遊☆戯☆王 Love†Princess   作:レモンジュース

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 10回目のデュエルということで、ようやく一刀さんがデュエルします。
 彼のデッキはどうしようか少し悩んでいましたが、新規テーマのおかげでなんとか決まりました。



頭の中のグスタフ・マックス 一刀VS鳳統!

 

 

「今日も異常なし。いやぁ、平和って素晴らしいなぁ」

 

 活気のある街を見渡しながら、俺は1人呟いた。

 朱里と雛里の献策を受けて立ち上げられた、我が『チーム劉備』の領内を巡回する警備兵(セキュリティ)達。彼等は日々、街の平和を守るために巡回をしてくれている。カードを盗む輩が現れたり、デュエルで不正を行った決闘者が現れたりした時は、颯爽と駆け付けデュエルで成敗している。

 とはいえ、俺達『チーム劉備』の上層部が何もしなくていいというわけではない。時には警備兵(セキュリティ)がしっかり仕事しているか目を光らせ、俺達自身も共に警邏をする必要がある。

 こうした『警邏の警邏』は午前と午後に分けて交代で行なわれており、今日の俺は午前担当。今は午後担当である雷々(らいらい)電々(でんでん)との引き継ぎを終え、城に戻る途中だ。…………彼女達がトラブルを起こすことはない、はずだ。うん、信じるって大事だよね。

 

 青空の下、周りに視線を巡らせながら、街の大通りを闊歩する。視界に映るのは、笑顔でデュエルする子供達。カードを揃える資金が足りないのか、使用しているカードは然程強力ではない。しかし、限られたカードで策を巡らせている姿を見ていると、昔の自分をふと思い出す。俺もあんな時期があったものだ。

 

「あ、御遣い様。オリパはいかがですか」

 

 馴染みのカードショップの前を通り掛かると、店員のお姉さんが話しかけてきた。オリパというのは、「オリジナルパック」の略称で、カードショップの店員が独自に詰めあわせたパックのことだ。購入した人にとって使い道のないカードばかりが当たることもあれば、優秀なカードが数枚手に入ることもある。通常のパックと違い、どのようなカードが入っているか全く予想がつかないため、運要素が非常に高いのだ。

 

「せっかくだからもらうよ。ありがとう」

「お代はちゃんと頂きますよー」

「わかっているさ。でも、この1パックはタダでもらってもいいかな。もしも俺のデッキに合うカードが入っていたら、城の皆の分も買わせてもらうよ」

 

 俺のデッキに合うカードが当たれば、などという条件は一見詐欺し放題なものに思えるだろう。だが、馴染みであるが故にこのお姉さんは俺のデッキのことを多少は知っている。つまり、ごまかしようはないのだ。

 

「へぇ、こっちが損するか儲けられるかどうかの運試しってわけかい。面白いね、その話乗ったよ。さあ、選んでくださいな」

 

 差し出された箱の中から1パックを選び、開封する。このオリジナルパックに封入されるカードは40枚。膨大な種類のカード中から40枚。更にその中から特定のカードを引き当てる確率は限りなく低い。そう、これは俺自身の運命力を試す試練。さあ、来てくれよ――!

 

「……お姉さん、アンタの勝ちだ」

「へぇ。ということは」

「ああ、当たったよ。目当てのカードが。とにかく、約束は約束だ。30パック買っていくよ」

 

 そう言って、財布の中から30パック分の代金を手渡す。少々手痛い出費だが、まあいいだろう。

 

「毎度あり、また来てくださいな。今度はカードの詰め合わせだけじゃなくて、単品も見ていっておくれよ。頑張って仕入れるからさ」

「ああ、また今度寄らせてもらうよ」

 

 オリパが大量に入った紙袋を受け取る。カードは1枚だと軽いが、量が増えればそれなりの重量がある。やや重い紙袋を抱えて、意気揚々と――

 

「ん? 何だ、この声」

 

 意気揚々と城に戻ろうとした時、遠くに見える人混みから歓声が上がった。誰かがデュエルしているようだが、その盛り上がりっぷりは尋常ではない。余程強い決闘者がデュエルしているのだろうか。

 

 ――すげぇ! あのお嬢ちゃん、また勝ちやがった!

 

 ――あんなに簡単にグスタフ・マックスを出せるなんて凄いわ!

 

 ――あんな滅茶苦茶なデッキ、どうやって回してるんだよ!

 

 ――まったく、強い幼女は最高だぜ!

 

「あ~……」

 

 グスタフ・マックスを扱って、かつ魔法使い族と機械族を組み合わせたデッキを操る少女。そんな決闘者はこの大陸のどこを探しても1人しかいない。

 

 ――よし、次は俺が挑むぜ!

 

 ――お前バカだろ。今の10人抜きを見てなんとも思わないのかよ。

 

 ――勝とうだなんて思っちゃいないさ。幼女にボコボコにされるって最高だと思わないか?

 

 そろそろ止めるか。チームの人間が騒ぎの中心になっている上に、危ないヤツまで沸いている。つーか、そこのドMロリコン。お前警備兵(セキュリティ)だろ。減給決定だな。

 

「はいはい、ちょっと通るよ~」

 

 人混みを掻き分けながら、(くだん)の幼女の元へと歩く。何度も肩がぶつかったが、そこは勘弁してもらおう。

 

「雛里っ!」

「あ、ご主人様。どうされましたか」

 

 強めの声で呼びかけると、薄い本型のデュエルディスクを構えたままの雛里がこちらへと振り向く。その顔は晴れやかで、10人と連続でデュエルしたというのに、体力にはまだ少し余裕があるらしい。出会った頃は1回デュエルしただけでへばっていたのに。よくぞここまで成長したものだ。…………って、違う! そうじゃない!

