遊☆戯☆王 Love†Princess   作:レモンジュース

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 後半の投稿です。書いた後に見直して、私の作品の一刀さん……というか登場人物のほぼ全員が頭おかしいと改めて実感。どうしてこうなった。




孫呉襲来[後編] 一刀VS孫権!② New

 

 

「北郷一刀……噂通りの実力といったところかしら」

 

 摩天楼よりも更に上から、2人の決闘疾走(ライディングデュエル)を見下ろす孫策、そして冥華蝶。

 速攻を得意とする孫権の【E・HERO】を相手に優劣を覆す、北郷一刀の《革命-トリック・バトル》を用いた見事な戦法。敵ながら賞賛の言葉を送らざるを得なかった。

 

「感心している場合か? 今の攻防で孫権殿の心は折れかかっているようだが」

「蓮華は確かに強い。でも、それはチーム内の決闘者や、そこらの有象無象と戦ってきた中での話。あの娘は他チームの決闘者とのギリギリの攻防という経験が欠けている。だから、圧倒的有利な状況から逆転されただけで心が折れそうになっている」

「……だから、北郷一刀とデュエルを?」

「ええ。彼がこれまで勝利してきたデュエルは、ほとんどが逆転勝利と聞く。あの娘に経験を積ませるにはうってつけの決闘者というわけ」

 

 決闘者が強くなる方法。それはカードを揃えることは勿論だが、何より数十回数百回にも及ぶデュエルがモノを言う。特にデッキや決闘者の種類が多ければ多いほどより良質な経験値となる。だが、それは何度負けたとしても諦めずに戦い続けることができればの話。

 

「それにあの娘には、いつしか失くしてしまった大切なものをこのデュエルで取り戻して欲しいのよ。彼ならやってくれる気がするのよね」

「それは勘か?」

「勘……と言いたいところだけど、違うわね。これは確信よ」

「……ふ、そうか」

 

 孫策の勘は、十割という驚異的な的中率を誇る。そんな彼女が『勘』ではなく『確信』と宣言したということは、相当な自信があるということ。

 

 

 

 ドラゴン使いとHERO使いのデュエルは、最終局面へと向かおうとしていた。

 

 

 

 

「どうして……」

 

 今、孫権のフィールドには《摩天楼-スカイスクレイパー-》が発動されているのみ。手札は攻撃力1200の下級HERO、《E・HEROブレイズマン》が1体のみ。

 対する北郷一刀のフィールドには、《閃珖竜 スターダスト》と《カードガンナー》、「ワルツトークン」の3体。そして、《革命-トリック・バトル》と1枚の伏せカード。

 《カードガンナー》を攻撃した場合は800ポイントのダメージを与えられるが、《革命-トリック・バトル》の効果によりブレイズマンが破壊される。他の2体を攻撃しても《閃珖竜 スターダスト》の効果を発動され、破壊することは不可能。

 それどころか、あの伏せカードで反撃の芽を完全に潰されるかもしれない。

 

(こんな布陣、突破できるわけがない……!)

 

 決闘疾走(ライディングデュエル)中の決闘者の心は、そのままDホースへと伝わる。俯く孫権に呼応するかのようにDホースは徐々に速度を落とし、2人の距離は瞬く間に開いていく――

 

 

 

 

 

 ――はずだった。

 

 

 

 

 

 前を走る北郷一刀は速度を落とし、孫権と並走しようとしているではないか。哀れみの言葉でも投げかけるつもりなのか。

 観客からどよめきの声が上がるのを無視した一刀は遂に孫権の横に並ぶ。どんな言葉を浴びせられるのかと孫権は身構えた。だが、彼が発した言葉は、以外なものだった。

 

 

 

「君は、デュエルが楽しくないのか?」

 

 

 

「え?」

 

 真剣勝負をしているというのに、『楽しくないのか』とは、いったいどういうことなのか。一刀の言った意味が理解できない。

 

「この5ターンの間、君との決闘疾走(ライディングデュエル)を通じて感じたんだ。君は元々、そんな硬い言葉を使い続けるような女の娘じゃないんじゃないか、『強者であろう』という仮面をかぶり続けているのではないかってね」

「明命を連れ去った貴様が、知ったようなことを! そもそも、デュエルは自らの力を示し、より高みを目指すものだ! 楽しむなどということはもっての外ではないか!」

 

 デュエルの実力が全てを左右している以上、国の中枢にいる決闘者は強くなければいけない。強力なカードを揃え、勝ち筋を研究し敵を倒し、その実力を天下万民に知らしめる。デュエルを楽しむなどということにうつつを抜かす余裕などある筈がない。

 

「……確かに、この群雄割拠の時代ではその考えが一般的なのかもしれない。今俺達がやっている決闘疾走(ライディングデュエル)も、明命の運命を左右するものだからな。

 だけど、俺はこんな状況でも楽しいんだ。変身召喚なんて珍しい召喚方法にどう立ち向かおうかっていうワクワクが止まらない。ライフを一気に削られながらもギリギリのところで踏みとどまることができたのも、カード達が俺の想いに応えてくれたからだ。俺はそう確信している」

 

 北郷一刀は、諭すように語りかけてくる。彼の言葉からは嘘偽りは感じられない。本当にデュエルを楽しみ、自らのカードを信じ続けているというのか。

 

