カードと星と、それから魔女と   作:change

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0.5.伝承文献:凶星の落とし物

昔、一つの星の欠片が、流星雨となり、広大な大地に向かい降り注いだ。

 

日の当たらぬ『影の村』に住まう者達は、子供も大人も男女関係なく、自分達の村を襲った美しくも忌々しき星の欠片を、これでもかと言う程粉々に砕いた。

大柄な男が持っていた鉄のピッケルで欠片を叩いた時、遂に欠片に罅が入る。罅の隙間からは、欠片の表面から発せられていた虹色の輝き。その何倍もの白い光が漏れでていた。

最初に白。その後に赤、青、緑と、この4色が代わり代わりに欠片の中から光となって村人達を照らす。

その美しさに見惚れた者達は、欠片へ抱いていた憎悪や憎しみを綺麗に忘れ、代わりにもっと輝かせたいという欲から、付近の欠片を次々と叩き割って行く。

 

時を同じくして、ある都市では青く輝く美しい星の欠片が発見された。都市に堕ちたその星の欠片は、欠片の落下により甚大な被害を受けた都市の機能をその輝きを持って一瞬にして全て元通りの状態に戻した。

この奇跡に、都市に住む者達はこの星の欠片を神からの授かり物と崇め、同時に利用出来ないかと研究を続けた。この出来事が原因となり、青い星の欠片を持ったこの都市は、海岸付近にあることから、海の神の名を取り『ポセイディア』という大都市となる。

 

それから暫くして、『ポセイディア』に住む者達により未開の地であった『名も無きジャングル』から、緑に輝く一際巨大な星の欠片が発見される。『ポセイディア』に住む者達はこの緑の星の欠片を半分に砕き、片方を『ポセイディア』へと運び、もう片方を現地調査隊に任せる事にした。こうして『ポセイディア』は半分となった緑の星の欠片をも手に入れる。

しかし、そこで『ポセイディア』の調査隊は星の欠片の輝きに魅せられ、半分となった星の欠片を全て粉々に砕き逃亡してしまう。

 

逃亡した『ポセイディア』の調査隊が向かったのは火山地帯として危険なことで有名な『ロック銅山』。ロック銅と言われる非常に使い勝手の良い銅が採れるその場所には、それを高額で買う商人が居ることも良く知られていた。

『ポセイディア』の調査隊はその商人に自分達が持って来た緑の星の欠片を売りつける。商人は目を輝かせ、ロック銅の何百倍もの値段でその欠片を手に入れる。それを見ていたロック銅を採る採掘師達はロック銅を採るのを辞め、皆一斉に輝く星の欠片を探し始めた。

赤く輝く星の欠片が見つかったのは、『ポセイディア』の調査隊が『影の村』に行った後だった。

 

赤く輝く星の欠片の美しさから半分だけを採掘師から売って貰った商人は、赤と緑の星の欠片を持ち、自分のコレクションとして誰にも渡すことなく世界を彷徨い続けた。嘗ては『ポセイディア』に住んでいた彼は、《パーロック》と呼ばれることとなる。

 

こうして赤、青、緑の星の欠片が発見された。それから少し時が過ぎ、『ポセイディア』に未曽有の危機が迫ることになる。

それまでは星の欠片を便りに都市を回していたのだが、その星の欠片、青と緑の星の欠片が突如として色と力を失ったのだ。当然、『ポセイディア』の都市としての機能は低下、それまでの煌びやかな都市の姿は、見る影も無くなってしまった。

 

この事件から『ポセイディア』は代わりとなる星の欠片を探そうと戦争を始める。既に彼らは星の欠片が魅せる力に呑まれ、普通では無くなってしまっていたのだ。

『ポセイディア』が仕掛けた戦争により、『名も無きジャングル』は燃え、遂には『ロック銅山』が噴火を始める始末。『ポセイディア』と戦っていた白銀の空中都市、『フォークツリー』は、友好関係を結んでいた『ポセイディア』からの攻撃に驚き、同時に酷く激怒していた。

 

『フォークツリー』に住む者達は、未だに星の欠片を手に入れていなかった。それは未知の物体を有り難く使うことを恐れていたからである。友好関係を築いていた『ポセイディア』は神からの授かり物だと言っていたが、『フォークツリー』は悪魔からの誘惑に見えていたのだ。

 

