遊☆戯☆王 Love†Princess   作:レモンジュース

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 キャラ崩壊は基本。

 熱血指導を盧植にやらせようと思ったら、公式で盧植が恋姫化されていることをつい先日知りました。
 口調や呼称は「恋姫†英雄譚」のサイトを見ながら急遽修正したものなので、間違いがあればご指摘お願い致します。



風鈴せんせーの熱血指導 劉備VS盧植!

 

 

 これは、俺が『チーム劉備』の仲間になってすぐの話だ。

 

 デュエルの勉強をしている時にふと、桃香が掲げる目標……誰もが笑顔でデュエルができる世の中にしたいという思いを何故持つようになったのかを聞いてみた。

 いつも楽しそうにデュエルをしている彼女がそんな信念を持つのは当然のことだが、それを大陸全てにまで広げようと考えるようになったきっかけについて少し気になったのだ。

 すると彼女は空を見上げ、懐かしむように教えてくれた。

 

「私が白蓮ちゃんと一緒に通っていた学校でね、お世話になった先生がいたの。その人……風鈴先生は私達にデュエルの基本を教えてくれて、『タイミングを逃す』とか、『ダメージステップ』とか、わからないことがあったらすぐに答えてくれたんだ」

「確か、子幹(盧植の字)さんだっけ。デュエルの腕はかなりのものだって聞いたけど」

「そうだよ。アカデミアを出てからけっこう経つけど、今でも敵う気はしない。それくらい強い先生なんだよ。

 でも、それだけじゃない。風鈴先生はいつも私達に言ってくれた」

 

 

 

 ――デュエルに勝ちたいという気持ちは皆が持っている。それは、風鈴だって同じだよ。でも、勝利を求める中でいつか『如何にして相手を倒すか』という思いが強くなっていくかもしれない。そんな時は思い出して、初めてデュエルをした時のワクワクを。モンスターを召喚して、目の前に現れた時の感動を。

 ただ純粋に、デュエルを楽しむ心をいつまでも持ち続けて欲しいの。だって、暗い感情のままデュエルしていたら、カード達にも対戦相手にも失礼でしょう?

 だから、デュエルを楽しもう。エンジョイデュエル!

 

 

 

「先生の教えがあったからこそ、私はいつもデュエルを楽しむことができる。だからこそ思ったんだ。今、この大陸は暴政や賄賂のせいでデュエルを楽しめない人達が増え続けている。だからこそ、私達は立ち上がったの。悪いことをしている人達をデュエルで懲らしめる。そして、苦しんでいる人達にデュエルを楽しむ心を思い出してもらうために」

 

 そうか、盧植さんがいたからこそ今の桃香があるんだな。その思いが報われるよう、俺も頑張るとしますか。

 

 

 

 

「ここが桃香ちゃんが治めている街か。良い政治をしているみたいだね」

 

 多くの民が行き交う街中を歩く女性が、嬉しそうに呟いた。

 彼女の名は盧植。真名を風鈴という。童顔であるが故に年齢よりも幼く見られかねないが、実際にはそのようなことは無い。

 

 ――膝元まで伸ばした銀髪は、雲のように緩やかで、彼女が生来持っている優しさを体現しているかのよう。

 

 ――少しずらした楕円形の眼鏡と右手に持つデュエル指南書は、理知的な印象を抱かせる。

 

 ――露出した肩、巨大な乳房、そして履物から覗く右足は、子供では決して出せない大人の色香を存分に放つ。

 

 これだけの要素があれば、『若々しい』という印象は持たれても『童女』などという印象を持たれることはまずないだろう。

 

「デュエルの腕も随分と上達したって話だし。会うのが楽しみ♪」

 

 『チーム劉備』のリーダー・劉備の師でもある盧植は今、洛陽にてデュエルアカデミアを経営している。かつては暴政や賄賂によって廃れていた都であったが、『チーム董卓』の善政によって持ち直したのである。

 その洛陽も反董卓連合によって再び荒廃してしまうかのように思われた。しかし、皇甫嵩や盧植を始めとした決闘者の手によりデュエルアカデミアが設立され、彼女達の指導のおかげで、最悪の事態は免れた。今では『チーム曹操』や『チーム孫策』が治める街のような活気は無いものの、それなりに住みやすい街になっているという。

 では、デュエルアカデミアで講師をしているはずの盧植がなぜ徐州に来ているのか。それは、州牧になった劉備への陣中見舞いのためである。お互いに多忙であったため、なかなか会う機会に恵まれなかったが、ようやく時間を作ることができた。もう1人の教え子である公孫賛も共にいるということもあり、久しぶりに顔を合わせデュエルをしてみたいと考え、こうして1人で足を運んだのである。

