本作を上から順番に読み進めてきた方は、先に番外編②をご覧ください。
◇
『チーム孫策』――。
チームリーダーの孫策、そして2人の妹である孫権と孫尚香を筆頭としたチーム。
現在、大陸でも特に力を持つ劉備や曹操のチームに勝るとも劣らない結束力を誇り、その絆パワーによってこれまでの乱世を勝ち上がってきた。
だが――
「蓮華、小蓮。貴女達も気付いているかもしれないけど、明命が我がチームを抜けて『チーム劉備』に行っちゃったわ」
近頃はその絆が若干怪しくなってきていたりする。
周泰が残した書き置きを掲げながらあっけらかんとした口調で告げるのは、『チーム孫策』のリーダーである孫策。真名は雪蓮。
小覇王とも呼ばれ、その名に恥じぬ実力を持ち合わせる大陸屈指の実力者。
「姉様! 何をそんな悠長なことを言っているのですか! 私達の戦力が減っただけではなく、敵の戦力が増してしまったというのに!」
そんな小覇王を叱責する少女の名は孫権。真名は蓮華。孫家3姉妹の次女だ。孫家特有の桃色の髪を振り乱し、大声を上げる彼女の怒りはかなりのものだと伺える。
「まあ確かにそうだよね~。母様は武者修行に行ったっきり戻って来ないし、冥琳はちょくちょく留守にするし。孫家の絆とはなんだったのか…………じょ、冗談だってば。そんなに睨まないでよ、お姉ちゃん」
最後に声を発した少女の名は孫尚香。真名は小蓮という。2人の姉に比べて幼さが目立つが、孫家の三本柱の内の1人ということもありその実力は申し分ない。とはいえ、不用意な発言をして次女から無言の叱責を受けてしまうあたりはまだまだ子供と言える。
今彼女達が言葉を交わしている場所は、孫策の執務室だ。孫策は玉座の間で全員に話す前にまずは妹達に話しておこうと考えたのである。
因みに、孫尚香の言葉の中に出た『母様』というのは、文字通り彼女達の母親である孫堅のことである。元々このチームは彼女を筆頭とした『チーム孫堅』という名で活動していたのだがある時――
『ちょっと武者修行に行ってくる』
とだけ書き置きを残してチームを去ってしまったのである。海の向こうまで行ってデュエルをしているらしく、この大陸では珍しいカードが度々送られてきたりする。
チーム一同、あまりにも自由すぎる行動に頭を抱えた。元気にやっているとはいえ、仮にもリーダーが勝手にチームから去るとはどういうことか。そんな経緯があり、孫策が代理としてリーダーを務めている。もっとも、孫策自身もさっさと役目を妹に譲ってしまいたいと考えていることは孫策と周瑜だけの秘密だったりする。
「落ち着きなさい、蓮華。確かに貴女の言う通り、『天の御遣い』や『ナンバーズハンター』、『魔砲幼女』を抱えるあのチームの戦力を強化してしまったことは予想外の展開よ。それでもこれはあの娘が選んだこと。捕虜にされたというわけでも無い以上、こちらがいつまでも悩んだところで意味は無いわ」
「し、しかし……」
姉の言うこともわからないでもないが、やはり完全に納得することはできない。孫呉への忠誠心が一際高かった周泰がなぜ急に敵チームへと行ってしまったのか。もしや、『チーム劉備』の人間に脅されて無理矢理従わされているのではないだろうか。そんな不安が沸々と沸き上がってくる。
「そんなに心配なら行ってみればいいじゃない、お姉ちゃん」
そんな思考の渦から意識を戻したのは、末妹の声だった。
「別にシャオが確かめてきてもいいよ。向こうで売ってるカードも買ってみようかと思っていたところだしね」
「シャオ! 貴女、そんな簡単に……!」
孫尚香の言う通り、自分の目で確かめて周泰を連れ戻すことは確かに考えた。しかし、わざわざ敵チームに乗り込んで、何事も無く戻って来られる保証などどこにも無い。軽々と決めていいことでは無いはずだ。
孫尚香の場合は、単なる興味本意なのだろうが。
「2人共、もし『チーム劉備』に行くというのなら早くした方がいいわよ。二喬はもう行っちゃったみたいだし」
「え?」
孫策の口から出た言葉に、思わず間の抜けた声が漏れ出てしまう。どうして今その2人の名前が出てくるのか。
二喬とは、大喬と小喬という双子の少女のことである。それぞれが孫策及び周瑜と恋仲にあり、二組とも仲睦まじい百合な関係を築いている。
「扉の外で聞き耳を立てていたみたいね。多分、明命を連れ戻すことで私や冥琳に褒めて貰いたいとか思っているんでしょう」
「気付いていたなら何故止めないのですか!」
「私の『勘』が告げているのよ。面白くなりそうだってね」
騒ぐ孫権とは反対に、孫策は余裕の姿勢を崩さない。孫尚香も同様である。孫策の勘はほぼ10割の的中率を誇り、その能力をデュエルでも遺憾無く発揮してきている。そんな彼女が自信を持って告げたためか、流石の孫権も渋々と納得してしまう。
「でも、2人だけに任せておくのはちょっと心配よね。というわけで、私達も行きましょうか。蓮華、シャオ」
「さんせーい!」
「……まさかとは思いますが、姉様。今回の騒動を利用して『チーム劉備』の決闘者の実力を見ておきたいとか考えているのではありませんか?」
「ありゃ、バレちゃった」
孫権の予想は当たっていたらしい。
孫策は常日頃から『天の御遣い』や『ナンバーズハンター』、『魔砲幼女』とデュエルをしてみたいと漏らしていた。
だが、リーダーが敵チームに何の理由もなく乗り込むとなるとチーム全員から止められると孫策はわかっていた。そんな折に発生した周泰の寝返り騒動。彼女を連れ戻すという目的に、勝手に『チーム劉備』に行ってしまった恋人達を探すというものが加われば、乗り込む理由としては妥当だろう。
そもそも『チーム劉備』の関羽ですら度々こちらの領内に入って「No.」を狩っているとの目撃情報があるのだ。逆のことをしても文句を言われる筋合いはない。