 

「どうされましたか、じゃないだろう。どこでデュエルしようと、それは君の自由だが流石にこれはやりすぎだ。そろそろ引き上げるぞ」

「ふぇ? …………あわわ!」

 

 キョロキョロと辺りを見渡し、自分が多くの人の視線を集めていたことにようやく気がついたのか。雛里はいつもの口癖を言いながら、驚いて縮こまってしまう。

 

「街の人達とのデュエルもいいけど、もう少し周りにも目を向けような」

「はい、しゅみません……」

 

 ますます萎縮してしまったのか、俺の腰にしがみついてくる雛里。とても愛らしいが、少々歩きづらい。

 

「ほら、これで平気だろ? ちゃんと手を繋いだよ」

「……あ」

 

 腰に回っていた腕をほどいて、その小さな手を握りしめてあげると、羞恥で真っ赤に染まった表情がふっと和らいだ。あわあわとテンパる雛里も可愛いけど、こうして笑っている方がもっといい。

 

「行こうか。今日はオリパを30パック買ったんだ。雛里の分もあるし、さっさと帰って開封しよう」

「……はい!」

 

 

 

 

 城に戻った俺と雛里は、城内の東屋に腰を下ろし、さっそくオリパの開封をした。俺達2人で1パックずつだ。俺の方はさっきの1回で運を使い果たしてしまったらしく、今度はハズレだった。一方、雛里は良いカードが手に入ったようで大喜びしている。……また1キルパーツが増えたのだろうか。

 

「本当に……本当にっ、ありがとうございました!」

 

 魔女帽子がずれるのも構わず、大きく頭を下げてお礼の言葉を述べる雛里。また大暴れするのは少し困るが、女の子の笑顔はいつ見ても可愛いものだ。

 

「……しかし、雛里が街中で無双する日が来るだなんて、夢にも思わなかったよ」

「あわわ、もうそれは勘弁してくださ~い」

「反省しているみたいだから、もういいけどね。でもさ、雛里はどうしてあんな場所で野良デュエルをしていたんだ? 俺がこういうことを言うのは良くないのはわかるが、雛里と彼等の実力差は大きすぎるはずだが」

 

 雛里は『チーム劉備』の中でも効果ダメージと1ターンキルに特化したデッキを使う実力者。チーム全員から警戒される程に。そんな彼女が民とデュエルをすれば、勝ち続けるのは容易だろう。

 そんな俺の疑問に、雛里は表情を真剣なものへと変え、答えてくれた。

 

「確かに、私を含め『チーム劉備』の人達と民の実力差は大きいでしょう。それでも、決闘者とデュエル・タクティクスは日々成長を続けています。現に、私が先程デュエルしていた中でも、いつか私達に匹敵するであろう実力を持った人もいました」

 

 なるほど、無双して実力向上をするだけでなく、決闘者の実力の見極めもしていたのか。我がチームでも1,2位を争う頭脳を持つだけのことはあるな。

 

「彼等の持つ戦略を吸収し、自身の糧にすれば、決闘者はより一層強くなれます」

 

 

 

 

 

 ――そうして栄養を与え続けなければ、わたしの頭の中のグスタフ・マックスは死んでしまうのです。

 

 

 

 

 

 なるほどね。この娘はより貪欲に、強くなろうと努力しているということか。俺も見習わないといけないな。

 

「じゃあさ、雛里。今から俺とデュエルしないか」

「え、今から……ですか?」

「ああ。雛里の話を聞いたら急に君とデュエルがしたくなってさ。決闘者は日々成長する、それは俺も同じだ。

 互いの成長を確かめ合う意味も込めて、どうかな?」

「……はい。受けて立ちます、ご主人様」

 

 即答、かつ了承。当然だろう。決闘者なら挑まれたデュエルは必ず受けるものなのだから。

 俺達は東屋を出て、開けた場所まで移動した。互いにオリパで手に入れたばかりのカードをデッキに組み込み、デュエルディスクへとはめ込んだ。そして――

 

「「デュエルディスク、セット!!」」

 

 同時に叫び、デュエルディスクを空中へと放る。俺が扱うデュエルディスクはデュエルアカデミアに通っていた時と同じもの。なお、アカデミアのデュエルディスクはこの世界では基本的に民が扱うものらしく、俺みたいな人間が持つことは滅多に無いらしい。

 対戦相手に舐められるから、相応のものを用意すべきだと言われたこともあるが、それではダメだ。デュエルとは、決闘者とデッキ、そしてディスクが1つになることで初めて真価を発揮するのだから、使い慣れたデュエルディスクを使う方がいいに決まっている。ゆえに、俺はこのディスクで戦い続けるのだ。

 

「遠慮は不要だ。全力で来い、雛里!」

「はい、ご主人様!」

 

