハングリーバーガー》を選択し、そのレベル分デッキから通常モンスターを墓地に送ることで選択したモンスターを儀式召喚します。
墓地に送るモンスターは、3体の《きのこマン》!」
典韋のデッキから3体の《きのこマン》が墓地に送られる。その3体を生け贄、いや食材として現れるのは、きのこをこれでもかと言うほどに使用するハンバーガー。
「儀式召喚! 来て、《ハングリーバーガー》!!」
《ハングリーバーガー》というよりも、《きのこバーガー》とも言えるそのモンスターは、きのこの香ばしい匂いを漂わせながらその口を開け閉めする。
デュエルには関係ないが、近頃減量中の曹操はその匂いのせいで腹の虫が僅かに活性化してしまう。
「更に、魔法カード《トライワイトゾーン》を発動します。自分の墓地からレベル2以下の通常モンスターを3体特殊召喚します」
《高等儀式術》によって墓地に送られた3体の《きのこマン》が、地面を盛り上げニョキニョキと生えてくる。これで典韋のフィールドには3体のレベル2モンスターが揃った。
「ここで、永続罠《DNA移植手術》を発動します。属性を1つ宣言し、このカードがある限りフィールド上の全てのモンスターの属性は、宣言した種族になります。私は、『闇属性』を選択します!」
「へぇ、属性を『闇』に変更したということは、闇属性を指定するモンスターエクシーズということね」
「いきます! レベル2の《きのこマン》3体でオーバーレイ!!」
《きのこマン》達が紫色の球体へと姿を変え、銀河の渦へと吸い込まれて行く。ここまでは先程と同じ。だが――
「3体の闇属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚……!」
虚ろになった瞳。そして漆黒に染まっていくオーバーレイ・ネットワークが異様な雰囲気を醸し出す。
曹操は、これにより出現するモンスターエクシーズが典韋の本気なのだと直感で理解した。
「現れよ、死者の眠りを妨げる冒涜の化身。《No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》!!」
3本の腕のそれぞれから糸を伸ばす傀儡の鬼が、これまでの典韋からは考えられないような禍々しさを放つ。
徐々に深くなっていく闇のフィールも、「No.」を2体も手にしたからと考えれば納得がいく。
「2体目の「No.」ねぇ……。どんな能力を持っているのかしら」
だが、2体目の「No.」を目にしても、曹操は怯まない。むしろ、この「No.」をどのように屠り、自分のものにしようかと楽しみにしていた。
「ソウル・マリオネッターの効果発動です。1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、墓地の「No.」をこのカードに装備します!
そして、ソウル・マリオネッターが「No.」を装備している限り、このカードは破壊されません!」
ソウル・マリオネッターが墓地へと糸を垂らすと、船体をボロボロにしたブラック・コーン号が釣り上げられる。ソウル・マリオネッターはその上に乗り込むと、糸を張り巡らせて自身を支える。
役目を終えたはずのモンスターを無理矢理フィールドに呼び戻すその行為は、まさに死者への冒涜。
「更に私は魔法カード《強制転移》を発動!
互いのプレイヤーは自分フィールド上のモンスターを1体選択して、そのモンスターのコントロールを入れ替えます!」
「っ! コントロールを入れ替えるですって……!?」
相手に渡すモンスターを選べるとはいえ、曹操のフィールドに存在するモンスターは《琰魔竜 レッド・デーモン》のみ。彼女に選択の余地はない。
「私は、《ハングリーバーガー》を選択します。《琰魔竜 レッド・デーモン》は頂きますよ、華琳様!」
選択された2体のモンスターの足元がそれぞれ光り輝くと、瞬時にその場所が入れ替わる。曹操のエースである紅蓮の竜が、本来の主に牙を剥いたのだ。
「やってくれるじゃない、流琉。こうでなくては面白く無い……!」
「その余裕、いつまで保つでしょうか! レッド・デーモンで《ハングリーバーガー》を攻撃!