「出発は2日後にしましょう。すぐに追いついてもあの娘達に悪いしね」
「……わかりました」
「シャオも『天の御遣い』っていうのとデュエルしたいし、デッキを組み直して来よっかな」
その後、全体軍議の中で孫三姉妹が『チーム劉備』へと赴くことが全員に告げられた。当然の如く反対意見の方が多かったが、リーダー権限ということで無理矢理納得させた。そして2日後、二喬を追う形で三姉妹は出発した。
◇
「お姉ちゃんってば、どこに行っちゃったんだろ」
桃色の髪を左右でお団子状に纏めた少女が呟く。彼女の名前は小喬。大陸でも知らぬものはいないと言われる美少女双子決闘者の妹の方である。攫われた(と思い込んでいる)周泰を連れ戻すために『チーム劉備』へと潜入した姉妹であったが、人波に飲まれていつの間にかはぐれてしまったのだ。
『チーム孫策』に所属する決闘者として、デュエルの腕はそれなりの自信はある。それでもまだまだ幼い少女である小喬。見知らぬ街をたった1人で歩くのは不安だった。きっと姉も自分と同じ気持ちであるに違いない。
「早いとこ合流しないと…………ん? あいつは!」
どうやって見つけよう。そう考えながら歩いていると、前方に白く輝く衣服を纏った男性を発見した。
元々、小喬は姉と共にその男を倒そうとこの地へ乗り込んできた。だが、姉とはぐれたことで物事を深く考えることができなくなっていたことによる焦り。そして目的の人物を予定よりも早く見つけたことによる高揚感。この2つが重なったことにより彼女は反射的に少年へと声をかけてしまう。
彼の名は――
◆
現代日本から突如別世界へと放り込まれたこの俺、北郷一刀は『天の御遣い』などという大層な呼ばれ方をされている。なんでも管輅というデュエル占い師曰く、
――東方より飛来する《シューティング・スター・ドラゴン》と共に現れる決闘者は、乱世を治める『天の御遣い』なり。
ということらしい。確かにその人の言う通り、俺は《シューティング・スター・ドラゴン》を持っているし、向こうの世界にいた頃はそれを切り札にしていた。しかし、Dホイールによる
今は
だから――
「見つけたわよ北郷一刀! あたしとデュエルしなさい!」
見知らぬお団子ピンク幼女にデュエルを挑まれたとしても、「ああ、いつものことか」と思ってしまったのだ。
デュエルの挑戦は当然受諾した。挑まれたデュエルを拒むということは、決闘者として禁忌とされているからだ。例え挑まれた場所が往来のど真ん中であろうとも、むしろ「美少女とデュエルができてラッキー!」くらいに思うべきなのだ。
「あんたを倒して、あたしは囚われの明命様を取り戻す! そして冥琳様に褒めていただくんだから!」
どうやらこの娘は『チーム孫策』の決闘者だったらしい。『美以達とモフモフしたい』という理由でウチにやって来た明命だが、そんな理由で所属を変えたなんてこと、他のチームの人が信じるはずがないだろう。きっとこの娘もその1人。
俺も最初はさっさと元のチームに戻してあげようと考えていた。でも、美以達と仲良くしている明命を見ているうちにそのような気は無くなっていった。今では彼女が『チーム劉備』に居たい限りそのままにしてあげたい。
だから、俺は彼女の提示した条件を受け入れた。
「……わかった。君が勝てばその通りにするといい。だが、俺が勝ったら明命が戻りたいというまで俺達のチームで預からせて貰う」
「上等よ! あたしの名前は小喬! 冥琳様直伝のデュエルタクティクスで、あんたをけちょんけちょんにしてやるんだから!」
ちょっとした誤解から始まったデュエル。だとしても、俺は全力で戦う。
明命は自分の意思で此処にいる。俺達『チーム劉備』は人さらいをするようなチームではないということを、このデュエルで証明してみせる!
「「デュエルディスク、セット!!」」
俺達は同時に叫び、上空へと放ったデュエルディスクを左腕にはめる。彼女が使っているのは、この世界で一般的に普及されている金属製のもの。小さな女の子が扱うにはやや重いであろうそれを軽々と扱うということは、決闘者としての身体強化の鍛錬を積んできているということを証明している。しかも、明命を連れ戻すためだけに単身乗り込んできたその意思から生まれたのであろうフィールは相当なもの。デュエルを始める前だというのにその強さが伝わってくる。一瞬でも気を抜けば即座にやられてしまうだろうな。
「「デュエル!」」
多くの観衆が見守る中、1人の少女の運命を懸けたデュエルが幕を開けた。
◆
「先攻はあたしが貰うわ! 魔法カード《増援》を発動して、レベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える! あたしはレベル4の《
先攻をとった小喬ちゃんが召喚してきたのは、太陽の光に勝るとも劣らない輝きを放つ戦士族モンスター。見慣れないモンスターだが、確か「ベガ」とは「こと座」を意味する単語だったはずだ。
「ベガの効果発動! このカードが場に出た場合、手札の「テラナイト」モンスターを特殊召喚できる! 来なさい、《星因子 プロキオン》!」
ベガの手に現れた小さな琴。その音に導かれて現れたのは、仔犬を模した被り物をしたモンスター。
「プロキオンの効果発動! このカードが場に出た場合、手札の「テラナイト」モンスターを墓地に送ることで、カードを1枚ドローできる!」
「モンスター展開だけでなく、手札交換まで行うか。そして、レベル4のモンスターが2体――」
「まだよ! あたしはプロキオンを対象にして速攻魔法《天架ける星因子》を発動! デッキから「テラナイト」モンスター、《星因子 アルタイル》を特殊召喚して、プロキオンをデッキに戻す!」
バカな、まだ終わらないだと!?