「初めてデュエルをした時は、どうだった? 今みたいに硬い表情なんてしていなかったはずだ。

 次に何を引き当てるのか。相手はどんなカードを繰り出してくるのか。お気に入りのカードを活躍させたい。

 そんなワクワクやドキドキが詰まっていたんじゃないのか?」

「…………初めての、デュエル」

 

 

 

 孫権は思い出す。戦乱の世ではなかった、小さな頃の話だ。

 姉の強運で手に入れたカード達を使って初めて組んだデッキ。

 そして、母からデュエルを学び、生まれて初めて行った姉とのデュエルでのラストターンを。

 

 

 

 あの時の自分は、残りライフ100。フィールドには《摩天楼-スカイスクレイパー》しかなく、手札は0。

 対する姉は手札が0だったものの残りライフは2900もあり、フィールドには攻撃力2800の大型天使族モンスター《守護天使(ガーディアンエンジェル)ジャンヌ》が君臨していた。

 このままでは次のターンの敗北は必至。そんな状況で最後にドローしたカード《ミラクル・フュージョン》を使って召喚したモンスター、《E・HEROフレイム・ウィングマン》で見事に逆転勝利を収めたのだ。

 あの時感じた以上の歓びは、それまでの人生でも、それ以降の人生でも味わったことがない。

 いや、例え逆転のカードを引き当てることができなかったとしても関係がない。一進一退の攻防を繰り返した姉との初めてのデュエルは心の底から楽しいと感じられた。

 

 だが、今の自分の状況はどうだろうか。自分が有利な時だけ愉悦を感じて、一転不利になった瞬間にデュエルを諦めようとする。

 

 ――あの時と完全に逆ではないか。

 

「デュエルを、楽しむ……」

「そうだ。デュエルを始めた時のワクワクを持ち続け、どんな状況でも諦めなければカードは絶対に君の想いに応えてくれるさ」

 

 そう言って一刀はDホースの速度を上げ、再び走り去る。彼は期待しているのだろう、自分がこの状況を覆すカードを引き当てることを。そして言葉にはしなかったが、あの伏せカードを用いて凌ぎきるつもりだ。

 

「ふふっ。本当に久しく忘れていたわね、あの時の気持ちを」

 

 孫権の顔に笑みが浮かぶ。それは、デュエルを始めたばかりの頃と全く同じもの。

 

「見せてあげるわ、北郷一刀! 私の本気のデュエルを!」

 

 もう、そこには勝利のみを渇望する決闘者の姿は存在しない。純粋にデュエルを楽しまんとする少年少女と2頭のDホースのみが走り抜けていた。

 

「私の、ターンっ!! スタンバイフェイズ、墓地から《テイク・オーバー5》の効果発動! 手札・デッキ・墓地の《テイク・オーバー5》を全て除外することでカードを1枚ドローする!」

「墓地から魔法カード、しかもドローだと!?」

 

 1度限りとはいえ、5枚の墓地肥やしと追加のドロー。反則じみた効果に、一刀は驚愕する。

 

「メインフェイズに移り、魔法カード《逆境の宝札》を発動! 相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時、カードを2枚ドローする!!」

 

 その名の通り、逆境の時にのみ発動できる手札増強カード。

 孫権は思う。さっきまでの心持ちでカードをドローしていれば、逆境を跳ね返すカードを引くことなどできなかったのではないかと。

 

(今、私の手札にはこの状況を覆すカードは存在しない。でも、私は勝ちたい。あの時の歓びを思い出させてくれた北郷に! だからお願い、私の想いに応えて!)

 

「ドローっ!!」

 

 一陣の風が吹く。それは、孫権を後押しすると同時に、より高みへと昇らせる追い風。

 この4枚の手札が、逆境を跳ね返す一手となる。

 

「今度はこちらが逆転してみせる! 魔法カード《賢者の石-サバティエル》を発動! 私の墓地に「ハネクリボー」モンスターがいる時、ライフを半分支払うことで、デッキから「融合」または「フュージョン」と名の付いた魔法カードを手札に加える!」

 

 孫権 LP3600 → LP1800

 

「何っ!? 「ハネクリボー」モンスターなんて、いつの間に墓地に…………そうか、《テイク・オーバー5》!」

 

 初めてのデュエルの中で使用した自分のデッキでは大して使い道が無いと思っていた《ハネクリボー》。何度もデッキから抜いていたが、いつの間にかデッキに入っていた。そんなはた迷惑なはずだったカードが今、自分を助けてくれた。

 

(あなたはいつも、私を見守ってくれていたのね。ありがとう、《ハネクリボー》)

 

 生まれて初めての、カードへの感謝の言葉。

 

 ――どういたしまして。

 

 そんな声が、聞こえた気がした。

 

「続いて行くわ! 《E・HEROブレイズマン》を召喚! このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから《融合》を1枚手札に加える!

 そしてそのまま発動! 手札の《E・HEROネクロダークマン》と、炎属性のブレイズマンで融合! 来なさい、《E・HEROノヴァマスター》!!」

 

 ここに来て、変身召喚ではなくHEROの十八番である融合召喚。2体のHEROの魂を1つにして現れたのは、燃えるような真紅の身体を持つHERO。

 

「攻撃力2600のHEROか。しかもまだ手札には……!」

「そう! 更に私は魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動! このカードは、フィールド・墓地のモンスターを除外して、「E・HERO」と名の付いた融合モンスターを融合召喚する!