 ようやく徐州にやってきた盧植は、その繁栄模様に驚いた。劉備のことを教え子の中で唯一只者ではないと考えていたが、これ程までに成長しているとは。街や人を見れば、だいたいのことがわかる。カードショップは適正価格で販売をしているようだし、どの決闘者も活気がある。来る途中の噂でも聞いていたが、本当に良い政治をしているようだった。

 

「良い仲間に恵まれているみたいね…………あら?」

 

 視線の先で歩いていた男性が持つ鞄から、何かが落ちた。盧植がしゃがみこんで拾ってみると、それはデッキケースであった。勿論カードも入っている。決闘者にとって命よりも大切なものを紛失すれば、落とし主は大層落ち込むだろう。そのため前を歩く男性へと声をかけようとして――、

 

 

 

 ――汝、我ヲ使役シ、コノ街ヲカオス二陥レヨ。

 

 

 

「え……?」

 

 頭の中に、野太い声が響く。

 

 盧植の額に紋様が浮かび上がり、彼女の意識はそこで途絶えた――。

 

 

 

 

「風鈴先生、遅いなー」

 

 俺と桃香は今、城門でとある客が訪れるのを待っている。その客とは、桃香がデュエルアカデミアに通っていた時の先生である盧植さん。将来に迷っていた桃香に助言を与えた人物である。洛陽で一度だけ会ったことがあるが、天然系ほんわかお姉さんという言葉が似合う超絶美人だった。

 あの時は(ゆえ)と詠を匿い、急いで洛陽を離れなければならなかったため、デュエルをする時間は取れなかったが、桃香と白蓮の話を聞く限り、かなりの凄腕決闘者であるらしい。今の俺でも勝てるかどうか。

 そんな盧植さんが今日、俺達の陣中見舞いのために訪れる予定なのだが、まだ来る気配が無い。手紙には今日の正午あたりに来る予定だったはず。だが、今はもう日が沈みかけている。つまり夕方だ。この世界では携帯電話のような便利な通信手段は無いため、遠く離れた相手が今どのような状況にあるかを確かめられないので、心配になってしまう。何かあったのだろうか。

 

「あれ? ご主人様、警備兵(セキュリティ)の人がこっちに来てるよ。何かあったのかな」

「ホントだ。随分と慌てているみたいだが……」

 

 その警備兵(セキュリティ)は、俺達の前で止まると、息を切らしながら報告した。

 

「申し上げます! 広場で盧植と名乗る決闘者が暴れています! 実力差がありすぎて、我等でも太刀打ちできません! 至急、助太刀をお願い致します!」

「風鈴先生が……!? そんなこと、ありえないよ!」

 

 盧植さんの人柄をよく知っているからだろう。桃香は警備兵(セキュリティ)の報告をすぐに信じることができないようだった。

 

「桃香、行くぞ! 暴れている人が誰かは関係ない! 今は助けを求めている人のために動くのが最優先のはずだ!」

「……うん、そうだよね!」

 

 暴れているのが、本当にあの盧植さんと同一人物だとしたら、その原因は「No.」かもしれない。それとも、他のカード? ふと、月が使っているあのカードが頭を()ぎった。

 

 

 

 現場に到着すると、そこには変わり果てた盧植さんの姿と、地に倒れ伏す警備兵(セキュリティ)達の姿があった。

 

「風鈴に逆らっておきながら、貴方達の実力はこの程度!? 期待はずれにも程があるわ! さあ、立つのよ! 風鈴の熱血指導で鍛え直してあげる!」

 

 警備兵(セキュリティ)達を見下しながら高笑いを上げる盧植さん。どうやら彼女が暴れているという話は本当だったらしい。俺の隣に立つ桃香は、ショックを隠し切れないようだ。目を見開き、両手で口を押さえている。

 あの温厚な盧植さんがあそこまで豹変するだなんて、いったい何が…………ん、あれは!

 

「桃香、子幹さんの額を見てみろ!」

「え、額? ……あ!」

 

 盧植さんの額には、月が持っているカード、《RUM(ランクアップマジック)-バリアンズ・フォース》の絵と同じ紋様が浮かび上がっていた。

 まさか、あのカードを持っているせいで凶暴な性格になってしまったというのか。月はあそこまで攻撃的になっていなかったことから考えると、もしかしたら個人差があるのかもしれない。とはいえ、ここまで気性が荒くなるとは驚きだが。

 

「あら、そこにいるのは桃香ちゃんじゃない」

 

 こちらに気付いた盧植さんが、狂気が宿った瞳を向けてくる。くっ、なんてフィールだ。睨まれているだけなのに気圧される……!