「特殊召喚したアルタイルの効果発動! 墓地の「テラナイト」モンスターを守備表示で特殊召喚する! あたしは、プロキオンの効果で墓地に送った《星因子 デネブ》を特殊召喚! そしてデネブの効果発動! このカードが場に出た場合、デッキから「テラナイト」モンスター、《星因子 シャム》を手札に加える!」
「こと座」のベガと共に、「わし座」のアルタイルと「はくちょう座」のデネブが並び立つ。1ターン目からここまで回してくるだなんて、なんというカテゴリだ。しかも、この3つの星座で「夏の大三角」が構成されるという話しだから、次に来るのはおそらく――
「さあ、覚悟しなさい! あたしは、レベル4のデネブ、ベガ、アルタイルでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
小喬ちゃんの目の前に出現した
巻き起こる爆発。その中から神々しき光を放つ戦士が姿を現した。
「エクシーズ召喚! 《
モンスターエクシーズは、同じレベルのモンスターを2体以上揃えるだけで呼び出せるため、数多く存在する召喚方法の中でも特に簡単な部類に入る。だが、3体以上の素材が必要なものとなると、やや難しくなる。それをこうも簡単に行うとはな。
「あたしはカードを2枚伏せてターンエンドよ! さあ、どっからでもかかって来なさい!」
「言われなくてもそのつもりさ! それにまだデュエルは始まったばかりなんだから、焦りは禁物だぜ。俺のターン、ドローっ!」
いきなりのエクシーズ召喚には少々驚いたが、あのモンスターエクシーズの攻撃力は2500。この手札なら戦闘破壊はそう難しいことでもない。
「俺は魔法カード《調和の宝札》を発動! このカードは、手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーを墓地に送ることで、カードを2枚ドローする! 墓地に送るモンスターは攻撃力1000の《Galaxy Serpent》! そしてカードを2枚ドローっ!」
愛紗から「私はシンクロ召喚を行わないので、このモンスターはご主人様に差し上げます」と言われ受け取ったチューナーモンスター。
また、星空を移動していて捕まえれば夢や希望が叶うと言われており、流れ星を思わせる。《シューティング・スター・ドラゴン》に乗ってきた俺に相応しいのだそうだ。
「続いて、《ドラゴラド》を召喚! このカードが召喚に成功した時、墓地から攻撃力1000以下の通常モンスターを守備表示で特殊召喚できる! 《調和の宝札》で墓地に送られていた《Galaxy Serpent》を特殊召喚!」
2体の合計レベルは6。そして《Galaxy Serpent》はチューナーモンスター。これの意味することがわかったのか、小喬ちゃんの眉がピクリと動く。
「行くぞ! 俺はレベル4の《ドラゴラド》に、レベル2の《Galaxy Serpent》をチューニング!」
4つの球体へと姿を変えた《ドラゴラド》を、2本の輪が包み込む。シンクロ召喚特有の光が辺りを照らし――
「シンクロ召喚! 来い、《
巨大な鎖を身体中に巻き付けた獰猛なドラゴン。攻撃力は2500。このままならば相打ちだが、俺の手札には速攻魔法《イージーチューニング》がある。墓地のチューナーモンスターを除外して、フィールド上のモンスターを強化するこいつを使えば――
「それを待ってたんだから! 永続罠発動! 《調律師の陰謀》!!」
「ッ! そのカードは!」
「このカードは、あんたのフィールドにシンクロモンスターが特殊召喚された時に発動できる! そのモンスターのコントロールはあたしが貰う!」
小喬ちゃんが罠を発動した瞬間、《C・ドラゴン》が彼女のフィールドへと移動し、俺へと敵意を向けてくる。
《調律師の陰謀》は、相手がシンクロモンスターを使わなければ意味が無いカード。そんなカードをデッキに入れているだなんて、考えられることは1つしかない。
「気付いたようね。このデッキはあんたを倒すために調整したもの。つまり、あんたにとって最悪の相性となるデッキなのよ!」
「へっ。俺を意識してデッキを組んでくれるとはな。人気者は辛いぜ。
シンクロ対策には驚いたが、まだ挽回は可能だ。俺は墓地の闇属性モンスター《ドラゴラド》を除外して、手札から《輝白竜 ワイバースター》を特殊召喚!」
こいつは、墓地の闇属性モンスターを除外することでのみ特殊召喚できるドラゴン族のモンスター。攻撃力は1700であり、《星輝士 デルタテロス》や《C・ドラゴン》を倒すことは不可能。
「バトルだ! 俺はワイバースターで《C・ドラゴン》を攻撃!」
だが、俺の手札には速攻魔法《イージーチューニング》がある。このカードは墓地のチューナーモンスターを除外して、その攻撃力を俺のフィールドのモンスターに加えるカード。これで《Galaxy Serpent》を除外すれば、ワイバースターの攻撃力は2700となり、攻撃力2500の《C・ドラゴン》を倒すことができる。
自分のモンスターに攻撃するのは気が引けるが、高攻撃力のモンスターを相手の場に残しておくぐらいなら自分の手で倒しておくべきだ。
「この瞬間、罠発動! 《立ちはだかる強敵》!」
「何っ!?」
《立ちはだかる強敵》は、相手の攻撃宣言時に発動できる罠カードであり、選択したモンスター以外を攻撃できなくなるというもの。小喬ちゃんのフィールドには《C・ドラゴン》を除けば《星輝士 デルタテロス》のみ。つまり、攻撃対象はデルタテロスへと変更されるということだ。わざわざ攻撃対象にさせるだなんて、あのモンスターは彼女のエースではないのか?