 さあ、お互いの持てる力全てを、ぶつけ合おうじゃないか。

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

「先攻は私がいただきます! カードドロー! 《ガガガシスター》を召喚! このモンスターが召喚に成功した時、デッキから「ガガガ」と名の付いた魔法・罠カードを1枚手札に加えます」

 

 最初に雛里が呼び出したのは、白い衣服を纏った魔法少女。腰についた2つのリボンが可愛らしい。

 

「私は、《ガガガウィンド》を手札に加え、そのまま発動します! 手札の「ガガガ」モンスター、《ガガガマジシャン》を特殊召喚です!」

 

 魔法カードの効果により呼びだされたのは、ダルそうな表情を露わにした不良青年。マジシャンとシスターを1ターン目で出すということは、いきなり切り札を出すつもりだな。

 

「私は、《ガガガマジシャン》と《ガガガシスター》の効果を発動します! まずは《ガガガマジシャン》の効果で自身のレベルを4から8に変更! 続いて、《ガガガシスター》の効果で、2体の「ガガガ」のレベルをそれぞれ合計した数値に変更します!」

 

 「ガガガ」カードは、エクシーズ召喚に関連した効果を持つものが多い。《ガガガマジシャン》のレベル変更効果が良い例だ。

 

「レベル10のモンスターが2体、早速来るか!」

「その通りです! 私は、レベル10となった《ガガガマジシャン》と《ガガガシスター》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 2体の「ガガガ」モンスターがそれぞれ『ガガガ!』と叫びながら、俺達が立つ場所の間に形成された光の渦へと飛び込んでいく。

 雛里が放つフィールが、木々を揺らし、大地を震撼させる。1ターン目からなんてフィールだ……!

 

「鉄路の彼方より、地響きとともに、ただいま到着! 《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!!」

 

 莫大な光の中から姿を現した、超弩級の怪物兵器。それなりの広さを持つ庭のほとんどを埋め尽くす質量は、いつ見ても圧巻だ。しかもそれを操るのが見た目小学生の少女なのだから、イメージとのギャップが凄い。

 

「さあ行きますよ、ご主人様! 私は、グスタフ・マックスのオーバーレイ・ユニットを1つ使うことでエクシーズ効果を発動します! ご主人様へ2000ポイントのダメージを与えます! 発射オーライ・ビッグ・キャノン!」

「ぐぁああああ!?」

 

 一刀 LP8000 → LP6000

 

 グスタフ・マックスから発射された砲弾をまともに受け、俺の身体は宙を舞い、地面に叩きつけられた。いきなり2000ポイントのダメージといい、身体を吹き飛ばす程のフィールといい、雛里は本当に強くなった。

 だが、俺もそう簡単に潰されるわけにはいかない。なんとか立ち上がり、身体中に付いた砂を払う。

 

「まったく、いきなり2000バーンを叩き込んでくるとは流石だな、雛里」

「ありがとうございます、ご主人様。

 私はカードを1枚セットしてターンを終了します」

 

 攻撃力3000の大型モンスターエクシーズに加え、2枚の伏せカード。攻防ともに強力な布陣を築いた雛里は、『どうやって突破しますか』と言わんばかりの鋭い視線を向けてきた。

 早いとこグスタフ・マックスを倒さなくては、次のターンで負けてもおかしくはない。

 

「行くぞ! 俺のターン、ドロー! 俺は――」

「この瞬間、私は罠カード《仕込みマシンガン》を発動します! このカードは、相手の手札・フィールド上のカード1枚につき200ポイントのダメージを相手に与えます。今、ご主人様の手札は6枚。よって、1200ポイントのダメージです!」

「何!? くっ……!」

 

 一刀 LP6000 → LP4800

 

 まさかそんなカードまで1ターン目で引き当てているとはな。こっちが何もできないまま3200もライフを削ってくる速攻バーンデッキは、初期ライフがもっと欲しくなる程に恐ろしい。

 だが、俺もやられっぱなしではいられない!

 

「今度はこっちの番だ! 俺は魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》を発動! このカードを発動したターン、俺は通常召喚を2度行える!

 来い、《炎竜星-シュンゲイ》! 《インフルーエンス・ドラゴン》!」

 

 獅子の如きタテガミを持つ炎の竜と、シャープな出で立ちをした風の竜。幻竜族とドラゴン族、2種の(ドラゴン)が並び立つ。

 

「チューナーモンスターですか。なるほど、シンクロ召喚ですね」

「焦るなよ、雛里。確かに《インフルーエンス・ドラゴン》はチューナーモンスターだが、まずはこいつの効果を使わせてもらう。

 このモンスターは、1ターンに1度、自分フィールド上のモンスター1体の種族をドラゴン族に変更できる。俺は、シュンゲイの種族を幻竜族からドラゴン族に変更する!」

 

 《インフルーエンス・ドラゴン》から放たれた光がシュンゲイを包み込み、その種族を自身と同じにする。

 インフルーエンスとは、影響を及ぼすことを意味する。種族を自分と同じにさせるという効果は、カード名をよく表していると言えるだろう。

 

「ドラゴン族に変更したということは……!」

 

 どうやら雛里は俺の狙いに気付いたようだ。召喚前からわかる辺り、よく学んでいるな。

 

「行くぞ! 俺は、ドラゴン族となった《炎竜星-シュンゲイ》に、《インフルーエンス・ドラゴン》をチューニング!」

 