 

「風鈴先生、こんなことやめて! いつものエンジョイデュエルはどうしちゃったの!?」

「……エンジョイ? フフフ、こんなに弱い人達相手じゃあ、楽しめるものも楽しめないでしょ? だから、風鈴が熱血指導してあげるの!」

 

 まずいな、完全に正気を失っている。言葉で説得するのは不可能なようだ。

 

「桃香!」

「うん、わかってる! 私のデュエルで、風鈴先生の目を覚ましてみせる!」

 

 そうだ、言葉で説得できないのなら、もうデュエルしかない。相手がどれだけ強くても、勇気を持って一歩を踏み出せ!

 

「力を手にした私に勝てると思っているのかしら。ククク、熱血指導よぉ!!」

「勝ってみせる! 元の優しい風鈴先生を取り戻すために!」

 

「「デュエルディスク、セット!!」」

 

 俺も一緒に戦ってやりたいが、盧植さんの目を覚ますには俺よりも桃香の方が適役だろう。望まない形でのデュエルをさせてしまっているようで心苦しくはあるが、ここは応援に徹する。

 桃香、勝てよ……!

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

「先攻は私! カードドロー! まずは《ドドドウィッチ》を召喚!」

 

 桃香の眼前に、黒いマスクで口元を覆った女性が現れる。「ウィッチ」という名前だが、魔法使い族ではなく戦士族だったりする。

 

「《ドドドウィッチ》の効果発動! このカードが召喚または特殊召喚に成功した時、手札の「ドドド」モンスターを表側攻撃表示か裏側守備表示で特殊召喚できる!

 私は、《ドドドボット》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 《ドドドウィッチ》が右手に持った杖を振るうと、手札から機械兵士が飛び出し、ウィッチの横に並び立つ。2体のモンスターのレベルは共に4だ。

 

「私は、レベル4の《ドドドウィッチ》と、《ドドドボット》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 2体の「ドドド」モンスターが茶色の球体となって、光の渦へと吸い込まれて行く。描かれる螺旋は勢いを高め、金色の爆発と共に光の騎士が君臨する。

 

「私の戦いはここより始まる! 白き翼に望みを託せ! 現れよ、《No.39 希望皇ホープ》!」

「来たわね、桃香ちゃんのエースモンスター」

 

 デュエルの中心となるレベル4モンスター。それを用いてエクシーズ召喚されるこの「No.」は、かなりの出しやすさを誇る。また、桃香のエースであるだけでなく、彼女のデュエルを支え続ける「希望」でもある。

 

「更に、装備魔法《ホープ剣スラッシュ》をホープに装備! このカードが装備されている限り、ホープはカード効果で破壊されない! そして――」

「ホープはオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、モンスターの攻撃を無効にできる。桃香ちゃんのエースモンスターのことくらい、ちゃんと調べてあるわ」

 

 なるほど。正気を失っていても実力はそのままということか、これは厄介だ。桃香のカードのことを知っているということは、おそらく対策も講じているはずだ。

 

「くっ、私はこれでターンエンド!」

「ならば風鈴のターン、ドロー! 速攻魔法《手札断殺》を発動! お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドロー!」

 

 手札交換のカードか。だが、あのカードはただ発動するだけでは使用者がディスアドバンテージを負う。何が狙いだ?

 

「風鈴が墓地に送るカードは、《熱血獣王ベアーマン》と、《熱血獣士ウルフバーク》! そして、新たにカードを2枚ドロー!」

 

 ベアーマンとウルフバーク、2体の獣戦士族モンスターを墓地に送った盧植さんは、荒々しくカードをドローすると、あらかじめ手札にあったカードを発動した。

 

「魔法発動、《死者蘇生》! 墓地からベアーマンを特殊召喚するよ!」

 

 墓地より現れたのは、鎧とバイザーを身に付けた荒々しい熊。以前出会った時は、このようなモンスターを持っていなかったはず。それに、彼女の性格を考えるとあまり似合わない。だが、豹変してしまった彼女が扱うにはピッタリのモンスターと言える。

 

「続いて、《熱血獣士ウルフバーク》を召喚! このモンスターは1ターンに1度、墓地の獣戦士族・炎属性・レベル4モンスターを守備表示で特殊召喚できる! この効果により、2体目のウルフバークを特殊召喚!」

 

 ベアーマンと同じく、鎧とバイザーを身に付けた狼のモンスター。あっという間にモンスターを3体も展開してくるとは、流石は盧植さん。なんというスピード……!