「《立ちはだかる強敵》の効果で、ワイバースターの攻撃をデルタテロスに誘導するわよ! さあ、何か発動するカードはあるかしら? ないならそのまま返り討ちよ!」
「くっ……! 狙いはわからないが、やるしかない! ダメージステップに、速攻魔法《イージーチューニング》を発動! 墓地のチューナーモンスター、《Galaxy Serpent》を除外することで、その攻撃力1000ポイントをワイバースターに加える! よってワイバースターの攻撃力は2700にアップ!」
《イージーチューニング》の強化を受けたワイバースターの牙が、デルタテロスを噛み砕く。どうやら戦闘破壊への耐性は持っていないらしい。だとすればいったい何が狙いだというのか。
小喬 LP8000 → LP7800
デルタテロスが墓地に送られた瞬間、小喬ちゃんがニヤリと笑う。あれは、狙い通りと言わんばかりのもの。
「デルタテロスが墓地に送られた瞬間、効果発動! 手札かデッキから「テラナイト」モンスターを特殊召喚するわよ!」
「っ! 墓地発動の効果だと!?」
「あたしは、2体目のアルタイルをデッキから特殊召喚して効果を発動! 墓地のベガを守備表示で特殊召喚! そしてベガの効果により、手札から《星因子 シャム》を特殊召喚!」
目の前の光景に、思わず口が開きっぱなしになる。モンスターを破壊したはずなのに、2体もモンスターを展開されてしまうだなんて、俺も普段やっていることとはいえ、驚きを禁じ得ない。
「シャムの効果発動! このカードが場に出た場合、相手に1000ポイントのダメージを与えることができる!」
「ぐぅっ……!」
一刀 LP8000 → LP7000
「や座」をモチーフにしたシャムが放った矢が、俺の胸を貫いた。出てくるだけで1000バーン、雛里が喜びそうなモンスターだ。
「俺はカードを2枚伏せて、ターンを終了する……」
「さぁて、このまま一気に攻めるわよ! あたしのターンっ! あたしは、レベル4のベガ、アルタイル、シャムでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
小喬ちゃんの目の前に再び現れるオーバーレイ・ネットワーク。次は何が来る?
「エクシーズ召喚! 冬の戦士、《星輝士 トライヴェール》!!」
前のターンに出てきたデルタテロスは、攻撃力が2500で、守備力は2100。対するトライヴェールはその反対となっている。「夏の大三角」であるデルタテロスと対称になっていることから、このモンスターエクシーズは「冬の第三角」をモチーフにしているのだろう。
「トライヴェールの効果発動! このカードがエクシーズ召喚に成功した時、自身以外のフィールド上の全てのカードを手札に戻す!」
全てのカードのバウンスか。確かに強力な効果だが――
「だったら俺はこの2枚の罠カード、《砂塵の大竜巻》と《
《調律師の陰謀》を再利用しようと考えていたんだろうが、そうはさせないぜ」
《砂塵の大竜巻》で《調律師の陰謀》を破壊したことにより、《C・ドラゴン》は俺のフィールドに戻る。しかし、トライヴェールの効果によりすぐさまエクストラデッキへと戻されてしまう。
「ちっ、1枚しか戻せなかったか。まあいいわ。トライヴェールのもう1つの効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、相手の手札を1枚墓地に送る!」
「くっ……!」
唯一手札に戻ったワイバースターが墓地に送られる。これで俺の手札は1枚、そしてフィールドにカードは無くなった。
「ここで魔法カード《戦士の生還》を発動! このカードは、墓地の戦士族モンスターを1体手札に戻す! あたしはアルタイルを手札に戻してそのまま召喚! 墓地のデネブを守備表示で特殊召喚して、デネブの効果によりデッキから《星因子 シリウス》を手札に加えるわ!」
3体の素材が必要なモンスターエクシーズを出した後に、2体のモンスターを並べる展開力、流石だな。
相手の盤面を荒らしつつ、モンスター同士の連携によって自分は次々とモンスターを補充し、展開していく。それが【テラナイト】の戦い方ということか。
「バトルよ! まずはアルタイルで
「ぐぁっ……!」
一刀 LP7000 → LP5300
「もう一撃! トライヴェールで直接攻撃!」
アルタイルの拳をもろに受けた後に、追い打ちをかけるように迫ってくるトライヴェールの剣。これを受ければライフは半分を切ってしまうが――
「そう何度も受けるわけにはいかない! 俺は墓地の罠カード、シャドーベイルの効果発動!」
「墓地から罠!?」
――ぼ、ぼ、ぼ、墓地から罠を発動ですってぇ!?
――墓地から罠だなんて、凄い!
――痺れるぅ~!
「こいつは相手の直接攻撃宣言時に、守備力300の通常モンスターとして墓地から守備表示で特殊召喚できるのさ! 来い、シャドーベイル!」
トライヴェールと俺の間に幻影の如く現れた騎士が、剣を受け止める。だが、守備力はたったの300。攻撃力2100のトライヴェールの前に為す術もなく斬り裂かれた。
「ち、姑息な真似を!」
「姑息でけっこう。俺だって簡単に負けるわけにはいかないんでね」
四散したシャドーベイルは、墓地へ送られずに除外された。このカードは自身の効果で特殊召喚した場合、フィールドを離れると除外されてしまう。エクシーズ召喚に使用しない限り1度しか使えない効果だが、ほぼ必ずプレイヤーを守ってくれる優秀な壁と言えるだろう。
「あたしはこれでターンエンドよ。トライヴェールの攻撃を防いだことは褒めてあげるけど、これ以上の反撃が出来るかしら?」
「……確かに君は強い。だが、俺だって『チーム劉備』を代表する決闘者の1人なんだ。このドローで、劣勢を覆してみせるさ! 俺のターン、ドローっ!! よし、俺は魔法カード《逆境の宝札》を発動!
相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時、カードを2枚ドローする!」
「ここで「宝札」だなんて、どういう運してるのよ……」
それはきっと、俺のデッキと何より俺自身がもっと戦いたいと願っているからこそだろう。これから引く2枚のドロー次第で、勝てるかどうかが決まる。
決闘者が諦めなければ、カードは必ず応えてくれる。来てくれよ、逆転のカード!
「さあ行くぜ、俺の
気合いを籠めて引き抜いた2枚のカードを確認する。どうやらデッキは俺に応えてくれたようだ。
「反撃開始だ! まずは永続魔法《補給部隊》を発動! 1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが破壊された時、カードを1枚ドローする!