紅蓮の斧が、今度は曹操のフィールドのモンスターへと襲いかかる。きのこの香ばしい匂いを漂わせるハンバーガーは、炎に包まれ消し炭となる。
更に戦闘破壊による余波、つまり戦闘ダメージが曹操へと襲いかかる。
曹操 LP9900 → LP7900
「私のレッド・デーモンを奪い、ダメージを与えてくるとはね。そして貴女の場には攻撃力0の「No.」が1体。わざわざ攻撃表示で出したということは、何か考えがあるのでしょう。さあ、次の攻撃をしてみなさい」
「……さすが華琳様、よくお分かりです。ならばソウル・マリオネッターのもう1つの効果をお見せしましょう。
まずは速攻魔法《神秘の中華なべ》を発動! 自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動します。そのモンスターのフィールド上での攻撃力または守備力分の数値だけ私のライフを回復します!」
《琰魔竜 レッド・デーモン》のフィールド上での攻撃力は4000ポイント。つまり――
典韋 LP3000 → LP7000
「一気にライフを回復したか……」
「この瞬間、ソウル・マリオネッターの効果発動! 1ターンに1度、自分のライフが回復した時、このカードの攻撃力をその数値分アップさせ、更に相手ライフにその数値分のダメージを与えます!」
曹操も、さすがにこれには驚き目を見開く。莫大な攻撃力上昇と効果ダメージを同時に行うとは、なんて強力な効果だろうか。
「これにより、ソウル・マリオネッターの攻撃力は4000となり、華琳様に4000ポイントのダメージを与えます! リザルト・コンバート!!」
攻撃力を急激に上昇したソウル・マリオネッターの口から伸びる長大な舌が曹操へと叩きつけられる。
効果ダメージとしては破格の衝撃を受け、耐え切れずその身体を吹き飛ばされてしまう。
「ぐぅ……!」
曹操 LP7900 → LP3900
だが、彼女は空中で3回転し、静かに着地する。日々身体を鍛えている覇王・曹孟徳は、どんなに大きなダメージを受けても、無様に地面を転がるということは決してないのである。
「今の衝撃を耐え切りましたか……。でも、これで華琳様のライフは残り3900! 攻撃力4000となったソウル・マリオネッターの攻撃で終わりです!
ソウル・マリオネッターで華琳様に直接攻撃!」
ソウル・マリオネッターに操られる植物船の砲門が全て開き、曹操へと発射される。これを受ければ曹操の敗北が確定する。
そう、
「この私に対して、ワンショットキルが出来るなどと思わないことね。
私は、手札の《バトルフェーダー》の効果を発動! 相手の直接攻撃宣言時、このカードを特殊召喚してバトルフェイズを強制終了させる!!」
曹操の手札より現れた振り子時計が、鐘の音を響かせる。すると、迫り来る砲弾は空中で急停止。そのまま地面へと落下していった。
「私はこれで、ターンエンドです……!」
あと一撃で勝利できるという絶好の機会を逃した典韋だが、手札を使い切った彼女にできることはもう何もない。苦虫を噛み潰したような表情でターン終了を宣言するしか無かった。
そんな典韋を見る曹操の表情は、微笑み。侮蔑や嘲笑ではない、愉悦だ。放っておけば攻撃力を上昇させていく「No.」を相手にしているこの状況に、焦るどころか楽しんでいる。
「流琉をここまで変えてしまう程の力を持つ「No.」か。そうでなくては潰しがいが無い。その力、私が全て頂くわ……!!」
曹操が叫ぶと、辺り一帯の全てが震えた。典韋も、モンスターも、大気でさえも。覇王が放つ覇気に、何もかもが戦慄する。
それと同時に、曹操のデッキが赤い輝きを放つ。
「こ、この光は……!」
典韋だけではない。この光はチーム曹操の全てが知っている。真紅の輝きを放つデッキの一番上に存在するカードを……!