 

「最後に、ベアーマンの効果発動! 1ターンに1度、自分フィールドの全ての獣戦士族・レベル4モンスターのレベルを8にするよ!」

「レベル8のモンスターが、3体!?」

 

 馬鹿な! たった1ターンでレベル8モンスターを3体使った大型モンスターエクシーズを召喚するというのか!?

 

「風鈴は、レベル8のベアーマンと、ウルフバーク2体でオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 赤色の球体となった3体のモンスターが、天空に現れた光の渦へと飲み込まれる。渦は荒々しく鳴動し、光の爆発と共にモンスターエクシーズを出現させた。

 

「エクシーズ召喚! 現れよ、《熱血指導王ジャイアントレーナー》!!」

 

腕立て伏せをしながら現れた、巨大なモンスターエクシーズ。金属バットをぶんぶん振り回すその姿は、名前通りの指導者のようだった。使用者が発するフィールも相まって、その迫力は桁違い。

 

「さあ、ジャイアントレーナーの熱血効果を発動だよ! バトルフェイズを放棄する代わりに、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、カードを1枚ドローする。そのカードがモンスターカードだった場合、相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える! そしてこの効果は1ターンに3度まで使用できる!」

「ドローと効果ダメージを、同時に!?」

「しかも、3度までということは、手札の損失を完全に回復するということになる!」

 

 エクシーズ召喚し辛いランク8なだけあって、やはり強力な効果を持っていたか。

 バトルフェイズが行えないデメリットも、2回まで攻撃を無効にできるホープがいるこの状況では、無いに等しい。

 

「まずは1枚目、ドロー! 風鈴が引いたカードは、レベル8モンスター《神獣王バルバロス》! よって、喰らいなさい800のダメージを!」

 

 ジャイアントレーナーが持つバットから、光の奔流が迸る。桃香は悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。俺は彼女が飛ばされる場所へ回り込み、なんとかその身体を受け止めた。

 

 劉備 LP8000 → LP7200

 

「大丈夫か、桃香!」

「うん、なんとか……。でも、たった800のダメージなのに、身体が少し痺れるよ……」

 

 桃香の言う通り、彼女の身体は若干だが震えていた。一撃でこれとは、残り2回のドローがモンスターカードだったら、どれだけの痛みを感じてしまうというのか。

 

「ンまだまだぁ! 2枚目ドロー! 今度は3枚目のウルフバーク! 再び受けなさい800のダメージを!」

「く、うぅ……!」

 

 劉備 LP7200 → LP6400

 

「そして最後の3枚目! ドローしたのは《焔征竜-ブラスター》!」

「ぐ……!」

 

 劉備 LP6400 → LP5600

 

 連続の効果ダメージを受け、桃香は膝をついてしまう。まだライフポイントに余裕があるとはいえ、効果ダメージでここまで桃香の身体を痛めつけるなんて……!

 

「更にここで、魔法カード《トレード・イン》を発動! 手札のレベル8モンスター《神獣王バルバロス》を墓地に送ることで、カードを2枚ドローするよッ!」

 

 ジャイアントレーナーの効果で手札が増えたとしても、それを有効活用できなければ意味が無い。だが、手札交換によって盧植さんはその隙を埋めてきた。敵ながら完璧なプレイングだと、思わず感心してしまう。

 それにしても、桃香は大丈夫だろうか。相手はかつての恩師。その人が高圧的なフィールを以て襲いかかるとあっては、優しい彼女にとってはかなり辛いはずだ。

 フラつきながらも立ち上がる。その瞳は――

 

「1ターン目からこんなに強烈なフィールをぶつけてくるなんて……、やっぱり風鈴先生は凄い。でも、今の先生はデュエルを楽しんでいない。先生はどんな時でもデュエルを楽しんでいた。勝っても負けても、お互いが笑顔になれるデュエルをしていた。それなのに、今の先生からは、相手を力で捻じ伏せようとするフィールしか感じられない。

 だから、私は諦めずに戦う! 本当の貴女を取り戻すために!」

 

 ――少しも諦めていない。それどころか、全身全霊で盧植さんを助け出したいという思いが感じられる。

 どうやら、心配は杞憂だったようだ。

 

「ふふふ、言うようになったじゃない、桃香ちゃん。でも、このカードを見ても、その威勢を保っていられるかな?」

 

 その瞬間、彼女が纏うフィールが凄みを増した。同時に、額の紋様が輝きを増していく。来るのか、あのカードが……!