そして手札から《聖刻龍-トフェニドラゴン》を特殊召喚! 相手フィールドにのみモンスターが存在する時、こいつは特殊召喚できる! 更に、《光竜星-リフン》を通常召喚!」
エジプト神話における湿気の女神「トフェニス」が由来となったレベル6のドラゴン、トフェニ。そしてシャチホコのような姿をしたレベル1のチューナーモンスター、リフン。これで条件は整った。
「俺の対策をするのなら、《不協和音》や《
レベル6のトフェニドラゴンに、レベル1のリフンをチューニング!」
光の輪の中を6つの光球が通り抜け、新たなシンクロモンスターが現れる。
「シンクロ召喚! 《邪竜星-ガイザー》!!」
光属性2体によるシンクロ召喚だが、現れたのはその名の通り邪悪な雰囲気を持った幻竜族モンスター。竜生九子における「
「ガイザーの効果発動! 1ターンに1度、自分フィールドの「竜星」モンスターと、相手フィールドのカードを1枚ずつ対称として破壊する! この効果でガイザー自身とデネブを破壊する!」
荒ぶる気性は、過ぎれば自身の身をも滅ぼす。今、俺の場には「竜星」モンスターはガイザーのみだったため、ガイザー自身諸共デネブをその口から放たれる闇の炎で焼き尽くす。
「ガイザーが破壊されたということは……!」
「やはり知っていたか、それなら話は早いな。ガイザーのもう1つの効果を発動だ! こいつが破壊され墓地に送られた時、デッキから幻竜族モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる!
来い、レベル7! 《メタファイズ・アームド・ドラゴン》!
そして墓地のリフンの効果も同時に発動する! 自分フィールドの「竜星」モンスターが破壊され墓地に送られた時、墓地のこいつを特殊召喚できる。ただし、シャドーベイルと同様にフィールドを離れたら除外されるけどな」
《アームド・ドラゴン》というモンスターよりも、より崇高な存在である《メタファイズ・アームド・ドラゴン》。攻撃力は2800ポイントと、レベル7の通常モンスターの中では最大を誇る。もっとも、今は守備表示なのであまり意味は無いが。
「最後に、《補給部隊》の効果でカードドロー! さて、俺のことを良く調べてある君ならわかるよな? 俺が次に呼び出すシンクロモンスターを」
「ふん! 御託はいいから、さっさとしなさいよ!」
心なしか、口調がやや荒くなったように思える。それは焦りから来るものか。
「だったら遠慮なく! レベル7のメタファイズに、レベル1のリフンをチューニング! シンクロ召喚、《輝竜星-ショウフク》!」
レベル6、レベル7と続いて3回目のシンクロ召喚はレベル8。そしてこいつは「竜星」モンスターの中でも上位に位置するモンスター。
「ショウフクがシンクロ召喚に成功した時、素材とした幻竜族モンスターの元々の属性の数までフィールド上のカードをデッキに戻すことができる。素材となったのは光属性だけだから、1体しか戻せないけどな。俺はこの効果で君の《星輝士 トライヴェール》をエクストラデッキに戻す!」
ショウフクの咆哮が、トライヴェールをエクストラデッキへと吹き飛ばす。
モンスターエクシーズはシンクロモンスターと同じくメインデッキに加える事ができないため、メインデッキではなくエクストラデッキに戻るのである。
「これじゃあトライヴェールの効果が……! よくもやったわね!」
やはりトライヴェールも墓地に送られた時に発動する効果を持っていたようだ。エクストラデッキから召喚されるモンスターはその性質上、墓地に送るよりもエクストラデッキに戻す方が除去としては有用だ。再び呼び出すためにはまた素材を揃えなければならないためである。
「バトルだ! ショウフクでアルタイルを攻撃!」
「きゃっ!」
小喬 LP7800 → LP7200
ショウフクの攻撃力は、レベル8のシンクロモンスターにしてはかなり低い2300。そのため与えるダメージは小さいが、ショウフクの巨体から繰り出されるダメージは、
「俺はカードを1枚伏せてターン終了だ。これで俺のフィールドにはシンクロモンスターと《補給部隊》。
対する君の場にはカードが無く、手札は下級モンスター1枚。これで形勢逆転だな」
とは言ったものの、まだ《星因子 シリウス》の効果は不明。ライフにまだ余裕はあるとはいえまだ油断はできない。
小喬ちゃんのデッキは展開力に優れているのだから、1枚のカードで戦況をひっくり返す可能性も――
――ヨクモ、ヤッテクレタワネ。
「っ!?」
突如、眼前より響き渡る怨嗟の声。そこにいるのは当然、小喬ちゃんだ。
つい先程までの彼女のフィールは、荒々しくも光り輝くフィールだった。それが今では完全に真逆。眼前の敵をまるごと飲み込まんとする闇のフィール。
俺はこいつを知っている。こんな現象を引き起こすのは、「No.」もしくは――
「バリアンズ・フォース……!」
彼女の額には、《
「小喬ちゃん、今すぐデュエルを止めるんだ! 今の君は普通じゃない! デッキに入っているバリアンズ・フォースは危険なんだ!」
『アタシのターン、ドロー……!』
わかってはいたが、俺の声は届いていない。だが、今までバリアンズ・フォースに心を囚われた人は会話をしようとする意思はあったはずなのに、今回はそれが無い。そこまで呪縛が強いということなのか?