『ポセイディア』と『フォークツリー』の戦争は荒れに荒れ、とうとう『影の村』にまでその火が到達するかと思われた時、『フォークツリー』で白く輝く星の欠片が発見される。

戦争の状況は『ポセイディア』が優勢であった。非情に成りきれなかった『フォークツリー』の王とは違い、『ポセイディア』の王は常に悪逆の限りを尽くし、周りを大きく巻き込んでまで戦っていたからだ。

 

戦争で散って行く数多の民の命を目にした王は、遂にそれまで恐れていた星の欠片の力を頼ることにした。

白い星の欠片が強く輝くと同時に、『フォークツリー』を攻撃する『ポセイディア』の軍勢は、全て時が止まったかのように進軍を止め、停止する。

 

白い星の欠片の力を全て使い切り戦争に勝った『フォークツリー』は、自分の国と『ポセイディア』の所持する星の欠片を全て破壊することにした。これにより、青、半分となった緑、白の星の欠片が淡い光となり、この世界、『ジェネシス』から消滅した。

 

その後、世界は戦争の爪痕が残りつつあるものの、平穏な時代を作りつつあった。

しかし、『ロック銅山』の採掘師《オニボリー》と、航海に出て世界を旅する《パーロック》は未だに星の欠片を持っていた。未だにロック銅を採り続けることに精を出す《オニボリー》と、商売に精を出す《パーロック》の持つ星の欠片は、色褪せることなく強く輝き続けていた。

そんな《オニボリー》と《パーロック》の持つ星の欠片にある変化が訪れる。星の欠片から、その欠片の色とは異なる虹色の光が、物凄い勢いで『フォークツリー』へと放たれたのだ。

 

放たれた光は虹となり、天に美しい橋を作り上げた。《オニボリー》と《パーロック》はこれに驚き、すぐさま橋を渡る。

《オニボリー》と《パーロック》が出会ったのは、戦争前の『ロック銅山』でのみだった。しかし、お互いにその顔を良く覚えていた。

《オニボリー》は、欠片を手に入れる切欠となった人物として。《パーロック》は、自分の大切なコレクションの一つを貰った者として。

二人は橋を登り続け、遂に橋の行く先へと辿り着いた後に、姿を消した。

これは後に幾つもの可能性を持った物語として、後の世に永く語られることとなる。彼らは神により選ばれたのか、身を隠したのか、などと、確証のない推論は、星の数程飛び交った。

 

《パーロック》と《オニボリー》が消えた後、星の欠片が再び出現するという謎の現象が各地で発生した。

赤、青、緑、白。4色の星の欠片が再び現れたことに『フォークツリー』は危険を感じ、すぐさま各地に出現した欠片を破壊しようと動いた。

しかし、そこで『影の村』の者達が、異形の姿となって邪魔をする。胸に黒く輝く星の欠片を埋め込まれた彼らは、圧倒的な力で、やがては『フォークツリー』を壊滅させた。これが今も尚、伝説として伝えられている大戦争、『神々の人形劇』、その発端である。

 

『フォークツリー』が壊滅したという情報は瞬く間に伝わって行き、自分達を倒した『フォークツリー』を圧倒的な力で倒した『影の村』の民に恐怖を覚えた『ポセイディア』は、『名も無きジャングル』にて、進行してくる『影の村』の民を全て迎え撃つ計画を企てる。

この時、『ロック銅山』にて働いていた採掘師達や、『名も無きジャングル』に住む獣達も戦いに参加していたという。

 

知略に長けていた『ポセイディア』は、見事『名も無きジャングル』にて、『ロック銅山』の採掘師達と『名も無きジャングル』の獣達と協力し、遂に『影の村』の異形の民を倒すことに成功する。

しかし、倒した筈の彼らは胸の黒い星の欠片により、更なる変化を遂げ立ち上がった。

この時、『ポセイディア』は気付いた。どうして『影の村』などという小規模の民族が、あの『フォークツリー』を壊滅させられたのか。

何度倒れても蘇り、強い化け物となり再び襲いかかる。そう、不死の力ではなく、化け物を作ることこそが、あの黒い星の欠片が持つ能力なのだということを。

 

そこで『ポセイディア』は蘇らず地に付している異形を観察した。その全てが胸に埋め込まれた欠片を粉々に粉砕されていたのを確認し、王は胸の欠片を壊すことで倒すことが出来ると確信した。