 私が素材とするモンスターは――」

 

 《ミラクル・フュージョン》で除外するカードは、墓地からのみでもよい。つまり、手札1枚の消費で強力な融合モンスターを呼び出せる。しかも、「E・HERO」は多彩な融合が可能なモンスター群。何が呼び出されるか予想できない。

 いったい何が来るのか。一刀は固唾をのんで、孫権が素材とするモンスターの宣言を待つ。

 

「《M・HERO光牙》と《M・HEROダイアン》!」

「っ! 融合モンスター同士の融合召喚だと!?」

 

 融合モンスターを素材として要求する融合モンスターは確かに存在する。だが、融合モンスター同士での融合など見たことがなく、一刀が知る限り《ミラクル・フュージョン》で呼び出されるモンスターの中で、「E・HERO」を要求しない「E・HERO」などいなかったはずだ。

 

「このモンスターは、「M・HERO」2体を素材とした融合召喚でのみ呼び出せるHERO! これこそが究極の融合召喚!」

 

 孫権を後押しする追い風が、更に勢いを増していく。それに連れて彼女のDホースが速度を上げていき、一刀のDホースを再び追い抜いた。今の速度は、大陸最速を誇る呂布のDホース・赤兎馬と同等を記録していた。

 

融合変身(アクセル・フュージョン)!! 現れよ、《C・HERO(コントラスト・ヒーロー)カオス》!!」

 

 右半身が黒、左半身が白という、まさしく対称的(コントラスト)かつ混沌(カオス)を表すHERO。しかも攻撃力は切り札級の言える3000。

 

「《ミラクル・フュージョン》で呼び出せるのは、本来「E・HERO」のみ。しかし《C・HEROカオス》は、「E・HERO」と名の付いたモンスターしても扱われる。それ故《ミラクル・フュージョン》で呼び出すことが可能。

 さあ、その伏せカードはいったい何かしら。ノヴァマスターで《カードガンナー》を攻撃!」

 

 炎を纏ったノヴァマスターの拳が《カードガンナー》へと迫る。《カードガンナー》の攻撃力はわずか400。攻撃力2600のノヴァマスターの攻撃を受ければ残りライフ1400の一刀は敗北を迎える。

 

「させるか! 《カードガンナー》を対象に、罠カード《デストラクト・ポーション》を発動! 対象モンスターを破壊して、攻撃力分のライフを得る!」

 

 流石だと、思わず孫権は感心する。《デストラクト・ポーション》で《カードガンナー》を破壊すれば、微量だがライフを回復した上で低い攻撃力を晒さずに済む。また、《カードガンナー》は破壊された時にカードを1枚ドローする効果がある。

 

「中々のコンボ……と言いたいけど、甘いわよ! 《C・HEROカオス》のモンスター効果発動! 1ターンに1度、フィールド上で表側表示になっているカードの効果をターン終了時まで無効にする。私が選ぶのは、当然《デストラクト・ポーション》!」

 

 《C・HEROカオス》から閃光が発せられる。これが決まれば《カードガンナー》を守る術は――

 

「『甘い』という言葉、そっくりそのままお返しするぜ! 俺は墓地から《デストラクト・ポーション》を対象として《スキル・プリズナー》を発動!」

「っ! 墓地から罠!?」

「このカードを除外することで、《デストラクト・ポーション》を対象とするモンスター効果は無効となる。よって、《C・HEROカオス》の効果を受けず、《カードガンナー》は問題なく破壊される!」

 

 一刀 LP1400 → LP1800

 

(いつの間に墓地に……そうか、《カードガンナー》の効果ね)

 

 《デストラクト・ポーション》の効果で《カードガンナー》が破壊され、一刀は400のライフと1枚の手札を得た。これで彼のフィールドに存在するモンスターは、攻撃力2500の《閃珖竜 スターダスト》と「ワルツトークン」の2体。《革命-トリック・バトル》がある限り攻撃力が高いモンスターが破壊されるため、このまま《閃珖竜 スターダスト》を攻撃すれば一刀に100ポイントのダメージを与えるだけで孫権はノヴァマスターを失うことになる。

 

「《カードガンナー》が破壊されたことで、攻撃の巻き戻しが発生する。さあ、どうする?」

「このターンで終わらせることができなくなったのは残念だけど、攻撃は続行するわよ! 攻撃対象を《閃珖竜 スターダスト》へと変更して攻撃!」

「トリック・バトルの効果をわかった上での攻撃……? ならば、俺は《閃珖竜 スターダスト》の効果を発動する! 対象はトリック・バトル!」

 

 なるほど、彼は孫権が手札に握っているカードが《サイクロン》のような、魔法・罠を除去する速攻魔法と読んでいるのだろう。だが――

 

「読みが外れたわね。私はダメージ計算時に速攻魔法《禁じられた聖典》を発動! ダメージステップ終了時までこのカードを除くカード効果を全て無効にして、元々の攻撃力でダメージ計算を行うわ!」

「全てのカード効果を無効に!?」

 

 カード効果が無効になった以上、《革命-トリック・バトル》の効果は適用されない。よって、通常通り《閃珖竜 スターダスト》が戦闘破壊されることになる。

 