 2体の竜が天空へと駆け上がり、シュンゲイは4つの光球へ、《インフルーエンス・ドラゴン》は3本の光の輪へと変化する。

 

「王者の叫びが木霊する! 勝利の鉄槌よ、大地を砕け!」

 

 光の輪が光球を包み込むと、光はより強く輝き、巨大な翼は広げた灼熱の竜が誕生した。

 

「シンクロ召喚! 羽ばたけ、《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》!!」

 

 その姿は、個人的には正直ややダサいかなぁとか思っている。背中から大きく突出した袋と、そこから伸びる翼。身体とのバランスが悪い。とはいえ、その効果は強力だ。

 

「まずはシュンゲイの効果を発動だ! このカードを素材としたシンクロモンスターの攻撃力と守備力は500ポイントアップする!」

「なるほど。《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》は、自身より低いモンスターとバトルする時、その相手モンスターを破壊し、攻撃力分のダメージを与える効果があります。

 しかし、シュンゲイで攻撃力を上げてなお、現在の攻撃力は2900ポイント。攻撃力3000のグスタフ・マックスには僅かに及びません」

 

 攻撃力3000という数値は、デュエルモンスターズにおいて、高攻撃力の基準とも言えるもの。俺とエクスプロードの目の前にそびえ立つ巨大な機械兵器は、その力をまざまざと見せつけてくる。

 だが――

 

「届かないなら、届くようにするまでだ! 速攻魔法《イージーチューニング》発動! 墓地のチューナーを除外して、その攻撃力を自分フィールドのモンスター1体に加える!

 《インフルーエンス・ドラゴン》の攻撃力は300! よって、エクスプロードの攻撃力は3200までアップする!」

「っ! グスタフ・マックスの攻撃力を上回った!?」

 

 オリパで手に入れた《イージーチューニング》だが、ここまで活躍してくれるとは思わなかった。だが、このカードのおかげで窮地を脱することができる。

 

「さあ、3000ポイントのダメージを受けてもらうぞ、雛里! エクスプロードよ、その灼熱の炎でグスタフ・マックスを焼き尽くせ! キング・ストーム!!」

 

 空気を大きく吸い込んだエクスプロードから放たれた火炎の奔流が、グスタフ・マックスを包み込む。2体のモンスターの力を宿した炎の威力は、巨大兵器の装甲をあっさりと破壊し尽くす。

 

「きゃああああ!?」

 

 鳳統 LP8000 → LP5000

 

 モンスターの破壊と、大ダメージ。その余波をモロに受けた雛里は、後方へと大きく吹き飛び、地面を転がる。だが、雛里も汜水関の戦いを乗り越えた決闘者。そう簡単にはへこたれない。立ち上がり、衣服に付着した砂を払う姿からは、闘志がひしひしと感じられた。

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 これで手札は0枚。最初から手札を全て使いきってしまうのはあまり良くないが、雛里は戦力の出し惜しみをして勝てる相手ではない。

 

「私のターン、ドロー! 私は、《E-エマージェンシーコール》を発動! デッキから《E・HERO プリズマー》を手札に加えます!」

 

 「E・HERO」だって? 雛里のデッキにあんなカードは入っていなかったはず。さっきのオリパの中に入っていたカードということだろうか。

 

「そして、そのまま召喚して効果を発動します! 1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスターを公開し、その融合素材モンスター1体をデッキから墓地に送ることで、プリズマーはエンドフェイズまで墓地に送ったモンスターと同名カードとして扱います!

 私が公開するのは、《呪符竜(アミュレット・ドラゴン)》です!」

 

 雛里が公開した融合モンスターに記されている融合素材は、《ブラック・マジシャン》とドラゴン族モンスター。プリズマーが墓地に送ることができるのは融合素材として正確に記されているモンスターのみであるため、彼女のデッキから闇の魔術師《ブラック・マジシャン》が墓地へと送られる。すると、プリズマーの姿は《ブラック・マジシャン》へと変わった。

 

「更に、魔法カード《ティマイオスの(まなこ)》を発動! 自分フィールド上の「ブラック・マジシャン」と名の付いたモンスター1体を墓地に送り、そのモンスターが融合素材として記されている融合モンスター1体を融合召喚します!」

「何だと!? そんなカードまでデッキに入れていたというのか!?」

 

 そう言えば少し前、かなり高額のカードを手に入れたとか言っていたな。それが《ティマイオスの眼》だということか。

 

「伝説の竜ティマイオス! 今こそ、その力を開放せよ! 来たれ、《呪符竜》!!」

 

 伝説の竜の背中に乗った闇の魔術師。「乗っただけ融合」とは言わないお約束である。

 

「融合召喚に成功した瞬間、《呪符竜》の効果を発動します! お互いの墓地から魔法カードを任意の枚数除外することで、このカードの攻撃力を除外した枚数1枚につき、100ポイント上昇させます!」

「俺達の墓地に存在する魔法カードは5枚。つまり……!」

「その通りです! 私は、《ガガガウィンド》、《二重召喚》、《イージーチューニング》、《E-エマージェンシーコール》、《ティマイオスの眼》の全てを除外して、攻撃力を500ポイントアップさせます!」

 

 竜の背に乗った《ブラック・マジシャン》が杖を振るうと、俺達の墓地に眠る魔法が淡い光を放ち、《呪符竜》へと向かっていく。その力を糧とした竜は、僅かとはいえ攻撃力を上昇させていく。