しかし、『ポセイディア』の兵と『ロック銅山』の採掘師達の犠牲も多く、何より『名も無きジャングル』の獣達が全滅したことで、このまま戦った所で勝てないと踏んだ『ポセイディア』の王は、この戦いでは一度退き、『ロック銅山』の採掘師達を引き連れ、次で決着を付けることにする。

 

数ヶ月後、遂に『影の村』の異形の者共が、『ポセイディア』の都市へと攻撃を仕掛ける。地下水路からの奇襲を受けたものの、『ポセイディア』の兵は怯まず勇敢に戦う。「海神の加護ぞあり」。そう言って何人もの兵が異形の民を倒し、死んで行った。

 

最初は接戦であったが、自分達の土地である優位性から、徐々に『ポセイディア』が優勢となって行く。このまま押し切れるかと思った矢先、この戦争で一番の悲劇が訪れる。

敵の軍勢の中で、一際目立つ異形の者が居た。骨が突き出て、羽のようなものが生えているようにも思える背中。腐った肉体に付いている、乾いて黒くなった血の痕。そして何より、王冠を付けたその異形の背後に続く異形の民共。

 

見間違える筈がない。あれは間違いなく『フォークツリー』の王、その成れの果てだ。『ポセイディア』の王は信じられないと動揺するも、他の者を圧倒する力で暴れ回るその異形の姿を見て、本当に化け物として蘇ったのだと遂に認識する。

 

こうして、『ポセイディア』と『フォークツリー』の王はまたも戦争をすることとなる。しかし、その状況は前とは逆。『フォークツリー』が星の欠片の力で暴れ、『ポセイディア』はそれに対して欠片の力なしで戦わなければならなかった。

 

奮闘する『ポセイディア』だったが、奇跡は起こらず。都市は壊滅し、敗北してしまう。

しかし、このままでは『ジェネシス』に未来は無いと判断した『ポセイディア』の王は、最後の可能性を信じ、未来に存在する一人の青年へと、たった一つの希望を託していた。

 

嘗て、『ポセイディア』では青い星の欠片の力を研究していた。そしてその力は、時の流れを変え、事象を書き換えるという強力な力だった。しかしそれは、前の戦争で『フォークツリー』の扱った白い星の欠片の不変と拘束の力により敗れ、この世から消え去った。そういう話であった。

 

しかし、ただ一つだけ所持することを許されたものがあった。王妃との婚約指輪である。

王は指輪の宝石にと、青い星の欠片を使っていたのだ。『フォークツリー』の王はそれを破壊することは私には出来ないと所持を許し、代わりに自分が使うことを禁止するという誓いを契ったのだ。

そして今、王はその契りを破る。この世界の――『ジェネシス』の命運を託さんとして。

 

――もし、もしも我が契りを破ることで、この世界を救えるのならば、我は破ろう。誓いを破った王と言われようとも、茨の王冠を被ることになろうとも。王から退くことになろうとも。我は、この世界に、民に、全ての者に、戦争を起こした罪として、この身を呈し、贖罪しなければならない義務があるのだ。

 

王はそうして、指輪に祈りを込め、遠い天へと全力で投げる。指輪は今までの星の欠片の中で一番の強い輝きを放ち、跡形もなく消え去った。

 

そして、『ジェネシス』は今や『影の村』の民により死の世界と成り果てた。

 

未だ、この世界を救う者は現れず。




主な用語解説集
『ジェネシス』:伝承の舞台となっている世界

『影の村』:『ジェネシス』に存在する村。光が当たらない為、作物は育て憎く、肌の白いアルビノの人達や動物が非常に多い。

『ポセイディア』:『ジェネシス』に存在する大都市。海岸付近にあり、海神ポセイドンからその名を付けた。港を使っての交易など、流通が盛ん。

『名も無きジャングル』:『ジェネシス』に存在する密林。非常にデカいジャングル。動物が多く住んでいるが、彼ら自体に危害を加えなければ無害。『ポセイディア』の付近にある為、『ポセイディア』では、そこで採れる異常発達した『団栗の木』が特産品の一つとして扱われている。

『ロック銅山』:『ジェネシス』に存在する火山。ここでは『ロック銅』と言われる銅が掘られている。採掘師達はここで手に入れた『ロック銅』を売り、生活をしている。

『フォークツリー』:『ジェネシス』に存在する天空要塞。巨大な一本の樹木に見えることからその名が付いた。
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