◇
小喬が《RUM-バリアンズ・フォース》を手に入れたのは、『チーム劉備』の領地に入る3日前、いつものように姉と
窓に何かが貼り付いているのを見つけた小喬が剥がしてみるとそれは1枚のカード。見つけたら直ちに上層部に報告し、決して使ってはいけないと言われているカード、《RUM-バリアンズ・フォース》であった。
大喬はこれをすぐに破棄すべきだと訴えたが、小喬はこれを聞かなかった。もしこの力を使いこなし、『チーム劉備』を倒すことができたのなら、皆が褒め称えてくれるだろうと。結局、小喬はバリアンズ・フォースをデッキに投入した。その後も何事も無く過ごしていたため、2人は何の変哲もない普通のカードなのだろうと結論づけてしまったのだ。
◆
『アタシは、《星因子 シリウス》を召喚して効果発動。このカードが場に出た場合、墓地の「テラナイト」5体をデッキに戻して、カードを1枚ドローできる。
この効果で墓地のデネブ、アルタイル2体、ベガ、プロキオンをデッキに戻してカードドロー……!」
「おおいぬ座」の名を冠するシリウスが、小喬ちゃんへ1枚のカードを導く。
カードとは、1枚1枚が決闘者と共に戦う希望。決闘者はそれを的確に導くことで、勝利を目指す。だが、今の「テラナイト」達から感じるのは、相手を絶望へと叩き落とさんとする意思。
『魔法発動、《死者蘇生》。墓地から《星因子 シャム》を特殊召喚。そして、1000ポイントのダメージを与える』
「ぐっ!?」
一刀 LP5300 → LP4300
シャムが放った矢に心臓を貫かれた瞬間、身体に風穴が開いたかのような激痛が俺を襲う。胸に手を当ててみるが、実際に血が流れている様子はない。それでもこの痛みは本物であるのだと、俺の脳が訴えていた。
これは、フィールによる衝撃だけじゃない。バリアンズ・フォースによる力が、本物さながらの痛みを与えてきているのだ。
『アタシは、レベル4のシャムとシリウスでオーバーレイ。2体の戦士族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚、《
伝説の王と同じ名を持ち、大剣を振り上げる白き鎧のモンスターエクシーズ。確かあのモンスターエクシーズは、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで自身の戦闘破壊を防ぎ、攻撃力を500ポイント上昇させると同時に、相手に500ポイントのダメージを与える効果があったはずだ。
普通ならこのまま時間稼ぎをするのだろうと考えてしまうが、あいにく今は普通じゃない。
『更に、《RUM-バリアンズ・フォース》を発動。キング・アーサーでオーバーレイ・ネットワークを再構築!』
「やはり来るか、バリアンズ・フォース!」
『カオスエクシーズチェンジ。来なさい、《
純白の鎧は漆黒に染まり、邪悪さを増したモンスターエクシーズ。そこには伝説の英雄としての高貴さは何処にもない。しかも攻撃力は強力なモンスターの指標ともされる3000ポイント。愛紗の《
『バトル。レジェンド・アーサーでショウフクを攻撃。カオス・ブラスター!』
「ぐぅっ!」
一刀 LP4300 → LP3600
レジェンド・アーサーが持つ大剣がショウフクを斬り裂き、その衝撃波が俺を襲う。流石は攻撃力3000のモンスター、尋常じゃないフィールだ。
「だが、ショウフクが破壊されたことで、《補給部隊》の効果発動! カードを1枚ドローする!」
『それがどうした。アタシのレジェンド・アーサーの効果も同時に発動している! このモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った時、カオスオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで発動できる。
そのモンスターを除外して攻撃力分のダメージ、つまり2300のダメージを相手プレイヤーに与える!』
「な、なんだと! ぐあああ!?」
一刀 LP3600 → LP1300
カオスエクシーズの効果による2300の大ダメージを受け、俺の身体は宙を舞い、地面に叩きつけられた。
観客達もここに来て何かがおかしいと感じたらしく、徐々にざわめき出す。
――お、おい。御遣い様があんな簡単に吹っ飛ばされたぞ。どうなってんだよ!?
――オレ、あのバリアンズ・フォースってカード知ってるぞ。確か、実力が無い決闘者は絶対に使うなと言われているレアカードだったはずだ。
――マジかよ。じゃあ、あのお嬢ちゃんが急におかしくなっちまったのもそのカードのせいだってのか。
「マズいな。早いとこ決着を着けないと、騒ぎが大きくなる一方だ」
しかも、バリアンズ・フォースなんて危険なカードを小喬ちゃんのような娘が使っていて、身体に負担がかからないはずがない。
『アタシはこれでターンエンド。さあ、最後のドローをするがいいわ』
次のターンで終わらせなければ、彼女の身体は限界を迎えてしまうだろう。
「お望み通り、このターンで終わらせてやるよ! 俺のターン、ドローっ! 俺は罠カード《活路への希望》を発動! 自分のライフが相手よりも1000ポイント以上低い時、ライフを1000ポイント支払い発動する! ……くっ!」
一刀 LP1300 → LP300
ダメージだけでなく、ライフコストでも痛みを感じてしまうらしい。正直キツいが、小喬ちゃんを救うためなら、この程度耐え切ってみせるさ。
「お互いのライフの差2000ポイントにつき1枚カードをドローする。
俺達のライフ差は6900。よって、ドローできるカードは3枚!」
渾身の力を籠めて、3枚のカードを新たに引き抜く。このデュエルに勝って、あの娘を助けたい。そんな俺の思いに対するカード達の答えは――
「ありがとう、俺のデッキ」
勝利への希望だった。
「俺は、墓地の《輝白竜 ワイバースター》を除外して、手札から《暗黒竜 コラプサーペント》を特殊召喚! こいつはワイバースターとは逆に、墓地から光属性モンスター1体を除外することでのみ手札から特殊召喚できる! そして、《アレキサンドライドラゴン》を通常召喚!」
ワイバースターと対になる、ブラック・ホールのドラゴン。攻撃力は1800であり、下級モンスターとして十分アタッカーになる数値。
また、通常召喚された《アレキサンドライドラゴン》は、効果を持たない通常モンスターだが、その攻撃力は2000。デメリット無しの下級モンスターの中でも最高値を誇る。
この2体のアタッカーでもレジェンド・アーサーを倒すことはできないが――
『レベル4のモンスターが2体……』
「そうだ! 俺はこの2体のドラゴンでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
黄と紫。二色の光球が巨大な渦へと吸い込まれて行く。大地が、天が、鳴動する。渦は回転を早め、その内より反逆の龍を呼び覚ます!
「漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ! エクシーズ召喚! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」
漆黒の鎧、鋭利な牙と爪。そして、両翼で光る紫の球体。
『ふっ。シンクロ召喚を主体とするあんたが何を呼び出すかと思えば、そいつの攻撃力は2500。アタシのレジェンド・アーサーの攻撃力、3000には及ばない。それに、レジェンド・アーサーは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。折角のエクシーズ召喚も無駄の――』
――それはどうかな。
「俺は、ダーク・リベリオンのエクシーズ効果を発動! このカードのオーバーレイ・ユニットを2つ使い、レジェンド・アーサーを対象として発動する!