「今度はこっちがトリック・バトルを利用する番! ノヴァマスターよ、スターダストを焼き尽くしなさい!」

「くっ! スターダスト……!」

 

 一刀 LP1800 → LP1700

 

 ノヴァマスターは元々相手モンスターを戦闘破壊した時、カードを1枚ドローする効果を持つ。だが、《禁じられた聖典》で効果が無効になったために効果の発動は封じられている。《閃珖竜 スターダスト》を破壊された一刀にとってこれは不幸中の幸いと言えるだろう。

 

「トリック・バトルがある以上、これ以上の攻撃は無意味ね。私はこれでターン終了。再び形勢逆転ね」

 

 そう言ってターンを終えた孫権の表情はとても晴れやかで、先ほどまでとは完全に別人のようであった。

 

 

 

 

「これは、ちょっとまずいかもな」

 

 孫権のフィールドには、カウンター罠以外のフィールド上のカード効果を全て無効にできる《C・HEROカオス》と、モンスターを戦闘破壊することでカードをドローする効果を持つ《E・HEROノヴァマスター》という2体の強力なモンスターが立ちはだかっている。

 「ワルツトークン」と《革命-トリック・バトル》を再び狙っても、《C・HEROカオス》がトリック・バトルの効果を無効にするだろう。

 また、どちらかの攻撃力を超えるモンスターを召喚しても俺が発動した《革命-トリック・バトル》の効果で俺のモンスターが破壊されるだけ。どちらにしても俺だけが損をすることになる。

 まさに絶体絶命の状況。でも――

 

「この状況をどうやってひっくり返すか。ワクワクして仕方がない……!」

 

 「M・HERO」という未知の融合モンスターに、融合モンスター同士の融合召喚。あの布陣は彼女がデュエルを楽しむ心を取り戻し、己の限界を超えたからこそ創り上げることができたのだろう。

 

「そんなものを見せられちゃあ、俺も限界に挑むしかないじゃないか」

 

 己の限界を超えた先にある揺るぎなき境地『クリアマインド』――。

 この世界に来たことでDホイールが使えなくなってからは、Dホースで『クリアマインド』に到達するために愛馬と共に何百回も決闘疾走(ライディングデュエル)を繰り返してきた。

 今までは何度も失敗して来たが、今ならできる。そんな予感……いや、確信が俺にはあった。俺のDホースも、孫権さんのDホースの走りを見たことで対抗意識を燃やしている。

 

「そうか、この世界でアクセルシンクロをするために必要なもの。それは決闘者とDホースが真に心を通わせることだったんだな」

 

 どうりで今までアクセルシンクロができなかったわけだ。でも――

 

「今の俺達なら必ずできる。そうだろう?」

 

 愛馬が力強く嘶いた。今この時、俺とDホースの心は完全に1つになった。まるで俺が桃香とZEXALになった時と同じように。

 

 

 

 さあ、やってやろうじゃないか。

 

 

 

「感謝するよ、仲謀さん。君は己の限界を超えて、究極の融合召喚、融合変身(アクセルフュージョン)を見せてくれた! だから俺も本当の全力を以て応えてみせる!」

「受けて立つわ、北郷一刀。貴方の全力、この孫仲謀が迎え撃つ!」

 

 前を走る孫権も、それを追う俺も、互いにDホースも全員が最後の攻防に向けて気力は十分。あとは全力でぶつかり合うだけだ。

 

「俺の、タァーンっ!!」

 

 徐々に加速していく俺のDホース。今まで出したことのない速度だが、俺の心は全く焦らず、むしろ今までで1番落ち着いていた。だから、ドローの動作もいつも以上にスムーズに行えた。

 

「俺は「ワルツトークン」をリリースして、魔法カード《アドバンスドロー》を発動する! このカードは、自分フィールドのレベル8以上のモンスターをリリースすることで、カードを2枚ドローする。俺はこれで――」

「そうはさせない! 私は《C・HEROカオス》の効果を、《アドバンスドロー》を対象にして発動! この効果は相手ターンでも発動できる。残念だったわね、これで貴方に残ったカードは手札1枚のみ。それだけでは勝つことなど不可能。勝負あったわね」

 

 確かに彼女の言う通り、今の俺に残った手札は1枚のみ。そう、()は……!

 

「だったら今度はこいつを発動だ。《マジック・プランター》!!」

「2枚目ですって!?」

「永続罠《革命-トリック・バトル》を墓地に送ることで、新たに2枚のカードをドローする!」

 

 2枚目の《マジック・プランター》によって手札に加わった2枚のカード。それは、俺と共に『クリアマインド』に到達したいと願うカード達の答えだった。

 

「《金華猫》を召喚! このカードが召喚に成功した時、墓地からレベル1モンスターを1体特殊召喚できる。来い、《チェンジ・シンクロン》!」

 

 《カードガンナー》の効果で墓地に送られていたチューナーモンスターを小さな化け猫が引きずり出す。これが、アクセルシンクロのための第一歩。

 

「レベル1の《金華猫》に、レベル1の《チェンジ・シンクロン》をチューニング!」

 

 1本の輪となった《チェンジ・シンクロン》が、《金華猫》を包み込む。2体のレベルの合計は2。

 

「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ! 希望の力、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》!!」

 

 F1カーを思わせるボディを持つシンクロチューナーが、爆音を轟かせて現れる。コイツは珍しいレベル2シンクロモンスターだが、それ以上に珍しい力を持つ。それは――

 

「シンクロモンスターの、チューナーですって……!?」

「そうだ! コイツはシンクロモンスターでありながら、チューナーとしての特性も併せ持つ!