 

「攻撃力3400、エクスプロードを上回ったか!」

「バトルです! 《呪符竜》で《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》を攻撃! マジック・デストーション!」

 

 竜の口から放たれる火炎弾と、魔術師の杖から放たれる魔法弾。高密度を持つ2つの弾丸がエクスプロードの身体を爆砕する。

 

 一刀 LP4800 → LP4600

 

「くっ! まだまだ! 俺は通常罠《シャドー・インパルス》と、永続罠《竜星の具象化》を発動!」

 

 俺のデッキは、例えモンスターが倒されたとしても、その思いを次のモンスターへと託す。この2枚は、そのためのカード。

 

「まずは《シャドー・インパルス》の効果だ! 自分フィールド上のシンクロモンスターが破壊された時、レベルと種族が同じシンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する! 来い、《妖精竜 エンシェント》!」

 

 最初に現れたのは、エクスプロードと同じ闇属性のドラゴン族モンスター。3000ポイントという高い守備力を持つ、壁として有用なカード。

 

「更に《竜星の具象化》の効果を発動! 1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが破壊された場合、デッキから「竜星」モンスターを特殊召喚する! 俺はこの効果で《光竜星-リフン》を特殊召喚!」

 

 続いて現れたのは、シャチホコに似た姿の幻竜族。攻守は共に0だが、チューナーモンスターであるため、強力なモンスターに繋げられる。

 

「私は、カードを1枚伏せてターンエンドです」

 

 後続のモンスター、しかも《妖精竜 エンシェント》とチューナーモンスターを残してしまったことに、雛里は歯噛みする。聡い彼女だからこそわかるのだろう。このモンスター達を残してターンを渡すことの危険性が。

 

「俺のターン、ドローだ!」

 

 デッキからカードを抜き放ち、確認する。よし、いいカードが来てくれた。どうやら流れは俺に向いてきているようだ。

 

「俺は、フィールド魔法《竜の渓谷》を発動する!」

「ここで、フィールド魔法を引き当てた!?」

 

 驚愕の表情を浮かべる雛里。無理もないかもしれない。何故なら、この状況で引き当てるべきカードを引き当てたのだから。

 

「エンシェントの効果発動! 自分のターンにフィールド魔法が発動された時場合、カードを1枚ドローする!」

「あわわ……。これは少しまずいかもしれないです……」

「続いて、エンシェントのもう1つの効果を発動する! 1ターンに1度、フィールド魔法が発動している場合、表側攻撃表示モンスター1体を破壊する! 森葬の霊場(スピリット・ベリアル)!」

 

 エンシェントが放つ閃光が雛里の竜を包み込み、爆砕する。如何に高い攻撃力を持っていたとしても、効果破壊の前には無力。

 

「くぅ……! ですが、《呪符竜》のもう1つの効果を発動します! このカードが破壊された場合、墓地から魔法使い族モンスター1体を復活させます! 来てください、《ブラック・マジシャン》!」

 

 竜が破壊されるその直前。魔術師がその背中から飛び降り、着地する。その攻撃力は2500ポイント。攻撃力2100のエンシェントよりも高い。

 

「エンシェントの攻撃力では届かない。このままなら突破は不可能だ。それでも、俺のフィールドにはリフンがいる!

 俺は、レベル7の《妖精竜 エンシェント》に、レベル1の《光竜星-リフン》をチューニング!」

 

 リフンが形成する光の輪が、エンシェントを包み込む。その合計レベルは8だ。

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ! 魂を震わし世界に轟け!」

 

 《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》の時とは比べ物にならないほどの閃光が、俺達が立つフィールドを包み込む。

 光誕するのは、まさしく「閃珖」の竜。

 

「シンクロ召喚! 輝け、《閃珖竜 スターダスト》!!」

「ついに、来ましたか。ご主人様のエースモンスターの一角が」

 

 スターダストの咆哮がフィールドに木霊する。攻撃力は2500と、シンクロモンスターとしては平均的な数値ではある。しかし、その光り輝く翼は俺を包み込み、安心させてくれるような力強さを感じさせる。

 

「バトルだ! スターダストで《ブラック・マジシャン》を攻撃!」

「2体のモンスターの攻撃力は同じ。ですがそのモンスターの効果は……!」

 

 スターダストの口から放たれる光の奔流と、魔術師の杖から放たれる魔法弾。互角の攻撃力である2体の戦いは共倒れになるのが普通だ。だが――

 

「ああ、そうだ! 俺はスターダストの効果発動! 1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するカードを1枚選択し、そのカードをこのターンの間1度だけ破壊から守る! 俺はスターダスト自身を選択する! 波動音壁(ソニック・バリア)!」

 

 光の壁がスターダストを包む盾となる。これにより、魔術師の攻撃はスターダストには届かない。

 

「この効果により、この戦闘で破壊されるのは《ブラック・マジシャン》のみ! 行け、スターダスト! 流星閃撃(シューティング・ブラスト)!!」

「くぅっ……! 《ブラック・マジシャン》!」

「俺は、カードを1枚伏せてターンを終了する!」

 

 《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》と《ブラック・マジシャン》、雛里が持つエースモンスター達を倒したものの、未だに俺は安心することが出来なかった。