レジェンド・アーサーの攻撃力を半分にして、その数値分、ダーク・リベリオンの攻撃力をアップする!」
『なっ……! 攻撃力を吸収するですって!?』
ダーク・リベリオンの両腕に取り付けられた刃にオーバーレイ・ユニットが吸い込まれ、それと同時に両翼が肥大化していく。
モンスターエクシーズの真価は、そのほとんどが己の魂であるオーバーレイ・ユニットを使うことで相手を滅することにある。
「強者に抗う力を受けてみろ! トリーズン・ディスチャージ!!」
ダーク・リベリオンから伸びる雷撃の鎖がレジェンド・アーサーを縛り付け、生命力を奪い取る。
これにより、ダーク・リベリオンの攻撃力は4000へと上昇する。
「まだ終わらない! 魔法発動、《死者蘇生》! 墓地から《邪竜星-ガイザー》を特殊召喚!
そして魔法カード《シンクロ・ギフト》を発動! このカードは、自分フィールドのシンクロモンスター1体の攻撃力を他のモンスターへと分け与える! 俺はダーク・リベリオンの攻撃力を更に上昇させる!」
復活したガイザーの力が、ダーク・リベリオンへと分け与えられる。ガイザーの攻撃力は2600。よって、ダーク・リベリオンの攻撃力は――
『攻撃力、5600ですって……!?』
そう、あの《
「続いて、ガイザーの効果発動! ガイザーとレジェンド・アーサーを破壊する!」
欲を言えばカオスエクシーズは戦闘で破壊したかったのだが、戦闘破壊への耐性があるのだから、ガイザーの効果で破壊するしかない。
「ガイザーが破壊されたことで、ガイザーの効果発動! 来い、《魔竜星-トウテツ》!!」
シンクロモンスターを除き、唯一の「竜星」上級モンスター。「トウテツ」とは、財産を貪る「
『攻撃力2200。なかなか高い攻撃力だけど、ガイザーの効果で呼べるモンスターは守備表示! そのモンスターが攻撃に参加できない以上、ダーク・リベリオンの直接攻撃を受けてもアタシのライフはまだ残る!』
「確かにそうだ。だが、《補給部隊》の効果も同時に発動していることを忘れていないか?」
自身のモンスターが破壊された時に発動する《補給部隊》の効果。それにより引き当てたカードを、俺は公開する。
そのカードを見た彼女の表情が、驚愕に歪んでいく。
『そ、そのカードは……!』
「トウテツは攻撃に参加できない。それでも、思いはダーク・リベリオンへと受け継がれる。これが最後のカードだ! 魔法カード《受け継がれる力》を発動!
自分フィールドのモンスター1体を墓地に送ることで、もう1体のモンスターの攻撃力を墓地に送ったモンスターの攻撃力分アップさせる!」
トウテツが透明な影となり、ダーク・リベリオンへと力を与える。
俺のデッキは「竜星」のリクルート効果を始め、次のモンスターへと思いを受け継いでいく。
ガイザー、そしてトウテツ。2体の「竜星」の力を受け継ぐダーク・リベリオンの攻撃力は――
――7800。
これで、小喬ちゃんの残りライフ7200を全て削ることが可能となる。
『そ、そんな……』
「バトルだ!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で
――反逆のライトニング・ディスオベイ!!
両翼を限界まで広げたダーク・リベリオンが、雷撃を纏って小喬ちゃんへと吶喊する。顎から伸びる鋭利な刃が彼女を掬い上げ、そのまま上空へと弾き飛ばしていった。
小喬 LP7200 → LP0
◇
――あんな強力なモンスターエクシーズを倒しちまうなんて、流石は御遣い様だ!
――シンクロとエクシーズの共演! 痺れるぅ~!
――北郷様、素敵! 私とデュエルして!
ライフが0になるほどの衝撃を受け、地面を転がった小喬。『チーム孫策』の頭脳・周瑜の恋人として恥じない決闘者になるために鍛えぬいた身体も、北郷一刀のフィールの前には不十分だったようだ。立ち上がるどころか、手足を動かすことすら億劫になる。
勝者を褒め称える歓声を、彼女は目を閉じてボンヤリと聞いていた。
「あたしが、負けた……」
これまでずっと鍛錬を重ねてきた。戦場に出たことは無かったものの、実力は『チーム孫策』の中でも上位に位置するほどの実力は持っている。
そして、やっとその実力を示す機会を得られたのだ。仲間を引き抜いていった『チーム劉備』の決闘者を倒し、連れ戻す。そうすれば周瑜を始めとした皆が褒めてくれる。《RUM-バリアンズ・フォース》の力もあったのだから、絶対に成し遂げられると信じていた。
「こんなんじゃあ、冥琳様に顔向けできない……」
だが、結果はこのザマだ。バリアンズ・フォースの悪影響が無いと思っていたら、それはただの錯覚。対戦相手とまともな会話ができなくなる洗脳を受けてしまったのだから。そんな状況に陥り、なおかつ負けてしまっては何の意味も――
「大丈夫か、小喬ちゃん」
誰かが自分の名前を呼んだ。目を開くと、白く輝く服を纏った少年に見下ろされていた。
「何よ。負けたあたしを嘲笑いたいの?」
領地に乗り込んでまでデュエルを挑み、負けてしまったのだ。嘲笑され、拘束されてしまっても不思議ではない。
「そんなことするわけないじゃないか。君は本当に強かった、いいデュエルだったぜ」
「は?」
こいつは何を言っているのだろう。一方的にデュエルを挑んだ相手を労うだなんて、普通はしないだろうに。
「危なかったぜ。《活路への希望》と《補給部隊》で大量のドローができていなかったらそのまま押し切られていたかもしれない。正直言って、次も勝てるかどうかはわからない。もちろん、負けるつもりはないけどな」
「……ふん、勝者の余裕ね。そんなことを敗者に言って何の意味があるっていうのよ」
「意味ならあるさ。周りの声に耳を傾けてみるといい」
「周りの、声?」
敗者である自分が、勝者に逆らうことはできない。言われた通りに耳を澄ましてみると――
――御遣い様も凄かったけど、相手のお嬢ちゃんも強かったよな。
――1ターン目からモンスター3体のエクシーズ召喚! あんなことができるのは冥華蝶だけだと思ってたよ。
――オレ、あの娘とデュエルをしてみたいぜ!