 更に《チェンジ・シンクロン》と《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動! 《チェンジ・シンクロン》がシンクロ素材となった時、相手フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する。俺はその効果で《E・HEROノヴァマスター》を守備表示に!

 そして、《フォーミュラ・シンクロン》がシンクロ召喚に成功した時、俺はカードを1枚ドローする!」

 

 Dホースが加速し続ける中、俺が引き当てたカードは――

 

 

 

「いいカードは引けたかしら?」

「ああ、引けたぜ。最高のカードがな! まずは魔法カード《星屑のきらめき》を発動! 墓地のドラゴン族シンクロモンスター1体を選択して、そのモンスターと同じレベルになるように俺の墓地からモンスターを除外することで、選択したモンスターを特殊召喚する!」

 

 発動するカードは、《マジック・プランター》で引き当てたカード。俺の墓地に存在するシンクロモンスターは《閃珖竜 スターダスト》のみであるため、対象は当然コイツとなる。

 

「《閃珖竜 スターダスト》のレベルは8。よって、墓地よりレベル4の《スター・ブライト・ドラゴン》、レベル2の《Galaxy Serpent》、レベル1の《金華猫》と《チェンジ・シンクロン》を除外する。甦れ、《閃珖竜 スターダスト》!!」

「なるほど、ノヴァマスターの守備力は2100。《チェンジ・シンクロン》で表示形式を変更したことで戦闘破壊が可能となる。だけど、私のフィールドには《C・HEROカオス》がいる」

 

 その通りだ。1ターンに1度とはいえ、ほぼ任意のタイミングでカウンター罠以外のあらゆるカード効果を無効にできる《C・HEROカオス》がいる以上、次のターンにスターダストの効果を無効にされて破壊されてしまうだろう。

 

「わかっているさ。だから俺は、このターンで決着をつける! 魔法カード《シンクロ・チェンジ》を発動!

 このカードは、自分フィールドのシンクロモンスター1体を除外することで、同じレベルのシンクロモンスターをエクストラデッキから効果を無効にして特殊召喚する!」

「なっ……! わざわざスターダストを手放すというの!?」

「いや、スターダスト(・・・・・・)を手放すなんてことはしない。俺が呼び出すのは、このモンスターだ!

 集いし願いが、新たに輝く星となる。光差す道となれ! 《スターダスト・ドラゴン》!!」

 

 8本の輪へと姿を変えた《閃珖竜 スターダスト》が、新たなモンスターを生み出す。それは、属性が風であることと、効果の違いを除けば同じ攻守と姿を持つもう1体のスターダスト。

 

「《スターダスト・ドラゴン》……。北郷一刀が持つ真のエースモンスター。でも、今呼び出したところで何の意味も――」

 

 

 

 

 

 ――それはどうかな?

 

 

 

 

 

「言っただろ? 本当の全力を見せてやるってな。行くぞ、限界を超えた境地『クリアマインド』!!」

 

 俺の真のエースモンスター《スターダスト・ドラゴン》と、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》。これで条件は整った。

 

「レベル8のシンクロモンスター《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2のシンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!!」

「Dホースが、更に加速!? なんという速さ……!」

 

 俺の身体が、スピードの世界に溶けていく。どこまでも速さを増していく俺のDホースの今の速さは、恋や翠、白蓮達のDホースをも上回るだろう。その速さはまさに光の如し。常人なら意識を失いかねないスピードを出して尚、いや反比例するかのように俺の心は研ぎ澄まされていく。

 

「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光差す道となれ!!」

 

 決闘者とDホース。2つの心が1つになることで生み出される、シンクロを超えたシンクロ。これこそが――

 

 

 

 

 

 ――アクセルシンクロ!!

 

 

 

 

 

「生来せよ、《シューティング・スター・ドラゴン》!!」

 

 光速を超えた世界より現れるアクセルシンクロモンスター。《スターダスト・ドラゴン》より筋肉質になったこのモンスターの攻撃力は3300。《C・HEROカオス》をも上回る。

 《シューティング・スター・ドラゴン》が放つ眩き光がフィールド全てを包み込み、観客席から感嘆の声が洩れる様子も目に映った。それは孫権も同じのようで、初めて見るアクセルシンクロモンスターに目を奪われていた。

 

「シンクロモンスター同士のシンクロ召喚。これが貴方の全力ということなのね」

「ああ。Dホースと心を1つにして、速さの限界を超えた先で辿り着けるシンクロの境地『クリアマインド』……。それによって生み出される究極のシンクロ召喚こそが、このアクセルシンクロだ!

 決着をつけようか、仲謀さん。俺は《シューティング・スター・ドラゴン》の効果発動! 1ターンに1度、デッキの上からカードを5枚確認し、その中のチューナー1体につき、シューティング・スターは攻撃できる!」

「攻撃力3300の複数回攻撃……! だけど、それは運が良ければの話。もしもチューナーの数が0ならば貴方は攻撃できない。素直に《C・HEROカオス》を攻撃すれば余計な危険を犯す心配もない」

 

 確かに彼女の言う通り、リスクを気にするのなら効果を使わずに攻撃した方が良いのかもしれない。だが、失敗を恐れていては前に進めない。この5枚が導く未来に俺は賭ける!