 

「っ! 先生、そのカードを使っちゃダメ!」

 

 これまで俺達は月があのカードを使っている様子を見ている。その時は、単純に強力なカードという印象が強かった。しかし、先程も感じたように今回は何かが違う。直接対峙している桃香も、その脅威と危険性を感じ取ったのだろう。

 だが、もう止められない。盧植さんは、手札から1枚のカードを選び出し、それをデュエルディスクへと挿入した。

 

 

 

 ――《RUM-バリアンズ・フォース》を発動ッ!

 

 

 

「このカードは、自分フィールドのモンスターエクシーズ1体をランクアップさせ、カオスエクシーズを特殊召喚する!

 風鈴は、ランク8のジャイアントレーナー1体で、オーバーレイ・ネットワークを再構築ゥ!」

 

 ジャイアントレーナーが赤い光となって、上空に出現した漆黒の渦へと吸い込まれて行く。そして、深緑の爆発が巻き起こると、禍々しき戦士が降臨した。

 

「カオスエクシーズチェンジ! 現れよ、《CX(カオスエクシーズ) 熱血指導神アルティメットレーナー》!!」

 

 6本の腕を持つ、凶悪な風貌の戦士。青い配色だったジャイアントレーナーと比べて、赤めの配色となったその姿は、『熱血』の名がよく似合うように見えた。

 

「やっぱり、カオスエクシーズ! でも、この禍々しさは……!」

「ンまだまだぁ! バリアンズ・フォースのもう1つの効果を発動だよ! ホープのオーバーレイ・ユニット1つを、アルティメットレーナーのものにするわ! カオス・ドレイン!」

 

 ホープからオーバーレイ・ユニットが奪われ、合計2つの結晶がアルティメットレーナーの眼前に浮遊した。

 

「さあ、アルティメットレーナーの超熱血効果を発動! 1ターンに1度、カオスオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、カードを1枚ドロー! それがモンスターだったならば、相手に800ポイントのダメージを与えるわ!」

「ジャイアントレーナーと同じ効果!?」

「覚悟はいいかな桃香ちゃん! アルティメット・トライアル!」

 

 盧植さんはこれまで3回のドローで、全てモンスターカードを引き当てている。ただの偶然なのではないかと疑いたくもなるが、恐らくそうではない。デュエルを楽しむ心を失い、勝利のみを貪欲に求めるようになった執念が、驚異的なドローを発揮しているのだろう。ならば、次にドローするカードも間違いなくモンスターカードのはずだ。

 

「引いたカードは、モンスターカード《竜の騎士(ドラゴン・ナイト)》! 再び800ポイントのダメージだよ!」

「きゃああああ!?」

 

 劉備 LP5600 → LP4800

 

 6本の腕による連撃が桃香を襲う。800ポイントのダメージとはいえ、カオスエクシーズを用いる盧植さんのフィールは圧倒的。桃香の身体は、鞠のようにあっさりと弾き飛ばされる。

 

「桃香!」

 

 俺は再び桃香の落下地点へ回り込み、受け止める。

 抱き止めた桃香の額からは、少量だが血が流れていた。洛陽で行われた月とのデュエル以降、より一層体力強化に励んできた桃香がこれ程のダメージを受けるとは。やはり、あのバリアンズ・フォースは月のものとは何かが違うのか。

 

「だい、じょうぶ、だよ……ご主人様。まだまだライフは残ってるんだから」

 

 俺の身体を支えにしながら立ち上がる桃香。その様子は、盧植さんを助け出したいという思いが無ければ、倒れてしまってもおかしくはなかった。

 本音を言えばここで止めたいところだ。しかし、それをすれば彼女の気持ちを踏みにじることになるし、どんな時でも『かっとビング』し続けるとあの誓いを破るなんてこと、絶対にしてはいけない。

 だから、俺は信じる。桃香の勝利を!

 

「まだ立ち上がれるのね、桃香ちゃん。だったら、今度はこのカードだよ! 魔法カード《デス・メテオ》! 貴女のチームにもこのカードを多用する決闘者がいたから効果は言わなくてもわかるよね」

「またバーンカード!? くっ……!」

 

 劉備 LP4800 → LP3800

 

 盧植さんの頭上より放たれる火炎弾が、桃香を襲う。ついにライフが半分を下回ってしまった。

 《デス・メテオ》は、相手のライフポイントが3000より高い時、1000ポイントのダメージを与える通常魔法。バーンカードとしてはなかなか安定した性能を誇り、『チーム劉備』のバーン大好き決闘者である雛里も多用している。

 