「2体もの「No.」を見せ、レッド・デーモンを倒したご褒美よ。私も「No.」を召喚してあげるわ」
デッキに手を乗せると、その光はより一層輝きを増す。使い手がその力を解放するのを待ち望んでいるかのようだ。
「さあ、いくわよ! バリアンズカオス……ドロォオオオオッ!!」
渾身の力を籠めて引き当てたカードを、曹操はデュエルディスクに叩きつけるかのように発動する。
「《RUM-
その名の通り巨大な質量を持つ右手が現れる。オーバーレイ・ユニットを持たないとはいえ、「No.」の名を持つだけあって放たれる威圧感は本物だ。
「更に、ジャイアント・ハンドをランクアップさせ、カオス化する! ランク4のジャイアント・ハンドでオーバーレイ・ネットワークを再構築! カオスエクシーズ・チェンジ!!」
現れたばかりの巨大な掌が、上空に現れた漆黒の渦へと吸い込まれ、カオスの力を持った、強大な力が解き放たれる。
「混沌なる世界を掴む力よ! その拳は大地を砕き、その指先は天空を貫く! 現れよ、《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド》!!」
それは真紅に染まり、鋭利な刃を取り付けたジャイアント・ハンド。同じチームとして、何度も見てきた典韋だが、直接対峙するのは初めて。ジャイアント・ハンド・レッドの持つ熱気と威圧感にその身を後退させる。
「私はこれで、ターンを終了するわ。ふふ、何度も私のデュエルを見てきた貴女ならわかるわよね。ソウル・マリオネッターはもう何も出来なくなったということが」
「くっ……! 私のターン、ドロー……!」
典韋のターンへと移り、ドローフェイズ。カードをドローして、《神の恵み》の効果が発動される。
そう、
「《神の恵み》の効果が発動されたこの瞬間、ジャイアント・ハンド・レッドの効果発動! フィールド上でカード効果が発動された時、カオスオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、このカード以外のフィールド上で表側表示になっている全てのカード効果をターン終了時まで無効にする! やれ、紅漠無惚!!」
ジャイアント・ハンド・レッドの能力が、フィールドの全てを無に帰していく。4000ポイントまで上昇したソウル・マリオネッターの攻撃力も、効果を無効にされては元の0へと下がり、更に破壊耐性も消え去った。
「く、ならば私は《DNA移植手術》を墓地に送り、魔法カード《マジック・プランター》を発動! フィールド上で表側表示になっている永続罠を墓地に送ることで、カードを2枚ドローします!」
曹操は、『ほう……』と息を吐いた。フィールド上のカード効果が無効にされた状態で、更なるドローに繋げるとは。
2枚のカードを新たに手札にした典韋は、ニヤリと笑みを浮かべる。なるほど、どうやら良いカードを引き当てたようだ。
それだけではない。彼女の額に謎の紋様が浮かび上がる。あれは――
「私は、《RUM-バリアンズ・フォース》を発動! このカードは、自分フィールドのモンスターエクシーズ1体をランクアップさせ、カオスエクシーズを特殊召喚します! その効果により、ソウル・マリオネッターをカオスエクシーズ・チェンジ!」
ソウル・マリオネッターが、真紅の光となって、上空に渦巻く闇の渦へと吸い込まれて行く。その先には、バリアンズ・フォースと同じ形の紋章が描かれた扉がうっすらと見える。光が衝突すると、轟音と共に扉は開き、その中より1体のモンスターが出現する。
「来て、《CNo.43 魂魄傀儡鬼神カオス・マリオネッター》!!」
その姿は、青に近い配色のソウル・マリオネッターとは対照的な赤。顔はより一層歪み、凶悪な印象を抱かせる。
攻守は進化前と同じく0であり、先程とは異なり守備表示で特殊召喚されている。つまりカオス・マリオネッター自身には攻撃能力が無いということがわかる。だが、わざわざランクアップしたということは、強力な効果を持っているはずである。
「カオス・マリオネッターの効果発動! カオスオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、「魂魄トークン」を特殊召喚します!」
カオス・マリオネッターがその手に携える糸を地面へと伸ばすと、1体の人形が引き上げられる。その姿は――
「へぇ、私そっくりの人形……。良くできてるわね」
そう、それは曹操と同じ髪をした人形。だが、似ているのは髪だけで、それ以外は全て濃い灰色の身体で、表情も無い。
寸法が全く同じであるが故に、不気味に感じられる。
「華琳様の言う通り、このトークンは貴女の映し身。その攻撃力は相手プレイヤーの現在のライフポイントの半分。華琳様の現在のライフポイントは3900! つまり、1950ポイント!」
「悪くない効果ね。でも、その攻撃力じゃあ、《バトルフェーダー》を倒せても、ジャイアント・ハンド・レッドは倒せないわよ」
「だから、このカードを発動します。装備魔法《団結の力》! このカードを「魂魄トークン」に装備して、攻撃力と守備力を私のフィールド上のモンスター1体につき、800ポイントアップさせます!」
典韋のフィールド上のモンスターは2体。よって、「魂魄トークン」の攻撃力は1600ポイント上昇し、3550ポイント。
「そしてカオス・マリオネッターがいる限り、私のフィールド上のトークンは2回の攻撃ができます!