 雛里の場には伏せカードが1枚。更に次のドローで手札は2枚。合計で3枚のカードがあるのならば、雛里はこの状況を覆すことができるはずである。

 現に、強力な破壊耐性を持つスターダストを目の前にしているというのに、雛里の目は死んでいない。彼女の頭の中では、こいつを突破する手段が山のように積み上げられているのだろう。

 

「私のターン、ドローです! 私は、《可変機獣 ガンナードラゴン》を召喚します! このモンスターのレベルは7ですが、攻撃力と守備力を半分の1400へと下げることで、リリース無しで召喚できます!」

 

 元々の攻撃力を下げて召喚されたことで、その身から伸びる砲身はやや短めだ。しかしあのモンスターのレベルは7だ。雛里のデッキでは、あの「No.」を呼び出すために必要な素材として重宝されている。

 

「更に、永続罠《正統なる血統》を発動します! 墓地の通常モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚します。再び現れてください、《ブラック・マジシャン》!!」

 

 あの魔術師が2度目……いや、伝説の竜に乗って現れたことも考えれば3度目か。雛里のデッキはデュエル毎にその色を変えるが、今回は《ブラック・マジシャン》を軸にしたもののようだ。

 いや、今はそんなことよりも重要なことがある。それは――

 

「2体のレベルは共に7。来るか、雛里の「No.」が……!」

 

 グスタフ・マックスも雛里の見た目からはギャップが大きいが、あの「No.」はもっとイメージにそぐわない。

 

「いえ、今回は違います。ご主人様にお見せしましょう、《ブラック・マジシャン》の真の姿を!

 私は、2体のレベル7モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築します!」

 

 突如、雛里を包み込むフィールが一変する。それは、スターダストの閃光と真逆の深い闇。だが、それは月夜のような安心感を与えてくれる幻想的な闇。

 紫色の球体を吸収した巨大な光の渦より現れるのは――

 

「エクシーズ召喚! 来てください、(いにしえ)の魂を継ぐ黒衣の魔導師! 《幻想の黒魔導師》!!」

 

 主を勝利へと導く、真の力を開放した《ブラック・マジシャン》。こんな隠し球まで持っていたとは驚きだ。このカードは俺も見るのが初めてであり、どのような効果を持っているのかは想像が出来ない。だが、高ランクのモンスターエクシーズである以上、強力な効果を持っているに違いない。

 

「《幻想の黒魔導師》の効果発動です! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、デッキから魔法使い族の通常モンスターを1体特殊召喚します!

 私が呼び出すのは、攻撃力2900の《コスモクイーン》です!」

「オーバーレイ・ユニットを使うだけでモンスターをリクルートするだと!?」

 

 頭に大きな飾りを付けた、全ての星を統治しているという宇宙の女王。《ブラック・マジシャン》をも超える攻撃力を持つ強力な魔法使い族モンスターであり、そんなモンスターをノーコストで呼び出すとは、なんて強力な効果だ。

 

「バトル! 私は、《コスモクイーン》で、スターダストを攻撃します!」

「攻撃力は《コスモクイーン》の方が上だが、スターダストは1ターンに1度の破壊耐性がある! そのモンスターエクシーズの攻撃力が2500である以上、突破することは出来ないはずだ!」

 

 そうだ、突破にはまだ時間がかかるはず――

 

 

 

 

 

 

 ――それはどうでしょうか。

 

 

 

 

 

「私は《幻想の黒魔導師》のもう1つの効果を発動します! 1ターンに1度、自分フィールド上の魔法使い族通常モンスターが攻撃する時、相手フィールド上のカード1枚を除外します!」

「っ! 破壊ではなく除外だと!? しかもノーコストで!?」

 

 黒魔導師が杖を振り上げると、スターダストが異空間へと吸い込まれて行く。まさか、こんな方法で除去してくるなんて……!

 

「スターダストが除外されたことで、攻撃の巻き戻しが発生します。私は、《コスモクイーン》の攻撃対象をご主人様へと変更します!」

 

 く、ここで使うつもりは無かったが仕方がない……!

 

「ダメージステップ時、罠カード《逆さ眼鏡》を発動! フィールド上の全てのモンスターの攻撃力を半分にする!」

 

 現在、俺の場にはモンスターがいないため、影響を受けるのは雛里のモンスターのみ。だが――

 

「ぐっ……!」

 

 一刀 LP4600 → LP3150

 

 やはり直接攻撃による痛みはそれなりにキツい。《コスモクイーン》が放つ光弾を受け、俺の意識が一瞬だが飛びそうになる。それでも、まだ《幻想の黒魔導師》の攻撃が残っている以上、倒れるわけにはいかない。

 

「これで終わりです! 《幻想の黒魔導師》で、ご主人様に直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

 黒魔導師が杖を振り上げ、《ブラック・マジシャン》のものよりも巨大な魔法弾を放つ。攻撃力が半分になっているとはいえ、《ブラック・マジシャン》の真の姿であるモンスターエクシーズによる直接攻撃が襲う衝撃は尋常ではない。

 10発もの魔法弾の攻撃をモロに受け、俺の身体は何度も地面をバウンドした。

 

 一刀 LP3150 → LP1900

 

「私はこれで、ターンエンドです」

 

 ふぅ、なんとか耐えることが出来た。攻撃力2500オーバーのモンスターをポンポン出されちゃあ、気を抜く暇も無い。しかも、自分フィールドの戦力を増やし、相手のフィールドも蹂躙する《幻想の黒魔導師》の効果はあまりにも強力だ。

 雛里がカードを伏せずにターンを終えたことから、次のターンで俺の行動を制限するカードは今までの雛里とのデュエルを考えればほぼ無いと言ってもいいだろう。

 だが、今の俺の手札は0枚。次のドローで逆転のカードを引けなければ、そこで終わってしまうだろう。

 

「俺のターン、ドローッ!!」

 

 ……っ! よし、これなら!