 

 

 

 ――かっとビングだよ、ご主人様! 私達がついてるよ!

 

 ――お兄ちゃん、頑張るのだ!

 

 ――信じていますよ、ご主人様!

 

 

 

 桃香、鈴々、愛紗。他にも多くの仲間が俺を応援してくれている。

 皆の声援が生み出すこの力があれば、もう何も恐れることは無い!

 

「まず1枚目! 俺が引いたカードは、チューナーモンスター《光竜星-リフン》!」

 

 最初に俺の想いに応えてくれたのは、レベル1の幻竜族チューナー。これで最低限の攻撃は可能となる。

 

「2枚目! ……罠カード《奇跡の軌跡》。そして3枚目も罠カード《奇跡の残照》だ」

 

 次の2枚はどちらも罠カード。孫権の残りライフ1800を削り切るためには3回の攻撃が必要。つまり、もう後は残されていない。だが――

 

「これで貴方は残りの2枚でチューナーを引き当てなければならなくなった。そのような奇跡、起こせるはずがない」

「厳しいということは、百も承知さ。だが、気付かないか? 俺がめくった2枚の罠はどちらも「奇跡」の名を持つカード。きっとこの2枚は残りのカードでチューナーを引き当てるという奇跡を起こしてくれと言っているはずだ」

 

 奇跡へと続く軌跡と、残された奇跡。残る2枚のカードよ、俺に力を貸してくれ!

 

「4枚目! チューナーモンスター《ラブラドライドラゴン》!!」

 

 レベル6のドラゴン族通常チューナーモンスターである《ラブラドライドラゴン》。そして最後の1枚は――

 

「5枚目! これが俺とデッキ、そしてDホースが生んだ絆の力! チューナーモンスター《デブリ・ドラゴン》!!」

「そ、そんな! 合計3回の連続攻撃ですって!?」

 

 

 

 ありがとう、俺のデッキ。

 

 

 

「さあ、終幕(フィニッシュ)だ! 《シューティング・スター・ドラゴン》で攻撃! スターダスト・ミラージュ!!」

 

 俺の攻撃宣言に合わせ、《シューティング・スター・ドラゴン》が赤・青・黄の3色の幻影となる。まずは1回目のバトル。標的にするのは守備表示になっている《E・HEROノヴァマスター》だ。黄色の分身体が残像を残しながら突撃し、その身体を打ち砕く。

 

「くっ……!」

「まだだ! 2回目のバトル! 《C・HEROカオス》を攻撃だ!」

 

 次の攻撃対象は、最後に残ったモンスターであり、彼女の切り札《C・HEROカオス》。青い分身体が旋回しつつカオスへと突き進む。カオスは拳を繰り出して《シューティング・スター・ドラゴン》を受け止めようとするが、攻撃力で劣る以上為す術はない。またもや孫権のモンスターを破壊し、ダメージを与える。

 

 孫権 LP1800 → LP1500

 

「カオスっ!」

 

 カオスを倒したことで彼女のフィールドはがら空き。そして俺のフィールドには攻撃権をあと1回残したアクセルシンクロモンスターがいる。

 

「《シューティング・スター・ドラゴン》で、最後の攻撃! プレイヤーに直接攻撃(ダイレクトアタック)だ!!」

 

 遥か上空へと飛び上がった赤い分身体が、孫権へ急降下する。俺達の想いが篭められた渾身の一撃が摩天楼の壁や窓ガラスを尽く破壊しながら炸裂し、彼女の残りライフを削り取っていった。

 

 孫権 LP1500 → LP0

 

 

 

 

 北郷一刀が呼び出したアクセルシンクロモンスターの直接攻撃により、勝敗は決した。それを裏付けるように《摩天楼-スカイスクレイパー-》や《シューティング・スター・ドラゴン》が姿を消していく。後に残ったのは2人の決闘者と2頭のDホース。

 

「負けた、か」

 

 孫権は動きを止めた愛馬の上で空を見上げながらポツリと呟いた。長いこと他のチームとのデュエル、特に決闘疾走(ライディングデュエル)では負けていなかった自分が味わった久々の敗北。しかも、あと1歩の状況まで追い詰めておきながらの逆転。

 悔しくないはずがなかった。このデュエルは仲間を助け出すために始めたものであり、負けることは許されなかったのだから。

 だが、何故だろう。悔しいという感情とは別に湧き上がってくるこの気持ちは。

 

「おーい、仲謀さん。聞いてる?」

「え?」

 

 声が聞こえた方向へと顔を向けると、この決闘疾走(ライディングデュエル)の勝者がDホースと共に近づいてきていた。彼我の距離はDホース1頭分。この距離まで気付かなかったとは、それ程ボンヤリしていたということか。

 

「ごめんなさい、少しボンヤリしていたみたい。何かしら?」

「ボーっとするのはわかるよ。俺も決闘疾走(ライディングデュエル)の後はたまにそうなるから。

 改めて、いいデュエルをありがとう。ここまで楽しく戦えた決闘疾走(ライディングデュエル)は久しぶりだったよ」

 

 

 

 ありがとう、楽しい。

 