「魂魄トークン」よ、華琳様の場をがら空きにして!」
曹操のフィールドに伏せカードは0、つまり防御手段は無い。
破滅の糸に操られた曹操人形が2体のモンスターを蹂躙し、彼女のライフを削り取っていく。
「くっ、これは……!」
曹操 LP3900 → LP2950
いや、ライフポイントだけではない。
デュエルで発生するダメージを抑えるための訓練を積み重ねてきた彼女だからこの程度で済んではいるが、これが一般兵だったならば再起不能に陥っていたかもしれない。それ程の衝撃である。
「私はこれでターンエンド。次のターンで終わりですよ、華琳様!」
勝利を確信する典韋。だが、その眼は焦点が定まっておらず、汗が滝のように流れている。その疲労は曹操の比ではない。
当然だ。これまで「No.」を手にしたことのない決闘者が2枚も使役し、そのうち1体をランクアップさせたのだ。身体に負担がかからないはずがない。
次のターンにとどめを刺すと言ってはいるが、彼女の身体はもう限界だろう。
「そんな姿になるまで力を求めていたのね。貴女の思い、よくわかったわ。
だが、自分の信念を捨てて身の丈に合わない力を求めるのは、愚者のすること。だから、私の真の力を以て、引導を渡してあげるわ!」
突如、曹操の右手が光りだす。その色は黒。闇よりも深い覇王の力が、今解き放たれる!
「ファイナルターン、ドローッ!!」
闇の軌跡を描きながら抜き放たれるカード。それは――
「さあ行くわよ、魔法発動、《ダーク・コーリング》! 自分の手札・墓地のモンスターを除外することで、悪魔族の融合モンスターを呼び出す!
私は、墓地のジャイアント・ハンド・レッドと、《デーモンの騎兵》を融合させる!」
昏い闇へと、2体のモンスターが誘われて行く。「CNo.」でさえも贄とするモンスターこそ、曹孟徳の真の切り札。
「現れろ、岩を纏いし闇の英雄! 《
「こ、これは……!」
このモンスターは、『チーム曹操』の決闘者でさえ滅多に見ることができない。出すまでもなくデュエルが終了してしまうことが多いからだ。
ジャイアント・ハンド・レッドを糧とした溶岩の鎧で身体を覆った闇の英雄。ダーク・ガイアと相対して、無事でいられた決闘者はいない。
「ダーク・ガイアの攻撃力は、素材としたモンスターの攻撃力の合計で決定される! ジャイアント・ハンド・レッドの攻撃力は2600! そして《デーモンの騎兵》の攻撃力1900! よってダーク・ガイアの攻撃力は4500となる!」
手札1枚で4000を超える攻撃力。典韋でさえソウル・マリオネッターの攻撃力を4000に上げるまで多くのカードを費やしたというのに、覇王はそれを容易く超えてみせた。
しかも、曹操は『ファイナルターン』と宣言した。このターンで終わらせると述べたということは、超高打点のモンスターを呼び出した程度ではまだ終わらない。
「更に、《E-HERO ヘル・ゲイナー》を召喚し、そのまま効果を発動! 自身を除外することで、自分フィールド上の悪魔族モンスターの2回攻撃を可能とする!」
新たな闇の英雄が、ダーク・ガイアへと更なる力を与える。破格の攻撃力を持つモンスターに連続攻撃能力。鬼に金棒と言えるだろう。
「バトル! ダーク・ガイアで「魂魄トークン」を攻撃!」
ダーク・ガイアが一歩踏み出すと、相対した典韋は、魂が凍えるような感覚を味わう。まるで、覇王・曹孟徳の化身たる闇の英雄を前に、底知れない恐怖を覚えているかのようだ。