「これは……」
なんということだろう。勝者だけでなく、敗者を褒め称える声が聞こえてくるではないか。
「デュエルをすれば誰もが分かり合える。それは、見ている人だって同じだよ。『チーム孫策』のために乗り込んできて頑張る君の思いと実力を、俺だけじゃなくて観客たち皆が認めているのさ」
観客は皆笑顔だった。そこに敗者を侮蔑するという意思は一切感じられない。バリアンズ・フォースによる騒動が少しあったものの、自分達のデュエルを見て楽しんだうえで、実力を認めてくれたのだ。
「君はどうかな? 俺達が明命を無理矢理引き抜いたという勘違い、考え直してくれたかな」
敗者を無理矢理従わせる決闘者が治める土地ではこのような笑顔を見ることはできない。こんなものを見せられてしまったら、信じるしかないではないか。
「仕方ないわね。今日のところは素直に引き上げる。でも、負けっぱなしなのは冥琳様の恋人として認められない。今度は、バリアンズ・フォースに頼らないあたしの本当の実力であんたを倒す!」
「ああ。いつでもかかって来るといい。俺はどんな時でも、誰の挑戦でも受けるさ」
一刀に支えられながら、小喬は立ち上がった。観客にはこれが美しい友情が芽生えたように見えたのだろう。ドッと拍手が巻き起こる。デュエルで疲れきった身体には大音量は少しキツい。もっとも、悪態をついて
「お~い! 小喬ちゃ~ん!」
大歓声の中にあっても、はっきりと聞こえる声。それは姉の大喬のもので、声は徐々にはっきりと聞こえてくる。
「やっと、見つけたよぉ~」
観客の波を掻き分けて現れた姉は目に見えて疲れきっていた。自分がデュエルをしている間、ずっと探しまわっていたのだろう。本当に悪いことをした。
「ごめん、お姉ちゃん。あたし負けちゃった」
「そんなこと気にしないよ。小喬ちゃんが無事に見つかっただけで、わたしは満足だよ。本当に心配したんだからね」
一刀と入れ替わり、大喬が優しく抱きしめてくれる。少年のゴツゴツした腕もまあ悪くはなかったが、やはり姉が1番だ。
◆
「うんうん。仲良き事は美しきかな」
仲良く抱きしめ合う2人の少女。美少女と仲良くなるのもいいけど、美少女同士の絡みを見るのもいいものだ。
いや、そんなことを考えている場合でもないか。明命と会わせた後で、冥華蝶に頼んで送り返して貰おう――
――随分と仲良くなったようね、貴女達。
「っ!?」
俺の身体を貫く荒々しいフィール。平常時ならば意識を失ってしまいかねないその覇気に気圧されながらも、ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは3人の女性。いずれも海のような透き通る瞳と、桃色の髪を持つ。声を発した女性は以前会ったことがあるが、両脇に立つ少女は初めて見る。瞳と髪の色が同じであることから、彼女達は恐らく姉妹なのだろう。
中央に立つ女性は明命が少し前まで所属していた『チーム孫策』のリーダー。軽いノリで話しかけてきたが、リーダーだけあってその実力は確か。戦ったことはないが、大陸一の運命力を持つと噂されているらしい。また、額にある模様はチームリーダーである証なんだとか。
その隣に立つ少女のうち、1人は小喬や大喬と同じくらいの背丈の小さな少女。ニコニコと俺を見ている様子から天真爛漫という言葉が似合いそうではあるが、左腕に巻かれた腕章に刺繍されている『孫』という文字が『チーム孫策』の一員であることを示している以上、それなりの実力者であることを証明している。
最後の1人は俺と同じくらいの年齢であろう少女。ムスッとした表情で、なんとも気難しそうであり、デュエルも堅実に進めるタイプなのだろうなという印象を受ける。頭に付けたハンガーのようなものは重くないのだろうか。
それはともかくとして。
「久しぶりね、北郷一刀」
『チーム孫策』の襲来は、まだ続くようだ。
●オマケ1……決闘者なら当然のこと
「ところで姉様。扉の向こうにいたのが大喬達であると、何故わかったのですか」
「愚問ね。私は大喬の恋人よ。大事な人がデュエル以外でも発するフィールくらい、扉越しでもわかるわよ」
こんなやり取りが『チーム劉備』へ向かう道中で行われていたのだとか。
●オマケ2……同じ魂
一刀と小喬のデュエルを見ていたのは、民だけではない。その中には『チーム劉備』に所属する者もいた。
「あの小喬という決闘者。他人のような気がしないのです」
大型犬に跨った小さな少女、陳宮である。
一刀と戦っている少女のことは初めて見るはずなのに、何故か知っているような錯覚に襲われたのである。
そのせいか、2人のデュエルの内容はほとんど頭に入っていない。
Q.2014年7月からのリミットレギュレーションについて一言お願いします。
A.俺のデッキへのとばっちりがひどい。征竜禁止にしてくれ。(シードホースさん)
Q.炎蓮さんが自由過ぎる件。
A.本作の登場人物は基本的にやりたい放題やってます。
Q.俺がいないぞ!(《星因子 ウヌク》さん)
A.出そうと思ったんだけど無理でした。
Q.出てきてすぐに自爆させられる。待遇の改善を要求したい。(ガイザーさん)
A.君の役目は今後もそうなると思います。
二喬は無印限定のキャラとはいえ、もっと恋姫二次に出てもいいと思うんだけど、どうして出ないんでしょうかね。
ほとんどマスコット扱いにしかならないからでしょうか。
そして7月からのリミットレギュレーション。
これでようやく征竜が環境から消えるのでしょうか。それとも、まだまだしぶとく残るのでしょうか。ここまで来るとどこまで戦えるのか見てみたくなりますね。
それでは次回、「孫呉襲来[後編]」もよろしくお願いします。