「風鈴は、カードを2枚伏せて、ターン終了だよ。どうかな、桃香ちゃん。先生の熱血指導は。この力こそ、風鈴が本当に望んでいたもの。そう、デュエルは勝利こそが全て。仲良く楽しくデュエルだなんて、必要がないの。バリアンズ・フォースとカオスエクシーズさえあれば、風鈴は誰にも負けはしない。大陸最強の『チーム曹操』のリーダー、曹孟徳にもね」

「先生……」

 

 『エンジョイデュエル』は、盧植さんの信念。それを否定する言葉を自ら放つなんて、バリアンズ・フォースは「No.」と同じく、あそこまで決闘者を支配できるというのか。

 

「ついでに教えておくね。風鈴が伏せたカードの内、1枚は《火霊術-「紅」》っていう罠カード。このカードは、自分フィールド上の炎属性モンスターをリリースすることで、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるわ。アルティメットレーナーの攻撃力は3800。残りライフ3800の桃香ちゃんがこの効果を受けたらどうなるか、わかるよね」

 

 それは、誰でもわかる引き算。3800から3800を引いたら、ライフはピッタリ0になる。

 今、桃香の手札には効果ダメージに対抗するカードは存在しない。あるのならば、とっくに使っているはずだ。

 そんな状況で、引導火力となるフリーチェーンの罠カード。このままでは……!

 

「これで終わりだよ、桃香ちゃん。風鈴の――」

 

 

 

 

 

「そんなことない!」

 

 

 

 

 

 だが、桃香はそんな盧植さんの勝利宣言を否定した。

 

「確かに、風鈴先生は強いよ。私も今は立っているのがやっとだし、もう諦めてもおかしくない状態だと思う。

 でも! アカデミアに通っていた時、デュエルで負けてばかりだった私に先生は言ってくれた! デュエルを愛し、デッキを信じ続けていれば、希望という名のカードは、私を助けてくれるって!」

 

 その通りだ、桃香。君は1人じゃない。俺や愛紗達、多くの仲間に囲まれ、いくつもの経験を積み重ねて来た。それも全て、皆が笑顔でデュエルができる世の中を作るため。

 どんな時でも信念を貫き通す君が、カード1枚に支配され、信念を捨てた決闘者に負けるはずがない!

 

「いけ、桃香!」

「うん! かっとビングだよ、私! ドロォオオオオ!!」

 

 かっとビング。それは、どんなピンチでも決して諦めないこと。勝利を信じて、迷い無く引き当てたあのカードは、きっと桃香を助けてくれる。

 

「フフフ、このスタンバイフェイズ! アルティメットレーナーをリリースすることで《火霊術-「紅」》を発動! 3800のダメージで、終わりだよッ!」

 

 炎に包まれたアルティメットレーナーの突撃が桃香に迫る。あれを受ければライフは0になる。

 

 

 

 

 

 ――そう、受ければ。

 

 

 

 

 

「この瞬間、私は手札から《ハネワタ》の効果を発動! このモンスターを手札から捨てることで、ターンが終わるまで私が受ける効果ダメージは0になる!」

 

 羽が生え、つぶらな瞳をした淡い色の小さなモンスター。レベルもステータスも低いが、今この時は、彼女を救う最良のカード。

 桃香の手札から現れた《ハネワタ》は、その小さな身体でアルティメットレーナーの突撃を受け止め、耐え切ってみせた。

 

「そ、そんな! このドローで《ハネワタ》を引き当てたっていうの!?」

「私はこのカードを引き当てられるって信じてた。だから、《ハネワタ》も私に応えてくれた。それだけのことだよ、先生」

 

 効果ダメージに対抗するためのカードは、雛里への対策として『チーム劉備』の全員がデッキに投入している。《ハネワタ》もその内の1枚。通常のデュエルでは用いられないカードだが、バーン大好きの雛里がチーム内にいたからこそ、この攻撃を耐え切ることができたのだ。

 ありがとう、雛里。

 

「……先生の熱血指導を悉く拒否するのね。だったら、罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動! 墓地からアルティメットレーナーを特殊召喚して、このカードをカオスオーバーレイ・ユニットにするよ! アルティメットレーナーはカード効果の対象にならない! そう簡単には突破できないよ、桃香ちゃん!」

 

 再び現れたアルティメットレーナー。トドメを刺せなかった場合の保険もかけておくその用意周到さは、さすがと言える。だが――

 

 

 

 

 

 ――それは、どうかな?