「この瞬間、速攻魔法《決闘融合-バトル・フュージョン》を発動! このカードは、自分フィールド上の融合モンスターが相手モンスターとバトルを行う攻撃宣言時に発動でき、ダメージステップ終了時まで相手モンスターの攻撃力を私のモンスターの攻撃力に加える!」
「こ、攻撃力6450……!?」
相手の攻撃表示モンスターの攻撃力をそのまま加えるということは、直接攻撃を与えることに等しい。しかも、4500という数値はあの
「喰らいなさい、闇の英雄の一撃を! ファースト・ダーク・カタストロフ!!」
ダーク・ガイアの頭上に出現した無数の岩石が、典韋へと降り注ぐ。闇へと誘う破滅の一撃が、7000もあったライフポイントを激減させる。
「ぐ、あぁ……!」
典韋 LP7000 → LP2500
「ダーク・ガイアの攻撃はまだ残っているわよ。2回目のバトル! この最後の一撃で、貴女の目を覚ましてあげるわ! ダーク・ガイアの効果発動! このカードの攻撃宣言時、相手の守備モンスターを攻撃表示に変更する!」
ダーク・ガイアから放たれる力が、安全に思えたカオス・マリオネッターを無防備にする。
そう、再び直接攻撃同然のダメージが典韋を襲うのだ。
「これで終わりよ! セカンド・ダーク・カタストロフ!!」
情け容赦など欠片も存在しない無数の岩石弾。防御手段の無い典韋は、合計9000もの大ダメージという衝撃を受け、声もなく吹き飛び何度も地面を転がっていった。
典韋 LP2500 → LP0
◇
「流琉!」
地面に投げ出され、横たわる典韋へと駆け寄る曹操。無防備な相手に本気の攻撃を与えたとはいえ、それはデュエルであれば当然のこと。デュエルが終われば愛すべき主従関係へと戻る。それはどこのチームでも同じことだ。
「華琳、様。私は……」
《琰魔竜 レッド・デーモン》と《E-HERO ダーク・ガイア》という2体のエースモンスターの攻撃を受けた上に、「No.」と「RUM」の行使。尋常では無い身体への負荷のためか、典韋は指一本動かせないようだ。それでも意識を保っていられるのは、『チーム曹操』の決闘者として鍛錬を積んできたからだろう。
「何も言わなくていい。貴女が抱えてきた悩み、強くなりたかったという思いは全てこの曹孟徳に伝わった。
辛かったでしょう。見る者を楽しませるデッキで戦っていても、乱世がそれを許さない。かつては同じ程度の実力であった季衣にすら実力に差がついて、焦っていたのよね。
私としたことが、とんだ失態ね。貴女の苦しみへともっと早くに目を向けるべきだった」
典韋の手を取り、語りかける曹操の姿は、今はもう覇王ではなく1人の少女。その手から感じられる温かさが、『強さへの執着』という鎖に縛られた少女の心を解き放っていく。
その眼から、幾筋もの涙が溢れ出す。
「体調が戻ったら、貴女のデッキ構築に付き合ってあげるわ。だから、今はゆっくり休みなさい」
「はい。ありがとうございます、華琳様」
そう言って、典韋は目を閉じた。「No.」の呪縛から解放され、寝顔は歳相応に穏やかなものだった。
美少女に目がない曹操は、眼前の眠り姫に興奮しそうになる欲望を抑え――
「いつまで隠れているのかしら。さっさと出てきなさい」
冷えきった声で、後方へと言葉を投げかけた。
「おやおや、気付かれてしまいましたか。さすがは曹孟徳ですね」
柱の陰から現れたのは、額に描かれた紋様が特徴的な眼鏡の男性。眼鏡の奥から覗く昏き瞳は、底知れぬ闇を感じさせる。
「気配を隠す気など、最初から無かったくせによく言うわ。それよりも、流琉が「No.」を手にするよう仕向けたのは貴様か」