 

 

 他チームの決闘者からそのような言葉を初めて受け取った孫権は面食らってしまう。彼の屈託のない笑顔から、それが本心なのだと感じられた。

 

 ――トクン。

 

 ふと、心の中から暖かで優しい音色が聞こえてきた。これまでデュエルで敗北した時は胸が締め付けられるような苦しさに苛まれていたが、この感覚はそれとは違う。これは、デュエルを始めたばかりの頃に味わったもの。

 

 ――いつの間に、失くしていたのかしら。

 

 初めてのデュエルで姉を倒してから、母や姉を始めとした多くの家族・仲間とデュエルを重ねた。その中では勝利よりも敗北の回数の方が多かった。周りの人達の方がデュエルの経験が多いのだから当然と言えば当然だろう。

 悔しさに泣いたことは数え切れない。だが、それ以上に感じたものは『楽しい』という感情だった。

 地を蹴り、宙を舞い、攻防を繰り広げるモンスター達。魔法や罠の応酬。カードをドローする時のワクワク。新しく発見する戦術。Dホースと共に駆け抜ける爽快感。デュエルをして感じられる全てが楽しかった。

 

 ――こんなに大切なものを。

 

 しかし大陸が乱れ、デュエルが全てを支配するようになってからは『勝利こそが全て』という想いが先行するようになっていった。対戦相手を尊重(リスペクト)するのではなく、どのようにして相手を叩き伏せるかを模索していくようになり、楽しくデュエルをしていたあの時の心はいつしか消えていった。

 

 ――勝ち負けは関係ない。

 

 そんな中で行われた今日の北郷一刀との決闘疾走(ライディングデュエル)。周泰の今後がかかっているデュエルだというのに、彼は心底楽しんでいた。己のカードを信じ、敗北寸前まで追い込まれても決して諦めなかった。だからこそ、カードは彼に応えたのだろう。

 

 ――デュエルとは、

 

 そして、彼の言葉に感化されて自分はあの時の感情を取り戻せた。《ハネクリボー》の力を借り、滅多に出すことができなかった《C・HEROカオス》の融合変身(アクセルフュージョン)をすることもできた。

 

 ――楽しいものだったのに。

 

 更に、自分が今出せる全力を正面から打ち破った北郷一刀のアクセルシンクロ。《シューティング・スター・ドラゴン》を目の当たりにした瞬間、その煌きに心が震えた。その果てで敗北したが、今の自分の表情は目の前の少年と同じように晴れやかなのだろう。

 

「お互いが全力を尽くしてぶつかり合い、勝ち負けに関係なく最後は笑い合う。それこそが本当のデュエル、真の決闘者……。

 こちらこそありがとう、北郷一刀。貴方のおかげで私は大切な気持ちを思い出すことができた。

 お礼として受け取って欲しい。私の真名は蓮華、今ここで渡せる最大限の感謝の印よ」

 

 男性、ましてや他チームの人間に対して真名を許すなんてことは今まで考えもしなかった。だが、『勝利のみを追求する』仮面をかぶり続けていた自分を解き放ってくれた少年になら託しても良いと思ったのだ。

 

「そう、か。なら俺のことも一刀と呼んで欲しい。真名は無く、姓名しか持っていないけど、一刀が真名にあたる。君の真名をありがたく受け取らせてもらうよ、蓮華」

「ええ、一刀。次に戦う時は他の「M・HERO」の力も味あわせてあげるわよ」

「望むところさ。俺だって今度はスターダストの他の進化形態を見せてやる!」

 

 そう言って2人は握手を交わす。気が付けば、互いの健闘を称える声と拍手が轟いていた。その中には孫権を称える『チーム劉備』の者までいる。他チームの人間から賞賛を贈られたことは生まれて初めてであり、妙にこそばゆい。だが、これもたまには悪くない。そう感じる孫権であった。

 

 

 

 

 

●オマケ1……今日の詠ちゃん

 

 

 

 ボクは夢を見ているに違いない。

 

「アクセルシンクロ!!」

 

 一刀がそう叫んだ瞬間、あいつの姿が一瞬消え去った。かと思うと、孫権の後ろから現れ、今まで見たこともないシンクロモンスターが現れた。

 

「シンクロモンスター同士のシンクロ召喚だなんて、やっぱり(Y)ご主人様(G)凄い(S)ね、詠ちゃん!」

「いやいやいやいや。あり得ないわよ、こんなの。だって、馬があんな速さで走れるはずないし、仮にできたとしても乗っている人間がどうして無事でいられるのよ!」

 

 それは人として当然の疑問だと思う。でも――

 

「何言ってるの、詠ちゃん。確かに驚いたけど、決闘疾走(ライディングデュエル)が得意なご主人様ならいつかできるって信じてたもの」

 

 この反応である。

 

 胃薬、また買ってこないと……。

 

 

 

 

●オマケ2……『チーム劉備』では胃薬がよく売れるらしい

 

 

 

 北郷一刀と孫権の決闘疾走(ライディングデュエル)が行われた後、『チーム孫策』の面々は数日の間『チーム劉備』に滞在することになった。孫策曰く、

 

『せっかく来たんだし、もう少し遊んでいきたいじゃない』

 

 とのことである。

 