 

 

 

 

「っ!?」

 

 勝利の方程式は全て揃っている。そう言わんばかりの笑みを浮かべながら桃香は告げた。《ハネワタ》の効果が発動した時から俺は確信していた。彼女はこのターンでアルティメットレーナーを倒し、勝利を掴み取るのだと。

 

「いくよ、先生! 私の仲間達の力で、貴女に勝利してみせる! まずは、ホープをエクシーズ素材として、カオスエクシーズチェンジ!」

 

 ホープが待機形態となって、桃香の足元に現れた光の渦へと消えていく。その渦は強い輝きを放ち、混沌を光へと変える希望の使者を光臨させる。

 

「来て、希望の力! 《CNo.39 希望皇ホープレイ》!!」

 

 現れたのは、その身を黒く染めたホープ。

 桃香のライフポイントが1000を超えているため、ホープレイは効果を使用できず、更には装備魔法も無くなった。だが、これでいい。

 

「続いて、墓地から《オーバーレイ・ブースター》のモンスター効果発動!」

「それは、《手札断札》で墓地に送ったカード……!」

 

 《手札断殺》は、自分だけでなく相手の動きも補助することがある。バリアンズ・フォースによる支配で本来のデュエルを見失ってしまったツケが、今になって回ってきたのだ。

 

「このカードを墓地から除外することで、自分フィールドに存在するオーバーレイ・ユニットを持つモンスターエクシーズを1体選択して、その攻撃力をオーバーレイ・ユニット1つにつき500ポイントアップさせる!

 ホープレイのオーバーレイ・ユニットは2つ! よって、攻撃力は1000ポイントアップする!」

 

 これでホープレイの攻撃力は3500となったが、アルティメットレーナーの攻撃力には僅かに届かない。盧植さんはホッとした表情を浮かべるが、甘い。オーバーレイ・ユニットを増やすためにホープレイを召喚したのだから、桃香の手札にはあの装備魔法もあるはずだ。

 

「更に、装備魔法《ストイック・チャレンジ》をホープレイに装備! このカードは、装備モンスターが持つオーバーレイ・ユニットの数1つにつき、攻撃力を600ポイントアップさせる!」

「攻撃力4700……! アルティメットレーナーの攻撃力を上回った!?」

 

 今、桃香が使用した2枚のカードは、それぞれ愛紗と鈴々が愛用しているカード。彼女達は互いのカードを勧めることがよくあるらしい。仲間と共に競い合い、成長してきた絆が、ホープレイの力をこれ程までに高めたのだ。

 

「バトル! ホープレイでアルティメットレーナーを攻撃! そしてこの瞬間、墓地の《タスケルトン》のモンスター効果を発動! ホープレイの攻撃を無効にする!」

 

 ホープレイの両手に構えられた2本の剣が抜き放たれ、アルティメットレーナーへと迫る。だが、その攻撃を黒い仔豚が防ぐ。皮膚が飛び出し、骨だけとなった姿で剣を受け止め砕け散る様子は少しグロテスクに見える。

 

「自分の攻撃を、無効に? ……まさか!」

「そのまさかだよ、先生! 私は、速攻魔法《ダブル・アップ・チャンス》を発動! モンスターの攻撃が無効になった時、攻撃力を2倍にして、2度目の攻撃を可能にする!」

 

 ホープレイの身体が、白く輝き出す。更に、もう2本の腕が、背中に担がれた巨大な剣を抜き放つ。この輝きこそ、希望の使者に相応しき眩き光。

 

「攻撃力9400!? しかも、その装備魔法の効果は!」

「そうだよ、先生! 《ストイック・チャレンジ》を装備したモンスターが相手モンスターとの戦闘で与えるダメージは倍になる!」

 

 2体のモンスターの攻撃力の差は5600。戦闘ダメージが倍になるということは、発生知るダメージは実に11200。つまり、ワンショットキルが成立する!

 

「これが、『チーム劉備』の絆の力! ホープレイでアルティメットレーナーに再び攻撃! ホープ剣・ブースト・カオススラッシュ!!」

 

 桃香、愛紗、鈴々。

 3人の力が合わさったホープレイの斬撃が、混沌(カオス)の力へと炸裂する。

 絆という名のフィールをまともに受けた盧植さんだが、元々の実力が高いためか、吹き飛ばされるということは無かった。とはいえ、10000オーバーの戦闘ダメージによるワンショットキルだ。その衝撃には耐えられず、彼女の身体はその場に崩れ落ちていった。

 

 盧植 LP8000 → LP0

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。洛陽へと戻った盧植さんを見送った俺と桃香は、桃香の部屋でバリアンズ・フォースについて話し合っていた。