『絶』を鎌形態に戻した曹操は、それを男へと突きつける。静かな怒りを籠めた覇気を放つが、男は全く動じない。いや、むしろ楽しんでいる。
「隠すことでもないですし、はっきりと申し上げましょう。ええ、貴女の言う通り、そこの娘が働いていた料理店の店先に「No.」と「RUM」を置き、拾っていただきました。まあ、それでも貴女相手ではこんなものですね。もう少し善戦するかと――」
愛する部下の弱みにつけ込み、あまつさえ『こんなもの』呼ばわり。我慢など出来るはずがなかった。男が言い終わる前に、大鎌を薙ぐ。
だが、刃が男の身体を両断する前に、その姿は掻き消える。
「危ないですね。当たったら死んでしまうではないですか」
「っ!」
声は、上空から聞こえた。見上げると、モンスターを呼び出していないにも関わらず、男は宙に浮かんでいた。
「今日は挨拶に来ただけです。そこの娘に使わせたカードは、貴女のチームで有効に使うといいでしょう」
言うやいなや、男の身体が透けていく。もしや、これは仮想立体映像を利用したものなのだろうか。
「……1つだけ聞かせて貰う。貴様は何のために「No.」を軽々と手放すようなことをする?」
『「No.」を全て集めた決闘者は、全能の力を手にすることができる』
曹操自身はその噂を完全に信用する気は無いが、「No.」が持つ力は本物だ。そんなカードを何故こうも簡単に手放すのか。
「私には必要が無いだけですよ、信じるかどうかはそちらの勝手ですがね。
ああ、そう言えば自己紹介を忘れていましたね。私の名は于吉。しがない道士です。それでは、ごきげんよう」
その言葉を最後に、男……于吉の姿は完全に消え去った。気配を探ってみるが、やはりこの近辺にはもういないようだ。
「道士、于吉……。覚えていなさい、次にその姿を私の前に見せようものなら、我がモンスターが叩き潰してくれるわ……!」
後に残されたのは、安らかな寝顔を浮かべる少女と、血が滲む程に強く大鎌を握りしめる覇王のみであった……。
●オマケ……今日のアニメを見た流琉ちゃん
「《ハングリーバーガー》が、クズ……? 許せません……!!」
投稿しようとしたその日に出てきてクズ扱いされるとは思いませんでした。
Q.流琉のデッキってどうなってるの?
A.美味しそうなカードとコントロール転移のカードを組み合わせています。
Q.今回のWPについて一言お願いします。その1
A.ついに鈴々の本当の力を見せる時が来たのだ!(匿名希望)
Q.今回のWPについて一言お願いします。その2
A.もう残念テーマなどとは言わせん!(孫呉の巨大な盾さん)
Q.今回のWPについて一言お願いします。その3
A.ついに私がカード化されましたよ桃香様ああああ!!(ナンバーズハンターさん)
Q.いきなり叫ぶ愛紗ちゃんは嫌いだよ……。(桃色巨乳さん)
A.そっとしておきましょう。
華琳様をもっと暴走させてみたかったけど、割と普通になってしまった。
おかしいなぁ、予定では残念な言動が目立つ人になるはずだったのに。それはそれでまずいか。
新規カードが出る度に、デュエルをさせてあげたい人が増えていく。
だけど、いざ書くとなると執筆作業が進まない。もっと頑張らなくては……。
今度は誰にデュエルさせようか。
ペンデュラムモンスター、中々面白いですね。
特に《閃光の騎士》はかなりのお気に入り。
兎で呼んだり量産工場で回収できたり、スケール7のため幅広いペンデュラム召喚ができたりと、いい動きをしてくれます。
後はレベル4かつスケール3以下のペンデュラムモンスターが出れば言うことなし。
それではまた、次回もお会いしましょう。