 

「俺は、魔法カード《マジック・プランター》を発動! 自分フィールドで表側表示になっている永続罠カードを墓地に送ることで、カードを2枚ドローする!」

「こ、この局面でドローソース!?」

 

 新たに俺の手に加わった2枚のカード。どうやら天は俺に味方してくれているらしい。

 

「俺は手札より、チューナーモンスター《カメンレオン》を通常召喚! このモンスターが召喚に成功した時、墓地から守備力0のモンスターを1体選択して、守備表示で特殊召喚する! 俺は、《炎竜星-シュンゲイ》を特殊召喚!」

 

 《カメンレオン》が伸ばした長い舌が、シュンゲイを釣り上げる。2体の合計レベルは8であり、かつシュンゲイの種族は幻竜族。

 雛里も俺の狙いに気がついたようだ。彼女の額から汗が一筋滑り落ちる。

 

「さあ、お楽しみはこれからだ! 俺は、レベル4のシュンゲイに、レベル4の《カメンレオン》をチューニング! シンクロ召喚、《輝竜星-ショウフク》!」

 

 本日3回目のシンクロ召喚により現れるのは、「竜星」モンスターの中でも上位に位置するシンクロモンスター。元々の攻撃力は2300しか無いが、シュンゲイを素材としたことで2800へと上昇する。

 

「ショウフクがシンクロ召喚に成功した時、効果発動だ! 素材とした幻竜族モンスターの属性の種類の数まで、フィールド上のカードをデッキに戻す! 俺は、《コスモクイーン》をデッキに戻す!」

「あわわ!?」

 

 素材とした幻竜族がシュンゲイしかいなかったため、戻せる枚数は1枚だけだ。しかし、これで雛里のフィールドには攻撃力2500の黒魔導師のみ。

 

「バトルだ! 《輝竜星-ショウフク》で、《幻想の黒魔導師》を攻撃!」

「くっ……!」

 

 鳳統 LP5000 → LP4700

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

 雛里の強力なモンスター達によって、俺のモンスターが次々と破壊されてきたが、こっちだって負けてはいない。思いを繋ぐ(ドラゴン)達の絆で、勝利を掴みとってみせる!

 

「私のターン、ドロー! ……っ! 私は、魔法カード《死者蘇生》を発動します! 墓地のグスタフ・マックスを復活させます!

 そして、装備魔法《巨大化》をご主人様の《輝竜星-ショウフク》に装備します!」

 

 《巨大化》は、その名の通りモンスターの攻撃力に関連する効果を持つ装備魔法。使用者のライフが相手プレイヤーよりも低い時、装備モンスターの攻撃力は元々の倍になり、高い場合は半分になる。

 通常ならば、ピンチの時に自分のモンスターを強化するカードだが、現在は雛里のライフポイントの方が多い。その状況で俺のモンスターに装備したということは……!

 

「私のライフが多い状態で相手モンスターに装備したことで、ショウフクの攻撃力は元々の半分、つまり1150になります!

 バトルです! グスタフ・マックスでショウフクに攻撃! グスタフ・ハンマー!!」

 

 グスタフ・マックスの砲塔が巨大な槌となり、ショウフクへと振り下ろされる。これを受ければ、俺の残りライフは50となる。だが――

 

「そうはいかない! 速攻魔法《移り気な仕立屋》を発動!」

「そ、そのカードは!」

「あまり使われないカードだが、知っているようだな。そうだ、このカードはモンスターに装備された装備カード1枚を、別の正しい対象となるモンスター1体へと移し替える!

 この効果で、《巨大化》をグスタフ・マックスへと装備させる!」

 

 《巨大化》は、どのモンスターにも装備可能なカード。よって、グスタフ・マックスにも問題なく装備は可能だ。

 ショウフクの身体を縮小させていた装備魔法が対象を変え、巨大兵器をみるみるうちに小さくさせていく。3000もあった高い攻撃力も、半分の1500になってしまえば全く怖くはない。

 

「一度宣言した攻撃は止められない! ショウフクよ、グスタフ・マックスを迎え撃て!」

 

 装備魔法の枷が外れたことで攻撃力が2800へと戻ったショウフクの牙により、グスタフ・マックスの装甲が噛み砕かれ、爆散する。

 

「くぅっ……!」

 

 鳳統 LP4700 → LP3400

 

 爆発の余波を受け、怯む雛里。彼女の手札とフィールドにはカードが無くなったため、自動的に俺のターンへと移行する。

 

「俺のターン! 俺は、ショウフクの効果を発動! 1ターンに1度、自分フィールドのカード1枚を破壊することで、俺の墓地からレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!