 あのデュエルの後、盧植さんのデッキからバリアンズ・フォースを抜き出し、手にとってみたのだが、邪悪な力は全くと言っていい程に感じられなかった。目を覚ました盧植さんも同じ。もっとも、彼女は警備兵(セキュリティ)を痛めつけ、桃香ともデュエルしたという記憶が無いという。バリアンズ・フォースに意識を完全に乗っ取られていたということだろう。

 そして、バリアンズ・フォースを落としたという男のことも気になる。街中でカードを落とし、盧植さんがそれを拾い、騒ぎを起こす。最終的には桃香とデュエルをしたが、これは偶然だろうか。いや、あまりにも出来過ぎていて、そうなるように仕向けたのではないかと疑いたくなる。

 

「ところで桃香、バリアンズ・フォースをデッキに入れていたりはしていないだろうな」

「もう、ご主人様ってば何度も言わないで大丈夫だよ。あんな怖いカード、使おうだなんて思わないもん」

 

 回収したバリアンズ・フォースは、現在は城の奥で厳重に保管されている。いくら無害になったとしても、月が使っていたものとは違い事件を起こしたカードであることに変わりはない。念の為に保管しておくべきだろう。総管理者も美花(ミーファ)に任せているので、誰かが無断で持ち出すようなことはないはずだ。

 

「それよりさ、ご主人様。これからカードショップに行こうよ。最近、新しい「魔人」エクシーズが入荷したんだって!」

「へえ、そうなのか。俺もデッキ強化をしようと思っていたところだし、行くとするかね」

「うん、行こう行こう♪」

 

 

 

 

 

 デュエル戦国時代という乱世の中、その闇は徐々に姿を現してきた。わからないことはまだまだ多いが、放置すべきではない。これが誰かの陰謀だというのなら、絶対に阻止してみせる。

 『天の御遣い』だからという理由なんかじゃない。ただ1人の決闘者として、デュエルを心の底から楽しめる人を増やしていきたいというだけ。

 それに、俺には頼れる仲間達がいる。彼女達と一緒なら、恐れるものは何もない。

 

 

 

 さあ、今日もエンジョイデュエルだ!

 

 

 

 

 

●オマケ1……その頃の白蓮さん

 

 

 

 劉備と盧植のデュエルが始まる直前。城壁の上で何度も「ドロー!」と叫びながら腕を振る女性の姿が目撃された。《青眼の白龍》をこよなく愛する決闘者、公孫賛である。

 

「風鈴先生に見せてやる! 我がブルーアイズが放つ強靭で無敵で最強の力を! フハハハハハッ!」

 

 そして木霊する高笑い。今日も公孫賛さんはうるさかった。

 

 

 

 

●オマケ2……その頃のひなりん

 

 

 

 劉備と盧植のデュエルが行なわれている頃。カードショップで少女は運命の1冊に出会う。

 

『これを読んで、君もワンキルを楽しもう! 1ターンあれば十分だ!』

 

 そんな広告と共に陳列されていたのは、【盧惇(ろっとん)のワンキル講座】というデュエルモンスターズの情報誌。表紙には若干色黒の男性が描かれており、裏表紙には『粗挽き肉団子にしてやるぜ!』という台詞がでかでかと書かれていた。

 更に中を見てみると、1ターンキルを効率よく行う方法が事細かに記述されていた。

 

「あわわ、これは凄いです……」

 

 それから数日後、『焼き鳥』と呼ばれていた少女は『魔砲幼女☆ひなりん』とも呼ばれるようになった。

 




Q.風鈴せんせーの声優さんは片桐プロでいいんじゃないかな。
A.(無言の手刀)

Q.↑やめて月!
A.次は止めないよ、詠ちゃん。

Q.『チーム劉備』のデッキが脳筋ばかりな気がする。
A.短いターンで終わる構成を目指していたら、いつの間にかこうなってました。

Q.警備兵の人達はどうして普通に拘束しないの?
A.え、デュエルで拘束は基本でしょ(真顔)

Q.何故ひなりんをワンキル厨にした。
A.ワンキル幼女という新ジャンル。

 というわけで、今回は熱血指導回のパロ。最初からキャラ崩壊させるつもりで書いていたので、公式で恋姫化されていることを知っても、思い切って投稿しました。
 他の新規恋姫の方々にもデュエルをさせてみたいのですが、課金が怖くて「三国コレクション」をやれない私にとっては、今はこれが限界。PCで出るのはいつになることやら。
 ちなみに、雷々と電々は【電池メン】と【エレキ】を、パイたんには【帝】を使わせたいと考えています。そのまんまですね。

 それではまた、次回もお会いしましょう。

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