 元々『チーム劉備』には観光気分で来ていた孫尚香と、孫策と共に遊びたいと考えていた大喬は大喜びで賛成。孫権と小喬は、最初は渋っていたものの全員でカードショップを巡っているうちにお目当てのカードを発見して夢中になっていった。

 そして――

 

「ふぅ、やはりチームが変わると売っているカードの値段も種類も違うわね」

 

 『チーム劉備』に滞在してから4日後の昼。孫権は様々なカードショップを練り歩いていた。彼女は5人の中で他チームへ滞在することに最も渋っていたのだが、なんだかんだで1番楽しんでいたりする。

 一刀との決闘疾走(ライディングデュエル)を通じて、デュエルを楽しむ心を取り戻した影響なのか、楽しいと感じたことにとことんのめり込むようになってしまったようである。

 

「さて、次の店は…………ん?」

 

 本日通算5軒目のカードショップへと向かおうとして、孫権は足を止める。目当てのカードショップの目の前でデュエルが行われていたからだ。

 いつもの彼女なら、店先で行うという行為を多少迷惑に思いつつ店へ入って行っただろう。だがデュエルを行う2人の顔を見た瞬間その考えは消え去った。

 

 ――がんばれ冥華蝶! 爆乳の袁なんかに負けるなぁ~!

 

 ――今日も巨大な盾の力をお見舞いしてやってくれ!

 

 ――店先でデュエルするのはホントやめてくれ……

 

「おーっほっほっほ! わたくしは永続罠《グラヴィティ・バインド-超重力の網》を発動! これでレベル4以上のモンスターの攻撃を封じさせていただきますわ!」

 

 片方は『爆乳の袁』などと名乗っているが、どう見ても袁紹だろう。高笑いを上げながら繰り出すカードはそのほとんどがゴールドレアだったのだから。あのような反りまくるカードを嬉々として使う決闘者は、この大陸のどこを探しても彼女しかいない。

 

「姑息な手を……」

 

 そして、《No.102 光天使(ホーリー・ライトニング)グローリアス・ヘイロー》をエクシーズ召喚しながらそんなことを言っているもう片方は、どう見ても孫権の知人だった。普段はお固い印象で知られる彼女が何故か『チーム劉備』にいて、あまつさえ蝶の仮面を付けてデュエルをしている。

 北郷一刀とのデュエルで色々と吹っ切れたはずの孫権だが――

 

「どういう……ことよ……」

 

 そんな彼女でも目の前の光景を受け入れることはできなかったようだ。

 

 ふと冥華蝶の横に視線を向けると、これまた知っている顔……具体的には小喬が放心していた。恋人同士の関係であるからか、精神的被害は孫権よりも大きかったようだ。

 

「《光天使セプター》を素材としたグローリアス・ヘイローの効果発動! 貴様のグラヴィティ・バインドを破壊して、カードを1枚ドロー!」

 

 そんな孫権や小喬を差し置いて、冥華蝶はノリノリでデュエルをしていた。

 

 

 

 その後数日の間、『チーム劉備』ではいつも以上に胃薬が売れたそうな。

 

 

 

 

●オマケ3……オチ

 

 

 

 

「あの、兄上。雪蓮様達はもう着いた頃でしょうか」

「どうした明命、そんな暗い顔して」

 

 俺と蓮華の決闘疾走(ライディングデュエル)が行われてから10日間『チーム劉備』に滞在していた『チーム孫策』の面々だが、それももう数日前の話。

 嵐のような日々だったけど、大喬・小喬以外から真名を受け取ったり何度もデュエルをしたりと、非常に充実した日々をお互いに過ごせたと思う。

 

「初日以降、というか兄上と蓮華様のデュエルが終わってからというもの、私のことが完全に忘れ去られていますよね。元々は私を連れ戻しに来たはずなのに」

 

 …………あ。

 

 

 

 

「おかえり、雪蓮」

「……ただいま、冥琳」

 

 おかしい。冥華蝶が自分達よりも早く街を出たなどという情報は無かったはず。それどころか、『チーム劉備』を出る時は冥華蝶が他の6人の華蝶仮面と共に賊を鎮圧しているという情報が出回っていた。いつの間に自分達を追い越したのか。

 

「あの~。雪蓮様、少々よろしいでしょうか」

「? どうしたの、穏」

 

 周瑜の隣に立っていた陸遜がいつも通りの間延びした声で話しかけてくるが、どこか様子がおかしい。自分の顔に何か付いているのだろうか。

 

「明命ちゃんは一緒じゃないんですか?」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

 

 孫策、陸遜、周瑜の間で、一瞬だが時が止まった気がした。

 

「…………完全に忘れていたわ」

 

 結局、周泰は『チーム孫策』公認で『チーム劉備』への所属が決定したという。

 




Q.冥琳のキャラ崩壊がやばい。
A.本作ではよくあること。

Q.馬に乗ったままアクセルシンクロだと? ふざけやがって!
A.書いてみて自分でもどうかしていると思いました。

 前回のARC-Vを見て、クッキングデュエルが公式だったことにびっくり。やったね流琉ちゃん、使えるカードが増えるよ! ……と思ったけど、あまりに貧弱なステータスだったのでやっぱり使わせるのを断念。
 RCMの攻撃力300って酷すぎやしませんかね。せめて1000にしてくれればいいのに。《進化する人類》を使えばなんとかなるかな。
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