 《竜の渓谷》を破壊して、レベル4のシュンゲイを特殊召喚! そして2体で直接攻撃!」

 

 フィールドが掻き消えると共に、入れ替わるようにシュンゲイが復活する。今日のデュエルで3回目の登場であり、働かせ過ぎで少々申し訳ない気持ちになる。

 2体の竜の突撃。総攻撃力は3700であり、雛里の残りライフを僅かに上回っている。

 ギリギリだったが、これで俺の勝ちだ。

 

 鳳統 LP3400 → LP0

 

 

 

 

「やっぱりご主人様は強いです。たくさん特訓したのにちっとも敵いません」

 

 デュエルを終えた俺達は、再び東屋へと移動し、今回のデュエルの反省会を行っていた。デュエルを終えた後に両者がデッキ構成などについて話し合うということは、『チーム劉備』ではよく実施されている。1人でしてもいいのだが、対戦相手からの意見を参考にするのも、自分が見えていなかったことが見えてくるため、たいへん有効なのである。

 

「そんなこと無いって。俺だって雛里の猛攻を受けまくってヒヤヒヤしていたんだし」

「そうなんですか?」

 

 これは事実だ。《連弾の魔術師》とバーン魔法によるコンボ、グスタフ・マックスの高火力。更には《ブラック・マジシャン》とその派生系。雛里のデッキは見た目とは裏腹にかなり攻撃的であり、油断していると一瞬でライフを消し飛ばされてもおかしくはないのだ。そのため、彼女とデュエルする時はそれを上回るパワー、または効果ダメージへのメタカードが必須となる。

 

「そう言えば、ご主人様が使った《移り気な仕立屋》は、いつデッキに? もしかしてさっきのオリパに入っていたカードなのでしょうか」

「当たりだ。あまり見かけないカードだし、面白そうだからデッキに入れてみたけど、上手く機能してくれて良かったよ」

「あわわ、思いつきで使ったカードで負けてしまったということですか……」

 

 ありゃ、ショボくれちゃった。コンボや実用性を重視するタイプだから、ピンポイントメタ、しかもマイナーカードを使うという発想があまり無いのか余計にそう感じるのかもしれない。

 

「気にするなって。デュエルにはこういうことも偶にあるさ。さあ、反省会の続きをしようぜ。俺のデッキの改善案について、雛里の意見も聞いてみたいんだ」

「……はい!」

 

 だが、やはり頼られると嬉しいのか。雛里ははにかみながら頷いてくれた。

 それから暫くの間、俺達は『ああでもない、こうでもない』と意見を交わした。俺はデッキに入れるチューナーや『竜星』モンスターの数について。雛里はバーンカードや《ブラック・マジシャン》のサポートカードについて、改善案を出しあうことができた。気が付くと、日は沈みかけていた。随分と長く話したものだ。

 

「さて、俺はそろそろ戻るとするかな。皆にオリパを配らなきゃいけないし。雛里はどうする?」

「私はもう少し残って1人で考えてみます。良い案が浮かびそうなので」

「そっか。じゃあまた後でな」

 

 俺は背を向けると、城へと戻った。まずは誰のところへ行こうか。

 

 

 

 

 

●オマケ……今日の詠ちゃん

 

 

 

「…………またか」

 

 賈駆が城の中、具体的には玉座の間で掃除をしていると、巨大なモンスターが召喚された音が轟き、彼女はため息をついた。『チーム劉備』に来てからそれなりに時間が経っているので、どのモンスターが召喚されたのかはある程度わかるようになった。これは、鳳統が使う機械族モンスター、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》と、その効果による効果ダメージの音だろう。

 その後にも、シンクロ召喚の音と、《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》を始めとした様々な(ドラゴン)の声も聞こえた。

 

「相手はアイツね。ドラゴン族と幻竜族、それにシンクロモンスターを使う決闘者なんてアイツくらいだもの」

 

 爆音を聞きながら、賈駆は掃き掃除を続ける。彼女が今掃除している場所は、つい先程まで関羽と董卓が銀河眼(ギャラクシーアイズ)対決を繰り広げられており、床は穴だらけである。デュエルをする場所に合わせてモンスターの大きさが縮小されていたといっても、そこはやはり実力者同士のデュエル。周りにもそれなりの被害は出るものだ。

 

「……音が止んだということは、デュエルは終わったみたいね」

 

 修復が完了したと同時に、うるさく響いていた音が無くなった。賈駆は腰にぶら下げていた水筒を口元に運び、水を一気飲みすると外へと向かう。デュエルの後片付けをするために。

 

 今日もお掃除を頑張る詠ちゃんであった。

 




Q.ひなりんのデッキ、メチャクチャじゃん!
A.アニメではよくあること。

Q.一刀さんのデッキはどんなデッキ?
A.【竜星】に【ドラゴン族】要素を混ぜたものとなっております。

Q.この外史でのカードの価格はどうなっているの?
A.「No.」等、超希少なものを除けば現実とあまり変わりません。

Q.毎日掃除が大変。もっと楽がしたい。(ツンツンツン子さん)
A.そんな貴女に《白兵戦型お手伝いロボ》

 少年と少女がお互いの実力を伸ばすために競い合っていると言えば何も問題はないけど、
 実際には兵器と竜と魔法使いの攻防により、人が吹き飛び、地面が抉れる惨状を作り上げているという。
 ウチの詠ちゃんには本当に苦労をおかけします。
 次は誰にデュエルさせようかな。

 それではまた、次回もお会いしましょう。
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